25日の日曜日、埼玉県立近代美術館へ行ってきました。
5月16日まで開催されている、山本容子さんの展覧会と、関連催しの
アーティスト・トークに応募して、当たったからです。
(rの分と2枚申し込んで、当たったのは彼女の名が記されている方でしたが
快く譲っていただきました・笑)
美術館の2階にある講堂で100名くらいの方が集まっていたでしょうか。
前方の舞台には椅子が一脚とスクリーンが用意されていました。
私は、右側の通路に近いところに座っていたのですが、「みなさま、こんにちは~」の
声に後ろを軽く振りかえると、颯爽と歩を進める山本容子さんが居ました。
きれいな方だと知ってはいましたが、姿勢がすごくよくて、まるで女優さんみたい、と
思いました。
今回の展覧会。
私は、タイトルからして「ふしぎの国のアリス」関係が中心なのだろう、と
よく調べもしないで思っていたのですが、実際はもっと広く深いもので‥
今までの山本容子さんの仕事から7冊の本をピックアップして、展は構成されていて、
アーティスト・トークも、それに添って、進められていったのでした。
7冊の本とはー
『PRINTS』
『静物画』
『あのひとが来て』
『Jazzing』
『過ぎゆくもの』
『ふしぎの国のアリス』
『himegimi@heian』
この7冊は、山本さんの仕事の履歴にもちろんなっているし、作品の変遷を
みるうえでも、とても興味深いものでした。
銅版画家の山本容子さん、というと、まっさきに私がイメージするのは、
『あのひとが来て』の中の作品や、アリスや、ルーカスの、銅版画+色付の
ものだったので、1975年のデビュー当時の作品が載っている『PRINTS』や
池澤夏樹さんの新聞小説の挿絵として作られた『静物画』は、特に新鮮に
感じられました。
モノをただ写していくことから始まり、そのモノに、やがて物語が生まれ始めた
こととか、作品につけるタイトルが大事と感じ、中には、先にタイトルを決めてから
作品を作ったものもあるとか‥
「旅」がすべての製作活動の根本にあるとか、実際にその場所に行ってみなければ
(行ってみたものでなければ)わからないこともあるとか‥
お話を聴いているうちに、私の底にある何かが、ゆっくりとけれど確実に、
揺さぶられていくようでした。
講演後に、もちろん展示も観たのですが‥新聞小説の挿絵となった元の
エッチング、とてもよかったです。
連載が始まる前に、池澤さんより、顔を描かないで欲しいという希望も
あったことから、ひとりの人間が、一生の間で、使うものや見に付けるもの
食べるもの、目にするもの、耳にするものなどなどを、一つづつ載せていこうと
山本さんは、決めたそうで‥展示では、それがジャンル別になって、
日本家屋を模した、障子やふすまや箪笥の中で見ることができるように
設えてありました。
たとえば、「匂い」というところでは、ふすまに、風邪薬やら、ナフタリンやら
クレヨンやら牛乳瓶のフタなんかの小さなエッチングが貼ってあるのです。
「触る」は障子の上に、ガラスやスイカの種、綿花、王冠、犬の歯なんかが
ありました。
この、何が、どんなところへ飾られているかの分け方にも、とても興味深い
ものがありますよね?
(ちなみに、私が一番ときめいたのは、「働く」というところの、桐ダンスの
引き出しの中にあった、待ち針や、糸や、栓抜きや、鉛筆‥です)
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山本容子さんのことがもっともっと知りたくなり、豪快な、ペックの本に出てくるような、
おばあちゃんになる前に、山本さんのような人になりたいと、強く思いました・笑
(ちょうど私の10歳年上なのです)