SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画「レ・ミゼラブル」

2012年12月31日 | 映画(ラ行、ワ行)
 カウントダウン・ムービー第4作(今年最後の鑑賞作品)。

 中学か高校かは忘れたが国語の教科書に収録されていた。銀器を盗んだジャン・バルジャンが司教の心に触れ人生を修正する決意を抱く場面である。が、これはこの大河的物語のほんの一部分にすぎない。

 犯罪者としてのジャン・バルジャンを執拗に追い詰める警官ジャヴェールは「逃亡者」のジェラード警部を思わせる。

 全編、セリフがほとんど歌になっている。海中のシーンからスタートしてダイナミックなカメラワークによる場面転換が映画ならではの感興で迫る。

 物語のクライマックスは学生たちの蜂起する革命シーンだが、これは不発に終わってしまう。とすると、ラストで高らかに歌い上げられる新しい明日への希望は、死者たちの夢物語に過ぎないことになる。

 革命闘争で一人生き残ったマリウスが、裕福な祖父のもとに帰り、幸せなブルジョワ家庭を築くかに見えるのも気になった。

映画「アルゴ」

2012年12月30日 | 映画(ア行)
 カウントダウン・ムービー第3作(最後から2番目)。

 アメリカの歴史秘話が封印を解かれて映画化された。ベン・アフレックの監督・主演作品。

 CIAの人質救出のプロが、イラクで起こったアメリカ大使館人質事件で、カナダ大使私邸に逃げ込んだ6名の脱出作戦を実行する。

 奇想天外の作戦は一種のギャンブルでもある。架空のSF映画「アルゴ」のロケハン・スタッフになりすまして脱出を図るという珍案は、電話で話した息子がその時テレビで見ていた映画「最後の猿の惑星」からひらめいたアイデアである。

 この映画の特殊メイクアーチスト、ジョン・チェンバースが作戦に加担することになる。脱出までのサスペンスも見所だが、映画ファンにも見逃せない。

映画 「007 スカイフォール」

2012年12月30日 | 映画(サ行)

 カウントダウン・ムービー第2作(最後から3番目)は話題の007最新作となった。
シリーズのお約束であるアバン・タイトルのワンエピソードがまず見応え十分。ボリュームがあって、しかも今後の展開に大影響の異例の事態が描かれる。

 続くタイトル・アニメが毎回のごとく素晴らしく、ここまでですでに十分に元をとった感じがする。

 ダニエル・クレイグ・ボンド3作目で、ドラマ性が最も強く、シリーズ誕生50周年の23作目にしてボンドシリーズの「世代交代」を謳っている。豪華配役で、交代する今後のレギュラーにも強力な布陣である。

 また、ハビエル・バルデムが屈折した悪役を見事に演じる。対するクレイグ・ボンドは年齢のためか、復帰試験の成績は芳しくないものの続投してくれるようだ。銃やナイフといった伝統的アイテムで原点回帰を狙ったアクションがヒーローではない、生身の諜報員の人間臭さを感じさせる。

 世界各地に展開するロケも素晴らしい効果を上げている。

映画「砂漠でサーモン・フィッシング」

2012年12月29日 | 映画(サ行)
 今日から大晦日までの3日間に4本の作品を鑑賞する予定。そのカウントダウン・ムービー1本目(最後から4本目)がこれ。

 渋谷のシネコン3スクリーン中、最小キャパ60席のシアターで一日2回の上映。それをわずか10人ほどで鑑賞する贅沢。

 ユアン・マクレガー、エミリー・ブラント、クリスティン・スコット・トーマスの豪華配役で監督がラッセ・ハルストレム。小品ながら夢にあふれてほのぼのと温かく、風刺も効いたラブ・コメディ。正月映画にはピッタリだと思うのだが人が入るかどうか心配。

 無理難題が山積のプロジェクトをどう成立させるかというビジネスストーリーを核に中東情勢に関わる英国のイメージ戦略とラブストーリーが絡む。

 山あり、谷あり、起承転結も映画らしい映画で、スターたちが楽しんで演じている。見て損のない作品といえる。

映画「渾身 KON-SHIN」

2012年12月18日 | 映画(カ行)

 しみじみとした家族愛と人間の絆が謳われた、すがすがしい作品。

 舞台は島根県隠岐の島。島に伝わる伝統相撲にかけた男の物語だが、それが女性の視点から描かれるので、汗臭さより爽やかさが香ってくる。

 子連れの再婚であるらしい男には、今まさに伝統相撲の取組の一番が迫っている、という幕開けである。

 そこに至るまでの過去と進行形の現在がカットバックで描かれる。結果が分かっている再婚までのじれったいまでの告白劇も好もしい。

 「ロッキー」張りの絶対勝てそうにない相手との取組も、どうなる?のミステリーで大いに引っ張ってくれる。

 「伝統」は、勝者が力を尽くして敗ぶれた者に対して見せる心の広さにある。そこで敵役には、憎々しげでありながらさすがに土俵に上がる者だけのことはある度量をバランスよく体現していることが求められる。主人公とのぶつかり合いは見ものである。

 負けたものが実は勝っていることがある、という日本の美徳を再認識できる。

映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」

2012年12月10日 | 映画(ア行)

 テレビシリーズは知らず、新劇場版になってから初めてこの世界観に接して、「序」も「破」も鑑賞したものの、数年を経ての続編は復習もなければ全くの新作も同じ。

 いきなり、壮烈なバトル・シーンからスタートして、いったいどことどこが何のために戦っているのかも分からないまま、しかし、やたらと美しい画面に見とれていたら、延々と続いたバトルも終わり、ようやくタイトルが画面に現れた。

 何でも物語上では前作から14年が経過しているらしく、その間意識のなかった主人公も、何がどうなっているのか分からないようなのだ。14年の間に「サード・インパクト」と呼ばれる事象によって人類は滅亡し、その原因を作ったのが主人公であるらしい。

 それを修復するために新たに出会った少年と再びバトルの場に・・・、というタイトル後のストーリーと世界観にはすっかり魅せられてしまった。

 本編の前にスタジオジブリ制作の「巨神兵東京に現わる 劇場版」という10分ほどの短編が上映されるが、これが本編中の「サード・インパクト」とリンクしているようなのだ。この短編で破壊しつくされる東京の映像には震え上がった。
 大きな災害を象徴しているようにも思える巨神兵の虚ろな邪悪に人類はなすすべもない。

 実はこの短編の方を見たいがために劇場に足を運んだのだが、本編もなかなか良かった。