報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「稲生の孤独な戦い」 Final

2017-05-15 22:02:44 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[月日不明 時刻不明(朝方か夕方) 天候:晴 東京中央学園上野高校・旧校舎(幻影)]

 危険を冒して黒い化け物の潜む地下室に行き、非常口の鍵を手に入れた稲生。
 スティーブンの言っている意味がよく分からなかったので、改めてビデオテープをもう1度確認することにした。
 すると、1つ分かったことがあった。
 それは昇降口から出ようとすると、ゾーイは瞬間移動の魔法でも使ったのか、いきなり背後に現れて、出ようとした男を殴り殺している。
 それに対し、非常口から出ようとした者は、階段室の向こうの廊下からサーッとやってきて叩き殺している。
 ただ、スティーブンも100%信用できる男でもない。
 実は改めて見たビデオテープには、もう1つの末路があった。
 それはスティーブンの電話を受けた男が廊下を数歩歩いたところで、いきなりゾーイが現れ、やっぱり後ろから殴り殺されるのである。
 これでは、ゾーイとスティーブンがグルではないかと思われる。

 稲生:「でも、他に方法が無い。これで出るしかない……!」

 稲生は何を思ったか、用務員室からバケツを持ってきた。
 それでトイレに行き、清掃用の水道からそれに水を溜める。
 そのバケツを持って、非常口のある階段室までやってきた。
 そこにバケツを置くと、今度は手に入れた魔法瓶に水を詰める。
 詰めた後で、そこら中にぶちまけた。

 稲生:「魔女さんとはいえ、死んだ人だからなぁ……。この水が効くかどうか……」

 稲生の作戦は魔女ゾーイが稲生の背後を取らぬよう、魔法の水でバリアーを張ることだった。
 もちろん、生きている魔道師にはそんなもの効かない。
 効かせる方が効いてどうするのだ。
 それでは獲物を捕らえる為に張った網に、張った蜘蛛自身が引っ掛かってしまうようなものだ。

 稲生:「あとは……」

 稲生は階段室の防火シャッターを閉めた。
 これでもう廊下側から入って来ることはできない。

 稲生:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」

 稲生はダンテ流魔道師の呪文と題目を唱えながら非常口の鍵を開けた。
 そして、ドアを開けると同時に外へ飛び出した。

 稲生:「わああああああああっ!?」

 柔らかな日差しが包む空間へと、稲生は飛び出した。
 そして、まるでスカイダイビングのように物凄い勢いで真っ逆さまに落ちて行った。
 上を見上げると、悔しそうな顔で下を覗き込んでいるゾーイの姿が見えた。

 稲生:「勝った……!けど……、これもヤバいんじゃ……?」

[4月9日14:15.静岡県袋井市 エコパアリーナ]

 アデランス:「それでは会長、浅井先生より御指導を賜りたいと思います。先生、お願いします!」

 会場内から拍手が沸き起こるものの、盛り上がっているのはステージ周辺だけ。
 メタボ、それでも得意げに両手を挙げながら登壇席へ上がる。

 メタボ:「こんにちは。えー、今日の大会もまことに素晴らしいですね。よくぞ全国津々浦々より馳せ参じてくれました!」(←中部大会なんスけど)
 メタボ:「これほどの歓喜に満ちた大会が他にありましょうか!?」(←大ゲサ)
 メタボ:「正にこの勢い、諸天をも動かすものであります!」(←ウソ)
 J:「ん?」

 メタボの上空に光が発生する。

 稲生:「わーっ!?」

 ドサッ!

 メタボ:「うぉっ!?」

 稲生、メタボの真上に落下した。

 稲生:「いててててて……。何だここは……?一体何が……?」
 J:「ぇ先生、ぇ大丈夫ですか?」
 サトー:「ああっ!?テメーはユタっ!?何しに来やがったっ、ああっ!?」
 行成(ネオケンショーレンジャー・オレンジ):「いいから早く先生から降りなさい!」
 稲生:「ええっ!?ここ、顕正会の大会!?」
 サトー:「そうだぜっ、ああっ!?今日という今日は大聖人様に代わってお仕置きだぜっ、ああっ!?」
 J:「ぇさすがにね、ぇこのまま帰れるとはね、ぇ思わないでしょ?」
 アデランス:「それでは、化石会員だった男子部第6隊【ぴー】支隊の稲生勇太が、これより戦列復帰を果たします。皆さん、拍手でお迎え願います!」
 稲生:「誰がだ!僕は日蓮正宗正証寺信徒だ!!」
 サトー:「ああっ!?住職が首吊り自殺しやがった宗門にいつまでいる気だよっ、ああっ!?そんな所にいたって功徳は無ェんだよ、ああっ!?」
 J:「ぇそれよりね、ぇ早く先生から降りようね?」
 稲生:「うおっと!?……さ、さよならーっ!!」
 サトー:「待ちやがれっ、ユタっ!今日は駿河湾にコンクリート詰めして沈めてやるぜっ!ああっ!?」

 稲生、持ち前の早い逃げ足で会場内を逃げ回る。

 J:「ぇパパ……じゃなかった。ぇ先生、ぇ大丈夫ですか?」
 メタボ:「うーん……腰がぁ……腰がぁ……」

[同日14:30.天候:曇 エコパアリーナ外]

 藤谷:「だからよぉ、学会なんざ相手にしねーで、俺達と法論しやがれってんだ!浅井でもサトーでも幹部連れて来いってんだよ!」
 衛護隊員A:「警察を呼ぶぞ!帰れ!」
 衛護隊員B:「帰れ!帰れ!」
 衛護隊員C:「写真撮って顕正新聞に公表してやるぞ!」
 正証寺班員A:「班長、このままだと……!」
 正証寺班員B:「何かヤバイっス!」
 藤谷:「しゃあねぇ!あそこにいる学会員スケープゴートにして、一旦引き上げるか」

 と、会場の中から何だか騒がしい声がする。

 稲生:「た、助けてーっ!」
 サトー:「待ちやがれっ!今日という今日は駿河湾か富士山まで片道ドライブだぜっ、ああっ!?」
 藤谷:「稲生君!?何やってんの!?」
 稲生:「藤谷班長、助けてください!」
 藤谷:「おう、サトーじゃねぇか!」
 サトー:「げっ、オマエはケイバにパチ野郎の藤谷……!」
 藤谷:「余計な枕詞つけてんじゃねぇ。俺んとこの班員に何てことしやがってんだ、ああっ?」
 サトー:「るっせーよ、ああっ!?そっちこそセンセーの御指導を邪魔しやがってよォ、どう落とし前付ける気だ?ああっ?」
 藤谷:「稲生君、何したの?」
 稲生:「は、班長、とにかく……逃げましょう!」
 藤谷:「な、何だぁ!?」
 サトー:「おう、こら!待ちやがれっ、ああっ!?」
 藤谷:「何か知らんが、これでチャラにしてくれや。な?」

 藤谷、桜花賞の馬券を差し出す。

 藤谷:「レーヌミノルの単勝しか買ってねーけど、多分これ当たるぜ。な?これで今日のところはチャラにしてくれよ」
 サトー:「ああっ!?レーヌミノルだとっ!?……俺も買ってるぜっ、ああっ!しょうがねぇから、今日のところは見逃してやるぜ。ああっ?」
 班員A:「いいんだ……」
 班員B:「いいんですか、班長?」
 藤谷:「『呆れるほど薄っぺらい大聖人様への信心』って見出しで、“慧明”辺りが取り上げてくれるだろ、多分」
 稲生:「班長、ありがとうございます!」
 藤谷:「何か色々あったみたいだな。俺は稲生君を車で送って行く。キミ達は電車でいいな?」
 班員A:「はい」
 藤谷:「じゃ、来るんだ。稲生君」
 稲生:「はい!」

 藤谷は自分のベンツGクラスに稲生を乗せて会場をあとにした。

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