[月日不明 時刻不明(朝方か夕方) 天候:晴 東京中央学園上野高校・旧校舎(幻影)]
地下室で黒い化け物に襲われ、ゾーイの罠に引っ掛かりかけた稲生だったが、何とかバルブハンドルを手に入れることができた。
このバルブハンドルで、唯一の水洗トイレである職員用トイレに向かう。
案の定、バルブハンドルは男子トイレの便器に水を流す為のものだった。
ハンドルをはめ込んで、回せるだけ回す。
すると、配管の中を水が通って行く感触があった。
試しに近くの小便器のボタンを押すと、ちゃんと流れた。
稲生:「よし、これで……」
血だまりのできている洋式トイレのレバーを押す。
ドドドと水が流れ、血だまりは下水管の中に流れて行った。
完全に澄んだ水にするには何回か流さなくてはならなかったが、その便器の中からあるものが現れた。
稲生:「これは……?」
拾い上げてみると、それは魔法瓶。
瓶自体に魔法が掛けられており、その中にただの水を入れるだけで魔力を持つというものだ。
稲生:「こんな所にこんなものがあるなんて……」
試しに他の便器も流してみたが、目ぼしいものは見つからなかった。
一応、洗面台でもう少しきれいに洗っておく。
その後で魔法瓶に水を溜めておいた。
ようやく魔道師として、それならではのアイテムを手にしたことになる。
稲生:「うん?」
廊下に出ると、また職員室前の古めかしい赤い公衆電話が鳴った。
稲生:「はいはい」
電話に出ると、相手はあの欧米人の男だった。
先ほどと同じく英語で話し掛けてくる。
男性:「魔法瓶を手に入れたんだな?」
稲生:「どこで見てるんですか?あなたは誰ですか?」
男性:「俺の名前はスティーブン・オズモンド。ゾーイのことを知っている普通の人間さ」
稲生:「普通の人間がどうして!?」
スティーブン:「とにかく、詳しい話は後だ。まずはそこから脱出しないと。キミも魔道師の端くれなら、その魔法瓶の使い方は知ってるな?」
稲生:「ええ、まあ……。」
スティーブン:「武器としての使い方は?」
稲生:「ただ単に相手にブッ掛けるくらいしか知りません」
スティーブン:「それもそうだな。今までビデオを見て、何かに気づかなかったか?」
稲生:「えーと……?」
スティーブン:「もしキミなら正面エントランスと非常口、どちらから脱出しようと思う?」
稲生:「どっちって……?」
稲生はビデオの出来事を思い出した。
昇降口と非常口、どちらもゾーイはドアを開けた直後に襲い掛かっている。
スティーブン:「まあいい。その魔法瓶に水を溜めて、もう1度地下室に行くんだ」
稲生:「ええっ!?どうしてですか!?」
スティーブン:「ゾーイの奴、あの地下室の奥に鍵を隠したと思う。それで黒い化け物に守らせているんだろうな」
稲生:「ええ〜……」
スティーブン:「健闘を祈る。生きてそこを出られたら、また会おう」
スティーブンからの電話が切れた。
稲生:「うう……参ったなぁ……」
稲生は他にも魔法瓶が落ちていないかと探してみたが、トイレの中にあった1個しか無かった。
稲生:「あのスティーブンって人、『協力者』なのかなぁ……?」
『協力者』とはダンテ一門に対し、何らかの形で協力援助している人間のことである。
例えば北海道札幌市には、普段はオーダーメイド紳士服店であるものの、裏では魔道師のローブを作っている山田洋品店があり、その山田店長はそういった形での『協力者』ということになる。
あとは魔道師の力に頼って資金援助を行う富豪の『協力者』も多い。
イリーナが何枚も持つブラックカードやプラチナカードの類は、そんな大富豪『協力者』からもらったものだ。
稲生:「ゾーイへの『協力者』……?」
そこで稲生は二の足を踏んだ。
もしスティーブンがゾーイの『協力者』だとしたら、これも罠なのではないかと思ったのだ。
あの黒い化け物は魔法瓶の水をブッ掛けただけで倒せるとは思えない。
キャビネットの下敷きにさせる以上の足止めはできるだろうが。
稲生:「えーい!行くしかない!」
こうしていても、他にやることが無いのだ。
それに、ゾーイはダンテ一門の典型的な魔女であったと推測される。
例え『協力者』であっても、男性には近づかないのが魔女だ。
スティーブンにも嫌悪感を持つはずだ。
しかし、スティーブンはゾーイのことを個人的に知っているという。
一体、どういうことなのか……。
稲生:「何か……いそう」
地下室への階段を下りて、ドアの前で耳を澄ましてみる。
何だかドアの向こうに、黒い化け物の唸り声が聞こえたような気がした。
稲生:「うう……」
稲生はそっとドアを開けた。
ドアのすぐそこで黒い化け物が待ち構えて……いなかった。
稲生:「いないな……」
しかし油断せず、もう1つ先のドアへ向かう。
またもやゾーイに閉じ込められたらどうしようと思いつつも、ドアを開けてみる。
化け物:「ギャアアアアッ!!」
稲生:「うわっ、出たーっ!!」
稲生は急いで魔法瓶の水を化け物にぶっ掛けた。
化け物:「ギャアアアア!シャーッ!!」
ただの水道の水を入れただけなのに、化け物に掛けてみると、まるで塩酸や硫酸を掛けられたかのようにジュウジュウと音を立てて煙が立ち上った。
化け物がのたうち回る。
稲生:「今だ!」
稲生は今のうちに化け物の横を通り過ぎ、地下室の奥へと進んだ。
稲生:「あっ!」
すると奥の棚の上に鍵が1つ乗っていた。
それを取る。
化け物:「シャアアアアアッ!」
のたうち回っていた化け物が体勢を整えて、稲生に向かってくる!
と、棚の横にも水道があるのが見えた。
蛇口を回してみると、幸い水が出た。
すぐにその水を魔法瓶に溜め込む。
稲生:「うりゃっ!」
化け物がその禍々しい腕を伸ばして稲生に攻撃してくるのと、稲生が再び魔法瓶の水を化け物に掛けるのは同時だった。
稲生:「今だ!」
再び化け物が強酸液を掛けられたかのようなダメージを受けて苦しみ悶えている隙に、稲生はドアの外に飛び出した。
今度はゾーイが現れて、ドアを押さえつけるようなことはしてこなかった。
やはりあの化け物は魔法瓶の水だけでは倒せないらしい。
それでもとにかく、スティーブンの言った通り、鍵を手に入れることができた。
タグには『非常口』と書かれていた。
地下室で黒い化け物に襲われ、ゾーイの罠に引っ掛かりかけた稲生だったが、何とかバルブハンドルを手に入れることができた。
このバルブハンドルで、唯一の水洗トイレである職員用トイレに向かう。
案の定、バルブハンドルは男子トイレの便器に水を流す為のものだった。
ハンドルをはめ込んで、回せるだけ回す。
すると、配管の中を水が通って行く感触があった。
試しに近くの小便器のボタンを押すと、ちゃんと流れた。
稲生:「よし、これで……」
血だまりのできている洋式トイレのレバーを押す。
ドドドと水が流れ、血だまりは下水管の中に流れて行った。
完全に澄んだ水にするには何回か流さなくてはならなかったが、その便器の中からあるものが現れた。
稲生:「これは……?」
拾い上げてみると、それは魔法瓶。
瓶自体に魔法が掛けられており、その中にただの水を入れるだけで魔力を持つというものだ。
稲生:「こんな所にこんなものがあるなんて……」
試しに他の便器も流してみたが、目ぼしいものは見つからなかった。
一応、洗面台でもう少しきれいに洗っておく。
その後で魔法瓶に水を溜めておいた。
ようやく魔道師として、それならではのアイテムを手にしたことになる。
稲生:「うん?」
廊下に出ると、また職員室前の古めかしい赤い公衆電話が鳴った。
稲生:「はいはい」
電話に出ると、相手はあの欧米人の男だった。
先ほどと同じく英語で話し掛けてくる。
男性:「魔法瓶を手に入れたんだな?」
稲生:「どこで見てるんですか?あなたは誰ですか?」
男性:「俺の名前はスティーブン・オズモンド。ゾーイのことを知っている普通の人間さ」
稲生:「普通の人間がどうして!?」
スティーブン:「とにかく、詳しい話は後だ。まずはそこから脱出しないと。キミも魔道師の端くれなら、その魔法瓶の使い方は知ってるな?」
稲生:「ええ、まあ……。」
スティーブン:「武器としての使い方は?」
稲生:「ただ単に相手にブッ掛けるくらいしか知りません」
スティーブン:「それもそうだな。今までビデオを見て、何かに気づかなかったか?」
稲生:「えーと……?」
スティーブン:「もしキミなら正面エントランスと非常口、どちらから脱出しようと思う?」
稲生:「どっちって……?」
稲生はビデオの出来事を思い出した。
昇降口と非常口、どちらもゾーイはドアを開けた直後に襲い掛かっている。
スティーブン:「まあいい。その魔法瓶に水を溜めて、もう1度地下室に行くんだ」
稲生:「ええっ!?どうしてですか!?」
スティーブン:「ゾーイの奴、あの地下室の奥に鍵を隠したと思う。それで黒い化け物に守らせているんだろうな」
稲生:「ええ〜……」
スティーブン:「健闘を祈る。生きてそこを出られたら、また会おう」
スティーブンからの電話が切れた。
稲生:「うう……参ったなぁ……」
稲生は他にも魔法瓶が落ちていないかと探してみたが、トイレの中にあった1個しか無かった。
稲生:「あのスティーブンって人、『協力者』なのかなぁ……?」
『協力者』とはダンテ一門に対し、何らかの形で協力援助している人間のことである。
例えば北海道札幌市には、普段はオーダーメイド紳士服店であるものの、裏では魔道師のローブを作っている山田洋品店があり、その山田店長はそういった形での『協力者』ということになる。
あとは魔道師の力に頼って資金援助を行う富豪の『協力者』も多い。
イリーナが何枚も持つブラックカードやプラチナカードの類は、そんな大富豪『協力者』からもらったものだ。
稲生:「ゾーイへの『協力者』……?」
そこで稲生は二の足を踏んだ。
もしスティーブンがゾーイの『協力者』だとしたら、これも罠なのではないかと思ったのだ。
あの黒い化け物は魔法瓶の水をブッ掛けただけで倒せるとは思えない。
キャビネットの下敷きにさせる以上の足止めはできるだろうが。
稲生:「えーい!行くしかない!」
こうしていても、他にやることが無いのだ。
それに、ゾーイはダンテ一門の典型的な魔女であったと推測される。
例え『協力者』であっても、男性には近づかないのが魔女だ。
スティーブンにも嫌悪感を持つはずだ。
しかし、スティーブンはゾーイのことを個人的に知っているという。
一体、どういうことなのか……。
稲生:「何か……いそう」
地下室への階段を下りて、ドアの前で耳を澄ましてみる。
何だかドアの向こうに、黒い化け物の唸り声が聞こえたような気がした。
稲生:「うう……」
稲生はそっとドアを開けた。
ドアのすぐそこで黒い化け物が待ち構えて……いなかった。
稲生:「いないな……」
しかし油断せず、もう1つ先のドアへ向かう。
またもやゾーイに閉じ込められたらどうしようと思いつつも、ドアを開けてみる。
化け物:「ギャアアアアッ!!」
稲生:「うわっ、出たーっ!!」
稲生は急いで魔法瓶の水を化け物にぶっ掛けた。
化け物:「ギャアアアア!シャーッ!!」
ただの水道の水を入れただけなのに、化け物に掛けてみると、まるで塩酸や硫酸を掛けられたかのようにジュウジュウと音を立てて煙が立ち上った。
化け物がのたうち回る。
稲生:「今だ!」
稲生は今のうちに化け物の横を通り過ぎ、地下室の奥へと進んだ。
稲生:「あっ!」
すると奥の棚の上に鍵が1つ乗っていた。
それを取る。
化け物:「シャアアアアアッ!」
のたうち回っていた化け物が体勢を整えて、稲生に向かってくる!
と、棚の横にも水道があるのが見えた。
蛇口を回してみると、幸い水が出た。
すぐにその水を魔法瓶に溜め込む。
稲生:「うりゃっ!」
化け物がその禍々しい腕を伸ばして稲生に攻撃してくるのと、稲生が再び魔法瓶の水を化け物に掛けるのは同時だった。
稲生:「今だ!」
再び化け物が強酸液を掛けられたかのようなダメージを受けて苦しみ悶えている隙に、稲生はドアの外に飛び出した。
今度はゾーイが現れて、ドアを押さえつけるようなことはしてこなかった。
やはりあの化け物は魔法瓶の水だけでは倒せないらしい。
それでもとにかく、スティーブンの言った通り、鍵を手に入れることができた。
タグには『非常口』と書かれていた。
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