SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「ロスト・アイズ」

2011年06月22日 | 映画(ラ行、ワ行)

 ホラー映画と思っていたら、ホラー・テイストのミステリーであった。

 存在感の薄い人間が自分の存在意義をどこに見つけるか、という自己啓発的テーマがこういう出来事にもなりうる。という意味で面白く見ることができた。

 ヒロインは双子で、共に先天的な病気のために徐々に視力を失う運命にある。先に視力を失った姉の自殺が物語の発端である。本当に自殺なのか、そうでないのか?そこに犯人らしき男の影がちらつくのだが、影の薄い人間は誰にも意識されない。

 見えない人間とヒロインの失われていく視力が絡み合った複雑な事件の真相が、徐々に解きほぐされていく。

 「サイコ」や「暗くなるまで待って」のテイストが溶け合った上質のスペイン産ミステリーだ。製作者であるギレルモ・デル・トロの名前を前面に出したプロモーションで、彼のファン層にアピールしている。

映画「アリス・クリードの失踪」

2011年06月21日 | 映画(ア行)

 二人の男が物資を調達して監禁部屋らしきものをしつらえたと思ったら、いきなり一人の女性を拉致してきてベッドに縛り付け、衣服を切り裂いて全裸に、という異常な展開。

 この密室を舞台に登場人物3人のみというスリラーが始まる。

 富豪の一人娘を金目当てに誘拐した、ということが分かってくる。脅迫の証拠写真を撮るための裸で、この後、その状態から服をきせ、人間だから食事も与えれば、下の世話もしないといけない。

 意表をつく人物間の関係が、2転3転の物語のうねりを生む。結局金は手に入るが、得をしたのは誰か?というのをここで明かすわけにはいかない。

 地味な公開でほとんど人目に付かないが映画ファンにはおすすめの一本だ。

映画 「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」

2011年06月15日 | 映画(ア行)

 3作で完結したX-MENシリーズのビギニングを描く。2年前に公開された、ウルヴァリンの誕生を描いた「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」も合わせて全5作となる。

 原題は「X-MEN: FIRST CLASS」で超能力学校1年生のイメージだ。

 キューバ危機という歴史上の事件の裏にミュータントの存在があったという作りだ。ケネディの演説も当時のニュースがそのまま使われる。

 アメリカ、ソ連がそれぞれミュータントに操られてキューバで一触即発の危機を迎える。それが回避されると、今度は人類共通の危機意識がミュータントに対して向けられる。

 シリーズの基本となる概念はこうして生まれたのだ、という前章なのだが、楽しめる。プロフェッサーとマグニートーの友愛と敵対が複雑に混じり合った感情や、味方が敵になっていく過程、満載のSFXと、ビジュアルのみではなく濃厚な人間のドラマも魅力になっている。

 彼らの後の姿を先に見せられた形になっているので、それを知っている観客にはさらに味わい深い登場人物や台詞が散りばめられている。未見の人はこれから旧作を見ても、タイムラインに沿ってストーリーの展開を楽しめるだろう。

映画 「パラダイス・キス」

2011年06月07日 | 映画(ハ行)

 北川景子と向井理主演の同名コミックスの映画化作品。

 ヒロインの人生への覚醒とファッションデザイナーのサクセス、さらに二人のラブストーリーと盛り沢山のストーリーだ。クライマックスにデザイン学校の卒業制作ファッションショーがあり、原作を知らないのでこれで終わりかと思ったら、まだまだ話は続く。

 コミックスの戯画化された誇張で描かれるファッション界の華やかさが実写化されると、観客の属する一般世界とは隔絶した絵空事感がある。

 そこに現実とは異なる夢の世界が広がり、それこそが映画のスクリーンの魅力でもあるのだが、往年のスターとは違って主役の二人がクールで、フルCGアニメでも見るようなある種の距離感がある。

映画 「4月の涙」

2011年06月02日 | 映画(サ行)

 20世紀初頭のフィンランド内戦の物語。ロシア革命の影響を受けた急進的な赤衛軍と政府系の白衛軍の争いだ。敗走する赤衛軍女性部隊の全員が、投降後輪姦されて荒野に放されたあと、脱走として銃殺される。

 これを違法として追求する若い准士官が、ただ一人の生き残りを正規の裁きの場へ連れて行くというのが主筋である。長い旅の中でほのかに心が通い合うように見えるが、女性は心を開いているわけではない。

 原野にポツンと建つ、これが裁判所か、という施設に人文主義者と言われる判事がいて、彼が判決を下す事になっている。

 ここが異様な雰囲気を持っており、「地獄の黙示録」のマーロン・ブランドが王のように君臨した「帝国」のような様相を帯びているのだ。

 戦争が知的な人文主義者であった判事を変貌させている。彼の隠された秘密によって、たどり着いた二人の運命がどのような結末を迎えるか、極めて上質のサスペンスを見るように最後まで目が離せない。

 久々に映画らしい映画を堪能できた。これは大人の映画だ。