”remake Romantic 1”by Soe Young Eun
このジャケ写員、電車の乗降口なのだろうか。駅の向こうに広がる情景を眺める彼女は、何を想っているのか。この電車で、どこかへ行くところなのか、それとも彼女は、元いた場所に帰るところなのか。
彼女に関しては、確か2年ほど前、出たばかりのアルバム、”Rainbow”をここで取り上げたことがある。You-tubeのコメント欄に「美人じゃないけど歌はうまいね」とか書かれちゃった彼女が、人の良さそうな笑顔で粉雪舞う空を見上げ、クリスマス近い街角の叙景を歌っている、そのアルバムが大好きだったから。(ちなみに、私は彼女を可愛いと思っているのだが)
という訳で、韓国の実力派ポップス歌手、ソ・ヨンウンである。元々はジャズ歌手であり、その後、テレビ番組のBGM用の歌手を経てポップスの世界に足を踏み入れた。彼女の韓国ポップス界における立場を私は、日本で言えば岩崎宏美みたいな感じかと推察しているのだが。
これは、そんな彼女が2004年に世に問うた懐メロ集、”remake Romantic”の第一集である。韓国で過去にヒットした歌の中からセレクトしたものをカバーした、とのことだが、それらの歌のどのあたりに韓国の人々が特別の感慨を持っているのか、もちろん当方もよくわからず。ただ、彼女の達者な歌声の向こうに浮かぶ感傷の蜃気楼を眺めるのみ。
一体自分はどの時代あたりの韓国の街をさまよっているのだろう。どの曲も過度に思い入れず、軽い仕上がりが心地好い。特にボサノバ・アレンジのものが出来が良く、このあたりにソ・ヨンウンの資質があるようだ。
などと気持ちよくなっていると、終わり近く、急に聴き知った曲が飛び出してきて、しかもその曲が曲なのでドギマギする。それは「離別」というタイトルで我が国でも知られている曲であり、このタイトルに「イビョル」とカナが振られたりする。「いつかは思い出すでしょ、優しい人だもの~♪」とかいう日本語詞がつき、サラリーマンのオヤジたちが演歌の扱いでカラオケで歌っているのをご記憶の向きも多いだろう。
そういや、あの頃は韓国の幻想と言えばオヤジたちの専売特許ではなかったか。韓流などは思いもよらず。
ソ・ヨンウンのヴァージョンは演歌よりは賛美歌に近い仕上がりとなっている。で、次の曲は本物のクリスマス・ソングで締めとなり。なんか彼女のアルバムって、どれもどこかにクリスマスの気配が秘められているって気がしないか。などと思ってしまうのは、ソ・ヨンウンのポヤッとしたキャラクターに引きずられているのか。
ともあれ。季節外れのクリスマス幻想のうちにも、時はさらに過ぎて行く。