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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

あいださんのおはなし

2012-01-13 15:37:24 | 好きなもの・おでかけ

新学期が始まった今週の火曜日、相田みつをさんのご長男で、
相田みつを美術館の館長でもある、相田一人さんのお話を聴く機会がありました。

私にとっての、相田作品の印象というか、知っていたことといえば‥
母の実家の「川越のおじさんの家」のカレンダーが、相田みつを作品だったと
いうことです。

何年前からそうだったのかは思い出せませんが、そこに書かれた文字と言葉は
私の中では、「絵手紙」とイコールで結ばれているような感じがありました。
震災後ににわかに有名になった「うばい合えば~」の他にも、いくつか、どこかで
読んだことがある詩も、ありましたが、作品を知る努力をするほど興味の比重は高くなく、
そもそも相田さんが、書家であると同時に詩人なのだと、特に認識もしていなかった
ように思います。



講演の冒頭で、ご長男の一人さんがユーモアを交えながら、まずご自分の
自己紹介を始めたとき、あれ? と思いました。
一人さんと私の夫、1歳違いだ‥。

いきなり話し手の一人さんと、語られる相田みつをさんがぐっと身近に感じられ‥
その後の、みつをさんの生い立ちの話に、当時の日本の情勢が重なっていくのを
聴きながら、ほぼ同じ時代を、夫の父や私の父も生きてきたというのに、一度も
そのことに想いを馳せたことがない自分に気づかされました。
(相田みつをさんは大正13年生まれで、義父も父も昭和5年生まれですが‥)

自分の父となる前の父、学生だった父、その頃の家族の様子、通っていた
学校のこと、まわりの風景‥なにひとつ想像したこともありません。

一人氏の話が進んでいっても、私はそんなことを漠然と考えていました。


話の終盤、相田氏が会場に向かって質問をなげかけました。
「皆さんは、父のこの文字をどう思いますか?」

美術館へ来館された方の感想にも、文字についてのものが多いとのことで‥
中には、思いついた言葉を、さらさらっと、おもしろい字で書いている、と
思っている人もいる、と話してくださいました。

リンクした美術館のサイトにも写真が載っていますが、相田みつをさんは
1枚の作品を仕上げるために、それはそれはたくさんの練習を積み重ね、
「その詩」に合う「文字」を模索されたそうです。
その一日に書いた(練習した)半紙だけで、一人さんが子どもの頃、お風呂が
沸かせたというから驚きです。

ほんとうのオリジナリティというものは、そういう努力の末に生み出されるのだと
いうことを、半紙に半ば埋もれているような相田みつをさんが、教えてくれた
思いです。

もうひとつ、この日私が驚いたのは、書家を目指し、書家としてやっていこうと
決めたみつを氏は、どんなに貧しくても、他の仕事をいっさいしなかったということ‥
妻がいて、子どももいて‥日々のことで足らないおもいを家族にさせていても
毎日毎日、書の練習をして一日を送れる、その信念の強さを、私は自分には
ないものだと感じました。

食べていくために、父が考えたのは、足利市内のお菓子屋さんをまわって、
包装紙を作らせてくれないかと頼みこむことだった、と一人氏は教えてくれました。
今でも、ここはみつを氏製作のしおりと包装紙を使っているとのことです。


興味が持てないことを無理に知ろうとしたり、「学習」ばかりがいいとは
思いませんが、ふとしたことがきっかけで、今まで何も知らないでいた人のことが
わかるのは、とても清々しい気持ちです。と、同時に、知らないことの多い自分を
また知ることにもなりました。





コメント
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