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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

結ぶ庭と甘夏

2020-01-11 12:38:30 | 好きな本

昨日1月10日より、日本橋小舟町にあるヒナタノオトのサイトが
リニューアルされました。 手しごとを結ぶ庭

オウンドメディアのスタイル なんだそうです。

しくみやらその他色々うまく説明できませんが(笑)、ブログや展示の紹介に
とどまらない、「素敵感」がびしびし伝わってきます。
なにしろ、クリックしてサイトを開くたびに、大野八生さんの植物画が
たびたび変わって登場するのですよ、それだけでもわくわくしますよね。


長年おともだちの方は、もう何度も書いているので、ご存じだと思いますが、
15年くらい(!?)前に、私がブログというものを知り、ぜひともやってみたい
と思ったきっかけは、ヒナタノオトの稲垣早苗さんがブログを始めていたから
なんです。

以来、ブログによって、私を取り巻くセカイは大きく広がり、人生そのものが
広がったといっても、言い過ぎではないくらいの出会いや出来事に恵まれました。

そのあともツイッターやフェイスブックやインスタや、ノートなど、
どんどん増えていき、私自身も愛着や興味を持つものもありますし、なんとなく
新しい年に新しいこと初めてみたい気もしていますが。
でも、もうしばらくこのブログにしがみついてみようと思っています。

そして今年の目標は、できるだけ多くのことを(想ったこと感じたこと)を
忘れないうちに残しておく、です。




年末から年明けにかけて読んでいたこの本のことも、だから忘れないうちに。



図書館の棚で、偶然見かけて借りたのですが、長田さんの最後の
エッセー集でした。

主に(タイトル通り)果実‥くだもののことを書いたエッセーですが、
なかには「落花生」や、「もやし」や、「納豆」なんかもあって(笑)。

そのものに対する長田さんご自身の思い出や、思い入れだったり、
むかし昔に詠まれた句だったり、アプローチは様々ですが、その選ばれた
言葉に、はっとさせられ通しでした。

たとえば、「トマト」の出だし。

ぜんぶ好きになった。何の留保もなく。たった一度の、幸運な偶然のおかげで。
相手はトマトである。



「メイプルシロップ」の結びもよかった。

小さな壜のなかに、明るい大きな森がある。それがわたしのメイプルシロップ。



そうして、「甘夏」は、(夏みかんからの連想もあって)思い出した友のために。

大きな甘夏を掌に持って歩いて、結局そのまま持って帰った日。
甘夏の切ないような味の清明な秘密を知った。明るい孤独の味なのだ。
人が一人でいることのできる孤独な場所と孤独な時間が、甘夏のような
果物にとっては、第一になくてはならないものなのである。
甘夏をまるっぽのまま皮を剥いて、一房一房食べる。ただそれだけのことが、
実は一人でしかできないことだからだ。余言なく、一人、黙々と、人の視線に
妨げられず、無我に口にできてこその、きれいな味。孤独というのは
本当は明るいのだ。甘夏を欲するとき、人は甘夏のくれる明るい孤独を
欲している。


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