ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

Seun に乗りそこなった夜

2011-11-10 05:06:59 | アフリカ


 ”From Africa With Fury:Rise”by Seun Kuti & Egypt80

 ううん。困っちゃったなあ。と、さっきから頭を抱えている私なのであります。目の前にあるのは、ナイジェリアのアフロ・ビートの新星、Seun Kuti の新作、”From Africa With Fury:Rise”なるCD。
 これはもう説明の必要もないでしょう、ワールド・ミュージック好きの間では各方面からすでに、今年のベスト1候補とか絶賛の言葉を集めている盤であります。当然私も、大いなる期待を抱きつつCDを手に入れ、聴いてみたのでありますが・・・

 ありゃりゃ?なんか乗れないんですね、私、この盤に。あまりに整然たる音過ぎる、とでも言えばいいのかなあ、こんな音だっけ、アフロ・ビートって?と首を傾げれども、何しろ私はかの国の音楽と言えばフジとかアパラとか、イスラム系土俗派ばかり聴いている者ですからね。考えてみりゃ、アフロ・ビートの盤って、最初から最後まできちんと聴いたのって、これが初めてなのかもしれない。
 そんな私にとってこの盤、そりゃ立派な音楽であることは分かるんですが。が、あまりに全体にきちんとした出来上がり過ぎで、心に引っかかってくるものがないんですねえ、いや、私にとっては、ですよ。

 たとえば、ここで聞かれるホーンセクション。非常に流麗に流れて行きますね。各楽器のピッチなんかもきっちり合っている。あっていて当たり前じゃないかって?いやあ、昔のソウルミュージックなんかお好きな向きには分かっていただけると思うんですが、ソウル歌手のアーシーなシャウトの後ろで鳴り響く、微妙にピッチの狂ったホーンセクション、あれが味があるのよなあ、あれが魂に来るの。狂っていてもいい、というんじゃないですよ、狂っているほうがいいの。そりゃ、程度問題だけどさ。

 そのタグイの”魅惑の乱調”は、私がずっと面白がっている70年代アフリカのローカル・ポップス発掘シリーズ、”アナログアフリカ”でも、各・多くは無名のバンドの演奏に大々的に聴かれるものです。危ういところに外れて行く音の、あのファンキーなカッコ好さよ!
 それに比べると今回の Seun Kutiの盤、なんかあまりにもきれいに流れ過ぎて破綻がなさ過ぎて、どうも、もう一つねえ・・・安心して聴いていられるけど、こちらの予想を超えるものも特に感じられず。
 
 これがアフロビートと言うものである、と言うのなら、すみません、私は先に述べましたようにその辺の音、ろくに聴いていないんで馴染みがなくて見当違いを言っているのかもしれません、お許しを。
 と言う次第で、盛り上がっている皆さんには悪いけど、私、この盤からは一抜けさせてもらいます。奏者が演奏に込めた思いの熱さも聴き取ったつもりでいるんだが・・・
 あ、未聴の方、上に書きましたのはあくまで少数意見(多分)ですんで、出来れば現物にあたってみて、あなたの耳で判断していただきたく思う所存でございます。




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