報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「夜の鉄路を往く」

2016-03-26 16:34:18 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月11日22:50.天候:晴 JR大宮駅・埼京線ホーム 稲生勇太、マリアンナ・ベルフェ・スカーレット、イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

〔本日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。22番線に停車中の電車は、22時53分発、各駅停車、大崎行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕

 新幹線から在来線へと乗り換えた魔道師達は、停車中の上り電車の中にいた。
 大宮始発の上り電車は空いていて、3人とも先頭車の緑色の座席に座った。

〔この電車は埼京線、各駅停車、大崎行きです〕

「これで新宿まで行って、そこから“ムーンライト信州”に乗り換えます。その電車は、今日しか運転していないんですよ」
「なるほど。それで泊まらずに帰ろうって話ね。なるほど」
 イリーナは目を細めてうんうんと頷いたが、
「もう既に何回か乗っていると思うが……」
 と、マリアは言い難そうに言った。
「す、すいません。僕の100%趣味で……!」
「いいよいいよ。経費は安いし。そうそう滅多に乗れるものじゃない」
 と、イリーナは大きく頷いた。
「まあ、そうですね」
 マリアも同調する。
「師匠なら熟睡できますよ」
「じゃ、ここでも熟睡するから着いたら起こしてね」
「わーっ、先生!待ってください!」
 イリーナが“熟睡”したら、1日は起きないのを直弟子達は知っている。
「“車内異常発生の為”、明日は1日運休になるかもねw」
「それは困ります!作者が

 そうこうしているうちに発車時間が迫り、発車メロディがホームに鳴り響いた。

〔22番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車がドアを閉めて走り出す。
 この時点では、まだ車内は空いていた。
 確かに、東京駅からの中央線より良いかもしれない。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、各駅停車、大崎行きです。次は北与野、北与野。お出口は、右側に変わります〕

 下り副線ホームに止まっていた電車はポイントを2回渡り、上り本線に出た。
 そして、地下ホームから一気に地上へと駆け上がっていった。

[同日22:55.天候:晴 JR大宮駅南側上空 エレーナ・マーロン]

「すっかり遅くなっちゃったなぁ……」
 エレーナはホウキに跨り、大宮駅の上空を飛んでいた。
 別に大宮駅に用事があったわけではない。
 ここよりもっと北の町に届け物の依頼があって、そこに向かっていたのだった。
 魔女にしては使い魔の黒猫にGPSを背負わせている辺り、どことなく現実的に見える。
「明日はホテルで仕事だし、少し飛ばすか」
 江東区の元はドヤ街だった町にある安いビジネスホテル。
 エレーナはそこで住み込みの従業員として働いている。
 最近は外国人客が増えたため、マルチリンガルのエレーナは重宝されていた。
「ん?」
 その時、自分の前を別の魔女が飛んでいるのが見えた。
 飛んでいるというか、ホバリングしている感じ。
 実はホウキでホバリングするのは案外難しい。
 それができるのだから、そこそこ熟練した魔女なのだろう。
「こんばんはー」
 エレーナは特段何も警戒することなく、暗闇の中を飛ぶ魔女に近づいた。
 するとその魔女は、「ハッ!」として、エレーナに見つかったのがマズいとばかりに慌てて飛び去った。
「?」
 エレーナは首を傾げた。
 眼下を1台の通勤電車が走り抜けて行く。
 GPSに反応にあり。
「おっ、奇遇だね。あの埼京線に、イリーナ先生御一行様が乗っているわけか。確か埼玉は……稲生の実家があるって言ったな。帰省旅行にでも付き合ってたのかな」
 本当は違うのだが、エレーナの想像自体は不自然ではない。
 不自然なのは……。
(で、さっきのヤツ、そのイリーナ先生達に何か用でもあったんだろうか?)
 エレーナみたいに、偶然通り掛かっただけなら、何もそんなに慌てて逃げ出す必要もあるまい。
 エレーナは無二の師匠、ポーリン・ルシフェ・エルミラの敵には自分も敵視し、かつてはマリアや稲生が敵だった。
 ポーリンがイリーナと仲違いをしているように見えたからだ。
 だが、実際は『ケンカするほど仲が良かった』だけの話で、それからはマリアや稲生とも打ち解けている。
(何かしようとしていたところ、逃げたか……。ヤバいことでもしようと思った?)

[同日23:30.天候:晴 JR新宿駅 稲生、マリア、イリーナ]

 稲生達を乗せた埼京線電車は、池袋駅を出て貨物線を走行している。
 湘南新宿ラインとか埼京線とか呼ばれているが、池袋駅から大崎駅までは本来、貨物線である。
 実際、未だに貨物列車も走っている。
 そこを軽やかに走行する電車だが、車内はだいぶ混んで来た。
 新宿止まりならもう少し空いているのだろうが、電車は更にその先、埼京線の終点駅まで行くからであろう。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく新宿、新宿に到着致します。お出口は、右側です。この電車は、埼京線各駅停車の大崎行きです。新宿を出ますと、渋谷、恵比寿、終点大崎の順に止まります」〕

 イリーナと稲生の間に挟まれ、安心ていたマリアも少しうとうとしていた。
 車内放送でハッと目を覚ます。
「もうすぐ着きますよ」
「そのようだな。師匠、起きてますか?」
「あいよ。起きてるよー」
「おっ、珍しい」
「何それ……」
 弟子の言葉に、変な顔になる師匠だった。
「それより、あなたの水晶球に『着信』があったみたいよ。後で確認しな」
「えっ、本当ですか?誰からだろう?」
「大師匠様とか?」
「再登用されたばかりの私に、大師匠様が直接用事があるとは思えないな」
 マリアは首を傾げた。

 電車は速度を落とし、ゆっくりと多くの乗客が待つホームに入線した。

〔しんじゅく〜、新宿〜。ご乗車、ありがとうございます。次は、渋谷に止まります〕

 ここで多くの乗客が降りる。
 稲生達もその流れに乗って電車を降りた。
「マリア。ここは人が多いから、取りあえず、コンコースに出てからにしな。稲生君、乗り換え先は別のホームなんでしょ?」
「ええ。中央本線ホームになるので、一旦階段を上がります」
「たってさ」
「はい」
 3人が階段に向かって上がっている間、埼京線電車は発車メロディの後で発車していった。
 コンコースに上がって、マリアはローブの中から水晶球を取り出す。
 イリーナのそれはバレーボールほどの大きさがあるが、マリアのはサイズが野球ボールくらいである。
「……エレーナからだ。……んん?」
「何ですって?」
「たまたま私達がさっきの電車で大宮駅を出た時、エレーナも“宅急便”の仕事で、その上にいたそうだ。そしたら、まるで私達を狙うかのように、別の魔女が私達の電車を見下ろしていたんだって」
「誰ですか?」
「暗かった上に、フードを被っていたから分からなかったそうだ。エレーナが声を掛けたら、何も言わずに逃げるように飛び去ったらしい」
「エレーナ以外に空を飛べる魔女さんって誰ですか?」
「いや、それが結構いるよ」
 と、イリーナ。
「普段は飛ばない者も入れると、割と大勢いるね」
「そうなんですか」
 イリーナは目を少し開けて、
「たまたま通り掛かった時、稲生君がいたから警戒したのかもね」
「僕ですか!?」
 稲生が何でって顔をしたが、マリアはその意味が分かったようで、
「いや、だからといって、ちょっとそれは……」
「まあまあ。他に考えられなかったからさ」
 人間時代に性的暴行を受け、女の尊厳を奪われて魔女になった場合は、男の魔道師ですら嫌悪することがある。
 もちろんダンテの方で全員に通達するのだが、それでも嫌がる者は嫌がる。
「僕がいると迷惑ですかね?」
 稲生は困った顔をして、頭をかいた。
「いや、そんなことはないよ」
「いつまでも“呪い”に縛られることはないと思う。もう私達は人間を辞めたんだ。それなら、私達はもう少し前を見るべきだと思う」
「マリア……!」
 イリーナは目を見開いた。
「偉い!いつの間にこんな前向きになったの!?先生、嬉しいわ!」
 イリーナはマリアをハグした。
「し、師匠!」
 困惑するマリア。
 体全体で表現することを旨とする欧米人だからそんなに違和感は無いのだが、それでも往来する乗客達には目立ったようである。
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“大魔道師の弟子” 「魔の影に付きまとわれながら」

2016-03-25 21:38:06 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月11日20:29.天候:晴 JR仙台駅・東北新幹線ホーム 稲生勇太、マリアンナ・ベルフェ・スカーレット、イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

 荷物を手に新幹線ホームに上がる稲生達。
「1号車ですね……って、先生はグリーン車かグランクラスでもいいのでは?」
「いいのいいの。弟子と一緒にいる時は、仲良く一緒に行こうねぃ」
「どうせ座ったら寝るだけだ。エコノミークラスでもファーストクラスでも変わらんよ」
 と、マリア。
「シビアな弟子だねぃ……」
「はは、は……」(苦笑する稲生)

〔13番線に、20時30分発、“はやぶさ”“こまち”38号、東京行きが17両編成で参ります。この電車は途中、大宮、上野に止まります。この電車は、全部の車両が指定席です。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、11号車です。まもなく13番線に、“はやぶさ”“こまち”38号、東京行きが参ります。黄色い線まで、お下がりください〕

 日本語放送の後で英語放送が流れる。
 マルチリンガルの魔道師達は、同じことを何度も言われているようで煩わしいとのこと。
 尚、現時点で東海道新幹線の駅構内自動放送は日本語放送のみだが、その理由は……。

〔「13番線、ご注意ください。20時30分発、“はやぶさ”“こまち”38号、東京行きの到着です。……」〕

 眩く青白いヘッドランプを点灯させて、エメラルドグリーンの列車が入線してきた。
 後ろに真っ赤な車体の秋田新幹線が連結されているが、稲生達が乗るのはそこではない。
 ドアが開くと、ここで降りる乗客もそこそこいるもよう。
 稲生達が乗り込むと、E5系車両は普通車であっても、電球色の照明で、座席にピローが付いている。
 窓側にコンセントが付いており、序列上、通路側に座る稲生は自分のスマホを充電する為に、
「ちょっとすいませーん」
「あいよ」
 窓側や中央に座る師匠や先輩に気を使って、コンセントを差し込んで引っ張ってこなくてはならない。
 その為、普通車で窓側にしかコンセントが無い場合、本来は窓側席利用者専用と思われる。
 グリーン車やグランクラス、そしてJRバスには各席にコンセントが付いているので世話無いのだが……。
「はっ!?」
 イリーナはロングスカートだからいいのだが、マリアは稲生が正式に弟子入りしてからというもの、スカートの丈は短くなり……。
「!!!」
 マリアはパッと自分のスカートを押さえた。
「あっ、いや、あの、僕は……」
「いいから早くコンセント引っ張れ!」
「あ、はい!」
 稲生は慌ててスマホを充電し、それをテーブルの上に置くと自分の席に座った。

 そうしているうちに列車は走り出し、仙台市街の夜景の広がる中にいた。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日も東北新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は“はやぶさ”号、東京行きです。次は、大宮に止まります。……〕

 仙台駅のコインロッカーで見つかったトランプのジョーカーについては、現時点では意味不明ということで、特に気にしないということになった。
 ……のだが、
(カードを使った魔法を得意とするコが、一門の中にいたような気がする。アナスタシア組のメンバーだったと思うけど、アナスタシアの許可が出ないと行動できない連中だからね……)
 イリーナはそう考えると、フードを被ってシートを倒した。
「じゃ、いつもの通り、着いたら起こしてね」
「分かりました」
「あ、アタシに気にせず、2人で仲良く喋っててもらっていいから」
「あ、はい。ありがとうございます」

 列車は市街地を過ぎるとグングン速度を上げていった。
 稲生は師匠の言葉に甘え、マリアにとある質問をしてみた。
『ダンテ一門の魔道師は、稲生のように男性もいるが、ほとんどが女性ばかりだ。その理由は何か?』
 というもの。
「大師匠様の審査基準では、どうしても女が選ばれることが多い。別に、変な意味ではない。実際にはユウタもこうして合格して入門しているわけだし、他門に行けばサンモンド船長のように、魔女より男性魔道師の方が多い所もある」
 と、マリアは返した。
 もう1つが、
『ダンテ一門の魔女にはメンタルが多いのは何故か?』
 というもの。
 稲生にしては思い切った質問であり、これにはマリアも含まれていることになる。
 だがマリア自身、自分もそうだという自覚があるので、別に今さら稲生に指摘されたところで、怒りは無かった。
「大師匠様の審査基準が大きな原因。要は、多大な素質のある者を合格させるのだが、多大な素質がある為に、人間時代不遇の人生を送らされることが多い。精神的におかしくなってから魔道師になる為に、結果的にメンタルが多くなってしまった」
 とのこと。
『ダンテ一門の魔女の大半が人間時代、何らかの性的暴行を受けた経験のあるというが本当か?』
「本当。だから、中には新入門者が男のユウタだということで警戒したり、嫌悪したりする者がいる。様子を見に来る者もいるが、何故かユウタの姿を見たら納得して帰るから何も心配は無い」
『どうして納得してくれるの?』
「少なくとも、性的暴行をするようなタマには見えないからだと思う。別にバカにしてるのではなく、私も安心だし、私よりもメンタルなコ達に対しても安心だ」

[同日22:38.天候:晴 JR大宮駅 上記メンバー]

 窓の外にもう1つの線路が並行する。
 これは上越新幹線並びに北陸新幹線の線路である。
 そして、更にその外側に小さな電車が見えると、もうまもなく大宮だ。
 小さな電車とは“ニューシャトル”のことである。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、大宮です。大宮の次は、上野に止まります〕

「何だかあっという間にですね」
「1時間ちょっとか……。それでもル・ゥラ(瞬間移動魔法)より時間が掛かるな。師匠、師匠。もうすぐ着きますよ。起きてください。『あと5分』はナシですよ!」
「うーん……。じゃあ、あと3分だけ……」
「ユウタ?」
「3分経ったら、もうホームに着いてますね」
「だ、そうですよ」
「『早起きは3分の猶予』……」
「早起きは三文の徳、ですよ」
 稲生は呆れた様子で言った。
「ううん……。イリーナ組の信条……」
「そんな信条無いですから!」

 列車が大宮駅のホームに滑り込む。
 ドアが開いて、ここで降りる乗客がいるわけだが、稲生達は1番最後に降りた。
「こうなることだろうと思った!」
「うう……すまないねぇ……」
 何とかイリーナを降ろすことに成功したので、乗り過ごしは免れたが……。
「師匠、まだ乗り換えがありますから歩いてください」
「はいはーい。今度は何線?」
「埼京線です。これで新宿まで行きます。東京駅から中央線だと混んでいるので、大宮からの埼京線の方が空いてるんです」
「さすがはユウタ君。ほーら、マリア!前進、ぜんしーん!」
「酔っぱらってるんですか、あなたわ!?」
 高身長のイリーナ、小柄なマリアに肩を貸させる。
「重いから退いてください!」
「おぉ?そんなこと言っていいのかなぁ?」
「何ですか?私より体重があるのは事実でしょう?」
「ふふっ。やっぱりマリア、分かってないか。まだまだなぁ……」
「?」
「?……!」
 イリーナの言葉が分からず、怪訝な顔をするマリアと稲生だった。
 だが、稲生は一瞬、何かの気配を感じ取った。
 コンコースの柱の陰に、何か……。
 しかし、悪魔の雰囲気は無い。
 どちらかというと……。
(魔女さんが?……いや、気のせいか)
 マリアと似た気配、つまり魔女がいたような気がしたのだが気のせいだったようだ。
(アナスタシア組の誰かが、僕達の様子を見に来たのかな?)
 今のところ、まだ1人もアナスタシアの弟子と直接会って話をしたことは無いのだが……。
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小説の途中ですが、ここで本日の雑感をお送りします。 0324

2016-03-24 23:04:33 | 日記
 既に前日などの記事コメント欄にも“つぶやき”として残したが、22日、母方の祖母が臨終した。
 13日に見舞った日も、その前に見舞った時より認知症が進んでいるなと思ってはいたが、喋れているうちは大丈夫と過信していただけに、とても驚いている。
 正直、悲しみよりも、
「何でこんな時に!」
 という苛立ちの方が強い。
 ただでさえ、今月半ばに帰省休暇をもらったばかりだというのに、またもや職場に迷惑を掛けさせる気かと。
 上司の隊長は、
「明日は我が身だから」
 と、快く慶弔休暇申請の書類を持って来てくれた。
 というのも、隊長の父親もまた容態が芳しくなく、ややもすれば夏を待たずに臨終するであろうという予想を私ら隊員に話していたからである。
 だから私も、この前祖母を見舞った時に、少なくとも隊長の親父さんの後だなと予想していただけに、本当に死者というのは生者のことを考えてくれない。
「長男として必ず告別式から納骨まで全て出席を!」
 と迫る両親に対し、私は池田大作名誉会長の言葉を半分ほど吐いたくらいだ。

 北条浩会長が急死した時に、池田名誉会長はこんなことを言ったらしいね。
「皆さん、北条さんが死んだけども、死ぬ時は暑い時や夜中はやめてもらいたい。暑いし眠いし、皆が迷惑するよ。全く」(“天魔の野望”155ページより)
 ↑妙観講の“慧妙”編集室から出てる本だけど、ブックセンター広布に置かれなくなったということは絶版になったかな?

「死ぬ時は年度末や給料日前はやめてもらいたい。忙しいし、カネ無いし、皆が迷惑するよ。全く」
 ってことを弔辞で言ったら、親戚一同からブッ飛ばされることであろう。
 おかげで隊長も、私のカバーのせいで、2週間くらい休み無しのシフトになっていたぞ?
 お詫びに、お土産として宮城の地酒でも買って行ってあげよう。
 まあ、そんなヤツに限って、自分もまたお正月などのめでたい日に死んだりして、残された人達の正月を台無しにするなどの迷惑を掛けるんだけどね。

 とにかく、明日はJRバスで出発する。
 この前の帰省の時に随分と金を使ってしまったので、経費節減の為だ。
 これもまた、うちの家系(というよりは、母方の家系か?)の無限ループによる「間の悪さ」である。
 来月の給料が出れば新幹線で帰るのだが……。
 やはり、間が悪過ぎる。
 おかげさまで、4月の支部総登山の費用にも影響してくるよ。
 御登山も、片道は経費節減で高速バスだな。

 私は一代法華なので、葬儀は母方の菩提寺である曹洞宗で上げることになるだろうが、良い機会だ。
 曹洞宗がどのような経典を使っているか、改めて観察してこよう。

 え?日蓮正宗で御塔婆?
 さあ?塔婆供養したこと無いから分からんよ。
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“大魔道師の弟子” 「テツの旅、夜の道」

2016-03-23 20:38:21 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月11日19:50.天候:晴 仙台市地下鉄荒井駅 稲生勇太、マリアンナ・ベルフェ・スカーレット、イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

 バスが地下鉄の東端駅前に到着する。
 駅に入ったが、すぐに電車に乗るのではなく、マリア達は駅のトイレに行ってきた。
「地下鉄のトイレにしては、きれいな所だな」
「そりゃそうですよ。できてから、まだ3ヶ月しか経っていない駅ですから」
「治安もいいってことよ。それじゃ行きましょう」
 まだ1日乗車券は有効である。
 平日は大人840円だが、もう元は取っただろうか。
 真新しくて広い自動改札口を通ると、エスカレーターでホームに降りた。
「えーと、次の電車は19時54分ですね」
「新幹線は?」
「20時30分発です。だからまあ、十分間に合いますね」

〔2番線に、八木山動物公園行き電車が到着します。……〕

 人けの少ないホームに、電車接近の放送が流れる。
 トンネルの向こうから電車の接近してくる音と風が流れ込んでくる。
 駅も施設も真新しいなら、電車も真新しい。
 ホームドアと車両のドアが開くと、魔道師達は電車に乗り込んだ。

〔お知らせ致します。この電車は、八木山動物公園行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕
〔「19時54分の発車です。発車までしばらくお待ちください」〕

 先頭車に乗り込んで、ブルーの座席に並んで座る。
「ユウタ君、展望は楽しまなくていいの?」
「いや、今度は座り心地を確認したいと思います」
 新型の地下鉄車両に有りがちなことだが、多少クッションが硬い。
 ただ、クッションすら無い外国の地下鉄と比べれば恵まれている。
「ニューヨークの地下鉄は、プラスチックがそのまんまだったね」
「そうなんですか」
「ええ。乗り心地なんて、何にも考えてないわ」

 発車の時間が迫るが、まだ車内は空いている。
 向かい側の降車ホームに到着した電車の方が乗客は多かったが、まるでどこかの地方ローカル線のようだ。

〔2番線から、八木山動物公園行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕
〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 短い発車メロディの後でホームドアと電車のドアが閉まる。
 電車のドアチャイムは4打点鳴るので、駆け込み乗車の再開閉なんかするとやかましいかも。
 電車は、ほぼ定刻通りに発車した。

〔次は六丁の目、六丁の目でございます〕

「ユウタ。コインロッカーから、荷物を取ってこないと」
「おっ、そうですね。危うく忘れるところでした」
「遊びで取ったその景品も、バッグの中に入るといいねぇ……」
「はは、そうですね」
「ユウタ君がクレーンゲームで取った景品の中に、化粧品まで入ってるなんてねぇ……」
「師匠、使います?」
「後で使わせてもらうよ。それにしても本当にユウタ君、上手いねぇ……」
「ありがとうございます。まあ、高校時代から、友達とアーケードはよく行ってたので……」
「意外」
「意外」
「そうですか!?」
 稲生は驚いた顔をした。

 尚、稲生の高校時代を描いた話(“顕正会版人間革命”並びに“妖狐 威吹”)については、非公開である。
 稲生の通っていた高校の七不思議を解決するところから始まる(その頃から魔界だの冥界鉄道公社だのが出てくる)。
 そこまでは良いとして、そもそも顕正会のことをとても良いイメージで描いており、浅井会長こそ正義で、日顕上人が【ぴー】というトンデモ設定なので、完全お蔵入りである。
 作者がバリバリの顕正会員時代に書いた作品であるため。
 “妖狐 威吹”は威吹の視点で書いたスピンオフであるが、妖怪にとっては仏法自体が悪法であるため、やはり良いイメージで描いていない。
 なので、公開できない。
 ま、創価学会については昔も今も良いイメージで書いてはいませんがw

「とにかく、マリアさんや先生が喜んでくれたら、ありがたいですよ」
「うんうん。特にマリアなんか、ユウタ君が取る瞬間、鼻息荒くしてたもんねー」
「してませんっ!」
「取れる度にキャッキャッ言って喜んでたじゃない」
「いや、あれは、その……」
「また今度行きましょう。長野にだって、ゲーセンくらいあるし」
「何だったら、今夜、東京に泊まる?」
「いえ、それはできません」
 稲生はキッパリ断った。
「……だろうね」
「……だろうな」
 稲生の言葉に溜め息をつく魔道師師弟。
 稲生のその言葉の理由は何なのだろう?

[同日20:15.天候:晴 JR仙台駅 稲生、マリア、イリーナ]

 地下鉄は何の異常も無く、仙台駅のホームに滑り込んだ。
 宮城野通駅辺りから、何となく乗客が増えて来た感じだが、仙台駅でドカドカ乗り込むようだ。
 もちろん、稲生達はそれを横目に電車を降りる。
 地下鉄の駅からJRの駅に移動し、まずは荷物を預けているコインロッカーに向かう。
「1日乗車券が手元に残っちゃったな」
「いいじゃない。こういうのも、旅行の記念よ」
「そうですとも」
 稲生は大きく頷いたが、当然趣味の範疇である。
 稲生達が預けたコインロッカーはSuica式で、稲生は慣れた様子で中央のモニタをタッチして操作する。
 Suica読取機にSuicaを当てると、ロックが解除された。
 比較的大きい扉を開けると、見覚えのある荷物が出てくる。
「このバッグの中に入るかなぁ……?」
 荷物を取り出して、稲生は自分のキャリーケースを開けた。
「ただのバッグじゃないんだぞ」
 と、マリア。
 稲生が使っているバッグは、魔道師が旅行の時に使うトランクを今風のキャリーバッグにアレンジしたものである。
 まるで、バッグ版四次元ポケットのようだ。
 スッポリ入る。
「なるほど。これで安心ですね」
 稲生はバッグの蓋を閉めて、持ち上げた。
「? 師匠、どうしました?」
 イリーナはイリーナで自分の持ち物を取り出したのだが、どうやら荷物の中から変な物が出て来たらしい。
「トランプのババですか?」
「ユウタ。そこはもう少しカッコ良く、ジョーカーと言ってくれ」
「あ、すいません。でも何で先生の荷物から、ババ……いや、ジョーカーが?」
 コインロッカーを再開扉してジョーカーを入れることなど、通常はできない。
 で、あるなら……。
「後で調べておくわ」
「あんまりジョーカーって、いいイメージ無いんだよなぁ……。まあ、“クィーン・アッツァー”号のカジノではジョーカーのおかげで勝ったけど……」

 稲生達は荷物を手に、今度は新幹線乗り場に向かった。
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“大魔道師の弟子” 「鉄道の旅」

2016-03-22 19:29:42 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月11日19:00.天候:晴 仙台市宮城野区福室・仙台コロナワールド1F男子トイレ 稲生勇太]

 退館してバス停に向かう前に、トイレに寄る稲生。
「ふう……。風呂上がりのマリアさんもかわいいな」
 便器の前に立ってホッと一息つく稲生の隣の便器に立つ者がいた。
「うむ。因みに、マリアンナは生理前……2〜3日前の今くらいが1番性欲が高まる傾向があるので、更なる告白をするなら今だよ」
「は!?」
 バッと隣を見ると、そこにはタキシードと蝶ネクタイを着けたベルフェゴールの姿があった。
「ベルフェゴール!マリアさんの使い魔が何の用だ?お前の仲間の“色欲の悪魔”なら、僕が1人前になってからの契約のはずだぞ?」
「はははは……(苦笑)。使い魔か。まあ、実質そのようなものだな」
「僕に何か用か?」
「もう少し落ち着きなさい。私が立場上、キミの魂を食らうことが今できるとでも思うのかい?もう少し、自信を持ちたまえ。稲生勇太君?」
 稲生は足が震えていた。
 隣にいる悪魔は、キリスト教でも名高い“七つの大罪の悪魔”の1つ、“怠惰の悪魔”のベルフェゴールなのである。
 RPGでは大ボスを張ることが多い。
 ゲームによっては魔王扱いされる“暴食の悪魔”ベルゼブブの同僚でもある。
「マリアさんを不幸にした悪魔が!」
「おいおい、勘違いしてもらっては困る。私は契約通りに動いただけだ。稲生君、今度から契約書とか規約書はよく読んでからサインした方がいいよ」
「なに!?」
 稲生は便器から離れて、洗面所に向かった。
「私とてキミとマリアンナの仲については、是非進展してもらいたいと思っている。もし何だったら、私に頼めばいくらでも協力するよ」
「悪魔に頼むつもりはない!」
 魔道師が悪魔と契約するのは、悪魔から更なる魔力をもらう為と、自身の身辺警護の為である。
「人間と契約する時の悪魔と、魔道師と契約する時の悪魔の立場の違いがよく分かっていないようだな。帰宅したら、その辺よく確認すると良い」
 ベルフェゴールはそう言うと、先にトイレから出ていった。
 間髪いれず、稲生もすぐにトイレを出たのだが、既にベルフェゴールの姿は無くなっていた。

[同日19:20.天候:晴 仙台市宮城野区鶴巻・仙台市営バス『鶴巻』バス停 稲生、マリアンナ・ベルフェ・スカーレット、イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

 夜になって、市内は風が出て来たようだ。
 ヒュウと風が吹いて、稲生を除く魔道師達のローブが風に靡く。
「19時21分発、荒井駅行き。これですね」
 バス停に並ぶ乗客はおらず、稲生達だけである。
 すぐ近くの産業道路からは、多くの車が往来する音が聞こえる。
 バス停のある場所はそこから1本入った道であり、道幅は狭くないのだが、その割には交通量が少ない。
「何か、ベルフェゴールが余計なこと言ったみたいで申し訳無い」
 マリアは稲生に謝った。
「あ、いや、いいんですよ。ただ、何で今さらあんなこと言ったのかなぁって……」
 もちろん、生理前云々については喋っていない。
「ちょろっと様子を見に来ただけだったんだろうけど、“使い魔”扱いされたから、少しカチンと来たのかもね」
 と、イリーナ。
「えっ?」
「使い魔と契約悪魔は違うよ」
「そうなんですか!?」
「うん。実は近いうち、ユウタ君にも使い魔と契約してもらおうと思ってる。使い魔は文字通り、魔道師の“使い”だからね。つまり、使役する下級の悪魔のこと。ベルフェゴールなどは、私達魔道師に魔力を付与してくれる『対等の相手』。まあ、今は私らの買い手市場ではあるけれど、立場的にどっちが上でも下でも無いのよ。まあ、ボケとツッコミかな」
 悪魔がボケ役で、魔道師がツッコミ役だろうか。
 確かにどちらも重要な役なので、どちらが上でどちらが下でもない。
「そうだったんですか。ベルフェゴールに悪いこと言っちゃったな」
「まあ、ベルフェもバカじゃないから、ユウタ君が知らずにそんなことを言ったくらいは知ってると思うわ」
「師匠、バスが来ました」
 そこへ、バスがヘッドライトの眩い光を照らしてやってきた。

〔「宮城運輸支局前、荒井駅方面、鶴巻循環です」〕

 かつては起点・終点のバス停であったが、地下鉄東西線開通に伴うバス路線再編成のせいか、ここを発着するのは循環バスだけになってしまった。
 その為、起点・終点の停留所ではなくなっている。
 なもんで、既に乗っている乗客がいたが、数人だけと数えるだけになっていた。
 まだSuicaが使えないので、整理券を取る。
 乗り込むと、1番後ろの席に3人並んで座った。

〔「はい、発車します」〕

 バスが夜の工場街を進む。

〔毎度、市営バスをご利用頂きまして、ありがとうございます。次は鶴巻保育所前、鶴巻保育所前でございます。お降りの際はお忘れ物の無いようご注意願います〕

「マリアさん、温泉はどうでしたか?」
「ああ。日本に来て良かったよ」
「いやあ、ダーツで決めて良かったねぃ」
 と、イリーナ。
「ダーツで決めたって本当なんですか?所ジョージじゃあるまいし……
「そうだよ。ね?マリア?」
「はい。ダーツで決めて良かったです」
「そ、そうですか」
 要は世界地図を広げて壁に張り、ダーツを投げたら日本に刺さったという話だ。
 大師匠ダンテも、『アジアへ行け』という指示は出していたらしいが……。
「痣が消えて行く感じだ。まだ、気休め程度だけどね」
 マリアの体には、人間時代に受けた暴行の数々の痕がまだ残っている。
 ベルフェゴールと契約する直前には、女の尊厳も奪われた。

 魔道師と契約する時の悪魔は対等(現在は若干、魔道師側が有利)だが、人間と契約する時は悪魔の方が上であることに気づけない人間を狙うのだという。
 マリアも見事に狙われ、彼女の思い通りの復讐劇を繰り広げたが、最後にはものの見事に騙された。
 ベルフェゴールは、『契約の時に確認しなかったマリアンナが悪い』の1点張りで突っぱねている。
 現在はイリーナも立ち会っての契約なので、変な特約が付けられることはない。
 時折、Windows10の無償アップグレードのポップアップ並みに、それとなく特約を付けるよう勧誘してくることはあるが。
 もちろん、魔道師となったマリアはそれを断っている。
(そういえばベルフェゴールやアスモデウスはたまに姿を現すけど、イリーナ先生のレヴィアタンは姿を現さないな。まあ、個性的な悪魔達だからな……)
 稲生がそんなことを考えていると、マリアが、
「ベルフェのヤツ、他に何か言ってなかったか?」
 と、聞いて来た。
「あー、えーと……」
「言って!」
「はあ……。マリアさんは今、生理2〜3日前だから性欲が強いだとか、今着けてるブラ・ショーツは白系だとか、そんなこと言ってました」
「くっ!あのクソ悪魔……!」
 マリアは顔を赤らめた。
「多分、アスモデウスの入れ知恵だね。さすがは色欲の悪魔だよ」
 イリーナは呆れたように言って、天井を見上げた。

「♪」
 バスの屋根の上に上半身だけ起こして寛ぐベルフェゴールとアスモデウスの姿があったが、気づいたのはイリーナだけであったようだ。
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