報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「絵恋を取り巻く環境」

2022-04-04 20:26:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月14日07:50.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 リサと絵恋は普段通りに登校した。

 リサ:「おはよう」
 淀橋:「おはよう」
 小島:「おはよう」
 斉藤:「おはよう」

 だが、どことなく絵恋には余所余所しい淀橋と小島。
 この2人だけではない。
 他のクラスメートも、絵恋には余所余所しかった。

 リサ:「? みんな、どうした?」

 リサだけが状況が分かっていない。

 淀橋:「リサさんは……まあ、しょうがないよね」
 小島:「ま、まあね」
 リサ:「何が???」

 絵恋は何かを察したかのように、自分の席に無言で座った。

 淀橋:「リサさん、これ見て」

 淀橋が自分のスマホの画面を見せた。
 それは、とあるニュースサイト。

 淀橋:「『斉藤社長、ロシアへ国外逃亡か?』ってあるでしょ?これって、斉藤さんのお父さんのことだよね?」
 リサ:「うん、まあ、そうだね」
 小島:「警察も動いて、逮捕状も出るんでしょ?そしたら斉藤さん、『犯罪者の娘』ってことになっちゃうんだよ」
 リサ:「そ、そんなことは……!」
 淀橋:「いや、逮捕状が出たら事実だから。今はまだ『重要参考人』だけど、逮捕状が出たら、『被疑者』になるんだよ?」
 リサ:「ヨドバシ、詳しい」
 淀橋:「うちのお父さん、警察官だから。といっても地域課だけどね」
 リサ:「おー。……チーキカって何?」
 小島:「まあ、要は交番のお巡りさん的な?」
 淀橋:「まあ、そんなとこ」
 リサ:「なるほど」
 小島:「つまり、『被疑者』になったら、肩書が『容疑者』になっちゃうわけよ」
 リサ:「ふーん……。それって、サイトーも逮捕されるの?」
 小島:「斉藤さんは……何もしてないでしょ、さすがに」
 淀橋:「もしそうなら、一緒にロシアに行ってるはずだもんね」
 小島:「そうそう」
 リサ:「じゃあ、何で『犯罪者の娘』で、何が問題なの?サイトーも捕まるってんなら大変だけど」
 淀橋:「いや、だからそれは……」
 小島:「家族だから、損害賠償とか大変だろうねって話」
 リサ:「ソンガイバイショー……?」
 淀橋:「そして本当なら、学校に登校するでしょ?そしたら、いつの間にか机の上に落書きされていたりとかね」
 リサ:「机に落書き……?」
 小島:「“親が犯罪者になった時の法則”だよ、それ!」
 淀橋:「そうそう。机に『犯罪者の娘、帰れ!』とか、『犯罪者の娘、学校来るな!』とか、書かれるヤツ」
 小島:「それ、どこのマンガ?」
 淀橋:「挙句の果てに、『娘』が抜けて、『死ね!犯罪者!』とか書かれるのね」
 小島:「いつの間にか犯罪者!?」
 リサ:「うーん……よく分かんない」
 淀橋:「リサさんはちょっと特殊だからね。そういうイジメもあるから気を付けてねって話」
 小島:「リサさんもどっちかっていうと、いじめっ子タイプだけど、そういう陰湿なやり方はしないもんね」
 淀橋:「だね。直接的に手を下すタイプ?昭和的に」
 リサ:「そっちの方が早くない?」
 小島:「うーん……まあ、早いっちゃあ早いんだけどね」
 淀橋:「まあ、リサさんらしいわ」
 学級委員長:「斉藤さん、坂上先生が呼んでるよ?職員室に行って」
 絵恋:「えっ?あっ、はい」

 絵恋は席を立った。
 学級委員長の言葉に、一瞬静まり返る教室。

 リサ:「サイトー、わたしも一緒に行く」
 絵恋:「ありがとう。でも、いいのよ。私1人で行くから」
 リサ:「…………」

 絵恋はフラフラと教室を出て行った。

 淀橋:「こりゃあ、いよいよヤバいって感じだね」
 小島:「うん」
 リサ:「何が?」
 淀橋:「もしかしたら私達、絵恋さんと会うのは今日が最後かもってこと」
 リサ:「えっ?!……えっ、えっ?どういうこと?」
 小島:「リサさんは絵恋さんと親友だし、家も近くに住んでるんでしょ?だから、また会えると思うけどね」
 リサ:「2人とも、さっきから何言ってる?」
 淀橋:「私が中学校の時もあったわー」
 小島:「そうか。淀橋さんは途中、中学校は別だったんだっけ」
 淀橋:「そうそう。私は転校生だったからね。転校する前の中学校でもあったよ。家族が犯罪者になって、いつの間にか消えたヤツが」
 リサ:(あれ?待てよ。確か、兄ちゃんも似たようなことを言ってたような……?)
 小島:「大抵は別の学校に転校するんでしょ?」
 淀橋:「まあね。中学校ん時のソイツも、どこか遠い地方の学校に転校したって話だよ」
 小島:「大変だよね」
 リサ:「サイトー、転校しちゃうの?」
 淀橋:「まだ分かんないけど、その可能性は大ってこと」
 小島:「今のところ、まだ逮捕状は出てないから必ずそうなるってわけじゃないけどね」
 淀橋:「でも警察はほぼ100%の確証を得てるから、マスコミに情報流したりするんだよ。あの場合の流れだと、ほぼ確実だね」
 小島:「だよねー」

 しばらくして予鈴が鳴ったが、絵恋は戻って来なかった。
 そして、朝のホームルームの時間になる。
 やってきたのは担任の坂上修一ではなく、副担任の倉田恵美だった。

 週番:「起立!」
 リサ:(サイトーはどうした?)

 絵恋のことが気になりつつも、リサは週番の号令で皆と一緒に立ち上がった。

 週番:「おはようございます!」
 一同:「おはようございます」
 倉田:「おはようございます」
 週番:「着席!」

 そして再び席に座る。

 倉田:「えー、皆さん。坂上先生ですが、大事な話があるので、ホームルームには来られません。ので、副担任の私が今日は担当します。尚、斉藤絵恋さんはお家に不幸があった関係で、いま坂上先生と話をしている最中です」

 クラス内がどよめく。

 倉田:「はい、静かに!これからもニュースなどで、色々と情報を得ることがあるかとは思いますが、それに惑わされず、冷静に、いつも通りに過ごしてください。そして無事、修了式を皆で迎えましょう」
 淀橋:「それ、本当にできるんかね?」
 小島:「ねー?」

 今度はヒソヒソ話が室内のあちこちで起きる。
 倉田は咳払いした。

 倉田:「えー、それでは今日の予定ですが……」
 リサ:(それにしても、マズいことが起きてない?サイトーが……わたしのデザートがいなくなってしまう……?何とかならない?)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「善場との話」

2022-04-04 15:59:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月12日15:30.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 善場:「……特にマークした行き先ではありませんが、斉藤社長がわざわざ指定したということは、何か意味があるのかもしれませんね」
 愛原:「それでは、この依頼をお受けしても?」
 善場:「はい。むしろ、斉藤社長が何を意図して『最後の依頼』をしてきたのか、それを調査して頂きたいです」
 愛原:「分かりました。それと、1つ気になることがあるのですが……」
 善場:「何でしょう?」
 愛原:「テレビの速報で、テロップに『斉藤社長、刑事告訴へ』とありました。まだ、刑事告訴が決まったというわけではないのですね?」
 善場:「そうですね。あれは私達というよりは、警察がマスコミに流したものです。警察は警察で、斉藤社長を追っているので」
 愛原:「警察が?」
 善場:「白井がバイオテロ組織ヴェルトロの残党と、何らかの繋がりがあることは既に御存知かと思います」
 愛原:「はい」
 善場:「斉藤社長が白井と繋がっていたということは、白井を通して斉藤社長もヴェルトロと繋がっていたと思いませんか?」
 愛原:「な、なるほど!でも、警察が刑事告訴しようというのは……」
 善場:「私は、あのハイジャック事件も斉藤社長が絡んでいるのではないかと思っています」
 愛原:「ええっ!?」
 善場:「あくまでも、個人的な見解ですが。テロ組織の捜査は警察が行っているので。私達は、あくまでもバイオハザード事件そのものを追う側ですので」
 愛原:「どうしてそう思われるのですか?」
 善場:「考えてもみてください。今のこの御時世、都合良くハイジャックに巻き込まれることなんて稀ですよ?そもそもハイジャック事件ですら発生しないのに」
 愛原:「た、確かに……」
 善場:「しかもハイジャックの実行犯、ヤング・ホーク団はヴェルトロの下部組織であることがインターポールからも明らかにされています」
 愛原:「ええっ!」
 善場:「警察はその証拠を掴んだのかもしれませんね」
 愛原:「うあー……」
 善場:「まさか斉藤社長がハイジャック事件の黒幕とまでは思いませんが、彼らの犯行計画を聞いてそれに便乗したということは有り得るかもしれませんね。彼らの行き先はロシアのウラジオストク。ハイジャック事件に巻き込まれた被害者とあらば、パスポートが無くても入国できますから」
 愛原:「そんなことを計画するなんて……」
 善場:「愛原所長にとっては、大口契約先に裏切られた形となって、非常に残念でしょうが……」
 愛原:「残念ですね。でもまだ、私にはデイライトさんという大口顧客がいますから」
 善場:「私共も、こんな仕事を頼める民間人は愛原所長方くらいしかいないと思っています」
 愛原:「それで、逮捕状はいつ取れるのでしょうか?」
 善場:「警察の証拠集めの進捗具合にもよりますが、恐らく来週中には請求できるのではないでしょうか」
 愛原:「来週中……」

 私はカレンダーを見た。
 来週末、リサ達は春休みに入る。

 愛原:「絵恋さんの為にも、発表は週末にしてもらえないかなぁ……と」
 善場:「そうですね。そこは警察も考えるでしょうし、私達の方からも申し入れてみましょう」
 愛原:「よろしくお願いします」

[同日16:00.天候:曇 東京都港区新橋 デイライト近くのコインパーキング]

 私と高橋はデイライトさんの事務所をあとにした。
 今日は車で来ていて、近くのコインパーキングに車を止めていた。

 愛原:「高橋、料金入れたぞ」
 高橋:「あざっス」

 領収書を発行して、これは経費で落とす。
 私はバン車の助手席に乗り込んだ。
 高橋が車のエンジンを掛ける。

 高橋:「そんじゃ、このまま事務所に戻っていいっスね?」
 愛原:「ああ、頼む」
 高橋:「お任せください」

 高橋は車を発進させて、駐車場を出た。
 そして都道50号線、新大橋通りへと進める。
 私を乗せている時の奴の運転は……多少スリリングな所はあるものの、とても逆走して白井の車と正面衝突させたとは思えなかった。

 愛原:「……もしかしてオマエさ」
 高橋:「はい?」
 愛原:「相手の車が白井の物と知ってて特攻した?」
 高橋:「い、いや、ただの偶然っスよ?」
 愛原:「そうか?」
 高橋:「は、はい!」
 愛原:「ふーん……」
 高橋:「いや、マジですよ」
 愛原:「まあ、オマエがウソ付いてる証拠なんて無いけどな」
 高橋:「は、はい。ですよね」

 それでも、やっぱり怪しい物は怪しいのだ。

 高橋:「それで、春休みの行き先は……」
 愛原:「いや、まだだ」
 高橋:「まだなんですか?」
 愛原:「作者のネタが固まっていない」
 高橋:「は?何スか?」
 愛原:「いや、何でも無い!」

[同日17:00.天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 事務所に戻った私は、善場主任との話を書類を纏めていた。
 高橋は先に帰って、夕食の支度をしてもらっている。

 愛原:「ん?」

 その時、事務所の電話が鳴った。

 愛原:「はい、もしもし。愛原学探偵事務所です」
 女性:「あ、あの……」
 愛原:「はい?」
 女性:「私、斉藤絵恋の母でございます」
 愛原:「ああ!どこかで聞き覚えがある声だと思ったら、絵恋さんのお母様でしたか。旦那様にはいつもお世話になっております」
 絵恋の母:「実は……愛原さんにはお話ししておこうかと思い、お電話差し上げた次第でございます……」
 愛原:「と、仰いますと?」

[同日18:00.天候:晴 同地区内 愛原学のマンション]

 愛原:「ただいまァ」
 高橋:「先生、お帰りなさい」
 リサ:「先生、お疲れー」
 愛原:「ああ」

 私は自分の部屋に入ると、着ていたコートを脱いで、スーツから私服に着替えた。

 高橋:「今日の夕食はチキンカツ定食です」
 愛原:「そうか。リサには、特別大きいのをやれよ」
 高橋:「分かってますよ」
 愛原:「リサ、これから春休みまでの予定は?」
 リサ:「明日は休みだから、サイトーとアキバに遊びに行く。で、あとは修了式まで学校は午前中だけ」
 愛原:「そうか」
 リサ:「何かあったの?先生、少し緊張してる」
 愛原:「そうか。緊張しているように見えるか」
 リサ:「うん……」
 愛原:「今は……話せない。前職の警備員もそうだが、探偵にも守秘義務があるもんでね」
 リサ:「シュヒギム?」
 高橋:「仕事で知り得た機密を、家族にも漏らしちゃいけねぇってことだ。ですよね、先生?」
 愛原:「そういうことだ」
 リサ:「サイトーのお父さん、やっぱり逮捕されるって話?」
 愛原:「それもあるんだが……。まあ、他にも色々とあるってことだ」
 高橋:「斉藤社長の事は残念でしたが、まさかそれで事務所の経営が傾くってわけじゃないスよね?」
 愛原:「いや、大丈夫だ。うちには、まだデイライトさんからの仕事がある」
 高橋:「ですよね」

 『最後の依頼』とはいえ、あんな高額の小切手を寄越してくるというのは……。
 何だか裏がありそうな気がした。
 そして、絵恋さんの母親からの電話。
 あれは……もちろん気持ちは分かるのだが、大変なことになりそうだぞ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする