SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「今度は愛妻家」

2010年01月29日 | 映画(カ行)

 タイトル以外何の予備知識もなく、コメディのつもりで見ていた。

 室内を舞台に登場人物がタイミングよくすれ違い、同一シーンに人が重ならない展開は舞台劇を思わせる。

 途中、同じ台詞が場所を変えて繰り返されるあたりから映画は変調を来たし、行定監督の巧妙で絶妙な手さばきが鮮やかに決まって、こんな話だったのかと観客の思いもよらない方向へとドラマが向かい始める。
 もう一度巻き戻して初めから見てみたいと思った。

 一人の男が現実とどう折り合いをつけていくか、という話なのだがこういう語り口があったのかと、演出、脚本、役者のうまさに舌をまいた。

映画 「ずっとあなたを愛してる」

2010年01月27日 | 映画(サ行)

 フランスの小説家が初めて手がけた監督作だというが、とてもよく出来ている。抑制の効いた演出で、ヒロインの閉ざされた心がゆっくりと開いていく、そのプロセスが描かれる。

 何が起きたのかボンヤリと分かるが、それがだんだんハッキリした実像を結んでくる。それは映画のために意図されたミステリーなどでは無く、15年の不在の後にヒロインの実像が世界に認知される過程そのものなのだ。

 主演のクリスティン・スコット・トーマスが素晴らしい。ラストに「私は、ここにいる」という台詞が二度繰り返される。二度目は自分自身に向かって言っているように聞こえる。

 「アバター」も面白く見たが、その一方でこういう作品もキチンと作られ、それを日本でも鑑賞できるのがうれしい。

映画 「オーシャンズ」

2010年01月26日 | 映画(ア行)

 ネイチャーものドキュメンタリーの新作。イギリスBBC作品ではなく「WATARIDORI」を撮ったフランスの俳優ジャック・ペランが再び監督している。

 この種のドキュメンタリーは生物の多様性を持った地球の美を描くか、生物の生態を描くか、環境問題を解くかだ。最近の傾向として、いずれも最終的には環境問題に至る。

 したがって、テレビCMに出てくる美しい生物を大画面で楽しむことはもちろん出来るが、汚染された汚い海も、見たくなくても見せられてしまう。

 2008年公開の「アース」(こちらはBBC制作)とも温暖化→北極の解氷→居場所を無くすシロクマという訴え方は共通している。

 最後のクレジットで「撮影のために生物を傷つけてはいない」と断りが入るが、食材として捕獲された鮫がヒレ(ふかひれ)を切除された後、海に放たれ海底で絶命するシーンをどう解釈すればよいのだろうか?撮影のためではなく、業者が日常的に行っていることを撮っただけ、ということなのか?

映画 「アバター」

2010年01月22日 | 映画(ア行)

 ジェームズ・キャメロン監督の最新作にして話題の3D映画だ。その話題性は抜きにしても、仮想現実の問題やら環境問題やら様々なテーマを散りばめた堂々たる正統派ヒーロ-・アクションで、文句なく面白く、感動する。

 自分が夢で蝶となったのか、蝶が夢見て今自分になっているのかという「胡蝶の夢」の風情がベースのトーンになっている。そんな難しいことを言わなくてもロール・プレイング・ゲームにはまった状態もそれに近い。

 が、主人公のアバターとしての肉体は仮想ではなく、もう一つのリアルな存在なのだ。

 異星への侵略行為は西部開拓の騎兵隊とインディアンのようにも見えるが、そののどかさは無く、近代兵器とスピリチュアルな文化の対比は、夢の世界をリアルな現実が侵食するような不思議な感覚がある。

 アバターのような技術が可能ならば、主人公のように障害を持つ人間は、異形では無い自分とまったく同じ分身を作ってリンクすれば、障害を克服することが可能になる。その時こそ、どちらの自分が本物かという切実な問題が起きてくる。

映画 「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」

2010年01月20日 | 映画(マ行)

 久々に満足度の高い鑑賞だった。文句なく面白い。

 北欧のミステリーで、何十年も前の女性失踪事件をめぐる話だ。「ミレニアム」は主人公のジャーナリストが発行する雑誌の名前。彼が謎解きの役回りであるが、ある若い女性と奇妙なコンビを組む事になる。

 この女性の特異なキャラクターが全編の魅力となっている。女性版のソフトなハンニバル・レクター博士の趣だ。

 コンビを組むに至る過程もその後の展開も眼を離せない。と言うか、観客の心を離さない。

 北欧ミステリーにはWOWOWで放映された「刑事ヴァランダー 白夜の戦慄」があるが、土地固有の光線があるのか、どちらも共通した色調は明らかにハリウッドものとは異なっている。

 本編最後に続編の予告が入り、こちらも期待度大だ。

映画 「沈まぬ太陽」

2010年01月13日 | 映画(ア行)

 政府出資の国策企業としてスタートした日本航空をモデルに、企業理論に翻弄された一人の男の熱い信念を描いている。

 主演の渡部謙も対立する三浦友和も見事だし、その他の共演陣も豪華でそれぞれに良い味を出している。

 途中休憩を含む長尺、というだけでも近年まれな力作だ。が、これだけの内容を消化するにはもう少し時間が欲しい気がした。

 同じ山崎豊子原作の「不毛地帯」がテレビでは連続ドラマとして放映中だが、唐沢寿明演じるこちらの主人公・壹岐正と思われる人物が映画にも登場するなど、ともに戦後経済界を描いているだけにリンクしていて面白い。

 いま現実社会で進行中の日本航空の経営問題は、映画の続編をリアルに見ているような錯覚を覚えてしまう。まことにタイムリーな映画といえよう。

映画 「色即ぜねれいしょん」

2010年01月08日 | 映画(サ行)

 監督の田口トモロヲは、ロック魂を持った人だから、昨年はの俳優として「少年メリケンサック」での怪演もあったし、タイトルの響きからもパンク系のエネルギーが炸裂したような作品かと思っていた。

 が、意外やナイーブで爽やかな青春映画として楽しめた。ロックにあこがれる高校生、ユースホステル、という70年代のゆるい空気感が画面から漂ってくる。
 東京ではなく京都を舞台にしていることもあり、言葉の浮遊感がファンタジックに響く。

 帰ってこない青春を懐かしむことが出来る。が、本人たちは当時、いたって真面目に自分の人生を生きていたのだ。

 山下敦弘監督の女性版、「リンダ リンダ リンダ」と見比べるのも面白いかも。

映画 「さそり」

2010年01月07日 | 映画(サ行)
 梶芽衣子主演のヒットシリーズ「女囚さそり」のリメイクに当たる。水野美紀主演の日本・香港合作映画で、出演陣も日本、香港、台湾という無国籍風アジア映画の趣だ。台詞は広東語で字幕付だ。
 残虐趣味に彩られたサバイバル復讐劇である。

 オリジナル版が大きな影響を与えたタランティーノ監督作品「キル・ビル」同様、荒唐無稽で壮大な話だが、ストーリーはキッチリ押さえた「キル・ビル」に対し、本作はとにかく映像美の迫力で最後まで押してくる。

 だから復讐劇という大きな流れさえ把握してしまえば、あとは登場人物やストーリーの細かいところはどうなっているのか、よく分からないし、どうでも良いと割り切ることが正しい鑑賞法といえるのかも知れない。

 台湾の人気俳優、ディラン・クォが水野の恋人役で出演しているが、あまり見せ場はない。