報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「中央自動車道と首都高速」

2022-04-29 21:49:03 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月28日17:30.天候:晴 東京都渋谷区代々木神園町 首都高速4号線・代々木パーキングエリア]

 中央自動車道をひたすら走った私達。
 途中で道路混雑に遭い、中・低速運転させられた箇所もあったが、それでも大きな渋滞に巻き込まれることはなかった。
 渋滞時間が決まっている平日ならではの状況と言えるだろう。
 で、首都高には夕方ラッシュが始まる頃に差し掛かった。
 そしてその頃に、リサ達が空腹を訴え始めた。
 よくよく考えてみれば、今日の昼食は早かった。
 そうなると、早めに腹が減るのは当然だろう。
 本当は高速を降りてからファミレスにでも入ろうかと考えていたのだが、その前に渋滞にハマったりすると大変だ。
 私は高橋に言って、代々木パーキングエリアに寄らせた。
 高橋は私の真意を知って、ニヤッと笑った。
 そこは元走り屋。
 代々木パーキングエリアに何があるのか知っているのだろう。

 

 S字カーブの途中に、パーキングの入口がある。
 そこに滑り込むようにして中に入った。

 

 まるで都会のガソリンスタンドのような佇まいだが、実はこれ、元々は料金所の跡である。
 道路の写真を見ると、S字カーブのようになっているが、元々は料金所の跡地をパーキングにしたので、こういう線形になったという。
 首都高には、こういった元料金所の跡地や、現料金所の敷地の一部をパーキングにした所がまま見受けられる。
 ドトールコーヒーの看板が目立つが、中には他にもレストランがある。
 途中には永福パーキングエリアもあったが、そこはトイレと自販機しか無かったので、食事をするには無理がある。
 そこで、この代々木パーキングエリアにした次第。

 愛原:「ここなら、食事ができるぞ」
 リサ:「おー!」

 レストランの名前は、“よよぎの森”という。
 レストランというよりも、フードコートのような佇まいだ。

 愛原:「何がいい?」
 リサ:「カツカレー!」(≧∇≦)
 愛原:「あいよ。皆は?」
 凛:「それじゃ、私もカツカレーで」
 理子:「わ、わたしも……」
 愛原:「了解。俺はハムカツカレーにするか」
 高橋:「じゃあ、俺も」
 愛原:「全員カレーだな」

 まあ、昼間は全員ラーメンだったので。
 因みにカツカレーには、サラダとスープも付いている。
 リサ達は、トンカツをバリボリ食べていた。
 これで少しは、暴走の危険性が抑えられたかな。

 愛原:「2人は菊川のホテルだったね?」
 凛:「はい」
 愛原:「車でホテルまで送って行くから」
 凛:「ありがとうございます」
 愛原:「明日は善場主任の所に書類を届けた後、東京見物と行こう。キミ達の場合、グルメツアーの方がいいかな?」
 凛:「た、助かります!」

 陸上部員である以上、食べてばかりではダメなのだろうが、今は活動中というわけではないのでということかな。
 因みに善場主任には既に連絡していて、斉藤元社長の意識はまだ元に戻っていないそうだ。
 ただ、意識が無いというだけで、瀕死の重傷というわけではないらしい。
 “青いアンブレラ”の病院船で治療でも受けたのか、治療された形跡はあるという。
 いずれにせよ、柏崎市内の病院は厳重に警戒が施されており、“青いアンブレラ”が来ても奪還されないようにしているとのことだ。
 何だろう?
 警察の機動隊でも配備されているのだろうか?
 病院の内外がいきなり厳重警備された、他の患者達も気が気でないだろうな。
 意識が戻ったら都内へ移送されるのだろうが、これとて厳重な警備態勢が取られるものと思われる。

 リサ:「御馳走様でした」
 愛原:「腹一杯になったか。良かったな?」
 リサ:「うん、腹7分目」
 愛原:「えっ?」
 リサ:「あとは食後のデザート。ドトールで買って来る」
 愛原:「マジか……」
 リサ:「ポイントカード溜まってるから、ポイントで手に入るはず」
 愛原:「な、なるほど……」
 理子:「お姉ちゃん、あっちにアイスの自販機あったよ」
 凛:「う、うん。私達はそっちに行こうか」

 さすがの上野姉妹も、半分は人間の血が入っているせいか、生粋のBOW(元人間)の食欲には少し退くらしい。
 アイスなら消化に良いからいいのだが、リサはドトールコーヒーでケーキを買って食べる始末であった。
 これで太らず、しかし体の成長が遅いのだから、変化のエネルギーは凄いのだろうと思う。
 あとは、体内に有しているGウィルスや寄生虫に栄養を持って行かれるというのもあるだろう(というか、多分これが大きいのでは?)。
 体内にGウィルスと特異菌を有してはいるが、寄生虫は有していない上野姉妹は、また体質が違うというのが分かる(変化の時に鬼の角が生えるのは、Gウィルスの影響らしい)。
 デザートを食べ終わった後は、トイレに行ったり、高橋はそれにプラス喫煙所で一服したり。
 私は食後のコーヒーを、外の自販機で購入した。
 ドリップ中に“コーヒールンバ”が流れる、紙コップタイプの自販機である。

 愛原:「昔、アラブの偉いお坊さんが♪……ってか」

 何だかんだ言って、1時間は休憩した。
 上野姉妹は、自販機や売店でお菓子やパンを買っていた。
 どうやら、夜食用らしい。
 ホテルで姉妹仲良く食べるのだろう。
 因みにリサも便乗して買っていたようで、それはさすがに注意した。

[同日19:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 リバーサイドホテル墨田・江東前]

 車がホテル前に到着する。

 愛原:「この辺だな。おーい、着いたぞー」

 私が振り向くと、リサを含めて3人の少女はウトウトしていた。
 特に、最年少の理子さんは完全に窓に寄り掛かって寝落ちしていた。

 愛原:「おーい、起きろー!」
 リサ:「……あ、もう着いたって」

 リサが真っ先に起きて、隣の凛を揺さぶった。

 凛:「……あ、はい」

 後ろに積んだ荷物を降ろして、取りあえず明日、事務所前に集合する旨約束して、それから別れた。
 朝食はホテルのサービスで出るらしい。
 なので、グルメツアーは昼以降だな。
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“私立探偵 愛原学” 「面会」

2022-04-29 15:06:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月28日13:30.天候:晴 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センター(地下研究施設)]

 藤野パーキングエリアをあとにした私達は、上野原インターで中央自動車道を降りた。
 そこから一般道でセンターに向かう。
 センターに入っても、すぐに面会できるわけではない。
 入構手続きから何やらで、正門に着いてから実際に面会に至るまで30分くらいは掛かるのである。

 守衛A:「面会できるのは、3人までです」
 愛原:「そうですか。それでは私とこちらの2名を……」
 リサ:「! 先生、それはキケンだよ!」
 愛原:「大丈夫だ。利恵さんは反省しているし、ここは警備も万全だから。それに、いざとなったらリサが助けに来てくれればいい」
 
 リサと高橋には控室で待っててもらって、私と上野姉妹で面会することにした。
 その前に、差し入れを出すことにする。
 やり方は監獄施設のそれと、殆ど同じであった。
 差入品としては、私は善場主任から預かった書類。
 上野姉妹は、現金や色々な物であった。
 東京拘置所と違い、差入店が近くにあるわけではないし、あくまでも収監しているのは、『人を食べた』または『人を食べそうになったBOW』である為、他の人間の犯罪者とは扱いが別なのだ。
 で、今のところ収監されているのは上野利恵1人だけである。
 日本版リサ・トレヴァーが収監されることも想定されたらしいが、結局そうなる前に全員死亡している。
 何か制限はあるのかというと、少なくとも姉妹が持ってきた差入品が返されることはなかった。
 自殺防止の為の長い紐付きの物とかは禁止だろうが、ここでは禁止ではないらしい(BOWが首吊り程度では死なない為か)。

 愛原:「面会時間はどれくらいですか?」
 守衛A:「いつでもいいですよ」
 愛原:「は?」
 守衛A:「収容者が1人しかいないので、特に制限時間は設けてません。ただ、遅くとも16時までには終了して頂きたいですね」

 とのこと。
 そこは拘置所の面会時間と変わらなかった。
 確か、東京拘置所も面会時間は16時までであった。
 但し、弁護士との接見の場合はこの限りではない。
 上野利恵には弁護士が付いていないが、デイライトは付いている。
 私が善場主任から書類を預かったのも、それだ。

 守衛B:「それじゃ、終了したら呼ぶように」
 上野利恵:「はい、ありがとうございます」

 面会室自体は、拘置所のそれと大して変わらなかった。
 ただ、拘置所の場合は刑務官が立ち会うのだが、ここでは特に守衛の立ち会いは無かった(因みに守衛は警備会社からの派遣ではなく、直接雇用の国家公務員である。国会警備の衛視や国立印刷局や造幣局の警備官と同様)。
 人間の犯罪者とは違うからだろう。
 もっとも、天井を見ればしっかり監視カメラが稼働しているから、それで監視はされているだろうが。

 愛原:「デイライトの善場主任から、あなた宛てに書類を預かってきました。後で差入品として渡されるはずなので、中をよく読んでおいてください」
 利恵:「はい。ありがとうございます」
 愛原:「それじゃ、私はこれで。あとは娘さん達と話をしておいてください」

 私はそう言って、退室した。
 利恵はグレーの囚人服のような服を着ていた。
 だが、首にランプの点いたチョーカーを着けている辺りが、人間の収容者ではないことを物語っている。

[同日16:00.天候:晴 同施設1F 体育館]

 施設の地上部は表向きの研修センターである為、体育館もある。
 新年度からはここを使用する公務員達がいるようだが、年度末は閑古鳥である。
 その為か、待っている間だけという条件で、体育館が解放された。

 高橋:「ほらよ!」
 リサ:「ん!」

 体育館が解放されると、リサと高橋はバスケットボールを持ち出し、1on1を始めた。
 リサは上着のパーカーを脱いで、下の白いシャツの状態で1on1に興じた。
 下は黒いスカートのままである。
 時折捲れて中がチラリと見えてしまうが、ショーツも黒いせいか、それが下着なのか、オーバーパンツなのかは分からない感じだった。
 体を動かす方が好きなリサには、良い暇潰しになったようだ。

〔ポーン♪ 「来訪者の愛原さん、来訪者の愛原さん。お連れ様と一緒に1F守衛所までお越しください」〕

 こんな館内放送が流れた。

 愛原:「おっ、もうこんな時間か。それじゃ、そろそろ行こうか。ボールはちゃんと元に戻してな」
 リサ:「はーい」

 片付けをしてから、1Fの守衛所に向かった。

 守衛A:「ご苦労さまでした。それでは、これが愛原さん宛ての『宅下げ品』です。ご確認ください」

 差入品として渡した茶封筒と同じ物を返された。
 どうやらこれは、上野利恵から善場主任宛てへの書類のようである。
 実は上野利恵はこれまでの態度が認められ、監視付きで特別に娘達の入学式への臨席が認められたのである。
 それに関する書類だと、私は聞いている。
 中をチラッと見ると、同意書とか誓約書とかが入っていた。
 これを善場主任に持って行けばいいのか。
 よし、明日持って行こう。

 高橋:「それじゃ俺、車持って来ます」
 愛原:「ああ、頼む」

 高橋は駐車場へ向かった。
 そこへ、研修棟から上野姉妹がやってくる。
 どうやら、面会が無事に終わったようだ。

 愛原:「ご苦労さん、どうだった?」
 凛:「はい。おかげさまで、いっぱい話せました」
 愛原:「そうか」
 凛:「あの……母は、いつ出られるんでしょうか?」
 愛原:「俺じゃ分からんなぁ……」
 守衛A:「それじゃ皆さん、こちらで退構手続きを」
 愛原:「お、そうでした」

 入構証の返却や、退構時の書類手続きなど。
 ここで見聞きした物については、一切口外しないという誓約書を記載して提出する。

 愛原:「それでは、お世話になりました」
 守衛A:「お気をつけて」

 車に乗り込むと、固く閉じられていた鉄扉が開放される。

 愛原:「帰りは相模湖インターから乗るか」
 高橋:「分かりました」

 私達はセンターをあとにし、中央道のインターへと向かった。
コメント (1)
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