本日のガレージスタジオブログで、「完全なジャケ買い」の話を
店長が書いていましたが、そういう意味では(完全さにおいては)、
決して負けていないこちらの表紙。
この絵だったら、たとえ作者が誰であったとしても、読みたくなりますよね。
おまけに題名は『最果てアーケード』
どこかの遠くのまちの、アーケード。そうお店屋さんってことです。
これだけ惹かれる理由が揃っていて、そして肝心の作者は小川洋子さん。
どきどきの読書タイムでした。
恐ろしいほどひそやかで、時間が流れているのか、止まっているのか、
わからない空間に、そのアーケードは存在し、映画館の火事で父を失い、
ともに図書室で時間を過ごした親友のRちゃんにあっけなく死なれてしまった
「わたし」は、愛犬とともに、アーケード内の店主に頼まれて、大切な「商品」を
そっと胸に抱き、それを必要としている人の元へ今日も届けます‥。
持ち主がいなくなった服から丁寧にはずされたレースを売る店。
剥製の動物の眼を作る義眼屋さん。
紙ものを扱うお店には、使用済み絵葉書が、勲章屋さんには、
新品だけでなく、むろんどなたかが貰い受けた勲章がケースに並び、
繁盛しているというドーナツ屋さんでさえ、なぜかざわめきは感じられず、
子供だった愛犬「べべ」だけが、おはなしの最後には老犬になっていることで
かろうじて時が流れていたことを、読み手は知ることができるのです。
広いセカイのどこかにはこういうアーケードがあるかもしれない、と
思いを巡らせると同時に、そっとふたを開けてみた手のひらの中の箱に、
なんだやっぱりこれが入っていたのだ、と、懐かしいものを発見したときの
安堵感にも似たためいきが、本を閉じたあとにそっと口から洩れました。
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