[3月12日15:00.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]
善場主任が北海道から帰ってきた。
そこで見たことの一部を教えてくれるということなので、私と高橋は新橋の事務所に向かった。
もちろん、機密情報などは教えてくれないわけだが、しかし私が携わっている仕事に関係するものにあっては、情報の共有という形で教えてくれることになった由。
リサと絵恋は恐らく事務所に来るだろうが、LINEで今日は事務所が閉まっている旨を伝えておいた。
恐らく、保護者のいる絵恋さんのマンションに行くだろう。
私達はというと、事務所内の会議室に通された。
善場:「これを御覧ください」
渡された資料に目を通す。
これだけでも、十分な機密情報だとは思うが、それに関わるくらい、私達は首を突っ込んでしまっているわけだ。
愛原:「これは……絵恋さん?」
善場:「はい。斉藤社長の娘、絵恋さんとは今後とも関わると思いますので、愛原所長方にはお話ししておこうと思いました」
それによると……。
愛原:「絵恋さんはクローン!?」
善場:「結論から言えば、それに類します。この事についても、白井は律儀に手記を残していてくれましてね。もちろん、白井が勝手に書いたものですから、どこまで信じて良いものかどうかは分かりません。そこは斉藤社長……まもなく容疑者とマスコミで呼ばれることになりますが、本人に聞くことになるかと思います」
愛原:「なるほど……」
善場:「斉藤夫妻は不妊症により、子供ができないでおりました。普通でしたらその治療などに努力するところですが、あの夫妻は違う方法を取ったようです。もっとも、白井は『依頼された』と言っていますが……」
愛原:「んん?」
善場:「斉藤社長には若くして亡くなった妹がおり、彼女の遺伝子を使ったと書かれています」
愛原:「妹のクローンを作らせたのか!」
それでようやく分かった。
父親の斉藤社長が絵恋さんを溺愛し、母親の方はそうでもない感じなのは……。
善場:「クローン技術くらいはアンブレラの技術力ではお手のものです。それを応用……いえ、悪用してクリーチャーを造ったりしていましたから」
愛原:「マジか……」
それだけでも凄いのに、もっと驚くべきことは……。
善場:「それでも『1人目』の絵恋さんは、幼稚園時代に事故で亡くなっています」
愛原:「ええっ!?」
善場:「それで『2人目』の絵恋さんを、また白井に依頼して造らせたようです」
愛原:「綾波レイか!」
善場:「今いるのが2人目ですね」
愛原:「これ……本人は知らないでしょうね?」
善場:「知らないと思います。自分は本物の斉藤夫妻の娘だと信じていることでしょう」
愛原:「そうだったのか……」
高橋:「あれ、待てよ。確か、社長には息子もいなかったか?ドイツにいるとか何とか……」
善場:「それは白井のことです。社長が暗号や符丁のつもりで使っていたようですね」
愛原:「それで絵恋さんは、『お兄さんとは会ったことがない』と言っていたのか……」
実在しないのだから、会えるわけがない。
愛原:「絵恋さんが一時期BOWに成り掛けたのは?」
善場:「白井が、『どうせなら、少しBOWの遺伝子も混ぜちゃえ』としたみたいです。科学者のイタズラ心ですね」
私は唖然とした。
高橋:「とんでもねぇ~っ!」
善場:「あくまでも、ここに書いている白井の手記の中での話ですよ?もう一度言うように、斉藤社長本人から聞く必要があります」
愛原:「とにかく、本人には内緒ってことですね」
善場:「はい。BOWの遺伝子が入っているということは、何かの拍子に暴走する恐れがありますので」
高橋:「殺処分だろ?」
善場:「それが、白井の残したデータによりますと、殆どが『人間』でありますし、ちゃんと戸籍もあるので、表立って『殺処分』はできないのです」
高橋:「ヤーさんに頼んで、夜道を後ろからグサッと……。んで、サツの捜査及ばず、『時効になりました。てへてへw』みたい感じで……」」
愛原:「いつの時代だよ!」
善場:「……まあ、過去にはそういった事件があったことは事実です。が、今は無理ですね」
愛原:「あったんですか!」
善場:「まあ、政治的に消さなくてはならない、それが国益の為であるという事案は過去にも現在にも存在しますので」
私達がそうならないよう、気をつけよう。
善場:「『政治で物事を解決しようとするから、ヴェルトロ(バイオテロ組織)みたいな奴らが現れる』」
愛原:「えっ?」
善場:「BSAAの初代代表、クライヴ・R・オブライエン氏の言葉です」
愛原:「そういえば、ヴェルトロってどうなったんだろう?」
善場:「白井が死んだ今、それを追うことは難しくなっていますね」
愛原:「白井の手記に、ヴェルトロの事は?」
善場:「今のところ、どこにも書いていません。書いてあるのは、斉藤社長を告発することだけです。如何に斉藤社長も、裏では白井と手を組んでいたかを告発する内容ですね」
恐らく、元々は不妊治療で悩んでいたのがきっかけだろう。
体外受精とか色々方法はあっただろうが、それでもクローン技術に手を出す理由があったのだ。
恐らく……無精子症とかで、どうあがいても自分の血の繋がった子供はできない。
だから、里親制度や特別養子縁組などの血の繋がっていない子供を育てるのも嫌だ。
どうしても、血の繋がった子供を育てたい。
最終的に行き着いたのが、クローン技術。
確かに、血は繋がっている。
愛原:「白井の方から接触したわけではなく、斉藤社長の方から接触した?」
善場:「手記にはそのように書いていますが、私共は半信半疑です。こういう手記に、自分にとって都合の悪いことは書かないと思いますので」
愛原:「確かに……」
しかも、わざと捜査機関に見せるように置かれていたということだから……。
愛原:「私達は今後、どうしたら良いのでしょうか?」
善場:「五十嵐被告は、『白井は生きていて、10代の少女に生まれ変わっている』と言ったのですね?」
愛原:「本人の口からはっきりと聞いたわけではありませんが……」
善場:「分かっています。今、裁判中ですからね。滅多な事は口にできないでしょうから」
愛原:「もう、生まれ変わっているのでしょうか?」
善場:「もしもアレックス・ウェスカーと同じパターンだとしたら、そうであるか、もしくは未だにコールドスリープ中かもしれません」
愛原:「コールドスリープしているとしたら、どこで?」
善場:「……それは、これから調べることになります。愛原所長の方では、何かヒントを掴んでいないのでしょうか?」
愛原:「ヒントと言われても……。もしかして、斉藤社長の『最後の依頼』の中に入っていますかね?」
私は斉藤社長が送って寄越した旅行券などを善場主任に見せた。
すると……。
善場主任が北海道から帰ってきた。
そこで見たことの一部を教えてくれるということなので、私と高橋は新橋の事務所に向かった。
もちろん、機密情報などは教えてくれないわけだが、しかし私が携わっている仕事に関係するものにあっては、情報の共有という形で教えてくれることになった由。
リサと絵恋は恐らく事務所に来るだろうが、LINEで今日は事務所が閉まっている旨を伝えておいた。
恐らく、保護者のいる絵恋さんのマンションに行くだろう。
私達はというと、事務所内の会議室に通された。
善場:「これを御覧ください」
渡された資料に目を通す。
これだけでも、十分な機密情報だとは思うが、それに関わるくらい、私達は首を突っ込んでしまっているわけだ。
愛原:「これは……絵恋さん?」
善場:「はい。斉藤社長の娘、絵恋さんとは今後とも関わると思いますので、愛原所長方にはお話ししておこうと思いました」
それによると……。
愛原:「絵恋さんはクローン!?」
善場:「結論から言えば、それに類します。この事についても、白井は律儀に手記を残していてくれましてね。もちろん、白井が勝手に書いたものですから、どこまで信じて良いものかどうかは分かりません。そこは斉藤社長……まもなく容疑者とマスコミで呼ばれることになりますが、本人に聞くことになるかと思います」
愛原:「なるほど……」
善場:「斉藤夫妻は不妊症により、子供ができないでおりました。普通でしたらその治療などに努力するところですが、あの夫妻は違う方法を取ったようです。もっとも、白井は『依頼された』と言っていますが……」
愛原:「んん?」
善場:「斉藤社長には若くして亡くなった妹がおり、彼女の遺伝子を使ったと書かれています」
愛原:「妹のクローンを作らせたのか!」
それでようやく分かった。
父親の斉藤社長が絵恋さんを溺愛し、母親の方はそうでもない感じなのは……。
善場:「クローン技術くらいはアンブレラの技術力ではお手のものです。それを応用……いえ、悪用してクリーチャーを造ったりしていましたから」
愛原:「マジか……」
それだけでも凄いのに、もっと驚くべきことは……。
善場:「それでも『1人目』の絵恋さんは、幼稚園時代に事故で亡くなっています」
愛原:「ええっ!?」
善場:「それで『2人目』の絵恋さんを、また白井に依頼して造らせたようです」
愛原:「綾波レイか!」
善場:「今いるのが2人目ですね」
愛原:「これ……本人は知らないでしょうね?」
善場:「知らないと思います。自分は本物の斉藤夫妻の娘だと信じていることでしょう」
愛原:「そうだったのか……」
高橋:「あれ、待てよ。確か、社長には息子もいなかったか?ドイツにいるとか何とか……」
善場:「それは白井のことです。社長が暗号や符丁のつもりで使っていたようですね」
愛原:「それで絵恋さんは、『お兄さんとは会ったことがない』と言っていたのか……」
実在しないのだから、会えるわけがない。
愛原:「絵恋さんが一時期BOWに成り掛けたのは?」
善場:「白井が、『どうせなら、少しBOWの遺伝子も混ぜちゃえ』としたみたいです。科学者のイタズラ心ですね」
私は唖然とした。
高橋:「とんでもねぇ~っ!」
善場:「あくまでも、ここに書いている白井の手記の中での話ですよ?もう一度言うように、斉藤社長本人から聞く必要があります」
愛原:「とにかく、本人には内緒ってことですね」
善場:「はい。BOWの遺伝子が入っているということは、何かの拍子に暴走する恐れがありますので」
高橋:「殺処分だろ?」
善場:「それが、白井の残したデータによりますと、殆どが『人間』でありますし、ちゃんと戸籍もあるので、表立って『殺処分』はできないのです」
高橋:「ヤーさんに頼んで、夜道を後ろからグサッと……。んで、サツの捜査及ばず、『時効になりました。てへてへw』みたい感じで……」」
愛原:「いつの時代だよ!」
善場:「……まあ、過去にはそういった事件があったことは事実です。が、今は無理ですね」
愛原:「あったんですか!」
善場:「まあ、政治的に消さなくてはならない、それが国益の為であるという事案は過去にも現在にも存在しますので」
私達がそうならないよう、気をつけよう。
善場:「『政治で物事を解決しようとするから、ヴェルトロ(バイオテロ組織)みたいな奴らが現れる』」
愛原:「えっ?」
善場:「BSAAの初代代表、クライヴ・R・オブライエン氏の言葉です」
愛原:「そういえば、ヴェルトロってどうなったんだろう?」
善場:「白井が死んだ今、それを追うことは難しくなっていますね」
愛原:「白井の手記に、ヴェルトロの事は?」
善場:「今のところ、どこにも書いていません。書いてあるのは、斉藤社長を告発することだけです。如何に斉藤社長も、裏では白井と手を組んでいたかを告発する内容ですね」
恐らく、元々は不妊治療で悩んでいたのがきっかけだろう。
体外受精とか色々方法はあっただろうが、それでもクローン技術に手を出す理由があったのだ。
恐らく……無精子症とかで、どうあがいても自分の血の繋がった子供はできない。
だから、里親制度や特別養子縁組などの血の繋がっていない子供を育てるのも嫌だ。
どうしても、血の繋がった子供を育てたい。
最終的に行き着いたのが、クローン技術。
確かに、血は繋がっている。
愛原:「白井の方から接触したわけではなく、斉藤社長の方から接触した?」
善場:「手記にはそのように書いていますが、私共は半信半疑です。こういう手記に、自分にとって都合の悪いことは書かないと思いますので」
愛原:「確かに……」
しかも、わざと捜査機関に見せるように置かれていたということだから……。
愛原:「私達は今後、どうしたら良いのでしょうか?」
善場:「五十嵐被告は、『白井は生きていて、10代の少女に生まれ変わっている』と言ったのですね?」
愛原:「本人の口からはっきりと聞いたわけではありませんが……」
善場:「分かっています。今、裁判中ですからね。滅多な事は口にできないでしょうから」
愛原:「もう、生まれ変わっているのでしょうか?」
善場:「もしもアレックス・ウェスカーと同じパターンだとしたら、そうであるか、もしくは未だにコールドスリープ中かもしれません」
愛原:「コールドスリープしているとしたら、どこで?」
善場:「……それは、これから調べることになります。愛原所長の方では、何かヒントを掴んでいないのでしょうか?」
愛原:「ヒントと言われても……。もしかして、斉藤社長の『最後の依頼』の中に入っていますかね?」
私は斉藤社長が送って寄越した旅行券などを善場主任に見せた。
すると……。