報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「中央自動車道の旅」 2

2022-04-28 20:22:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月28日12:20.天候:晴 神奈川県相模原市緑区小渕 中央自動車道・藤野PA]

 昼食を食べ終わった私は、善場主任に電話してみた。
 だが、善場主任も忙しいのか、電話が繋がらなかった。
 取りあえず、お昼ぐらいに場所を移動することにした。
 石川PAにはお土産も売っているが、上京したての上野姉妹にはまだ買う段階に無いからだ。
 本当なら藤野の研究施設に行くには、相模湖インターで降りるのが良い。
 しかし、それだと石川PAの次に時間調整できるパーキングが無い為、その次の藤野PAで時間調整することにした。
 このPAの次は上野原インターであるが、そこからでも藤野の研究施設にはアクセスできる。

 

 藤野PAは石川PAと比べれば規模が小さい。
 下り線にあっては、フードコートはもちろんのこと、飲食店すら無い状態だ。
 辛うじてコンビニがあるくらいである。
 歩道の前に、斜めに車の頭を突っ込ませるようにして駐車し、出る場合はバックでというのは石川PAと同じ。
 東名高速で言えば、江北PA上り線みたいな構造だろうか。
 あそこは辛うじて食事できる所があるが、こちらには無い。
 また、賑わいもそこや石川PAほどではなかった。

 愛原:「ちょっと25分くらい休憩しよう。俺は電話するから、適当に45分までは車に戻るようにして」
 リサ:「はーい」

 平日ということもあってか、普通車よりも大型トラックの方が多いくらいだ。

 愛原:「あの窓から、研究施設が見えるかもな」

 歩道の前には透明の防音壁がある。
 そこ越しに、相模湖畔に建つ施設が見えるかもしれなかった。

 上野理子:「お姉ちゃん、見て。手紙のマーク」
 上野凛:「わっ、ホントだ!」

 パーキングエリアから南の山の方を見ると、そこにはラブレターのような封筒のオブジェが聳え立っている。
 その謂れも、ちゃんと看板が立っている。
 だいぶ古いように見えるが、平成元年に作られたそうなのでそのはずだ。
 私はスマホ片手に、コンビニ横のベンチに座り、善場主任に掛けようとした。

 愛原:「おっ!?」

 するとちょうどタイミング良く、善場主任から電話が掛かって来た。

 愛原:「はい、もしもし?」
 善場:「善場です。お疲れ様です」
 愛原:「善場主任、お疲れ様です」
 善場:「先ほどは電話に出れなくて申し訳ありません。今、どちらにいらっしゃいますか?」
 愛原:「中央道の藤野パーキングエリアです。ここで時間を調整中です」
 善場:「そうでしたか」
 愛原:「それより、ニュースで見ました。斉藤元社長が新潟で捕まったそうですね?」
 善場:「意識不明ですので、まだ逮捕はされていません。私も今から新潟へ向かうところです」
 愛原:「そうですか。私達は……」
 善場:「愛原所長方は、上野姉妹を看ていてください」
 愛原:「分かりました。斉藤元社長は、北朝鮮から来たのでしょうか?」
 善場:「可能性は十分に有り得ます。あの高野自身、私はコリアンだと思っています」
 愛原:「ええっ!?」
 善場:「つまり、韓国または北朝鮮のスパイですね。気を付けてください。北朝鮮の拉致手法を逆手に取って、彼らは斉藤容疑者を日本に送致して来たのです。愛原所長方が拉致されないとも限りませんから」
 愛原:「そ、それは困ります」

 高野君、在日朝鮮人だったの!?
 い、いや、高野という名字も通名でまま見られるものではあるが……。
 本名は『高(コ)』か。
 エイダ・ウォンじゃなかったのね。

 善場:「外務省の関連団体とも調整して対応しております。何か分かりましたら、愛原所長にもお知らせしますので、もう少しお待ちください」

 外務省出て来た!
 ということは、やっぱりデイライトさんは別の省庁の関連団体だったのだ。

 善場:「資金は足りていますか?何しろ大食のBOWが3人もいますからね」
 愛原:「それは大丈夫です」
 善場:「いいですか?くれぐれも、彼女達を暴走させるようなことはしてなりませんよ?半分人間の血が入っているとはいえ、もう半分はBOWの血ですから」
 愛原:「分かってますよ」

 暴走させなければ、自由に接して構わないということでもある。
 その辺、お役所関係は細かな指示を出さない。
 もしも細かく指示を出して失敗しようものなら、当然その責任を問われるからだ。
 お役人達は、そんな責任など取りたがらない。
 だから、危ない橋は民間委託して渡らせるのである。
 自分達は安全な場所にいて責任逃れできるし、何かあったとしても、『民間業者に委託して、それなりのことは対応していた』と言い訳もできる。
 そういうものだ。
 もっとも、善場主任の方はまだ現場に出て対応している方だとは思うけどな。
 こちらとしても、破格の報酬は出してもらえるのだから、文句は無い。

 高橋:「先生、ちょっとタバコ買ってきます」
 愛原:「ああ」

 高橋はコンビニの中に入っていった。
 ふと、遠くから列車の走行音が聞こえて来た。
 この近くには、中央本線が通っており、そこを走る貨物列車の音だった。
 私もトイレに行っておくことにした。

 凛:「あっ、愛原先生」
 愛原:「よう。リサはどうした?」
 凛:「トイレが空くのを待ってます」
 愛原:「女子トイレ、混んでるんだ?」
 凛:「というか、和式しか空いてないので、洋式待ちです。私達は別に和式でもいいんですけどね」
 愛原:「ああ、そういうことか……」

 別に、リサも和式が使えないわけではない。
 ただ、アンブレラの研究所にいた時、実験や観察と称して、研究員達の見ている前で排尿、排便させられるという屈辱を味わったが為に、和式にはそういうトラウマがあるからだ。
 その公開排便は、和式便器で行われたそうなので。

 凛:「東京中央学園のトイレは洋式なんですね」
 愛原:「洋式もあるし、和式もある。両方だな」

 もちろん、私は男子トイレしか入ったことが無いが、男子トイレでそうなのだから、女子トイレもそうなのだろうと想像している。
 リサはその辺何も言ってこないから、実際そうなのだろう。
 もっとも、さすがに旧校舎は和式のみだが。

 愛原:「ああ……これから入学するキミ達にこんなことを言うのはアレなんだけど……」
 凛:「何ですか?」
 愛原:「中等部も高等部も、他の学校と比べて異様に怪談話が多いみたいだよ?」

 もっとも、リサがその話を鋭意更新中w
 『暗くなる前に下校しないと、校舎内を徘徊する鬼が現れて捕まる』『放課後の技術室からヤスリで何かを研ぐ音がする』『放課後の女子トイレから呻き声が聞こえる』などなど、犯人は全部リサだ。

 凛:「本当ですか!面白そうですね!」
 理子:「お化けさんと勝負できるかな!?」
 愛原:「……う、うん。そだねー……」

 2人の半鬼姉妹は怖がるどころが、むしろ楽しみにする始末であった。
 半分は人間の血が入っているはずだが、この辺の感覚のズレはBOWか。
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“私立探偵 愛原学” 「中央自動車道の旅」

2022-04-28 14:48:08 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月28日10:45.天候:晴 東京都八王子市石川町 中央道・石川PA]

 

 首都高に入ってから、およそ1時間足らずで中央自動車道の石川パーキングエリアに到着した。
 ここは起点の高井戸インターから下り線に入って、最初のパーキングエリアである。
 逆に上り線側から見れば、中央道最後のパーキングエリアということもあり、パーキングエリアにしては規模が大きめに造られている。
 この傾向は、東北自動車道の羽生パーキングエリアでも見られる。

 高橋:「はい、到着っス」
 愛原:「お疲れさん」

 高橋が車を止めると、私は後ろを振り向いて言った。

 愛原:「それじゃ、ここで休憩だよ」
 リサ:「おー、八王子ラーメン!」
 愛原:「やっぱり行く気か」

 まあ、どっちみち時間調整はしないといけないからな……。
 私も車を降りた。

 愛原:「その前にトイレだ」
 上野凛:「あ、私も行きます。理子も行こう」
 高橋:「俺は一服してから……」

 まだお昼前ということもあり、フードコートは空いていた。
 その中に八王子ラーメンを売る『麺や石川』という店があり、そこで八王子ラーメンを食べることができる。
 トイレやら一服やら済ませてから向かうと、既にリサが券売機の前で待機していた。

 愛原:「で、何にするんだ?」
 リサ:「いえーい!先生の奢り!」
 凛:「いいんですか!?」
 愛原:「上京中のキミ達の面倒を見ることは、善場主任の依頼だからな」

 他にも任務はあるが、今のところはそれ。
 どうもデイライトは、BOWや半BOW(人間とのハーフをそう呼んでいいのか?)を中央に集約したいらしい。
 東京中央学園への進学をこの姉妹に勧めたのも、それが狙いであるようだ。
 もちろん、その前にリサもそうだったのだが。

 凛:「御馳走様です」
 理子:「ありがとうございます」
 高橋:「ゴチになります!」
 愛原:「いや、高橋は自分で出せよ」
 高橋:「ええっ!?」
 愛原:「オマエ、競馬とオートレースで給料より稼いでるんだろうが……」
 高橋:「何でバレてるし!?」
 愛原:「バレバレだっつーの!」

 私は券売機に現金を突っ込んだ。

 愛原:「何でも好きなの頼んでいいぞー」
 リサ:「厚切りチャーシューましまし麺」
 愛原:「いきなりヘヴィなの行くな!」
 凛:「八王子ラーメンミニチャーハンセットいいですか?」
 愛原:「おっ、いいぞ」
 理子:「わたしも、お姉ちゃんと同じので」
 愛原:「あいよ。俺は……普通のチャーシュー麺にしよう」
 高橋:「じゃあ、俺も……」

 ここには他にもカレーやソバもあるのだが、誰も注文しなかった。
 カウンター席に横並びに座る。
 天井からはテレビがぶら下がっていた。
 しばらくして、自分の番号が呼ばれる。
 こういうフードコートは、全てセルフサービスだ。

 愛原:「リサの……凄いな」
 リサ:「いただきまーす」

 リサならラーメン二郎でも余裕で完食できるだろう。
 ぶっちゃけ半分人間の血が入っている上野姉妹よりも成長が遅そうなリサだが、こんな小さな体のどこにそんなボリューミーなラーメンが入るのか不思議でしょうがない。
 いや、そのエネルギーは変化の際に消費されることは知っているのだが、要はその前の話だ。

 凛:「リサ先輩は、そういう普通の食べ物が食べれるから人食いをせずに済んでいるんですね」
 愛原:「そうなのか」
 凛:「人食いをする奴らは、味覚がおかしくなるんです。普通の人間の食べる物が何でも不味く感じて、受け付けなくなる。その代わり、人間の血肉が美味しく感じて仕方なくなるんだそうです」
 愛原:「なるほどな」

 『1番』もかつてはそうだったらしいが、それでも最終的には人間の食べ物を受け付けなくなり、人食いに至っている。
 今のところリサは、普通に人間の食事ができているが……。
 その為か、デイライトさんから依頼されているリサの監視内容に、食事内容も報告内容に入っているのである。
 今日の昼は……八王子ラーメン厚切りチャーシュー増し増しっと。

 愛原:「こりゃ美味い。また、あえて長ネギ無しの玉ねぎのみじん切り入りというのは新鮮だな」

 これが八王子ラーメンの特徴。
 因みに上野姉妹は食べる前に、写真を撮っていた。
 まあ、これも東京都内の名物の1つか。
 東京郊外はこれでいいとして、都心だと……。
 荻窪にも名物ラーメンがあったような気がするのだが、そこに本部のある妙観講員の食べログを待つ。【お察しください】。

〔「ここで速報が入って来ました」〕

 食べ終わってからふと上を見上げると、テレビが速報を伝え始めた。

〔「新潟県柏崎市の海岸で、不審なコンテナが流れ着いているとの通報が警察に寄せられ、駆け付けた警察官が中を確認した所、大日本製薬の元代表取締役社長の斉藤秀樹容疑者を発見しました」〕

 愛原:「ぶっ!」
 高橋:「ファッ?!」
 リサ:「んん?!」
 凛:「はい?」
 理子:「?」

〔「発見当時、斉藤容疑者は意識不明の状態であった為、駆け付けた警察官は消防へ通報、市内の病院に搬送されました。容体については意識不明ということ以外には、まだ不明です。尚、斉藤容疑者が入っていたコンテナにはハングル文字が書かれており、このコンテナが韓国または北朝鮮から流れて来たものと見て、調べを進めています」〕

 愛原:「日本海の警備ってザルか?」
 高橋:「今でも北朝鮮の工作員が上陸しようと思えばできるらしいっスからねぇ……」
 愛原:「ああ、そうか。オマエは新潟出身なんだったな」

 “青いアンブレラ”って、北朝鮮にも顔が利くのか?

 高橋:「アネゴから連絡は?」
 愛原:「いや、無い。何だ?斉藤元社長は、“青いアンブレラ”からも見捨てられたのか?」

 私は後で善場主任に連絡しようと思った。
コメント (1)
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