SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛」

2008年06月19日 | 映画(ナ行)
 期待以上の面白さで大満足。

 全体に戦闘シーンの占める割合が大きいが、複数の戦闘シーンの緩急の呼吸と戦術など、見事に見せてくれる。スター級の配役は皆無だが、兄弟姉妹4人とカスピアン王子はなかなか魅力的でよく物語を引っ張っている。4人の前作からの成長ぶりも楽しめる。

 前作では4人がナルニアで大人になるほどの長期滞在だったが、今回は戦闘のための出稼ぎに過ぎない短期滞在だ。しかし上の2人はもう十分大人になったからと、第3章でのナルニア行きはないらしい。
 前作に次ぐ監督のアンドリュー・アダムソンは「シュレック」シリーズも手がけており、キャラクターにそれらしさがある。

 ディズニー映画なので、冒頭のコーポレート・ロゴでおなじみのおとぎの城に花火が炸裂するのだが、本編でも似たようなシーンがあるのには笑ってしまう。

映画 「春よこい」

2008年06月18日 | 映画(ハ行)
 佐賀県唐津市呼子が舞台になっている。美しい海の景観を誇る町が映画の舞台としてさっぱり生かされていない。単なる海辺の町ならどこでも良さそうだ。

 工藤夕貴は熱演だが、西島秀俊も時任三郎も、彼らが出演するテレビドラマの方がよほど良く作ってある感じだ。

 人物像やエピソードが安易かつ平凡なのだ。

 西島扮する新聞記者の記事がドラマの核となるが、地元の人物をあのような形でローカル紙に取り上げる結果を理解できないのかという部分で観客はしらけてしまう。

 人を殺めた父親の逃亡理由も分からなければ、定年を明日に控えた宇崎竜童刑事のドラマもなし。ボケ老人犬塚弘も画面をウロウロしているだけ。

 天下の東映が映画にするのだから、地元の人が胸を張れる「ご当地映画」にしてもらいたいものだ・・・と、今回はかなりの酷評でした。

映画 「潜水服は蝶の夢を見る」

2008年06月17日 | 映画(サ行)
 一人称の映画だ。主人公は突然の病に倒れ、全身が麻痺する。唯一自分の意志で動かせるのは左眼だけだ。その瞼の瞬きで綴られた物語。

 ロックト・イン・シンドローム(閉じ込め症候群)という身動き不能状態を潜水服に例えている。脳の働きには以上が無いので、「記憶」と「想像力」がいかに人間の生命を支えるか、その記録となっている。

 病室で意識が戻るところから主人公の見たままの光景が映像となって映し出される。眩しかったり、ボケたり、目をつぶったりがそのまま映画の画面となる。
 右目も見えるが瞬きは出来ない。したがってそのままでは目が開きっぱなしとなるため縫い閉じようということになる。冒頭で、その針と糸による外科的処置が一人称により、すなわち瞼の内側から右目に見える光景として描かれる。

 コミュニケーションの唯一の手段が左眼の瞬きだ。医師が読み上げるアルファベット26文字の該当文字が発声された時に目を閉じて合図する。26文字の終わりの方だったらその間ずっと目を開けていないといけない。ただし読み方は頻出順なのでabc・・・の順ではない。

 それ以外ならモールス信号を瞬きで送ることも可能だろう。「ジョニーは戦場へ行った」では主人公が頭の動きによるモールス信号を思いつき、これが唯一のコミュニケーション手段となった。脳が正常であることは共通だが、ジョニーの場合は顔面がなかったのだから・・・。

映画 「神様のパズル」

2008年06月13日 | 映画(カ行)
 なかなか面白そうなテーマと配役、と期待して見に行った。

 科学的なテーマをどう見せてくれるのかも興味があった。その部分に関しては割に分かりやすく表現されていたように思う。

 双子兄弟のインドパートと日本パートも微妙にシンクロしてきて映画のテンションも上がるかに見えた。が、これは結局、二つの場所で起こる別々の物語にすぎなかった。

 後半、マッドサイエンティスト映画かと思わせる展開になってくるが、ちょっと意外なはずし方で肩透かしを食う。クライマックス(のはず)の嵐の中の出来事がリアリティに欠けていて、ファンタジーだからこれでいいというものでもないだろう。

 あらかじめあのシチュエーションを想定して家からギターを持って飛び出し、そこに相手がいるかどうかも分からないのに鉄塔の上から飛び降りて屋根を突き破り第9を弾こうと決めていたのか?
 だいたい大嵐の中で、びしょ濡れで米の形を保てない状況の寿司を汚い手で差し出されて、食べる気になるのか?

 それまで積み上げて生きたこの映画の良い部分がここで一気に破壊され、白けてしまった。

 これがビッグバンなのか?

映画 「僕の彼女はサイボーグ」

2008年06月11日 | 映画(ハ行)
 タイムマシンものだ。未来からやって来る女性サイボーグ。登場シーンは「ターミネーター」だ。

 定番のタイムパラドックスがストーリーの鍵となるが、変えてははいけない過去を、主人公の悔いの残らない形に変えまくるので、そこからパラレルな世界がいくつも分岐していく。

 加えてロボットは人間の心をもつことが出来るのか、という鉄腕アトム系の苦悩も味付けしてあり、この部分がどんでん返しと言うほどでもないが爽やかなサプライズになっている。

 ただ良く考えるとかなり複雑な構造になっており、そもそも未来の主人公は誰をオリジナルなモデルにしてサイボーグを作ったのかが分からなくなってくる。結局何役もこなした綾瀬はるかの、それぞれの役柄の関係が脚本段階でうまく説明しきれていないことに、その原因はありそうだ。

 やや過剰なてんこ盛り状態で、時代感覚は欠如、冗長な部分もあるが、それらの欠点を認めた上でデートムーヴィーとしては楽しめるだろう。地震シーンのリアルさは怖い。

映画 「シューテム・アップ」

2008年06月06日 | 映画(サ行)
 スタイリッシュにひたすら銃撃戦の美学を描きとおす作品だが、タッチは劇画調。

 ただ、主役級は豪華な布陣で、ストーリーも期待以上にしっかりした設定だ。

 ほとんど無敵の主人公に、赤ちゃんを守らせるという一つの制約事項を加えるとどうなるかという、シミュレーションゲームのようでもある。

 2003年公開のクリスチャン・ベイル主演「リベリオン」は、武道の型を銃撃スタイルに取り入れたガン・カタで近未来SFに仕立てたがこちらは少し趣が違う。

 大統領選に絡む銃規制の問題が事件の背後にある点などに現代的なリアルを感じさせるが、全体のトーンは劇画の非現実感が支配している。

 三つ巴のはずがいつのまにか二つの敵は一緒になっていたり、主人公の背景が今一はっきりしないなど、全体を86分にまとめた無理があるものの、ここは難しいことを言っていないで銃撃の爽快感を打ち出していこうという製作コンセプトは明快である。

 ただ、"Shoot'em Up"という原題をそのままカタカナ書きして理解できるほど日本人の英語力はないのではないだろうか?むしろ意味が分からないから良いのか?

映画 「やわらかい手」

2008年06月05日 | 映画(ヤ行)


 出だしはきわめてシリアス。全体のトーンとしてはハートフル・コメディ。こめられたテーマは初老の女性の自立と恋。

 舞台は風俗産業のエロティックショップだが、その部分はむしろコメディとして笑える。性のみが売り物の殺伐とした職場のはずなのに、ショップオーナーの人間性がジワッと出てきて映画全体の温かいトーンが作られる。

 マリアンヌ・フェイスフルは「あの胸にもう一度」での衝撃が永遠に胸に刻み付けられてしまった。その彼女の上を過ぎ去った時間が現在のたたずまいの中に感じられて好ましい。美しさは毅然としたその心のありようにあるのだ。

 ショップ・オーナー役をアラン・ドロンが演じるのは無理があるだろうなぁ。

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映画 「最高の人生の見つけ方」

2008年06月03日 | 映画(サ行)
 原題は「THE BUCKET LIST」で、劇中では「棺おけリスト」と訳されている。死ぬまでにやっておきたいことをメモしたリストを意味する。

 モーガン・フリーマンとジャック・ニコルソンが、実に生き生きと楽しそうに演じている。人間には必ず死が訪れるが、それが現実のものとして迫ってきた時、この世が限りなく美しく輝きだす、その視点で綴られた物語なので風景も、エピソードも温かく美しい。

 海外の名所旧跡を訪れるほんの何秒かのシーンのために俳優も役者もそこまで行って撮影している。(まさかCGではないよね。)夕暮れ時など光の効果が最大限に生かされる時間帯に撮影しているので観光パンフレットにあるクッキリハッキリの明るい映像とは異なる深みのある景観を見ることが出来る。

 モーガン・フリーマンの語りから始まったが、先に天に召されるのは・・・というトリックも楽しめる。

 破かれたり何度も危機に陥るリストがその都度蘇り、新たな項目が加えられたり、実現してチェックを入れられたりする過程が面白い。

 ロブ・ライナー監督の語り口が快く、ちょっといい話に仕上がっている。多くの人に見てもらいたい。

 BUCKETはバケツなのだが「棺おけ」の意味があるのかどうか?