SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「パレード」

2010年02月26日 | 映画(ハ行)

 登場人物それぞれに視点を据えた章立てでオムニバスのように構成されている。

 どうと言うことの無い若者の日常スケッチのようだが、彼ら4人は一戸のマンションのをシェアしており、そこに新たな一人が加わる波紋が描かれる。

 互いに干渉せず波風を立てない、均質な仲良しグループのような社会が形成されている。そこには多分ストレスが内包されており、壊れるきっかけを待っているのだ。

 「均質」が壊れ、格差と差別が生まれる瞬間、ラストの視線の交錯が怖い。

 テイストはまったく異なるが、一人の来訪者によって家族が崩壊していくパゾリーニ監督の「テオレマ」を思い出した。

映画 「恋するベーカリー」

2010年02月24日 | 映画(カ行)
 「ジュリー&ジュリア」で実在の料理研究家に扮したばかりのメリル・ストリープ主演作なので、タイトルを見てグルメ映画のパン・スイーツ版と思う人もいるだろう。

 そう思って見に行く人は肩透かしをくう。チョコクロワッサン以外は出てこない、大人の恋愛コメディなのだ。この顔ぶれで、しかもコメディでR15の制限付きなのはなぜ?と思ってしまうが、見れば納得、このシーンのためだ・・・。

 「マンマ・ミーア」では3人の熟年男性を相手にしたメリル・ストリープが今度は2人の男性の間で揺れる。「ジュリア」の演技には実像に似せるための「臭さ」もあったが、今回は歳相応の恋する中年女性がリアルに迫ってくる。

 2人の中年男性、アレック・ボールドウィンとスティーヴ・マーティンもなかなかよい味わいで、大人が楽しめる作品になっている。

映画 「バレンタインデー」

2010年02月19日 | 映画(ハ行)

 バレンタインデーをめぐる、よくある群像劇。

 オールスターキャストだが軽い小話風で微笑ましく、安心して見ていられる。誰かと誰かが思わぬところでつながっていたことが分かるサプライズも用意されている。

 数あるエピソードに「ちょっとイイ話」がないので、登場人物の誰かに共感を覚えることはない。そこが「軽さ」と言うべきか。

 個人的には同じ趣向の「ラブ・アクチュアリー」の方が「見て良かった度」は高い。

 それにしても、アメリカのバレンタインデーがクリスマス並みのこんなに大きなイベントになっているとは思わなかった。

映画 「50歳の恋愛白書」

2010年02月17日 | 映画(カ行)

 豪華な出演陣で手堅く見せてくれる。

 人も羨むような理想の人生がいよいよ終盤を迎えようとする頃に、ヒロインは自分の人生を振り返る。

 幼い頃から母に、結婚してからは夫に束縛されつづて来たのではないか、と思い始めると、そもそも生まれるときからすべてが変だったという気になってくる。

 老人コミュニティのような終の棲家から羽ばたき出すヒロインの物語が素晴らしい。ストーリーの語り口も魅力的だし、スターが持ち場をキッチリ固めてゆるぎない。

 アクション抜きのキアヌ・リーブスも良い味を出している。

 地味な印象の作品だが、本当はこういう映画をもっと見たいなと思う。

映画 「おとうと」

2010年02月12日 | 映画(ア行)

 「母べえ」の吉永小百合を再び主演に迎えた山田洋次監督の最新作。

 昭和の歴史を時代背景として描く冒頭に「寅さん」がしっかり位置付けられている。

 市川崑監督の「おとうと」とは時代も主人公の年齢もまるで違うが、こちらも名作。むしろ「男はつらいよ」で寅さんがさくらの弟だったらこんなかな、と思わせる。

 とにかくフーテンのどうしようもない弟だ。だけど家族だから放っておけない。

 「おとうと」を演じる笑福亭鶴瓶の姪(蒼井優、吉永の娘役)の視点からナレーションが入り、彼女の結婚話を軸に姉と弟の絆が描かれる。

 結婚相手との格差、大病院と場末のホスピス、東京と大阪、など現代社会の様相を対比的に眺める構成になっている。

 同居する加藤治子の祖母の存在で老いの問題もさり気なく提示される。いつの間にか車椅子の生活になっているが、心のありようもジワッと変化しており観客の感涙を誘う。

 ホスピスの小日向文世、石田ゆり子をこんなに素敵に描いた、山田監督の庶民に対する視点の温かさがうれしい。

映画 「ゴールデンスランバー」

2010年02月03日 | 映画(カ行)

 冤罪を描いている。
 劇中でも「オズワルドにされる」という台詞がある。ケネディ暗殺犯に仕立て上げられた男の話だ。しかしそれをどう晴らすかというより、いかに逃げまくるか、の映画だ。

 ハリソン・フォード主演作「逃亡者」のようなハードなアクションは無い。堺雅人のキャラクターもあって、「人を信頼する」というテーマがむしろ温かな印象を残す。

 しかし、誰が何のためにという動機も不明ならば、巨大な権力が背後にあって、事件の後もその権力が支配する世界に人々は生き続けていることになるわけだ。逃げおおせたものの主人公の人生は台無しになったわけだし、何も解決したわけでは無いのだ。

 通り魔キルオなど魅力的なキャラクターも登場するので、事件の解決編、キャラクターのサイドストーリーなどスピンオフ企画が楽しめそうだ。