報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「探偵の北関東行」

2024-04-26 20:52:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月25日10時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所前]

 約束の時刻になると、事務所兼住宅の前の通りに1台の白いハイエースが到着した。
 多少のカスタムがされており、やや威圧感を感じる。
 恐らくヘッドライトは、眩しい青白いものであろう。
 車体の横には、(株)佐元工務店と明朝体で書かれている。
 あと、会社のロゴマークなのだろうか、『SAM』というアルファベットも見られた。

 佐元「おはようございます。お迎えに参りました」

 運転席から降りて来たのは、高橋と歳は同じくらいなのだろうが、いかつい兄ちゃんといった感じ。
 高橋がややチャラ男とかホストのように見えるのに対し、こちらは本当に元ヤンって感じである。
 頭髪も坊主頭であった。
 肉体労働をしているせいか、筋肉は高橋よりも付いている。

 佐元「マサさん、結婚おめでとうございます」
 高橋「おー。祝儀は要らねーよ」
 佐元「……後でお持ちします」
 愛原「遠回しに請求してんじゃねーよ」
 高橋「さ、サーセン」
 パール「あー、後でアンタの妹に『金返せ』って言っといて」
 佐元「う、うちの妹が本っ当すんませんっ!」

 何があったのかは聞かないでおこう。
 元ヤン同士のいざこざに巻き込まれるのは御免だ。

 愛原「それより、乗ってもいいかな?」
 佐元「あっ、愛原社長!この度はうちの工務店を御指名頂き、ありがとやんス!来週からよろしくおなしゃす!」
 愛原「ああ。シャワールームのユニットは月曜日の午前中に届くから、そのタイミングで作業開始お願いね?」
 佐元「了解です!どうぞこちらです」

 佐元という男は、社長の息子のようだ。
 会社の車で来たのは、都心の現場に道具を持って行く予定になっているからだそうである。
 実際ハイエースの後ろには、見たことも無い工具が積まれていた。
 佐元に助手席後ろのスライドドアを開けてもらい、リアシートに横3人で乗る。
 狭くないかなと思っていたが、パールが細いおかげでそうでもなかった。
 私は運転席後ろの席に座らせてもらう。
 禁煙車というわけではない為、車内はややタバコ臭い。

 佐元「じゃあ、東京駅っスね」
 愛原「うん。なるべくなら、八重洲側の方でヨロシク」
 佐元「八重洲側っスね。ちょうど良かったっス。今日の現場、八重洲の方だったんで」
 愛原「なるほど。それはちょうどいいな」

 私達を乗せた車が走り出すと、家の中に残っていた手達はバイバイと手を振っていた。

[同日10時30分 天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

 事務所から車でだいたい30分くらい掛かった。

 佐元「着きました」
 愛原「ありがとう」

 東京駅八重洲中央口に着けてもらう。

 愛原「これ、少ないけど謝礼」

 私は財布から1000円札を1枚出した。

 佐元「えっ、いいんスか!?」
 愛原「ああ。これでタバコでも買ってよ」
 佐元「さ、サーセン!」
 高橋「先生に感謝しろよ」
 パール「妹に『金返せ』って言っとけよ」

 事務所からここまで、普通にタクシーで行ったのでは明らかに1000円では足りない。
 なので、チップとしては妥当だろう。
 車を降りて、駅の中に入る。
 週末ということもあり、東京駅の中は多くの旅行客で賑わっている。

 愛原「まずは新幹線のキップを買わなくちゃな」

 私達は八重洲中央口にある券売機に向かった。
 自由席で良いので、指定席券売機でなくても良い。
 空いている券売機の前に立つと、私は新幹線の項目を押して、それから那須塩原までの新幹線のキップを3人分買い求めた。
 指定席券売機で買うと水色のキップ(青券)が1枚出て来るが、黒い券売機や緑色の券売機で買うと、赤色に近いオレンジ色のキップが2枚出て来る。
 これを3人分だから、合計6枚出て来る計算になる。

 愛原「キップは1人ずつ持とう」
 高橋「ありがとうございます」
 愛原「まずは在来線改札口を通過するぞ。こっちの乗車券だけを改札機に突っ込むんだ」
 パール「かしこまりました。何か、2枚とも突っ込んじゃいそうですね」
 愛原「多分、今の改札機は優秀だから、弾かれることはないと思うんだがな」

 もちろん、旅客営業規則上の観点からすれば、在来線の改札口は乗車券だけで通過できるはずである。
 実際、乗車券だけ入れて通過できた。
 こういう時、1枚に纏まった青券の方が楽かもしれない。
 それに、子供の頃の体験というのは貴重だ。
 『新幹線に乗る場合であっても、在来線改札口は乗車券だけで良い』というのは、まだ私が子供の頃、東京駅の改札口が有人しか無かった頃に教わった。
 当時は“みどりの窓口”で新幹線のキップを購入しても、乗車券と特急券は別々に発券された。
 そして2枚を『最初の改札口(在来線改札口)』の駅員に渡しても、駅員は乗車券にしか入鋏しなかった。
 この名残が自動改札機にも受け継がれているのならば、やはり乗車券だけ入れても弾かれないはずである。

 愛原「で、新幹線改札口では2枚重ねて入れる」

 有人改札時代、『2つ目の改札口(新幹線乗換口)』で、初めて新幹線特急券に入鋏される。
 この際、乗車券の方も確認されたから、自動改札になっても2枚入れるわけである。

 愛原「無事通過できたな。さて……」
 高橋「ビールとつまみを買って乗るんスね。売店は……」
 愛原「ホームだな。東海道新幹線だとコンコースが充実しているが、JR東日本だとホームだ」

 乗り場を確認して、ホームに上がるエスカレーターに乗る。

 愛原「11時8分発、“なすの”257号、郡山行き。20番線だ」

 

 1番在来線側に近いホームなので、列車がいないと、東海道本線(上野東京ライン)のホームが見える。

 愛原「車で一服してたけど、また一服する……よな?」
 高橋「さ、サーセン」
 パール「申し訳ありません」
 愛原「いや、いいんだよ。だったら、最後尾の1号車だな」

 喫煙所に最も近い車両。
 その前にホームの売店に立ち寄り、そこで缶ビールとおつまみを購入する。
 一気に旅行気分が高まった。

 愛原「お前達にも買ってやるぞ」
 高橋「ありがとうございます!」
 パール「ありがとうございます!」

 高橋は私と同じビールを所望したが、パールはチューハイを所望した。
 つまみは、あたりめだったり、カルパスだったりと色々買ってみた。

 高橋「じゃ、ちょっと一服してきます」
 愛原「ああ」

 まだ列車の時間まで間があるので、高橋とパールは喫煙所に行った。

 愛原「あっ、ヤベ!」

 酒もいいのだが、一応水も買っておこう。
 それを買い忘れたので、水のペットボトルは自販機で購入した。

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