報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「鬼の棲む宿」 2

2024-04-30 21:37:14 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月25日15時00分 天候:晴 栃木県那須塩原市某所 ホテル天長園1階・大浴場(男湯)]

 高橋「あ!不肖の弟子!あ!高橋正義が!あぁっ!?先生をお背中を~をっ!お流し奉り候~也~~~~~ッ!あ!?」
 愛原「……うん。ここだけではお願いするよ、ここだけは」
 高橋「そんなこと仰らず、家でも御用命くだせぇ!」
 愛原「う、うん。絶対ヤダ」

 ところで、さっきから気になっていることがある。
 このホテル、私達の他に誰一人として宿泊客を見ていない。
 1階のロビーやレストランもそうだったし、この大浴場でもだ。
 確かにこのホテル、元々は宗教法人天長会の宿泊施設としてオープンしたのが始まりである。
 それを一般客にも開放したのが始まりであるから、どうしても一般客は少ない傾向がある。
 それでも週末である以上、何組かの宿泊客はいてもいいと思うのだが……。
 宗教施設の1つということもあり、宿泊料金は他の温泉旅館と比べて割安だと思うのだが。

 女性スタッフ(半鬼)A「失礼致します」
 女性スタッフ(半鬼)B「垢すりサービスに参りました」
 愛原「おーっ
 高橋「あぁ?」
 愛原「ま、まさか、これも上野利恵からの……」
 半鬼A「はい。副支配人からの御命令です」

 半鬼の女達は、湯女の姿をしていた。
 見た目は人間だが、瞳の奥が赤かったり、ピンク色だったりと人間では有り得ない色をしている。
 『最も危ない12人の巫女』がリサ1人だけになったことで、『巫女増やし』の儀が行われたことにより、天長会の信者達が半鬼と化した。
 その割には、男もなっているのだが?

 高橋「要らねーよ。俺の仕事取るんじゃねぇ。シッシッ」
 半鬼A「高橋様には、別のスタッフを御用意させて頂いております」
 高橋「あぁ?」

 すると、ぞろぞろ入って来たのは男の半鬼……じゃない!

 

 男鬼「えー、高橋様が『男好き』とお伺いしましたので、是非私共の方で三助をと……」
 愛原「ほ、本物ォ?!」

 すると青鬼の姿をした男は、人間の姿に戻った。
 いや、化けたというべきか。

 男鬼「私も『半鬼』ですよ。しかし、力を開放すると、このように見た目も鬼の姿になりまして……」
 愛原「リサよりも、更に鬼らしい姿だ……」
 男鬼「へっへ。それでは女達に代わり、私共の方で垢すりを……」
 高橋「

[同日同時刻 天候:晴 同ホテル1階・大浴場(女湯)]

 半鬼(女)C「どこかお痒い所ありますかー?」
 パール「いや、特に無い」

 半鬼の女達から普通に垢すりを受けているパール。

 半鬼(女)D「お客様、結婚されて何年目ですかー?」
 パール「いや、今月結婚したばっか」
 半鬼D「わぁ!新婚さんなんですねー!お相手の方は、どんな方なんですかー」

 ドゴーン!ドゴン!ドゴーン!

 半鬼C「きゃっ!」
 半鬼D「な、なに!?」
 パール「今の音……それに、男湯の方から聞こえたということは……。うん。私のダンナ、今、男湯でスーパーマグナムぶっ放したヤツ」
 半鬼C「ええーっ!?」

[同日16時00分 天候:晴 同ホテル1階ロビー→マッサージコーナー]

 上野利恵「この度はうちの従業員が、真に申し訳ございません!」
 愛原「いや、半鬼達はあなたの差し金だということなので、あなたにも責任があるよ?」
 利恵「はい、真に申し訳ございません!」
 高橋「くっそ!あのクソ鬼!マグナムでも死なねぇ!」
 愛原「そりゃ鬼だもの……。すいませんね、マグナム3発も命中させちゃって」
 利恵「いえいえ、こちらの責任ですので……」
 高橋「ホントだよ」

 因みに高橋にマグナムを3発も撃ち込まれた青鬼型の半鬼は、半死半生で救護室に運ばれた。
 シティホテルでも救護室がある所は珍しいが、このホテルには一応ある。
 但し、医師や看護師などが常駐しているわけではないそうだ。
 あくまでも、学校の保健室のようなもの。

 愛原「えらいサービスが良いことはけして悪いことではないんだけど、過剰サービスがいいかって言うと、ちょっとね……」
 利恵「仰る通りでございます」
 パール「マサ。まだ夕食まで時間あるみたいだし、部屋に戻ってよう」
 高橋「あ、ああ」
 パール「先生。マサは私が部屋に連れて行きますから。御夕食まで」
 高橋「ああ、済まない」
 高橋「クッソ!」
 パール「マサも我慢する所は我慢しないと、先生に迷惑掛かるんだからね?」
 高橋「わ、分かってるよ!」

 2人は先にエレベーターに乗って行った。

 愛原「あっ、そうだ。じゃあ、俺は時間までマッサージお願いしようかな」
 利恵「かしこまりました!お任せください!」
 愛原「ああ。温泉の後はな、マッサージで体をほぐしてナンボだろう」
 利恵「さようでございますね。どうぞ、奥のマッサージコーナーまでご案内させて頂きます」
 愛原「ありがとう。まずはボディケアがいいな」
 利恵「ボディケアでございますね」

 私は大浴場に併設されたマッサージルームに案内された。
 そこに専門のスタッフがいるのだろうと思いきや……。

 

 上野凛「いらっしゃいませ。本日、マッサージを担当させて頂きます上野凛です」

 何と、利恵の長女、凛がいた。
 しかも何故か、体操服にブルマ。

 上野理子「あ、アシスタントの……う、上野理子です……」

 次女の理子もいる。
 理子も同じ姿をしていた。

 愛原「こ、これは一体!?」
 凛「陸上部ではストレッチの他に、マッサージをやったりもするので、私が適任だと母に言われまして……」
 愛原「そ、そうなのか!で、でもその恰好は……?」
 凛「リサ先輩が、『お前も先生にブルマを見せないと殺す』と言われまして……」
 愛原「うちのリサが本っ当すいません!」
 理子「お姉ちゃんの場合、陸上部のユニフォームでもいいんじゃ?」
 愛原「あー、確かにな」
 凛「すいません。今、スパッツしか無くて……」
 愛原「なるべく早くブルマを導入するように!」
 凛「は、はい!」
 愛原「ま、それはそれとして、早速お願いしようかな」
 凛「はい!それでは、そこにうつ伏せに横になってください」
 愛原「はいよ」

 私はベッドの上に横になった。

 上野利恵「違うでしょ!」

 と、そこへ母親のダメ出しが入る。

 利恵「凛がメインでマッサージをするわけだから……理子!」
 理子「は、はい!」
 利恵「あなたが愛原先生に、膝枕をして差し上げなさい」
 理子「ええーっ!?」
 利恵「愛原先生の為よ。早くなさい」
 愛原「いいのか?お前の娘だろうが?」
 利恵「『人間の男の味』を早くから覚えさせるのも、鬼の世界では当たり前です」
 愛原「何だか厳しいな……」
 利恵「先生。女子中学生の膝枕、どうぞお楽しみください」
 愛原「……母親の言う事じゃねーからな?」

 とにかく言われた通り、私は正座する理子の太ももと太ももの間に顔を埋めさせたのだった。
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“私立探偵 愛原学” 「鬼の棲む宿」

2024-04-30 11:36:44 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月25日13時00分 天候:晴 栃木県那須塩原市某所 ホテル天長園]

 車は県道からホテルの正門へと入った。
 藤野の研修センターみたいに、鉄扉が堅く閉ざされているということはない。
 敷地内に入ってから、運転手がクラクションを3回ほど鳴らす。
 そして、ロータリーをゆっくり旋回しているうちに、正面玄関からぞろぞろと従業員が出て来た。

 運転手「着きました。お疲れ様でした」
 愛原「ありがとう」

 そして車は、正面エントランスの前に止まる。

 上野利恵「お待ちしておりました。愛原先生!」

 上野利恵が外から、ハイエースのスライドドアを開ける。

 利恵「東京から遠路遥々ようこそお越しくださいました」
 愛原「い、いや、大した距離じゃない。新幹線で1時間ちょいだし……」
 利恵「さあ、どうぞ。中へお入りください」
 愛原「う、うむ……」

 何回か来ているホテルだが、ここまでの大歓迎は初めてかもしれない。

 愛原「あー、それより、昼食がまだなんだが……」
 利恵「それはそれは、お腹が空かれましたことでしょう。あちらのレストランにて、御昼食を御用意してございます」

 このホテルには2つのレストランがあり、1つは最上階にある展望レストラン。
 主に宿泊客の朝夕食会場としての用途である。
 また、イベントホールとしての用途もあるらしい。
 もう1つは、日帰り入浴客などが利用する1階のレストラン。
 ロビーと隣接しているので、カフェラウンジとしての用途もある。

 利恵「チェックインは後ほどということで、まずは御昼食をどうぞ」
 愛原「あ、ああ、済まない」

 私が緊張しているのは、利恵達がただ単に私を招待しただけではないと想定しているからだ。
 リサがいれば、彼女達に睨みを利かすことくらい造作も無いことだが、今はいないので。
 私の血液や老廃物で良かったら、病気にならない程度であげても良いのだが……。
 レストランに行くと、『愛原学探偵事務所御一行様』と書かれた札が置かれており、そこに松花堂弁当と瓶ビールが置かれていた。

 愛原「ええと……」
 利恵「どうかなさいましたか?」
 愛原「これ、料金は如何ほどになりますのやろ?」
 利恵「私共から、愛原先生へのおもてなしです。どうぞ、御自由に召し上がってください」
 愛原「しかし、昼食までは招待プランに入っていないだろう?」
 利恵「今しがた入れました。どうぞ、御自由に」
 高橋「せ、先生。『タダより高い物は無い』と言いますが……」
 愛原「そ、そうだな」

 私を妖艶な目で見つめる利恵の目、瞳が赤く光っている。
 これは……鬼の女が獲物を物色する目である。
 たまに、リサもそういう目をすることがある。

 愛原「因みに今日って、満月だったっけ?」
 利恵「いえ、半月くらいだったかと思いますが」

 妖力が最大限になる満月じゃないのに、これか……。

 パール「頂きますか?」
 愛原「覚悟を決めて頂こう」
 高橋「先生がそのように仰るのならば」

 ビールは普通の味だったし、松花堂弁当も美味かった。
 『鬼の秘薬』が入っていないか、凄く気になったが、特に変わった味はしなかった。

[同日14時00分 天候:晴 同ホテル1階フロント→7階客室]

 昼食を食べた後、14時からチェックインできるらしい。
 私はフロントに行った後、宿泊者カードにペンを走らせた。

 利恵「ありがとうございます。それでは、お部屋までご案内致しますね」
 上野凛「愛原先生、いらっしゃいませ!」
 愛原「おー、凛ちゃんか。お世話になるよ」

 副支配人兼女将の利恵と同様、凛もまた仲居の着物を着ていた。
 妹の理子はまだ見かけないが、この姉妹は『元祖半鬼』ともいうべき存在で、本当に鬼の母親と人間の父親の間にできたハーフである。
 エレベーターに乗り込んで、7階の客室に向かう。

 利恵「こちらでございます」

 高橋とパールは、ツインの洋室だった。
 私はというと、1人部屋のシングルルームみたいな部屋……かと思いきや!

 凛「こちらです、先生」
 愛原「これは……1人で泊まるには広くないか?」

 4人布団を並べても、まだ余裕がある部屋だった。
 恐らく、高橋達が泊まるツインルームよりも広いだろう。

 凛「母が、『愛原先生の為に』と。こちらで、『愛原先生をおもてなしさせて頂くのだ』と。『その為には、部屋は広い方が良い』とのことです」
 愛原「それはありがたいことだが、その『おもてなし』は1泊で終わるるのかい?」
 凛「春休み目一杯使うことになるかもしれませんねw」
 愛原「……それ、リサの前でも言えるか?」
 凛「あっ……!」
 利恵「何かございましたか、愛原先生?」
 愛原「あ、いや、1人で使う部屋の割には、結構広いなと思って」
 利恵「この広い空間で、惰眠の限りを貪り尽くして頂きたく存じます」
 愛原「寝てていいの!?……いや、せっかく温泉に来たんだからさ、温泉に入りたいよ」
 利恵「それもそうですね」
 愛原「浴衣はそこにあるんだっけ?」
 利恵「さようでございます。タオルとかも、そちらに」
 愛原「そうか。高橋達誘って、大浴場に行こう。ちょっと、浴衣に着替えようかな」
 利恵「どうぞどうぞ」
 愛原「こういうのはな、着替えてナンボだろ」
 利恵「そうですね。お寛ぎになってください」
 愛原「その前に、夕食って何時からだっけ?」
 利恵「夕方6時からとなっております」
 愛原「18時か。まだまだ時間あるな」
 利恵「はい。ごゆっくりお寛ぎくださいませ。御夕食はお疲れの先生の為に、『精の付く特製料理』を御用意させて頂きます。夜には『スペシャルイベント』もございますので、何卒宜しくお願い致します」
 愛原「う、うん。キミ達にとって、むしろそれが目的だろうね。良かったねー。まだリサが目を覚ましていなくて」
 利恵「さようで……」
 凛「リサ先輩がいたら、できないもんねー」
 利恵「凛。後で、理子も呼んで来なさい」
 凛「理子も!?理子はまだ中学生だよ!?」
 利恵「4月から高校生です。関係ありません。鬼の女の『元服』は『初潮が来たら』です。『初潮=処女卒業』です。それを何ですか、あなた達は!」
 凛「そんなこと言ったって……」
 愛原「いや、ちょっと2人とも!今、ヤベェ話してるから、ちょっと黙っててくれ!」
 利恵「も、申し訳ございません!ハードボイルド探偵の愛原先生には……西村寿行作品のような『おもてなし』が必要という情報を得まして……」
 愛原「その情報、どっから仕入れて来たァ!?」

 規制が緩々だった半世紀前の名作家である。
 エロ本はその頃から販売に規制がされつつも、小説に関しては手つかずだった。
 その為、うっかり読んでしまった中高生の性癖が飴細工の如く、ねじ曲がったことは言うまでもない。

 利恵「リサ姉様からです」
 凛「リサ先輩からです」
 愛原「やっぱり!」

 リサの部屋から、私が隠し持っていた西村寿行先生の作品が見つかったことから、リサが怪しいと思ったのだが、実際その通りだったようだ。
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