ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

奄美の土俗ファンク!

2008-06-26 03:22:32 | 奄美の音楽


 ”ハブマンショー”by サーモン&ガーリック

 これは奄美の民謡をモトネタに、ファンクというのかヒップホップというのか、その辺の用語の使い方がよく分からないのだが、ともかくその辺の音楽のアイディアを持ち込み、かなりブラックなユーモアを味付けとして新展開させてみせたバンド、というかユニット(この辺も、何か特別な呼び名があるのやも知れず)の、今のところ唯一のCD作品。

 バンドの形としてはヴォーカルの二人がそれぞれ三線とパーカッションを担当し、それにベースとドラムが加わる、というもの。ともかく最初に聞いたときは、「あやや、奄美にここまで行っちゃっている連中がいるのか」と、すっかり嬉しくなったものだ。

 ドスドスと脈打つ低音に乗って、一見ラフなように聞こえるが実は結構計算の行き届いた三線がかき鳴らされ、ワイルドな歌声がファンキーに骨太にダンスミュージック化された奄美の民謡を唸りまくる。こいつは相当な聴きものである。もっとやれ、もっとやれと声援送りつつ握り拳を固めた次第。

 あちこちに泥絵の具を叩きつけるようにまき散らされるジョークのタグイは、強力に奄美文化の伝統臭を放っており、こいつも楽しい。
 ともかく各所で奄美のコトバが連発される、それだけでも非常に痛快な気分になるのであって、昔々、アフリカのミュージシャンがリンガラ語で会話する様子を収めたテープを聞かせてもらった事など思い出してしまった。ただ話されるだけで十分ファンキーな音楽として成立するコトバってのがあるんだよ。

 冒頭、奄美で伝統的に挨拶代わりにうたわれる”あさばな節”が取り上げられていたので「なんと律儀な連中」と可笑しくなってしまったのだが、これもまた、彼ら一流のジョークなのかも。
 ライブではかなりの人気者となっているみたいだが、当方はこのCDが初対面。しかもこのCDにしてからが奄美限定発売なのだそうで、あんまり全国展開する気がない連中なのか?もともとは知り合いの結婚式のお座興として始まったバンドということで、”地元の仲間内での演奏”にこだわりでもあるのだろうか。

 もっとも、”内地”の音楽産業に下手に手を出されて音楽を変節、劣化させられるよりは、そのような流れに抗するパワーが確立されるまで、”奄美ローカル”にこだわるのも得策といえるだろう。
 ともあれ、これは嬉しい連中がいたもので、次々にあとに続くものが出てきたらと思うと、なんかゾクゾクしてしまうのであった。