[3月29日10:00.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]
デイライトでの善場主任の話は、主に上野利恵の処遇についてであった。
さすがにまだ釈放することはできないものの、上野姉妹の入学式には特別に臨席できるよう取り計らうという。
先に妹の理子の入学式が4月6日にあり、その次の高等部の入学式が7日にある。
そこで利恵は5日に都内入りし、都内に2泊する形で滞在するという。
もちろん、その間はずっと監視付きだ。
善場:「錦糸町のホテルに滞在してもらいます。ここなら上野高校にも墨田中学校にも出やすいので」
愛原:「それはいいですね」
善場:「但し、一緒に滞在することはできません」
凛:「……ですよね」
そういう話に終始した。
それが終わってから、次に向かう。
愛原:「2人とも、ご苦労さん。取りあえず、入学式はお母さん出られて良かったな?」
凛:「そうですね」
理子:「…………」
卒業式は出られなかったので。
リサ:「先生、次はどこに行く?」
愛原:「まずは山手線で、渋谷に行こうと思う」
本当は都営バスや銀座線で行くのが早い。
だが、JRもついでに乗っておいて、元を取ろうと思ったのだ。
それに、リサはなるべく地上を行きたいだろうし。
他の皆は、特に異論を出して来なかった。
愛原:「その後は原宿だな。原宿で、クレープ御馳走してあげるよ」
リサ:「おー!クレープ!」
[同日10:11.天候:晴 同地区内 JR新橋駅→山手線929G電車最後尾車両]
〔まもなく4番線に、品川、渋谷方面行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください〕
新橋駅で山手線電車を待つ。
新橋駅のホームはカーブしているので、安全の為に立ち番の駅員が常駐している。
〔「4番線、ご注意ください。山手線、品川、渋谷方面行きが参ります」〕
風を切って新しい電車が入線してくる。
〔しんばし~、新橋~。ご乗車、ありがとうございます〕
ホームはカーブしているが、ちゃんとホームドアが設置されている。
さすがに朝ラッシュも終わっているので、電車は混んでいない。
私も空いている座席に腰かけさせてもらった。
すぐにホームから発車メロディが流れてくる。
〔4番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
JRの電車は2点チャイムを3回鳴らして、ドア開閉する。
しかしこれは、都営新宿線の都営車と同じだ。
駆け込み乗車があったのか、何回か再開閉してやっとドアが閉まる。
〔「駆け込み乗車はおやめください」〕
そして、電車は半ば急加速するような感じで発車した。
〔次は浜松町、浜松町。お出口は、左側です。東京モノレール羽田空港線、都営地下鉄浅草線と都営地下鉄大江戸線はお乗り換えです〕
高橋:「先生の計画では、渋谷、原宿ときて、次は新宿ですか?」
愛原:「おっ、よく分かったな。新宿で昼飯でも食おうと思う」
高橋:「それはいいですね」
愛原:「午後は山手線の外側に出るぞ」
高橋:「ほお……」
[同日13:00.天候:晴 東京都新宿区西新宿 新宿アイランドB1F・雛鮨]
リサは本当に食べ物だけを漁っていたが、半分人間の血が入っている上野姉妹はそこまででもなく、渋谷や原宿のファッションに興味を示した。
そこは普通のティーンズといったところか。
栃木でも宇都宮辺りまで行かないとそういう服が買えないのか、そこで買っていた。
これが自分達の土産のようなものであろうか。
リサはあんまり興味を示さなかったが、たまにはもっとファッションに興味を持つように言ったところ、
リサ:「渋谷系ギャルになれって?先生、ギャル物好きだったっけ?ロリ系は好きみたいだけど」
などと言ってきたので、軽くゲンコツしておいた。
原宿に移動すると、さすがに3人の少女はクレープを食べたが、他にもチュロスとか、原宿って案外グルメな町だったのね。
で、昼は西新宿のビルにある寿司屋で寿司食べ放題にしようと思った。
実はこの寿司屋、手持ちの東京フリーきっぷで料金が割引になるのである。
果たして、私は元が取れるかどうか分からない。
だが、このコ達が元を取ってくれるものと信じていた。
そして、板長氏の表情から、それに成功したのだと確信した。
[同日14:10.天候:晴 同地区内 都営地下鉄都庁前駅→大江戸線1317B電車先頭車内]
リサ:「あー、美味しかった」
愛原:「さようで……」
私はさすがに手持ちの漢方胃腸薬を使わざるを得なかった。
リサ達に合わせて食べたのでは、こちらの胃袋が破裂してしまう。
リサ:「次はどこに連れて行ってくれるの?」
高橋:「新宿の次は、山手線の外側に出るということでしたが……」
愛原:「ああ。今度は映画を観に連れて行ってやるぞ」
高橋:「映画ですか。御言葉ですが、映画くらいならこいつらの田舎でも観れると思いますが……」
愛原:「まあ、そうなんだが。BOWのこいつらに、見せておきたい映画があるんだよ。で、その料金も、このフリーきっぷで割引になるから」
高橋:「そうですか」
愛原:「まあ、とにかく行こうや」
高橋:「はい」
今度は都営大江戸線のホームに向かう。
〔まもなく4番線に、光が丘行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕
やってきた電車は、そんなに混んでいなかった。
まだこの時間は帰宅ラッシュでもない為、むしろ新宿方面の方が乗客が多いくらいで、放射部の光が丘行きは空いていた。
〔とちょうまえ、都庁前。飯田橋、両国方面はお乗り換えです〕
硬いクッションの赤い座席に腰かける。
〔4番線から、光が丘行き電車が発車します。閉まるドアに、ご注意ください〕
ホームの自動放送と車外スピーカーからの発車メロディが同時に鳴る。
その方が駆け込み乗車も無いのだろうか、再開閉せずに1回で閉まり切った。
電車がスーッと走り出す。
〔都営大江戸線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、光が丘行きです。次は西新宿五丁目(清水橋)、西新宿五丁目(清水橋)。お出口は、右側です〕
都営大江戸線の特徴にはいくつかあるが、コロナ禍になってから特に酷くなったものがある。
それは騒音だ。
元々がカーブの多い路線なので、電車がカーブを曲がる度に車輪の軋む音がトンネル内に響く。
窓を閉めていても気になる程なのに、コロナ禍で換気促進の為に窓を開けていると、余計にやかましいのである。
似たような構造で開通した仙台市地下鉄東西線を走る車両は、窓が一切開かないタイプである。
正直、そっちが良いのではと思った。
理子:「東京の電車ってスゴいね、お姉ちゃん」
凛:「そ、そうだねー」
理子は両耳を押さえながら言った。
リサなど、頭からフードを被ったほどである。
高橋:「大江戸線って、電車ん中でもWi-Fiあるんスね」
高橋の方は暢気だ。
だが、Wi-Fiが繋がると知った瞬間、リサも自分のスマホでWi-Fiに接続した。
中高生のプランだと、どうしてもギガ数が限られているので、Wi-Fiが繋がる環境は重要だとリサはとても理解していた。
デイライトでの善場主任の話は、主に上野利恵の処遇についてであった。
さすがにまだ釈放することはできないものの、上野姉妹の入学式には特別に臨席できるよう取り計らうという。
先に妹の理子の入学式が4月6日にあり、その次の高等部の入学式が7日にある。
そこで利恵は5日に都内入りし、都内に2泊する形で滞在するという。
もちろん、その間はずっと監視付きだ。
善場:「錦糸町のホテルに滞在してもらいます。ここなら上野高校にも墨田中学校にも出やすいので」
愛原:「それはいいですね」
善場:「但し、一緒に滞在することはできません」
凛:「……ですよね」
そういう話に終始した。
それが終わってから、次に向かう。
愛原:「2人とも、ご苦労さん。取りあえず、入学式はお母さん出られて良かったな?」
凛:「そうですね」
理子:「…………」
卒業式は出られなかったので。
リサ:「先生、次はどこに行く?」
愛原:「まずは山手線で、渋谷に行こうと思う」
本当は都営バスや銀座線で行くのが早い。
だが、JRもついでに乗っておいて、元を取ろうと思ったのだ。
それに、リサはなるべく地上を行きたいだろうし。
他の皆は、特に異論を出して来なかった。
愛原:「その後は原宿だな。原宿で、クレープ御馳走してあげるよ」
リサ:「おー!クレープ!」
[同日10:11.天候:晴 同地区内 JR新橋駅→山手線929G電車最後尾車両]
〔まもなく4番線に、品川、渋谷方面行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください〕
新橋駅で山手線電車を待つ。
新橋駅のホームはカーブしているので、安全の為に立ち番の駅員が常駐している。
〔「4番線、ご注意ください。山手線、品川、渋谷方面行きが参ります」〕
風を切って新しい電車が入線してくる。
〔しんばし~、新橋~。ご乗車、ありがとうございます〕
ホームはカーブしているが、ちゃんとホームドアが設置されている。
さすがに朝ラッシュも終わっているので、電車は混んでいない。
私も空いている座席に腰かけさせてもらった。
すぐにホームから発車メロディが流れてくる。
〔4番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
JRの電車は2点チャイムを3回鳴らして、ドア開閉する。
しかしこれは、都営新宿線の都営車と同じだ。
駆け込み乗車があったのか、何回か再開閉してやっとドアが閉まる。
〔「駆け込み乗車はおやめください」〕
そして、電車は半ば急加速するような感じで発車した。
〔次は浜松町、浜松町。お出口は、左側です。東京モノレール羽田空港線、都営地下鉄浅草線と都営地下鉄大江戸線はお乗り換えです〕
高橋:「先生の計画では、渋谷、原宿ときて、次は新宿ですか?」
愛原:「おっ、よく分かったな。新宿で昼飯でも食おうと思う」
高橋:「それはいいですね」
愛原:「午後は山手線の外側に出るぞ」
高橋:「ほお……」
[同日13:00.天候:晴 東京都新宿区西新宿 新宿アイランドB1F・雛鮨]
リサは本当に食べ物だけを漁っていたが、半分人間の血が入っている上野姉妹はそこまででもなく、渋谷や原宿のファッションに興味を示した。
そこは普通のティーンズといったところか。
栃木でも宇都宮辺りまで行かないとそういう服が買えないのか、そこで買っていた。
これが自分達の土産のようなものであろうか。
リサはあんまり興味を示さなかったが、たまにはもっとファッションに興味を持つように言ったところ、
リサ:「渋谷系ギャルになれって?先生、ギャル物好きだったっけ?ロリ系は好きみたいだけど」
などと言ってきたので、軽くゲンコツしておいた。
原宿に移動すると、さすがに3人の少女はクレープを食べたが、他にもチュロスとか、原宿って案外グルメな町だったのね。
で、昼は西新宿のビルにある寿司屋で寿司食べ放題にしようと思った。
実はこの寿司屋、手持ちの東京フリーきっぷで料金が割引になるのである。
果たして、私は元が取れるかどうか分からない。
だが、このコ達が元を取ってくれるものと信じていた。
そして、板長氏の表情から、それに成功したのだと確信した。
[同日14:10.天候:晴 同地区内 都営地下鉄都庁前駅→大江戸線1317B電車先頭車内]
リサ:「あー、美味しかった」
愛原:「さようで……」
私はさすがに手持ちの漢方胃腸薬を使わざるを得なかった。
リサ達に合わせて食べたのでは、こちらの胃袋が破裂してしまう。
リサ:「次はどこに連れて行ってくれるの?」
高橋:「新宿の次は、山手線の外側に出るということでしたが……」
愛原:「ああ。今度は映画を観に連れて行ってやるぞ」
高橋:「映画ですか。御言葉ですが、映画くらいならこいつらの田舎でも観れると思いますが……」
愛原:「まあ、そうなんだが。BOWのこいつらに、見せておきたい映画があるんだよ。で、その料金も、このフリーきっぷで割引になるから」
高橋:「そうですか」
愛原:「まあ、とにかく行こうや」
高橋:「はい」
今度は都営大江戸線のホームに向かう。
〔まもなく4番線に、光が丘行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕
やってきた電車は、そんなに混んでいなかった。
まだこの時間は帰宅ラッシュでもない為、むしろ新宿方面の方が乗客が多いくらいで、放射部の光が丘行きは空いていた。
〔とちょうまえ、都庁前。飯田橋、両国方面はお乗り換えです〕
硬いクッションの赤い座席に腰かける。
〔4番線から、光が丘行き電車が発車します。閉まるドアに、ご注意ください〕
ホームの自動放送と車外スピーカーからの発車メロディが同時に鳴る。
その方が駆け込み乗車も無いのだろうか、再開閉せずに1回で閉まり切った。
電車がスーッと走り出す。
〔都営大江戸線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、光が丘行きです。次は西新宿五丁目(清水橋)、西新宿五丁目(清水橋)。お出口は、右側です〕
都営大江戸線の特徴にはいくつかあるが、コロナ禍になってから特に酷くなったものがある。
それは騒音だ。
元々がカーブの多い路線なので、電車がカーブを曲がる度に車輪の軋む音がトンネル内に響く。
窓を閉めていても気になる程なのに、コロナ禍で換気促進の為に窓を開けていると、余計にやかましいのである。
似たような構造で開通した仙台市地下鉄東西線を走る車両は、窓が一切開かないタイプである。
正直、そっちが良いのではと思った。
理子:「東京の電車ってスゴいね、お姉ちゃん」
凛:「そ、そうだねー」
理子は両耳を押さえながら言った。
リサなど、頭からフードを被ったほどである。
高橋:「大江戸線って、電車ん中でもWi-Fiあるんスね」
高橋の方は暢気だ。
だが、Wi-Fiが繋がると知った瞬間、リサも自分のスマホでWi-Fiに接続した。
中高生のプランだと、どうしてもギガ数が限られているので、Wi-Fiが繋がる環境は重要だとリサはとても理解していた。