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静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

小説 「悼む人」 ~ 勝手に映画化、配役発表

2011年07月12日 | 音楽・演劇・美術・文学

 「死」を真正面から取り上げた重いテーマの大作である。

 主人公は「悼む人」であるが、彼を追う週刊誌記者、末期癌で在宅治療を選択した彼の母親、彼と行動を共にする夫殺しの前科をもつ女性の3者の視点から交互に3回ずつ物語が語られ、その9章にプロローグとエピローグが付く11章構成で、読み応えがある。

 各語り部の家族において、死はそれぞれに重い意味を持っている。

 主人公の家族は進行中の癌と戦う母親の余命が限られており、全国を悼みの旅で巡っている長男と、自宅での出産を決意した妹の子供が果たして母親との対面を果たすことが出来るのか、という大きな流れが主筋となっている。

 語り部となる3人は当初「悼む人」の行為を理解できないでいるが、心の深い部分でその感化を受け、いつしか彼ら自身がその行為の受け継ぐ実践者となっていくようでもある。

 在宅治療は医療行為を施す側との強い信頼感とコミュニケーションによって成り立っており、症状がどう進行していくか読者にもよく理解できる。あらゆる感覚は遠のいても最後まで聴覚は機能するらしく、死への旅に向かう母親の一人称で最後の瞬間まで語られる最終章は圧巻である。

 夢や幻想が入り混じり、果たしてそれが現実に起こったかかどうかは分からないが、幸福感に満ちた至福の光景を共有することが出来る。作中で述べられる多くの悼む行為が、悼まれる側にとってどういう意味を持っているかもそこで明かされる。

 読書中、脳裏に浮かぶ映像では、主人公の「悼む人」を松山ケンイチが演じていた。その両親を戸田恵子と小日向文世。父親役は三谷幸喜がシリアスに演じてもいいかなと思った。週刊誌記者は竹内力、その父親が原田芳雄。殺人の前科がある女性を市川実日子または菊地凛子、殺されるその夫に渡部篤郎という豪華な配役である。


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