[1月3日13時30分 天候:晴 千葉県成田市某所 成田国際空港付近]
鬼の男「ぐわあっ!」
鬼の男は突然、顔を押さえて苦しみ出した。
その手の中にある顔、目があるはずの2つの穴には目玉は無い。
目玉が入っているはずの2つの穴からは、ドバッと血が噴き出した。
鬼の男「ぎゃあっ!……あ、あの人間の女……ブッ殺してやる……!よくも俺の目玉を……!」
膝立ち状態になって悶え苦しむが、吹き出していた血は水道の蛇口を締めるかのように止まる。
そして、窪みとなっている所にグググと新しい目玉が生えた。
鬼の男「ふーっ!ふーっ!ふーっ!……くっ……!」
目玉が新しく生えても、すぐには視力は回復しない。
冬の日差しは人間にとっては弱く暖かいものであるが、鬼の男にとっては、夏の直射日光のようであった。
暗い所から、いきなり夏の直射日光が目の中に飛び込んできた感じ。
鬼の男「こ、こうなったら、あそこにいる人間共を全員ブッ殺して……」
鬼の女「もうやめようよ、お兄ちゃん!」
鬼の男「あぁ!?……あー、殺鬼(さつき)か。うるせーよ、邪魔すんじゃねぇ」
鬼の女「あのね、お兄ちゃんが探してる女の子、私が乗った電車の中にいたよ」
鬼の男「なにっ!?男じゃなかったのか!?」
鬼の女「女の子だよ。女の子の匂いがしたからね、間違いない」
鬼の女は、生理中の時に女が放つ匂いを感じ取っていた。
それは人間の女も同じであろうが、鬼ならもっと強い。
例えリサは人間を食べていないとはいえ、鬼型のBOWである以上、独特の強い匂いは誤魔化せなかった。
鬼の男「そいつは今、どこにいる?」
鬼の女「空港の中。何しに行ったのかは知らないよ。ただ、空港って飛行機に乗る所だからね」
鬼の男「何でついてねぇんだよ!?」
鬼の女「何でアタシがついてなきゃいけないの!お兄ちゃんが惚れた女の子でしょ!?」
鬼の男「ちっ……」
鬼の女「ボヤボヤしてると、飛行機に乗っちゃうよ?」
鬼の男「待て。本当にあいつは、これから飛行機に乗るつもりなのか?」
鬼の女「そんなの知らないよ」
鬼の男「ちっ……。じゃあさ、あいつを探して、何しに行ったのか調べて来てくれよ」
鬼の女は大きく溜め息をついた。
目の前の地面がカチカチに凍ってしまう。
鬼の女「私達、こんなところでボヤボヤしてるヒマは無いんだよ?お兄ちゃんが色々やってくれたせいで……」
鬼の男「分かった分かった。あいつのことが何とかなったら、山に帰るからよ。な?頼むよ」
鬼の女「……今回だけだからね。私が帰ってくるまで、勝手なことしちゃダメだよ?」
鬼の男「分かってるって」
鬼の女はもう1度溜め息をつくと、空港ターミナルの方に向かって行った。
[同日14時55分 天候:晴 千葉県成田市三里塚字御料牧場 成田国際空港第1ターミナル]
絵恋の乗る飛行機の1時間前になった。
国内線であるから、遅くでも30分前にチェックインすればいいのだが、いかんせんUターンラッシュで混雑している空港だ。
見ると保安検査場も混雑しているし、早めに行った方が良いかもしれない。
ということで、1時間前にはチェックインしてもらうことにした。
絵恋にとっては、とても名残惜しいことであろうが。
絵恋「うう……帰りたくないよぉ……」
リサ「3年生になったら、修学旅行でそっちに行くから」
絵恋「ほんと……?」
リサ「うんうん」
東京中央学園中等部における国内旅行は、関西方面である。
が、コロナ禍で中止になってしまった。
そこで代わりに、高等部1年生の時に代替修学旅行として、南会津にスキー旅行に行ったわけであるが……。
この分だと、今年中にはコロナも終息しそうだし、高等部の修学旅行は予定通り行われるだろう。
尚、東京中央学園高等部だと、海外旅行もあるのだが、リサにはパスポートは発行されない。
その為、国内一択になってしまう。
国内における飛行機旅行は、年替わりで北海道と沖縄となっており、リサ達の年は沖縄になっている。
尚、2泊3日である。
絵恋「高校の修学旅行ってことは、自由行動もあるもんね!私が案内してあげるからね!」
愛原「案内してあげるって、修学旅行は平日だろう?絵恋さんは絵恋さんで学校じゃないのか?」
絵恋「愛原先生。一般的な公立高校とは違うのですよ」
愛原「えっ、そうなの?どこが?」
絵恋「東京中央学園の修学旅行は、姉妹校との交流会も兼ねているのです。行先が北海道の場合は、札幌の北海道中央学園との交流会があるんですよ」
愛原「今回は沖縄中央学園ってことか」
絵恋「そうです。そして、私達は私達で、沖縄中央学園は東京中央学園との交流で修学旅行に行くんです」
愛原「ふーん……」
高橋「何か、いかにも後付け設定っスね」
愛原「まあまあ。それより、急がないと。保安検査場の列、伸びて来たぞ?」
絵恋「そうでした」
絵恋は自動チェックイン機でチェックインをすると、保安検査場に向かった。
見送りのリサ達はここでお別れとなる。
リサ「それじゃ、私はこれで」
絵恋「リサさん、ありがとう。先生方も、ありがとうございました」
愛原「いい思い出になったら、幸いだよ」
パール「御嬢様、どうかお気をつけて」
高橋「飛行機墜ちねーといいな?w」
愛原「こーら」
愛原は悪い冗談を言う高橋を窘めた。
絵恋が保安検査場に入り、手荷物検査を終えて、出発ロビーの向こう側にいなくなるまで、リサは見送った。
国際線ではないので、出国手続きが無い分、そこは簡素なものか。
愛原「それじゃ、引き上げるか」
高橋「何で帰るんスか?」
愛原「そうだな……。京成にするか、それともJRにするか……」
考える愛原の後ろを歩きながら、リサが成田空港駅の方に足を進めた時だった。
中年女性「きゃーっ!引ったくりよ!誰か止めてーっ!!」
愛原「ええっ!?」
その時、地面に座り込んだ中年女性と、バッグを抱えて走り去って行く、ジャンパーにニット帽の男の姿が映った。
愛原「マジかよ、こんな空港で!?」
Uターンラッシュで警備が強化されているはずだが、テロ対策はしっかりしていたとしても、引ったくりまでは盲点だったか。
ひったくり犯「へっ、ババァ!こいつに札束入れてるのは確認済みでいっ!ありたがたく頂くぜ!」
リサは目を丸くしながら愛原に言った。
リサ「どうする?追う?」
愛原「そ、そうだな。BOWってバレないようにできるか?」
リサ「任せて!」
リサは先頭を切ってダッシュした。
高橋「速ェ!」
愛原「俺達も追うぞ!」
この時、愛原は鬼の中にはすばしっこい足を持つ者がいて、上野凛はそれを利用して陸上部で活躍していることを思い出したという。
鬼の男「ぐわあっ!」
鬼の男は突然、顔を押さえて苦しみ出した。
その手の中にある顔、目があるはずの2つの穴には目玉は無い。
目玉が入っているはずの2つの穴からは、ドバッと血が噴き出した。
鬼の男「ぎゃあっ!……あ、あの人間の女……ブッ殺してやる……!よくも俺の目玉を……!」
膝立ち状態になって悶え苦しむが、吹き出していた血は水道の蛇口を締めるかのように止まる。
そして、窪みとなっている所にグググと新しい目玉が生えた。
鬼の男「ふーっ!ふーっ!ふーっ!……くっ……!」
目玉が新しく生えても、すぐには視力は回復しない。
冬の日差しは人間にとっては弱く暖かいものであるが、鬼の男にとっては、夏の直射日光のようであった。
暗い所から、いきなり夏の直射日光が目の中に飛び込んできた感じ。
鬼の男「こ、こうなったら、あそこにいる人間共を全員ブッ殺して……」
鬼の女「もうやめようよ、お兄ちゃん!」
鬼の男「あぁ!?……あー、殺鬼(さつき)か。うるせーよ、邪魔すんじゃねぇ」
鬼の女「あのね、お兄ちゃんが探してる女の子、私が乗った電車の中にいたよ」
鬼の男「なにっ!?男じゃなかったのか!?」
鬼の女「女の子だよ。女の子の匂いがしたからね、間違いない」
鬼の女は、生理中の時に女が放つ匂いを感じ取っていた。
それは人間の女も同じであろうが、鬼ならもっと強い。
例えリサは人間を食べていないとはいえ、鬼型のBOWである以上、独特の強い匂いは誤魔化せなかった。
鬼の男「そいつは今、どこにいる?」
鬼の女「空港の中。何しに行ったのかは知らないよ。ただ、空港って飛行機に乗る所だからね」
鬼の男「何でついてねぇんだよ!?」
鬼の女「何でアタシがついてなきゃいけないの!お兄ちゃんが惚れた女の子でしょ!?」
鬼の男「ちっ……」
鬼の女「ボヤボヤしてると、飛行機に乗っちゃうよ?」
鬼の男「待て。本当にあいつは、これから飛行機に乗るつもりなのか?」
鬼の女「そんなの知らないよ」
鬼の男「ちっ……。じゃあさ、あいつを探して、何しに行ったのか調べて来てくれよ」
鬼の女は大きく溜め息をついた。
目の前の地面がカチカチに凍ってしまう。
鬼の女「私達、こんなところでボヤボヤしてるヒマは無いんだよ?お兄ちゃんが色々やってくれたせいで……」
鬼の男「分かった分かった。あいつのことが何とかなったら、山に帰るからよ。な?頼むよ」
鬼の女「……今回だけだからね。私が帰ってくるまで、勝手なことしちゃダメだよ?」
鬼の男「分かってるって」
鬼の女はもう1度溜め息をつくと、空港ターミナルの方に向かって行った。
[同日14時55分 天候:晴 千葉県成田市三里塚字御料牧場 成田国際空港第1ターミナル]
絵恋の乗る飛行機の1時間前になった。
国内線であるから、遅くでも30分前にチェックインすればいいのだが、いかんせんUターンラッシュで混雑している空港だ。
見ると保安検査場も混雑しているし、早めに行った方が良いかもしれない。
ということで、1時間前にはチェックインしてもらうことにした。
絵恋にとっては、とても名残惜しいことであろうが。
絵恋「うう……帰りたくないよぉ……」
リサ「3年生になったら、修学旅行でそっちに行くから」
絵恋「ほんと……?」
リサ「うんうん」
東京中央学園中等部における国内旅行は、関西方面である。
が、コロナ禍で中止になってしまった。
そこで代わりに、高等部1年生の時に代替修学旅行として、南会津にスキー旅行に行ったわけであるが……。
この分だと、今年中にはコロナも終息しそうだし、高等部の修学旅行は予定通り行われるだろう。
尚、東京中央学園高等部だと、海外旅行もあるのだが、リサにはパスポートは発行されない。
その為、国内一択になってしまう。
国内における飛行機旅行は、年替わりで北海道と沖縄となっており、リサ達の年は沖縄になっている。
尚、2泊3日である。
絵恋「高校の修学旅行ってことは、自由行動もあるもんね!私が案内してあげるからね!」
愛原「案内してあげるって、修学旅行は平日だろう?絵恋さんは絵恋さんで学校じゃないのか?」
絵恋「愛原先生。一般的な公立高校とは違うのですよ」
愛原「えっ、そうなの?どこが?」
絵恋「東京中央学園の修学旅行は、姉妹校との交流会も兼ねているのです。行先が北海道の場合は、札幌の北海道中央学園との交流会があるんですよ」
愛原「今回は沖縄中央学園ってことか」
絵恋「そうです。そして、私達は私達で、沖縄中央学園は東京中央学園との交流で修学旅行に行くんです」
愛原「ふーん……」
高橋「何か、いかにも後付け設定っスね」
愛原「まあまあ。それより、急がないと。保安検査場の列、伸びて来たぞ?」
絵恋「そうでした」
絵恋は自動チェックイン機でチェックインをすると、保安検査場に向かった。
見送りのリサ達はここでお別れとなる。
リサ「それじゃ、私はこれで」
絵恋「リサさん、ありがとう。先生方も、ありがとうございました」
愛原「いい思い出になったら、幸いだよ」
パール「御嬢様、どうかお気をつけて」
高橋「飛行機墜ちねーといいな?w」
愛原「こーら」
愛原は悪い冗談を言う高橋を窘めた。
絵恋が保安検査場に入り、手荷物検査を終えて、出発ロビーの向こう側にいなくなるまで、リサは見送った。
国際線ではないので、出国手続きが無い分、そこは簡素なものか。
愛原「それじゃ、引き上げるか」
高橋「何で帰るんスか?」
愛原「そうだな……。京成にするか、それともJRにするか……」
考える愛原の後ろを歩きながら、リサが成田空港駅の方に足を進めた時だった。
中年女性「きゃーっ!引ったくりよ!誰か止めてーっ!!」
愛原「ええっ!?」
その時、地面に座り込んだ中年女性と、バッグを抱えて走り去って行く、ジャンパーにニット帽の男の姿が映った。
愛原「マジかよ、こんな空港で!?」
Uターンラッシュで警備が強化されているはずだが、テロ対策はしっかりしていたとしても、引ったくりまでは盲点だったか。
ひったくり犯「へっ、ババァ!こいつに札束入れてるのは確認済みでいっ!ありたがたく頂くぜ!」
リサは目を丸くしながら愛原に言った。
リサ「どうする?追う?」
愛原「そ、そうだな。BOWってバレないようにできるか?」
リサ「任せて!」
リサは先頭を切ってダッシュした。
高橋「速ェ!」
愛原「俺達も追うぞ!」
この時、愛原は鬼の中にはすばしっこい足を持つ者がいて、上野凛はそれを利用して陸上部で活躍していることを思い出したという。
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