報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「半鬼姉妹の上京」

2022-04-26 20:19:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月28日09:28.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅・東北新幹線ホーム]

〔「21番線、ご注意ください。“なすの”268号の到着です。折り返しは……」〕

 私は高橋とリサを伴って、東京駅の新幹線ホームにいる。
 東北新幹線は3月16日の地震のせいで、未だに不通区間が存在していた。
 幸いながら、彼女らが乗って来るのは栃木県からであり、“なすの”号にあっては基本的に通常運転である。

〔「……郡山行きとなります。終点の郡山で、臨時快速列車に接続しております。ご利用のお客様には御不便をお掛けし、申し訳ございません」〕

 エメラルドグリーンが映えるE5系電車が入線してきた。
 その10両編成だけで、後ろに付属の編成を従えているということは無い。

〔「ご乗車ありがとうございました。東京、東京、終点です。お忘れ物、落とし物の無いよう、お降りください。21番線に到着の電車は、那須塩原からの“なすの”268号です。折り返しは……」〕

 先頭の1号車から見覚えのある顔と、初めて見る顔が降りて来た。
 1人は日焼けしていて(或いは元からか?)、リサよりも更に髪を短くボーイッシュに切った上野凛さんと、妹の上野理子さんである。
 妹さんは姉とは対照的に日焼けしておらず、肩から下までの髪を2つ結びにしている。
 凛さんはデニムのショートパンツ姿だったが、理子さんは紺色のスカートを穿いていた。
 リサはというと、チェーン付きの黒いプリーツスカートを穿いている。
 どちらも、裾は短い。

 上野凛:「お久しぶりです!今日からよろしくお願いします!」

 凛さんは私達の姿を見ると、体育会系の陸上部員らしく、すぐに挨拶してきた。

 愛原:「ああ、よろしくな」
 上野理子:「リサ先輩ですね。私は上野理子です。上野凛の妹です。よろしくお願いします」
 リサ:「ああ。よろしくな」

 リサは私のセリフをマネして言った。

 凛:「あの、今日は金髪のお兄さんは一緒じゃないんですか?」
 愛原:「高橋はタバコ吸ってるよ。全く、もう列車が来たってのに……」

 私はホーム先端部分にある喫煙所を指さした。

 愛原:「リサ、ちょっと呼んできてくれないか?」
 リサ:「うん、分かった。……フフ、先輩かぁ……」

 リサは後輩(BOWの?)ができることが嬉しいようだった。
 ただ、BOWとはあくまでも人工的に製造された生物兵器の事を言う。
 BSAAの定義では、『元となる生物を、特殊な技術で改造した生物を兵器として悪用すること』とある。
 生物なら何でもよく、リサやタイラント、ネメシスは人間を改造したものである。
 霧生市に現れたとされる三つ首のケルベロスのような犬型のBOWも、元はドーベルマンを改造したのでBOWなのである。
 つまり、改造されたわけではないゾンビやリッカーはBOWとは言わない。

 愛原:「ちょっと待っててな。今、リサが高橋呼んで来るから」
 凛&理子:「はい」

 それからしばらくして、喫煙所からリサと高橋が戻って来た。

 高橋:「サーセン!吸い溜めしてて……」
 愛原:「おいおい、時間無いんだから頼むよ」
 高橋:「まさか、借りて来たレンタカーが禁煙車とは……」
 愛原:「少しはタバコを控えろよ、オマエ……。今時、パチンコ屋でも禁煙だぞ?」
 高橋:「それなんスよねぇ……」

[同日09:50.天候:晴 同地区内 JR東京駅→八重洲地下駐車場]

 私達は東京駅八重洲南口を出ると、そのまま地下への階段を下りた。
 そこは八重洲地下街なのであるが、更に地下へと下りる階段がある。
 その先には広大な駐車場がある。

 愛原:「えーと……この車だ」

 商用バンで有名な車種であるが、5ナンバーワゴンとしてのグレードもあり、たまにタクシーでも存在する。

 愛原:「皆は後ろに乗ってくれ」
 リサ:「分かった」
 愛原:「荷物は後ろに乗せてくれな?」
 凛:「分かりました」

 私は助手席に座り、鬼娘達はリアシートに3人横になって座った。
 中高生の少女達なので、そんなに窮屈感は無い。

 高橋:「それじゃ、ひたすら高速行きますんで、いいっスか?」
 愛原:「いいぞ。ETCカードは大丈夫か?」
 高橋:「OKっス」
 愛原:「よし、それじゃ出発」
 高橋:「はい!」

 高橋は車を発進させた。

 愛原:「高速はどこからが近い?」
 高橋:「ここは東駐車場なんで、八重洲通りに出る形っスね。なもんで、宝町から入る形になると思います」
 愛原:「なるほど。宝町ね」

 私はカーナビを見た。
 走り屋であった高橋は最近できた道路はともかく、昔からある高速道路については熟知しているので、カーナビはあくまで現在地を確認するだけの代物かもしれない。
 果たして高橋の言う通り、駐車場の出口は八重洲通りにあった。
 東北急行バスの乗降場のある付近である。
 しかし、中央分離帯から出入りする形になるので、入場する分についてはともかく、出場の際には十分を気をつけなくてはならない。
 一応、カーブミラーは付いているのだが……。

 愛原:「途中、どこで休憩するかな……」
 高橋:「石川パーキングにしますか?それとも、藤野?」
 愛原:「石川パーキングに止まろう。リサも腹減るだろうしな」
 リサ:「八王子ラーメン食べたい」
 愛原:「やっぱりなぁ……」
 凛:「八王子ラーメンって美味しいんですか?」
 リサ:「美味しい!長ネギの代わりに玉ねぎが入ってるのがいい!」
 凛:「これも東京の名物ですね!是非、試してみたいです!」
 リサ:「だって?先生」
 愛原:「分かった分かった。どうせ藤野に着く頃には、ちょうど昼の時間帯だから、すぐに面会できないだろうしな」
 凛:「そうなんですか?」
 愛原:「午後イチってことになるだろうね」

 今回の上野姉妹の目的は、藤野の研究施設に収容されている母親への面会と、東京見物である。

 高橋:「面会時間はどれくらいなんスか?」
 愛原:「そこは刑務所や拘置所に合わせてるみたいだよ?」
 高橋:「ということは、最低30分ってことっスか」
 理子:「30分だけなんですか!?」
 愛原:「いや、あくまで最低30分ってことだよ。ほら、刑務所や拘置所は多くの収容者がいるから、時間を区切らないといけないんだ。だけど、キミらのお母さんの場合、1人だけだからね。そういう気遣いも要らないだろうし。1時間ぐらいOKだったりするんじゃないの?」
 理子:「何だ、そうですか……」

 私を捕食及び性的に襲った罪でBSAAに捕獲された母親であるが、その後は正気を取り戻し、研究施設内ではおとなしく過ごしているという。
 その態度が評価され、面会時間の延長とかが認められれば、娘達も万々歳だろう。
 車は宝町出入口から首都高速都心環状線(C1)に入ると、三宅坂ジャンクション方面に向かった。
 そこからは首都高速4号新宿線に入ることができ、それを西進すれば中央自動車道である。
 高橋がややハイテンション気味なのは、C1が走り屋で有名なルーレット族の出没スポットだからだろう。
 さすがに、こんなド平日の午前中からそんな車はいなかったが。
コメント
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