SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画「叫」

2007年02月28日 | 映画(サ行)
 黒澤清監督の「ロフト」に次ぐ新作。まじめに幽霊の映画だ。

 同じ手口の連続殺人事件が起こるが犯人は同一ではない、ではなぜ・・・・という展開は「CURE」を思わせる。それを追う刑事が役所広司であるところも同じ。

 違うのはそこから先に幽霊がからんでくるところだ。今回は黒く闇の中でうごめく幽霊とは違う。美女で、しっかりと両足で歩いている。スーパーマンばりに空も飛ぶ。映像的にもくっきりはっきりだ。久々、葉月里緒奈の美しき幽霊。

 伊原剛志が遭遇する恐怖のエピソードなど、理詰めでは説明しきれない不可解さもあり、ミステリーの体裁ではあるが「J-ホラー」と呼ぶべきものだろう。
 何気なく見てしまったのに何もしなかったことの責任を、ある日突然、突きつけられ、自分の中の闇を見つめることになる恐怖が描かれる。

 オダギリジョー、加瀬亮がカメオ出演している。
 味わいとしては「CURE」+「回路」だが監督の新境地だと思う。

 叫び顔を正面からまともにとらえると、なぜかムンクの「叫び」に似てくるような気がした。

映画「墨攻」と「風林火山」

2007年02月27日 | 映画(ハ行)
 国境を越えてアジアの才能が結集した大作「墨攻」を見た。

 舞台は趙、燕の大国に挟まれた梁、主人公は墨者・革離と漢字づくめ。登場人物もごく一部を除いて顔と役名が覚えられなさそう。冒頭で早くもそんな不安が心をよぎったが対立関係、状況もそう複雑ではないので面白く見ることが出来た。

 しかし、何より驚いたのは週末2月25日に放送されたNHKの大河ドラマ「風林火山」第8回「奇襲!海ノ口」と酷似していたこと。

 墨家は「非戦」を説いたそうだが、墨者・革離は戦闘に長けた「軍師」である。一人梁城を訪れた革離が戦いの指南を行う。方や「風林火山」では浪人にして優れた軍師としての才を持つ山本勘助が海の口城で武田軍を迎え撃つ策を城主に授ける。

 で、その戦いのディテールが、例えば城壁に土を塗って火矢の燃焼を抑えるとか、例えば城で使用する地下水に毒を流すとか、例えば城外からトンネルを掘って防御を突破するとか、例えば大軍が撤退して喜びに沸く城を、敵の少数残党が奇襲して結局城を落としてしまうとかとか・・・・そっくりなのだ。

 勘助は諸国を放浪しながら戦いの術を学んだそうだから、中国の、この古い戦の戦術が海ノ口の戦いに応用できると気付いたのか?

映画「暗いところで待ち合わせ」

2007年02月26日 | 映画(カ行)
 乙一・原作小説の映画化作品。主役の二人がなかなか良い味を出した佳作になっている。

 ミステリーの体裁を取っているが感の良い観客は途中で結末を悟ってしまう。ただし謎解き主眼ではなく、孤独な二つの魂が寄りどころを見つけるまでの淡いラブストーリーである。その結末も明快には語られずに余韻を残す。

 チャン・ボーリンが日本で働く中国人の役で前半はほとんど台詞がない。幼い頃から疎外感をもっており、自分の居場所がどこにもない孤独感を漂わせている。彼が、なかったのは居場所ではなく、自分の存在を必要とする人との出会いだったと悟るまでの心の成長を描く一方、ヒロインの田中麗奈は盲目の一人暮らしの孤独から一歩を踏み出す決心をする。

 彼の方は職場での(外国人)いじめにあっており、これは現在学校で起きているいじめ問題とも響きあう、きわめて現代的なテーマである。

 二人の出会いを作ることになるのがある殺人事件という設定だ。

 事件が起きたとき家の窓辺にいたヒロインに、その私鉄駅の現場を見られた、と犯人は思った。ヒロインに近づいてくる可能性があるのはこの犯人と、ある事情から別れ別れになっている母親だ。果たして・・・・、というのが主筋に絡んでくる事件だ。

 盲目のヒロインの家に殺人者が侵入するという設定はまるでオードリー・ヘップバーン主演「暗くなるまで待って」のようだが、まったく異なる物語が紡ぎ出された。タイトルは似ているが。

映画「リトル・ミス・サンシャイン」~ 旅の効用

2007年02月23日 | 映画(ラ行、ワ行)
 「負け組み」家族のバスの旅。何がどう変わるのか、コメディ仕立てのロードムービーで疲れきったアメリカの家族の再生を描く。

 アカデミー作品賞にノミネートされているダークホース。シリアス系が多い中で大健闘だ。都内でさえ本当にマイナーな、ほぼ単館状態の上映で、おそらく見ない人が多いだろう。もったいない。
 個性的な芸達者が揃って、娘のミスコン出場に向かう家族の珍道中が綴られる。

 家族を乗せたミニバスが家族自身の象徴になっている。傍目には修理が必要なボロバスでしかないのだが、皆が力を合わせてうまく使えば結構走ってくれるのだ。

 グランパ役のアラン・アーキン、息の長い名優なのに「暗くなるまで待って」の怖いサングラス顔しか印象になく、クレジットを見てこんな顔だったのかと驚いた。しかし見終わった今、すでにもう忘れている。

 アカデミー賞発表は日本時間で2月26日、もし受賞すれば弾みで上映館も増えるだろう。はたして行方は?

ゲゲゲの蟲師 ~ 流行のヘアスタイル

2007年02月21日 | 映画

 予告編が始まった。実写版の「ゲゲゲの鬼太郎」らしい。白髪というより銀髪を前にたらして片目がのぞく。ウェンツ瑛士もメイクで精悍に見えるなと感心した。

 しかし、トーンが少しホラー寄りで、ゲゲゲ風とは違うような気がし始めたところでタイトル「蟲師」が出てきた。ということはあれはオダギリジョー・・・・。
 同じコミックの実写化でもこちらは漆原友紀が原作、やはりコミック作家でもある大友克洋監督による実写化作品。そもそも水木しげるタッチの癒し系妖怪は出てこないのだ。

 蒼井優もこれまでと違うオドロオドロした役どころのようだ。

 偶然このあと本当の「ゲゲゲの鬼太郎」の予告が続いた。で、こちらは当然ウェンツ瑛士なわけだが、似てるなー、オダギリとウェンツ。髪型以外の顔本体は違うはずなのに確かに似ている。

 ひょっとしたら今年流行るのかもしれない、銀髪の鬼太郎ルック。

映画「どろろ」

2007年02月19日 | 映画(タ行)


 原作は読んだ、テレビアニメはリアルタイムで楽しんだ。芝居も見たし、小説(映画のノベライズが出版されているが、今回の映画化で話題にすらならない学研文庫版小説「どろろ:鳥海尽三著」は傑作)も読んだ。

 だから期待は特大だった。しかしそれが残念なしぼみ方をしてしまった。

 配役は悪くないし、無国籍風の展開も悪くない。CGや特撮がチープといえばチープだがそんなことはさておいて、肝心なドラマ部分の弱さがいかんともしがたい。
 百鬼丸の父に対する憎しみ、母に対する慕情、弟との葛藤など、全体のクライマックスというべき部分が感情の吐露も何もない、役者にとって演じがいのないビジュアル中心の画面に納まってしまっている。

 加えて、どろろの百鬼丸に対する微妙な感情や百鬼丸の成長にまつわるエピソードなど十分に描き困れておらず、映画としては長尺ながら、原作を表現するにはまだまだ短い時間の中で消化不良の印象が残ってしまう。

 柴崎どろろの叫びまくる台詞回しだけがキンキン頭に響いた。

 途中、まるで旅の風景がバックミュージックに乗って描かれるように何体かの魔物退治が処理される。魔物の数からいって、省略されて画面に出て来ないものも当然あるとは思っていたが、まだまだ退治すべき魔物は半分残っていることが最後の字幕で分かる。
 物語的には終わってしまっているのに、この先続編を作って何を描こうというのか?

 この手の作品はテレビでじっくりドラマ化するのがふさわしいようだ。妖怪一体ずつ退治していっても48話。NHKにはリアルな歴史ものだけでなく、この手の伝奇ドラマにも大河の枠で取り組んでもらいたいものだ。


チョコの賞味期限

2007年02月15日 | 日常生活・事件

 バレンタインデーが終わった。

 クリスマスの後のクリスマスケーキは投売り状態になるが、「バレンタインチョコ」があるわけではないのでチョコレートは2月15日以降だって普通に店頭で売ることができる。

 ただ、市場で過剰感があることは確かだし、最近流行?の賞味期限だってある。したがって、少なくともその賞味期限までには売り切ってしまいたいと思うだろう。

 そこでこれからの時期、チョコ好きにとっては安くゲットできる良い季節となる。

 数年前のこの時期、ミニクラス会を企画して○歳代突入のお祝いをやろうということになり、ついては単なる飲み会では面白くないので、各自1000円で何かプレゼントを持ち寄り交換しようということになった。

 そのプレゼントを物色しに街をぶらついて行き当たったのが、チョコレートを福袋のように詰め合わせた1000円のセットであった。かなりのボリュームで、ざっと見積もって70%offとでもいえそうだった。

 果たして、同じ1000円でこの豪華さはかなりの好評をはくし、これを当てた人の笑顔が良い土産となった。

 しかし人に上げてしまうのが惜しいような内容物であったことは確かで、こうしてこの時期また街を歩く楽しみが一つ増えるのである。

映画「マッチポイント」

2007年02月15日 | 映画(マ行)
 
 テニスではネットにかかったボールがどちらに落ちるかで勝負が決まる、という意味合いのタイトル。

 「さよなら、さよならハリウッド」でハリウッド決別宣言を果たしたウッディ・アレンがヨーロッパで撮りあげた新作。これまでの身辺雑記風ボヤキ節が一変、スタイリッシュなエンターテインメントに仕上がっている。
 ウッディ・ファンはもちろん、そうでなかった人にも楽しめる作品になっている。

 テニス・プレーヤーの話かと思っていたら、テニスは冒頭で主人公の設定のために登場する程度で、本筋は2組の男女の四角関係がどう展開するかにある。
 テニスボールはネットの手前に落ちたらこちらの負けだが、人生においては逆のケースもあるという映画。

 実力とか努力とか言うものの、結局は運の強い人が勝つのだ、というのがテーマ。ラストで誕生するジュニアに「立派な人になるのも良いが、運の強い人になりなさい」というメッセージが託される。

 ウッディ・アレンは自分を強運と思っているのだろうか?

映画「ユメ十夜」

2007年02月14日 | 映画(ヤ行)
 夏目漱石原作の映画化。漱石はこんな前衛的な作家でもあったのだ。

 10のエピソードからなるオムニバス作品。「こんな夢を見た」で始まるところは黒澤明の「夢」と同じだが、こちらは個性派作家による映像博覧会の趣。

 エントリーした監督も俳優陣もとにかく豪華なので見たいと思う人は多いかもしれないが「映像ファン」ならともかく、単なる映画ファンにはお勧めしない。

 文芸タッチあり、ホラーあり、ミステリーあり、コメディありで、分かるか分からないかは別にしてそれなりに楽しめる。
 個人的な一押しは松尾スズキ監督の「第六夜」・・・・運慶、仁王を彫るの巻。世にも珍しいものを見せてもらったという感じで大いに笑った。でも「分相応」というテーマは明快。ラストに、その夢を見たのがなぜか石原良純であった、という訳の分からない落ちがつくところまで含めてとても面白かった。

 「第七夜」だけがアニメ。天野喜孝作品は初見、あまりに美しいイメージに見とれてしまった。「第四夜」は山本耕史が漱石に扮して、過去のトラウマにまつわるエピソードがミステリータッチで語られるが、シュールなイメージと色彩が美しく長編で見てみたい。

 「第一夜」は監督の実相寺昭雄も脚本の久世光彦も昨年他界しており、これが遺作とも言うべき作品。濃密な時代色と光、音、画面の傾き加減が独自の映像世界を構築している。これは久世演出のテレビ作品「センセイの鞄」で好演した小泉今日子の主演。

映画「サンキュー・スモーキング」

2007年02月13日 | 映画(サ行)
 タバコ業界の広報を行う「タバコ研究アカデミー」のPRマンをアーロン・エッカートが軽妙に演じている。クロをシロと言いくるめる弁論術がタバコ業界の命運を左右する様を描くブラック・コメディの体裁だが、主題は「親の子供に対する責任」である。

 給食費を払わない親がいると聞いてビックリ仰天、以前、武田鉄也の「金八先生」にも登場したエピソードだが、ドラマの話だと思っていた。
 そこでこの映画はまことに現代的なテーマを提示していることになる。息子役は「記憶の棘」でニコル・キッドマンを相手に微妙な役どころを演じたキャメロン・ブライトが好演。こんな息子がいたらいいなと思わせてくれる。

 豪華な配役に、洒落た脚本、映画の面白さがここにある。感動大作ばかりじゃつまらないしね。

 監督・脚本をこなしたジェイソン・ライトマンはこれがデビューだと言うから驚き。しかし「ゴースト・バスターズ」を撮ったアイヴァン・ライトマンの息子と知ってある意味納得だ。