[3月14日07:50.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]
リサと絵恋は普段通りに登校した。
リサ:「おはよう」
淀橋:「おはよう」
小島:「おはよう」
斉藤:「おはよう」
だが、どことなく絵恋には余所余所しい淀橋と小島。
この2人だけではない。
他のクラスメートも、絵恋には余所余所しかった。
リサ:「? みんな、どうした?」
リサだけが状況が分かっていない。
淀橋:「リサさんは……まあ、しょうがないよね」
小島:「ま、まあね」
リサ:「何が???」
絵恋は何かを察したかのように、自分の席に無言で座った。
淀橋:「リサさん、これ見て」
淀橋が自分のスマホの画面を見せた。
それは、とあるニュースサイト。
淀橋:「『斉藤社長、ロシアへ国外逃亡か?』ってあるでしょ?これって、斉藤さんのお父さんのことだよね?」
リサ:「うん、まあ、そうだね」
小島:「警察も動いて、逮捕状も出るんでしょ?そしたら斉藤さん、『犯罪者の娘』ってことになっちゃうんだよ」
リサ:「そ、そんなことは……!」
淀橋:「いや、逮捕状が出たら事実だから。今はまだ『重要参考人』だけど、逮捕状が出たら、『被疑者』になるんだよ?」
リサ:「ヨドバシ、詳しい」
淀橋:「うちのお父さん、警察官だから。といっても地域課だけどね」
リサ:「おー。……チーキカって何?」
小島:「まあ、要は交番のお巡りさん的な?」
淀橋:「まあ、そんなとこ」
リサ:「なるほど」
小島:「つまり、『被疑者』になったら、肩書が『容疑者』になっちゃうわけよ」
リサ:「ふーん……。それって、サイトーも逮捕されるの?」
小島:「斉藤さんは……何もしてないでしょ、さすがに」
淀橋:「もしそうなら、一緒にロシアに行ってるはずだもんね」
小島:「そうそう」
リサ:「じゃあ、何で『犯罪者の娘』で、何が問題なの?サイトーも捕まるってんなら大変だけど」
淀橋:「いや、だからそれは……」
小島:「家族だから、損害賠償とか大変だろうねって話」
リサ:「ソンガイバイショー……?」
淀橋:「そして本当なら、学校に登校するでしょ?そしたら、いつの間にか机の上に落書きされていたりとかね」
リサ:「机に落書き……?」
小島:「“親が犯罪者になった時の法則”だよ、それ!」
淀橋:「そうそう。机に『犯罪者の娘、帰れ!』とか、『犯罪者の娘、学校来るな!』とか、書かれるヤツ」
小島:「それ、どこのマンガ?」
淀橋:「挙句の果てに、『娘』が抜けて、『死ね!犯罪者!』とか書かれるのね」
小島:「いつの間にか犯罪者!?」
リサ:「うーん……よく分かんない」
淀橋:「リサさんはちょっと特殊だからね。そういうイジメもあるから気を付けてねって話」
小島:「リサさんもどっちかっていうと、いじめっ子タイプだけど、そういう陰湿なやり方はしないもんね」
淀橋:「だね。直接的に手を下すタイプ?昭和的に」
リサ:「そっちの方が早くない?」
小島:「うーん……まあ、早いっちゃあ早いんだけどね」
淀橋:「まあ、リサさんらしいわ」
学級委員長:「斉藤さん、坂上先生が呼んでるよ?職員室に行って」
絵恋:「えっ?あっ、はい」
絵恋は席を立った。
学級委員長の言葉に、一瞬静まり返る教室。
リサ:「サイトー、わたしも一緒に行く」
絵恋:「ありがとう。でも、いいのよ。私1人で行くから」
リサ:「…………」
絵恋はフラフラと教室を出て行った。
淀橋:「こりゃあ、いよいよヤバいって感じだね」
小島:「うん」
リサ:「何が?」
淀橋:「もしかしたら私達、絵恋さんと会うのは今日が最後かもってこと」
リサ:「えっ?!……えっ、えっ?どういうこと?」
小島:「リサさんは絵恋さんと親友だし、家も近くに住んでるんでしょ?だから、また会えると思うけどね」
リサ:「2人とも、さっきから何言ってる?」
淀橋:「私が中学校の時もあったわー」
小島:「そうか。淀橋さんは途中、中学校は別だったんだっけ」
淀橋:「そうそう。私は転校生だったからね。転校する前の中学校でもあったよ。家族が犯罪者になって、いつの間にか消えたヤツが」
リサ:(あれ?待てよ。確か、兄ちゃんも似たようなことを言ってたような……?)
小島:「大抵は別の学校に転校するんでしょ?」
淀橋:「まあね。中学校ん時のソイツも、どこか遠い地方の学校に転校したって話だよ」
小島:「大変だよね」
リサ:「サイトー、転校しちゃうの?」
淀橋:「まだ分かんないけど、その可能性は大ってこと」
小島:「今のところ、まだ逮捕状は出てないから必ずそうなるってわけじゃないけどね」
淀橋:「でも警察はほぼ100%の確証を得てるから、マスコミに情報流したりするんだよ。あの場合の流れだと、ほぼ確実だね」
小島:「だよねー」
しばらくして予鈴が鳴ったが、絵恋は戻って来なかった。
そして、朝のホームルームの時間になる。
やってきたのは担任の坂上修一ではなく、副担任の倉田恵美だった。
週番:「起立!」
リサ:(サイトーはどうした?)
絵恋のことが気になりつつも、リサは週番の号令で皆と一緒に立ち上がった。
週番:「おはようございます!」
一同:「おはようございます」
倉田:「おはようございます」
週番:「着席!」
そして再び席に座る。
倉田:「えー、皆さん。坂上先生ですが、大事な話があるので、ホームルームには来られません。ので、副担任の私が今日は担当します。尚、斉藤絵恋さんはお家に不幸があった関係で、いま坂上先生と話をしている最中です」
クラス内がどよめく。
倉田:「はい、静かに!これからもニュースなどで、色々と情報を得ることがあるかとは思いますが、それに惑わされず、冷静に、いつも通りに過ごしてください。そして無事、修了式を皆で迎えましょう」
淀橋:「それ、本当にできるんかね?」
小島:「ねー?」
今度はヒソヒソ話が室内のあちこちで起きる。
倉田は咳払いした。
倉田:「えー、それでは今日の予定ですが……」
リサ:(それにしても、マズいことが起きてない?サイトーが……わたしのデザートがいなくなってしまう……?何とかならない?)
リサと絵恋は普段通りに登校した。
リサ:「おはよう」
淀橋:「おはよう」
小島:「おはよう」
斉藤:「おはよう」
だが、どことなく絵恋には余所余所しい淀橋と小島。
この2人だけではない。
他のクラスメートも、絵恋には余所余所しかった。
リサ:「? みんな、どうした?」
リサだけが状況が分かっていない。
淀橋:「リサさんは……まあ、しょうがないよね」
小島:「ま、まあね」
リサ:「何が???」
絵恋は何かを察したかのように、自分の席に無言で座った。
淀橋:「リサさん、これ見て」
淀橋が自分のスマホの画面を見せた。
それは、とあるニュースサイト。
淀橋:「『斉藤社長、ロシアへ国外逃亡か?』ってあるでしょ?これって、斉藤さんのお父さんのことだよね?」
リサ:「うん、まあ、そうだね」
小島:「警察も動いて、逮捕状も出るんでしょ?そしたら斉藤さん、『犯罪者の娘』ってことになっちゃうんだよ」
リサ:「そ、そんなことは……!」
淀橋:「いや、逮捕状が出たら事実だから。今はまだ『重要参考人』だけど、逮捕状が出たら、『被疑者』になるんだよ?」
リサ:「ヨドバシ、詳しい」
淀橋:「うちのお父さん、警察官だから。といっても地域課だけどね」
リサ:「おー。……チーキカって何?」
小島:「まあ、要は交番のお巡りさん的な?」
淀橋:「まあ、そんなとこ」
リサ:「なるほど」
小島:「つまり、『被疑者』になったら、肩書が『容疑者』になっちゃうわけよ」
リサ:「ふーん……。それって、サイトーも逮捕されるの?」
小島:「斉藤さんは……何もしてないでしょ、さすがに」
淀橋:「もしそうなら、一緒にロシアに行ってるはずだもんね」
小島:「そうそう」
リサ:「じゃあ、何で『犯罪者の娘』で、何が問題なの?サイトーも捕まるってんなら大変だけど」
淀橋:「いや、だからそれは……」
小島:「家族だから、損害賠償とか大変だろうねって話」
リサ:「ソンガイバイショー……?」
淀橋:「そして本当なら、学校に登校するでしょ?そしたら、いつの間にか机の上に落書きされていたりとかね」
リサ:「机に落書き……?」
小島:「“親が犯罪者になった時の法則”だよ、それ!」
淀橋:「そうそう。机に『犯罪者の娘、帰れ!』とか、『犯罪者の娘、学校来るな!』とか、書かれるヤツ」
小島:「それ、どこのマンガ?」
淀橋:「挙句の果てに、『娘』が抜けて、『死ね!犯罪者!』とか書かれるのね」
小島:「いつの間にか犯罪者!?」
リサ:「うーん……よく分かんない」
淀橋:「リサさんはちょっと特殊だからね。そういうイジメもあるから気を付けてねって話」
小島:「リサさんもどっちかっていうと、いじめっ子タイプだけど、そういう陰湿なやり方はしないもんね」
淀橋:「だね。直接的に手を下すタイプ?昭和的に」
リサ:「そっちの方が早くない?」
小島:「うーん……まあ、早いっちゃあ早いんだけどね」
淀橋:「まあ、リサさんらしいわ」
学級委員長:「斉藤さん、坂上先生が呼んでるよ?職員室に行って」
絵恋:「えっ?あっ、はい」
絵恋は席を立った。
学級委員長の言葉に、一瞬静まり返る教室。
リサ:「サイトー、わたしも一緒に行く」
絵恋:「ありがとう。でも、いいのよ。私1人で行くから」
リサ:「…………」
絵恋はフラフラと教室を出て行った。
淀橋:「こりゃあ、いよいよヤバいって感じだね」
小島:「うん」
リサ:「何が?」
淀橋:「もしかしたら私達、絵恋さんと会うのは今日が最後かもってこと」
リサ:「えっ?!……えっ、えっ?どういうこと?」
小島:「リサさんは絵恋さんと親友だし、家も近くに住んでるんでしょ?だから、また会えると思うけどね」
リサ:「2人とも、さっきから何言ってる?」
淀橋:「私が中学校の時もあったわー」
小島:「そうか。淀橋さんは途中、中学校は別だったんだっけ」
淀橋:「そうそう。私は転校生だったからね。転校する前の中学校でもあったよ。家族が犯罪者になって、いつの間にか消えたヤツが」
リサ:(あれ?待てよ。確か、兄ちゃんも似たようなことを言ってたような……?)
小島:「大抵は別の学校に転校するんでしょ?」
淀橋:「まあね。中学校ん時のソイツも、どこか遠い地方の学校に転校したって話だよ」
小島:「大変だよね」
リサ:「サイトー、転校しちゃうの?」
淀橋:「まだ分かんないけど、その可能性は大ってこと」
小島:「今のところ、まだ逮捕状は出てないから必ずそうなるってわけじゃないけどね」
淀橋:「でも警察はほぼ100%の確証を得てるから、マスコミに情報流したりするんだよ。あの場合の流れだと、ほぼ確実だね」
小島:「だよねー」
しばらくして予鈴が鳴ったが、絵恋は戻って来なかった。
そして、朝のホームルームの時間になる。
やってきたのは担任の坂上修一ではなく、副担任の倉田恵美だった。
週番:「起立!」
リサ:(サイトーはどうした?)
絵恋のことが気になりつつも、リサは週番の号令で皆と一緒に立ち上がった。
週番:「おはようございます!」
一同:「おはようございます」
倉田:「おはようございます」
週番:「着席!」
そして再び席に座る。
倉田:「えー、皆さん。坂上先生ですが、大事な話があるので、ホームルームには来られません。ので、副担任の私が今日は担当します。尚、斉藤絵恋さんはお家に不幸があった関係で、いま坂上先生と話をしている最中です」
クラス内がどよめく。
倉田:「はい、静かに!これからもニュースなどで、色々と情報を得ることがあるかとは思いますが、それに惑わされず、冷静に、いつも通りに過ごしてください。そして無事、修了式を皆で迎えましょう」
淀橋:「それ、本当にできるんかね?」
小島:「ねー?」
今度はヒソヒソ話が室内のあちこちで起きる。
倉田は咳払いした。
倉田:「えー、それでは今日の予定ですが……」
リサ:(それにしても、マズいことが起きてない?サイトーが……わたしのデザートがいなくなってしまう……?何とかならない?)