報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「半鬼姉妹の都内観光」

2022-04-30 20:33:26 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月29日10:00.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 デイライトでの善場主任の話は、主に上野利恵の処遇についてであった。
 さすがにまだ釈放することはできないものの、上野姉妹の入学式には特別に臨席できるよう取り計らうという。
 先に妹の理子の入学式が4月6日にあり、その次の高等部の入学式が7日にある。
 そこで利恵は5日に都内入りし、都内に2泊する形で滞在するという。
 もちろん、その間はずっと監視付きだ。

 善場:「錦糸町のホテルに滞在してもらいます。ここなら上野高校にも墨田中学校にも出やすいので」
 愛原:「それはいいですね」
 善場:「但し、一緒に滞在することはできません」
 凛:「……ですよね」

 そういう話に終始した。
 それが終わってから、次に向かう。

 愛原:「2人とも、ご苦労さん。取りあえず、入学式はお母さん出られて良かったな?」
 凛:「そうですね」
 理子:「…………」

 卒業式は出られなかったので。

 リサ:「先生、次はどこに行く?」
 愛原:「まずは山手線で、渋谷に行こうと思う」

 本当は都営バスや銀座線で行くのが早い。
 だが、JRもついでに乗っておいて、元を取ろうと思ったのだ。
 それに、リサはなるべく地上を行きたいだろうし。
 他の皆は、特に異論を出して来なかった。

 愛原:「その後は原宿だな。原宿で、クレープ御馳走してあげるよ」
 リサ:「おー!クレープ!」

[同日10:11.天候:晴 同地区内 JR新橋駅→山手線929G電車最後尾車両]

〔まもなく4番線に、品川、渋谷方面行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください〕

 新橋駅で山手線電車を待つ。
 新橋駅のホームはカーブしているので、安全の為に立ち番の駅員が常駐している。

〔「4番線、ご注意ください。山手線、品川、渋谷方面行きが参ります」〕

 風を切って新しい電車が入線してくる。

〔しんばし~、新橋~。ご乗車、ありがとうございます〕

 ホームはカーブしているが、ちゃんとホームドアが設置されている。
 さすがに朝ラッシュも終わっているので、電車は混んでいない。
 私も空いている座席に腰かけさせてもらった。
 すぐにホームから発車メロディが流れてくる。

〔4番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 JRの電車は2点チャイムを3回鳴らして、ドア開閉する。
 しかしこれは、都営新宿線の都営車と同じだ。
 駆け込み乗車があったのか、何回か再開閉してやっとドアが閉まる。

〔「駆け込み乗車はおやめください」〕

 そして、電車は半ば急加速するような感じで発車した。

〔次は浜松町、浜松町。お出口は、左側です。東京モノレール羽田空港線、都営地下鉄浅草線と都営地下鉄大江戸線はお乗り換えです〕

 高橋:「先生の計画では、渋谷、原宿ときて、次は新宿ですか?」
 愛原:「おっ、よく分かったな。新宿で昼飯でも食おうと思う」
 高橋:「それはいいですね」
 愛原:「午後は山手線の外側に出るぞ」
 高橋:「ほお……」

[同日13:00.天候:晴 東京都新宿区西新宿 新宿アイランドB1F・雛鮨]

 リサは本当に食べ物だけを漁っていたが、半分人間の血が入っている上野姉妹はそこまででもなく、渋谷や原宿のファッションに興味を示した。
 そこは普通のティーンズといったところか。
 栃木でも宇都宮辺りまで行かないとそういう服が買えないのか、そこで買っていた。
 これが自分達の土産のようなものであろうか。
 リサはあんまり興味を示さなかったが、たまにはもっとファッションに興味を持つように言ったところ、

 リサ:「渋谷系ギャルになれって?先生、ギャル物好きだったっけ?ロリ系は好きみたいだけど」

 などと言ってきたので、軽くゲンコツしておいた。
 原宿に移動すると、さすがに3人の少女はクレープを食べたが、他にもチュロスとか、原宿って案外グルメな町だったのね。
 で、昼は西新宿のビルにある寿司屋で寿司食べ放題にしようと思った。
 実はこの寿司屋、手持ちの東京フリーきっぷで料金が割引になるのである。
 果たして、私は元が取れるかどうか分からない。
 だが、このコ達が元を取ってくれるものと信じていた。
 そして、板長氏の表情から、それに成功したのだと確信した。

[同日14:10.天候:晴 同地区内 都営地下鉄都庁前駅→大江戸線1317B電車先頭車内]

 リサ:「あー、美味しかった」
 愛原:「さようで……」

 私はさすがに手持ちの漢方胃腸薬を使わざるを得なかった。
 リサ達に合わせて食べたのでは、こちらの胃袋が破裂してしまう。

 リサ:「次はどこに連れて行ってくれるの?」
 高橋:「新宿の次は、山手線の外側に出るということでしたが……」
 愛原:「ああ。今度は映画を観に連れて行ってやるぞ」
 高橋:「映画ですか。御言葉ですが、映画くらいならこいつらの田舎でも観れると思いますが……」
 愛原:「まあ、そうなんだが。BOWのこいつらに、見せておきたい映画があるんだよ。で、その料金も、このフリーきっぷで割引になるから」
 高橋:「そうですか」
 愛原:「まあ、とにかく行こうや」
 高橋:「はい」

 今度は都営大江戸線のホームに向かう。

〔まもなく4番線に、光が丘行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 やってきた電車は、そんなに混んでいなかった。
 まだこの時間は帰宅ラッシュでもない為、むしろ新宿方面の方が乗客が多いくらいで、放射部の光が丘行きは空いていた。

〔とちょうまえ、都庁前。飯田橋、両国方面はお乗り換えです〕

 硬いクッションの赤い座席に腰かける。

〔4番線から、光が丘行き電車が発車します。閉まるドアに、ご注意ください〕

 ホームの自動放送と車外スピーカーからの発車メロディが同時に鳴る。
 その方が駆け込み乗車も無いのだろうか、再開閉せずに1回で閉まり切った。
 電車がスーッと走り出す。

〔都営大江戸線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、光が丘行きです。次は西新宿五丁目(清水橋)、西新宿五丁目(清水橋)。お出口は、右側です〕

 都営大江戸線の特徴にはいくつかあるが、コロナ禍になってから特に酷くなったものがある。
 それは騒音だ。
 元々がカーブの多い路線なので、電車がカーブを曲がる度に車輪の軋む音がトンネル内に響く。
 窓を閉めていても気になる程なのに、コロナ禍で換気促進の為に窓を開けていると、余計にやかましいのである。
 似たような構造で開通した仙台市地下鉄東西線を走る車両は、窓が一切開かないタイプである。
 正直、そっちが良いのではと思った。

 理子:「東京の電車ってスゴいね、お姉ちゃん」
 凛:「そ、そうだねー」

 理子は両耳を押さえながら言った。
 リサなど、頭からフードを被ったほどである。

 高橋:「大江戸線って、電車ん中でもWi-Fiあるんスね」

 高橋の方は暢気だ。
 だが、Wi-Fiが繋がると知った瞬間、リサも自分のスマホでWi-Fiに接続した。
 中高生のプランだと、どうしてもギガ数が限られているので、Wi-Fiが繋がる環境は重要だとリサはとても理解していた。
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“私立探偵 愛原学” 「上京2日目の半鬼姉妹」

2022-04-30 14:02:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月29日07:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 愛原:「おはよう」
 高橋:「あっ、先生。おはようございます。今、朝飯作ってますんで、もう少しお待ちください」
 愛原:「いいよ。顔洗ってくるから」

 私が洗面所に行くと、浴室からシャワーの音が聞こえた。
 どうやら、リサがシャワーを浴びているらしい。
 朝からシャワーを使うなんて珍しいな。
 私がそこを通り過ぎようとすると、バスの前扉のような折り戸が少しだけ開いて……。

 リサ:「先生、一緒に入る?
 愛原:「俺を食い殺す気か!」
 リサ:「ちょっとゾンビになってもらうだけ
 愛原:「アホか!」

 体内にTウィルスとGウィルスを宿しているリサは、本当にそれができるのだから冗談じゃない。
 また、体内に侵入した寄生虫を逆にウィルス感染させて、使役するくらいだ。
 こりゃ、アレだな。
 生理前か何かでムラムラして、昨夜何度もオ○ニ○したのだろう。
 それで汗をかいたので、こうやってシャワーを浴びていると見た。

 愛原:「今日は先に新橋に行くぞ」
 高橋:「善場の姉ちゃんの所ですね。車は返しちゃいましたよ?」
 愛原:「今日は車を使わない。公共交通機関を使う」
 高橋:「あ、そうですか」
 愛原:「打ってつけのフリー乗車券があるからな、それを使う」
 高橋:「さすがは先生です」

[同日08:30.天候:晴 同地区内 都営地下鉄菊川駅]

 朝ラッシュで賑わう菊川駅。
 その地上出入口で待っていると……。

 愛原:「おっ、来たなー」

 駅前交差点の横断歩道を渡って来る上野姉妹がいた。

 上野凛:「おはようございます!今日もよろしくお願いします!」
 上野理子:「おはようございます」
 愛原:「ああ、おはよう。よく眠れた?」
 凛:「まあ、大体は」
 愛原:「そうか。今は平日の朝ラッシュで混んでいるが、こっちに上京する以上は避けて通れない道だ。ちょっと今は、それを体験してもらう」
 凛:「はい!」

 栃木の山奥に住んでいたこの姉妹が、東京の朝ラッシュにどれだけ耐えられるかな?

 愛原:「今日は都区内を色々と歩き回るから、フリーきっぷを買おう」
 リサ:「何てフリーきっぷ?」
 愛原:「『東京フリーきっぷ』だよ。ICカードに登録できるから、紙のキップは買わずに済む。……キミ達、ICカードは持ってる?」
 凛:「はい」
 理子:「はい」

 2人の姉妹が出したICカードはSuicaでもPasmoでもなく、totoraという地位連携ICカードだった。
 2人の姉妹が住む地域を走る路線バス会社などが共同で発行しているものだ。
 一瞬、これでも行けるのかと思ったが、よく見るとSuicaのマークが付いているので、行けると思った。

 凛:「今はこれで地元のバスに乗ったりしているんですけど……」
 愛原:「キミの友達か誰かで、これでJRに乗ったことのある人はいる?」
 理子:「あ、はい。信者さんの中には、そういう人がいます」
 愛原:「JRに乗れるんなら大丈夫だろう」

 私はそれで全員分の東京フリーきっぷを購入した。

 愛原:「これで都区内の電車とバスは乗り放題だ(私鉄は除く)。それじゃ、行こう」
 凛:「はい!」

 急行電車が通過した為に、ホームどころかコンコースにまで強い風が吹いてくる。
 スカートを穿いている理子は、その裾を押さえるようにして歩いた。

 リサ:「そう簡単にめくれないよ」

 リサ自身は、昨日とは違う黒いミニスカートを穿いている。
 チェーンを着けているが、その先にあるものとは……。

 凛:「理子は恥ずかしがりやさんなので……」
 リサ:「ふーん……」

 リサは理子にそっと耳打ち。

 凛:「でも愛原先生には、見せてあげると喜ぶよ?」
 理子:「ええっ!?」
 愛原:「こら、リサ!」

〔まもなく1番線に、各駅停車、橋本行きが10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。京王線内、区間急行となります〕

 トンネルの向こうから、通勤客満載の京王電車が入線してきた。
 尚、先頭車両はこの時間帯、女性専用車となるので、最後尾に乗ることになる。

 リサ:「おっと」

 電車が強風を伴って入線してきた。
 さすがのリサも、ふわっと捲くれ上がりそうになるスカートの裾を押さえる。
 昨日と違うのは、今回のスカートはもう少し制服のプリーツスカートに近い生地だということだ。
 上に着ているパーカーは、グレーではなくピンク色のものだ。

〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。きくかわ~、菊川~〕

 乗車客は多いが、降車客も案外いる駅である。
 でも、急行は止まらない。
 取りあえず、乗り込むことはできた。
 まあ、痴漢が発生しそうなほどのメチャ混みぶりではない。
 恐らく、そのピークは過ぎているのだろう。
 お世辞にも空いているとは言い難いが。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 短い発車メロディの後で、電車のドアが閉まる。
 京王電車の場合、2点チャイムが2回ずつ鳴る。
 音色はJR東海の313系等と一緒。
 車掌室から鳴る発車合図のブザーが聞こえたかと思うと、エアーの抜ける音がして、電車が走り始めた。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 菊川から新橋なら都営バスの方が乗り換えも無くて便利なのだが、バスの車内では東京フリーきっぷが買えないので。
 尚、このフリーきっぷ、ただ単に都区内のJR、地下鉄、都営バスが乗り放題というだけではない。
 一部の施設では、割引などの特典も受けられるという優れものだ。
 これで食事代なども、割引してもらうこともできる、と……。

[同日09:15.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 馬喰横山駅で電車を降り、地下道で繋がっている東日本橋駅へ移動する。
 そこから都営浅草線に乗れば、新橋へ行ける。
 都営浅草線も混んでいたので、上野姉妹には良い洗礼となったようだ。
 ぞろぞろと事務所に行くのもアレなので、事務所には私1人で行くことにした。
 どうせ善場主任に、昨日預かった書類を渡すだけだ。
 そしたら……。

 善場:「会議室なら空いているので、どうぞ皆さん入ってください」

 とのことだ。
 どうやら私以外にも、上野姉妹に言いたいことがあるらしい。
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