万物を創造した神の意思を人間はどう読み解くかというテーマが、厳格な父の元で育った三兄弟の長男の視点から描かれる。
次男の死亡、という突発的な出来事を契機に彼の精神的な思索の旅が始まる。映画はあるストーリーを語るというより、宗教的かつ哲学的な映像モニュメントのような風貌を帯びてくる。
宇宙を創造した神の行為の中に感情は無い。生まれたものはやがて死ぬという一種の無常観が支配する世界だ。人間の一生もその一部に過ぎない。しかし、人間はそこに意味を求める。そして言う。「 神は与えて奪い、そして癒す」と。
人の死は悲しいが残されたものは自身の生を生き、死者が去った現実を受け入れていく。
神はけして語ることがない。何度か現れる神々しい光こそが神なのか、それともその中に神がいるのか?姿を見る事もできなければ、真意を尋ねる事もできない。神は人間の前で常に沈黙している。
壮大な宇宙の存在の本質を丸ごと描き出そうとする野心的な試みに大震災の光景が重なって見えた。