SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「ディスタービア」

2007年11月30日 | 映画(タ行)
 身動き出来なくなり、暇に任せて隣を覗き見していて事件に巻き込まれる、というプロットを聞けばヒッチコックの「裏窓」のリメイクかと思ってしまう。

 が、それをベースにした翻案というわけでもなく、まったく別のストーリーが作り上げられている。

 「裏窓」では主人公のジェームズ・スチュワートを事故で身動き出来なくしたが、さて本作ではいかにして主人公を拘束するか?そのためだけのエピソードに結構手間隙がかけられている。

 高校生の主人公は学校で教師を殴って謹慎処分にあい、家から出ることが出来なくなってしまうのだ。そのために警察がとる処置=センサー技術を応用した最新装備にも驚いてしまう。さすがアメリカというべきか。

 さて、なぜを教師を殴ったか?ある決定的な言葉が主人公の癇に障ったからなのだが、そのためには主人公の父親が死ぬ必要がある。ではどのような設定で父親を死に至らしめようか、という順序で脚本の構想は練られたのではないだろうか。

 しかも全編住宅周辺の閉塞感の中で、その冒頭のパートは遥かな山並みを望む美しい川での父と子のうらやましい情景を綴っており、その後の悲劇の描写も含めて、単なる状況設定のプロットにしては金のかけ方にも風格がある。

 主人公は「トランスフォーマー」に続いてシャイア・ラブーフが演じており、全体は青春ミステリーとでも呼ぶべき楽しめる作品に仕上がっている。
 それにしてもよく大事件に遭遇する高校生だ。

 「マトリックス」シリーズのキャリー=アン・モスが主人公の母親で、豪華といえば豪華な配役だが彼女ならではの見せ場があるわけではなく、他の誰かでも十分な気はした。

映画 「ALWAYS 続・三丁目の夕日」

2007年11月22日 | 映画(ア行)
 またあの懐かしい街並みで懐かしい面々に会える。第2作にして早くも感じるこの懐かしさはなんだろう。「心の琴線に触れた」というやつだろう。思えば日本アカデミー賞総なめだったもんなぁ。

 前作の持っていた、明日に対する希望をもった時代の描写はやや後退。前作ですでに設定済みの時代背景で各キャラクターがさらに個性を深めていく。茶川+ヒロミ+淳之介の擬似家族の行方を主軸に人情ドラマが展開するという趣向になっている。
 キーとなるのが芥川賞選考のエピソードだが、それも含めて期待通りの(逆に言えばあまり新味の無い)展開となる。それも本作の「安心感」を形成する要因の一つなのだろう。

 特筆すべきは冒頭のエピソードだ。ここを見ただけでも映画館に足を運んだ価値があった。想像だにしなかった夢のコラボだ。ゴジラが・・・・。

 まったく異なる企画の合体は「エイリアン対プレデター」、「ジェイソン対フレディー」など怪物対決ものしかお目にかかったことが無い。

 うまく作ると単なる続編やリメイクではない新しい分野が期待できそうだ。「サザエさん+日本沈没」とか「未来少年コナン+花より男子」とか・・・・?

映画 「リトル・チルドレン」

2007年11月15日 | 映画(ラ行、ワ行)
 ケイト・ウィンスレットがヒロインだが、アカデミー賞受賞作「クラッシュ」より一回り登場人物を絞り込んだ群像劇風の印象がある。濃密な感触では引けを取らない。

 淀んだ沼のような閉塞感のある郊外の住宅地で、そこに投げ込まれた石が波紋を広げ、再びもとの静けさが戻ってくるまでの物語だ。

 波紋の一つはヒロインの不倫であり、他の一つは性犯罪で服役を終え街に戻ってきた男だ。二つのエピソードを軸に、登場人物の心の奥にくすぶっていた苛立ちや不満があぶり出されてくる。

 監督のトッド・フィールドは俳優としての出演作の方が多く、本作は2001年の「イン・ザ・ベッドルーム」に次ぐ監督作だが、恐るべき才能だ。

 ラスト・クレジットで流れるバロック風の音楽も素晴らしい。重量級の作品を見た満足感に浸れる一本。

映画 「輝ける女たち」

2007年11月14日 | 映画(カ行)
 そうそうたる女優陣の共演。邦題はまさにそのことを指しているが原題は"LE HEROS DE LA FAMILLE"(=FAMILY HERO )。

 話は、ニースの古いキャバレー「青いオウム」のオーナーの死による、相続をめぐっての物語である。

 オーナーには家族がおらず、父親代わりに面倒を見てきたニッキーと彼の家族が群像劇風に描かれている。この家族関係はとても複雑だが、そこがこの作品の面白さにもなっている。

 カトリーヌ・ドヌーヴ、ミュウ=ミュウ、エマニュエル・ベアールが異母姉弟それぞれの母親や愛人という豪華な共演だ。

 相続人に指名されたのがその姉弟、というところから生じる波紋と各人がそれをどう受け止め、次の一歩をどう踏み出すかが描かれる。

 時々背景となる「青いオウム」のステージが画面に出てくるが、女性ダンサー達の見事な肢体はたとえようも無く美しい。

 本当に輝いているのは彼女たちなのではないか?

映画 「パンズ・ラビリンス」

2007年11月13日 | 映画(ハ行)
 悲惨な現実と少女の幻想が絡まりあった世界が描かれる。

 1985年公開の同じスペイン映画「ミツバチのささやき」(ヴィクトル・エリセ監督)で、フランケンシュタインが少女の幻想として物語に絡んでくるのとテイストが近いかもしれない。ただその叙情性に対して、本作はかなりダイレクトで強烈な描写が多い。

 したがってファンタジーといっても子供が見に行くというイメージの作品ではない。ひたすらダークだ。やはり少女が主人公だったテリー・ギリアム監督の「ローズ・イン・タイドランド」もそうだったが。

 ナナフシかウスバカゲロウか、という印象の妖精に導かれて現れる、深い陰影で描かれた異界の描写が素晴らしい。

 冒頭のワンシーンで、試練に耐えた者にのみ開かれる王国の扉の物語が、過酷な現実の前に命を落とす少女の、死の間際のつかの間の幻影として描かれる物語の構造が提示される。

 なんとも切ない映画だ。

映画 「キングダム 見えざる敵」

2007年11月09日 | 映画(カ行)
 冒頭のタイトルバックでサウジとアメリカの、これまでの歴史的関係をスピーディに見せていく。
 この映像が見事なのだが、ニュース調の途切れの無いナレーションが流れており、この字幕を追うのに忙しい。これを理解しておかないと本編が分からなくなってしまうのではないかという不安に付きまとわれるのだ。結果、画より字を追ってしまう。

 しかし本編が始まるとテロとそれを操作するFBIの緊迫した骨太アクションが展開し、政治的な歴史背景に必ずしも精通している必要は無いことが分かる。それなら映像の方を見ておくんだった、と思ってももう遅い。

 しかし、見応えのある映画だった。これほどヘビーな迫力ある銃撃戦は初めて見た。監督のピーター・バーグはこれまで俳優としての経歴が長い人のようだ。たいした才能だと恐れ入る。

 双方それぞれに家族があり、それぞれの正義があって行動していることも描かれている。「味方がやられたら相手に憎しみを抱く」ことも双方変わらない。極めて単純な理屈だ。逆にそれだからこそ、この連鎖をとめるのは難しいのかもしれない。

 どちらか片方から見たら相手は敵なのだ。ラストを見ると複雑な気持ちになる。

映画 「幸せのレシピ」

2007年11月07日 | 映画(サ行)
 話を聞いてタイトルも内容も似ている、と思ったら以前公開されたドイツ映画「マーサの幸せレシピ」のリメイクだった。はっきりした記憶は無いものの、なかなか良く出来た映画だと思ったことは確かだ。

 だからこのハリウッド版はパスしてもいいかな、と思いながらも見に行ったのはキャサリン・ゼタ・ジョーンズ、アーロン・エッカート、アビゲイル・ブレスリンという配役の良さと監督が「シャイン」のスコット・ヒックスだったから。

 その期待は大きすぎたとしか言えないが、楽しめるハートウォーミング作品にはなっていた。

 ニューヨークが舞台なので、その人気レストランの看板シェフという位置付けが前作よりはイメージしやすいものになっている。ヒロインがセラピストの元に通っているのもアメリカらしい変更点の一つだが、あえて言えば、この役がもう少し魅力的にストーリーに絡んで欲しかった。

映画 「ボンボン」

2007年11月06日 | 映画(ハ行)
 世界にはこんな映画もあるのだ、とうれしくなるアルゼンチン映画。だけど、「スパイダーマン」は見ても、この映画を見る人はほとんどいないだろうな。

 タイトルの「ボンボン」は犬の名前。ただし主人公というわけではない。しかもベンジーやラッシーのように愛らしいわけでもない。ぶっきらぼうでいかつい狩猟犬だ。
 しかし、ただそこにいるだけの存在感になにかホノボノとしたものが漂う。

 これまでアンラッキーだった主人公と出会い、その人生に好転をもたらす幸せのシンボルのようなものだ。(オスの犬なので「あげまん」とは呼べない。)
 その見かけによらず奥手なボンボンの童貞喪失までが一つの波乱を与えることになる。

 フランスから来た犬なので、途中まで、柵に書かれていた犬舎名「・・・・Le Chian」が名前だと思って「レチャン」と呼ばれたりしているところも可笑しい。

映画 「フランシスコの2人の息子」

2007年11月02日 | 映画(ハ行)
 あまり馴染みのないブラジル映画。
 実在の兄弟デュオシンガーが、いかにして国民的人気アーティストになったかを描く。

 貧しい幼少期から現在までが描かれるが、2人の息子といっても、途中からデュオの片方は入れ替わりもう一人の別の弟がパートナーとなる。(だから正確には3人の息子なのだ。)その悲劇的な事情を含む波乱万丈の一代記風だ。

 しかし、幼少期パートの少年デュオが抜群に良いので、後半がやや冗長に感じられる。重心の置き方など全体のまとめ方を変えればさらにシャープな秀作に仕上がったと思う。

 ラストにはモデルとなった現実の兄弟が画面に登場している。

映画 「パーフェクト・ストレンジャー」

2007年11月01日 | 映画(ハ行)
 面白くなりそうな題材が平板に仕上がっている。
 ハル・ベリーとブルース・ウィリスのスター映画だが、ブル-スの方は見せ場がない。なぜ彼があえてこのオファーを受けたのか?と言う印象である。

 ある幼い日のトラウマが犯罪の引き金になっているものの、十分に正当性の認められるものなので、そのために犯罪に走るということに説得性がない。

 誰もが怪しげで次々に新しい事実がわかってくる。その末に待ち受ける「衝撃のどんでん返し」なのだがドラマのメリハリが無く、衝撃と言うより、「そう来ましたか」程度に受け止めてしまう。

 予告を見てワクワクしていた時が、思えば一番良かった。というのも悲しい気が・・・・。