梁 石日(ヤンソギル)の原作。
小説を、映画を見てから読んだ。映画も相当ハードだったが、原作はそれどころではない。これでもかの過酷な仕打ちが子供たちに襲いかかる。情を排したクールな筆致で、ここまで書くのかというリアルな描写に圧倒される。
結果からいうと、小説に比べて映画はまだソフトだ。
小説はタイとその周辺における幼児売春の実態、およびその改善に尽くすNGO活動がメインに描かれる。映画に出てくる江口洋介の新聞記者が登場するのはページ数も半分を過ぎてからだ。したがってもう一つのテーマである臓器移植の問題も後半になって顔を出す。
映画はNGO活動に従事する宮崎あおいより、臓器密売を追う江口洋介を前面に出している。したがって主人公の逆転、二つのテーマの比重の逆転が大きな相違点である。
集会が銃乱射の大乱闘になってくるクライマックスは、原作の場合もう少し大きな社会的うねり(労働者組合のデモ行進)として描かれる。映画ではNGO組織の集会でしかないので、それに対する警備体制が異常に大掛かりだし、NGOに反撥するグループがNGOに対してではなく警備の警官側に銃を向けるなどやや未消化に終わってしまった部分がある。
原作は、しょせん他国で起こっている他人事で済ませられるのか?というテーマを前面に出している。映画もそこは同じだが、エンターテインメントとしてストーリーをもう一ひねり、主人公のダークサイドを描くエピソードが最後に追加されて余韻を残している。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます