日々、心のつぶやき☆

映画やフィギュアや好きな事を勝手につづっています。最近、弱気なのでダニエウ・アウヴェスのようなタフさが欲しいです。

「善き人のためのソナタ」

2010-05-19 19:32:56 | 映画・DVD・音楽・TV・本など



観たかった映画をやっとDVDにて鑑賞しました。
「善き人のためのソナタ」は2006年のドイツ映画です。
「ブラックブック」のセバスチャン・コッホが主人公と思いきや、ドイツの国家保安員役のウルリッヒ・ミューエがとにかく素晴らしかったです。
感動をまだ覚えつつも、レビューを書けるのだろうか・・・と考えています。


アカデミー賞外国語映画賞で話題になったこの作品。
舞台はベルリンの壁崩壊直前の東ドイツです。
およそ40年続いた共産主義体制の中で特にシュタージ(国家保安局)の実態が明らかになった問題作と言われていました。


おもなあらすじは・・・

シュタージ(国家保安省)の敏腕局員ヴィースラー(ウルリッヒ・ミューエ)は、劇作家のドライマン(セバスチャン・コッホ)と恋人で舞台女優のクリスタ(マルティナ・ゲデック)が反体制的であるという証拠をつかむよう命じられる。
ヴィースラーは盗聴器を通して彼らの監視を始めるが、やがて自由な思想を持つ彼らに次第に魅せられていく。
国家の監視体制が強固だったこの時代に、本当の正義とは?
そして本当の善とは?


とにかくこの国家保安員のヴィースラーは冒頭から存在感がすごくありました。
何にも動じない凄みや冷静な立ち振る舞いなど、見ているだけで怖さがあります。
監視や取り調べの仕方の講義をしている姿なんて、人間としての温かみなんて感じられない。
そのヴィースラーが上官の指示で、ある劇作家と恋人の住む部屋の盗聴を始め、この二人は全ての生活や会話を24時間体制で完璧に監視下に置かれるのです。


そして何か疑惑があると強制家宅捜査をされたり、執拗な取り調べをします。
こうして身分や待遇を下げたり、命を失った(自殺も含めて)そんな人があの時代にどれだけいたのだろうか?


ヴィースラーの気持ちはどうして変化したのでしょうか。
盗聴を通して原題でもある「向こう側の生き方」を知ったヴィースラー。
ドライマンが「この曲を本気で聴いた者は、悪人になれない」と言いながら弾いたピアノソナタを聴いて一筋の涙を流し・・・そしてドライマンの恋人クリスタに惹かれたところもあるでしょう。


隠していたタイプライターを当局に見つかる前にヴィースラーが持ち去って隠滅をはかったのも、彼にとっては自然の気持ちの流れだったのでしょうか。
それからクリスタの尋問をする時の彼の表情も見どころがいっぱいありました。

その後左遷され地下室の郵便係りになって単調な仕事を淡々とやるだけの生活。
そしてゴルバチョフ書記長が誕生して、数年後にベルリンの壁が崩壊。
時代が大きく変わった瞬間です。


社会体制が変わったドイツで、情報開示を受けるドライマンは「自分の知らない所で自分を守ってくれた存在」に気付くのです。
そして恋人クリスタを失って何も書けなくなっていた彼が、このHGWXX/7という暗号名の存在を知って探し出す。
そのシーンでは車の中から声をかけるのか・・・どうするかすごく気になりました。
結局ドライマンは「善き人のためのソナタ」という本を執筆し、見開きには暗号名の人間に対する感謝の言葉を献辞するのでした。


ヴィースラーが書店で「これは私のための本だ」と言うシーンはすごく良かったです。
どんな社会体制になっても自分の信念を持って、地を這うように生きる事ができるヴィースラーの人生。
どんな人間も善き人に変われるという事。
それほど昔ではないあの時期にこんな生き方しかない人々がいたと改めて思いました。


ヴィースラーの役のウルリッヒ・ミューエ自身も妻や親しい人に監視されていた事実があった事。
そして彼が惜しくも亡くなってしまった事も悲しい事実です。


今回の評価は・・・   星4つ   ☆☆☆☆
















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