[3月17日20:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]
リサは自分の部屋におり、手持ちのスマホで電話をしていた。
通話先は上野凛である。
リサ:「リン、卒業おめでとう」
凛:「ありがとうございます!」
リサ:「わたしも明日は修了式。リンも卒業式頑張って」
凛:「ありがとうございます。……先輩、私の卒業式、22日ですよ?」
リサ:「えっ?」
凛:「因みに修了式は25日です。東京中央学園って、修了式の方が先なんですね?」
リサ:「うちの学校、単位制だから……」
凛:「関係あるんですか、それ?」
リサ:「多分……」
凛:「まあ、私立は公立とは違いますからね」
リサ:「すると、入学式は4月7日だから、リンは22日から7日まで春休みか」
凛:「そういうことになります」
リサ:「卒業旅行やるの?」
凛:「したいんですけど、うちは母が『収監』されてるので……」
リサ:「ああ」
凛:「あの……母の事、どうしても許してもらえませんか?」
リサ:「ヤダ。愛原先生をNTRした。殺ス!」
凛:「……そうですか」
リサ:「寮への引っ越しはどうするの?」
凛:「それは4月になってからにしようかと。寮も天長会関係ですし」
リサ:「え?」
凛:「元々は天長会の『巫女養成所』だった建物です。養成所は他の場所に移転したんですけど、残った建物は東京中央学園に売り払ったんですよ」
リサ:「知らなかった……!」
凛:「巫女養成所なので、元から女子寮ですね」
リサ:「そこで、『最も危険な12人の巫女達』を……」
凛:「それは栃木の養成所が行います。東京で行っていたのは、本当にただの巫女です」
リサ:「なんだ……」
凛:「あと、こんなこと言うのは何なんですけど……。母が仮釈放されることになりまして……」
リサ:「あぁ!?」
凛:「中学校の卒業式には出られません。まあ、神奈川県の山奥から栃木県の山奥までは遠いですからね。監視する方も大変でしょうから。でも、東京ならいいだろうということになりまして……。もちろん、監視付きですよ。高校の入学式には、来てくれることになりました」
リサ:「オマエなぁ……」
凛:「どうか、お願いします、先輩。愛原先生や先輩には、御迷惑はお掛けしませんから」
リサ:「わたしは……愛原先生の命令に従うのみ。分かったか?」
凛:「はい。あ、そうそう。妹も小学校を卒業して、4月からは中学生です」
リサ:「妹もまさか東京中央学園に?」
凛:「そうです」
リサ:「いつの間に受験を……。というか、善場さんに言われた?」
凛:「言われました」
リサ:「やっぱり……」
リサのような人間違法改造BOWや、そんなBOWから生まれたBOW2世達を取り込むのもNPO法人デイライトの仕事なのだろうか。
もっとも、それらが『国家の為に役に立ちそう』なら保護・育成し、『クソの役にも立たない』どころか、『暴走して人間を殺傷した』なら殺処分というドライな区分けはしているようだが。
問題は、国家機関が後ろ盾にいるのだから、学校も国公立ではないかと思うのだが、どうして私立なのだろうと。
それは愛原も疑問に思っていたようだが、善場は『国家機密だから』と教えてくれない。
私立だから学費その他もろもろの経費は高いだろうに、それは全てデイライト持ちなのである。
リサ:「わたしも大学は行けるのかどうかは分からないけど、少なくとも東京中央学園では問題を起こさない方がいい。オマエの母親みたいに、収監だけでは済まないかもよ?」
凛:「肝に銘じておきます。それはそうと先輩」
リサ:「なに?」
凛:「やっぱり卒業したら、妹と一緒に東京に旅行に行きたいです」
リサ:「妹と?友達とじゃなくて?」
凛:「はい」
リサ:「まあ、愛原先生に言っとく」
凛:「よろしくお願いします」
リサ:「それじゃ、また」
リサは電話を切った。
電話している間、絵恋からLINEがいくつも来ていた。
リサ:「やれやれ、忙しいな。えーと……」
まさか修了式にも出られなくなったとかいう話かと思ったが、一応それは出られるらしい。
リサ:「それは良かった……」
因みに卒業式と違い、修了式には保護者は出ない。
[3月18日07:00.天候:晴 愛原のマンション→都営地下鉄菊川駅]
リサ:「今日、久しぶりにサイトーと学校に行く」
愛原:「そうか。それは良かったな」
今のところニュースでは、ロシアのウクライナ侵攻とか、3月16日の地震のことについてがメインである。
斉藤秀樹は重傷で、他の乗客達と共にウラジオストク市内の病院に搬送されて治療中であり、今のところ新たな動きが無いせいか、あまりニュースに取り上げられなくなった。
しかし、臨時の株主総会では懲戒解任の決議が出されたという。
元々が今年度末を以って大日本製薬の代表取締役社長を引責辞任し、来年度から関連子会社の社長に就任するはずだった。
しかし、そこでも就任を拒否する決議が出されたという。
あの悪名高きアンブレラと手を組んでいたことがバレたのでは、当たり前だった。
愛原:「斉藤社長からもらった旅行券は押収されて使えなくなったけど、善場主任が代わりに別の券をくれるってさ。2泊3日が1泊2日になっちゃたけど、我慢してな?」
リサ:「いい。元々は斉藤社長からの依頼で、サイトーと旅行に行くだけの仕事だったから。わたしは先生と一緒に行ければ、それでいいと思ってる」
愛原:「……そうか」
朝食を食べ終わった後で、リサは学校へ行く準備をした。
今日で1年生最後の日であり、授業は無いのだから、鞄も軽いはずだ。
リサ:「それじゃ、行ってきます」
愛原:「ああ、行ってらっしゃい」
リサが玄関を出ると、斉藤絵恋が待っていた。
絵恋:「おはよう。一緒に行こう」
リサ:「ああ。おはよう」
2人で一緒にエレベーターに乗る。
リサ:「家ではどうだった?」
絵恋:「うん……まあ、色々と大変だったわ」
リサ:「マスコミがインターホン押してたね」
絵恋:「まあね」
不祥事を起こした経営者が行方をくらませたりすると、マスコミが実際に家まで行き、インターホンを押す。
そして、『中からの応答はありません』とかやるヤツだ。
リサ:「春休みの旅行、愛原先生が連れてってくれるってよ。それまでは関東の近場だったけど、今度は関東から出るって。でも、1泊2日だけど……」
絵恋:「熱海1泊2日でしょ?聞いてるわよ」
リサ:「どうやって行くかは、先生次第」
絵恋:「東海道本線の各駅停車で、ゆっくり行く旅かもね」
リサ:「なるほど」
リサは自分の部屋におり、手持ちのスマホで電話をしていた。
通話先は上野凛である。
リサ:「リン、卒業おめでとう」
凛:「ありがとうございます!」
リサ:「わたしも明日は修了式。リンも卒業式頑張って」
凛:「ありがとうございます。……先輩、私の卒業式、22日ですよ?」
リサ:「えっ?」
凛:「因みに修了式は25日です。東京中央学園って、修了式の方が先なんですね?」
リサ:「うちの学校、単位制だから……」
凛:「関係あるんですか、それ?」
リサ:「多分……」
凛:「まあ、私立は公立とは違いますからね」
リサ:「すると、入学式は4月7日だから、リンは22日から7日まで春休みか」
凛:「そういうことになります」
リサ:「卒業旅行やるの?」
凛:「したいんですけど、うちは母が『収監』されてるので……」
リサ:「ああ」
凛:「あの……母の事、どうしても許してもらえませんか?」
リサ:「ヤダ。愛原先生をNTRした。殺ス!」
凛:「……そうですか」
リサ:「寮への引っ越しはどうするの?」
凛:「それは4月になってからにしようかと。寮も天長会関係ですし」
リサ:「え?」
凛:「元々は天長会の『巫女養成所』だった建物です。養成所は他の場所に移転したんですけど、残った建物は東京中央学園に売り払ったんですよ」
リサ:「知らなかった……!」
凛:「巫女養成所なので、元から女子寮ですね」
リサ:「そこで、『最も危険な12人の巫女達』を……」
凛:「それは栃木の養成所が行います。東京で行っていたのは、本当にただの巫女です」
リサ:「なんだ……」
凛:「あと、こんなこと言うのは何なんですけど……。母が仮釈放されることになりまして……」
リサ:「あぁ!?」
凛:「中学校の卒業式には出られません。まあ、神奈川県の山奥から栃木県の山奥までは遠いですからね。監視する方も大変でしょうから。でも、東京ならいいだろうということになりまして……。もちろん、監視付きですよ。高校の入学式には、来てくれることになりました」
リサ:「オマエなぁ……」
凛:「どうか、お願いします、先輩。愛原先生や先輩には、御迷惑はお掛けしませんから」
リサ:「わたしは……愛原先生の命令に従うのみ。分かったか?」
凛:「はい。あ、そうそう。妹も小学校を卒業して、4月からは中学生です」
リサ:「妹もまさか東京中央学園に?」
凛:「そうです」
リサ:「いつの間に受験を……。というか、善場さんに言われた?」
凛:「言われました」
リサ:「やっぱり……」
リサのような人間違法改造BOWや、そんなBOWから生まれたBOW2世達を取り込むのもNPO法人デイライトの仕事なのだろうか。
もっとも、それらが『国家の為に役に立ちそう』なら保護・育成し、『クソの役にも立たない』どころか、『暴走して人間を殺傷した』なら殺処分というドライな区分けはしているようだが。
問題は、国家機関が後ろ盾にいるのだから、学校も国公立ではないかと思うのだが、どうして私立なのだろうと。
それは愛原も疑問に思っていたようだが、善場は『国家機密だから』と教えてくれない。
私立だから学費その他もろもろの経費は高いだろうに、それは全てデイライト持ちなのである。
リサ:「わたしも大学は行けるのかどうかは分からないけど、少なくとも東京中央学園では問題を起こさない方がいい。オマエの母親みたいに、収監だけでは済まないかもよ?」
凛:「肝に銘じておきます。それはそうと先輩」
リサ:「なに?」
凛:「やっぱり卒業したら、妹と一緒に東京に旅行に行きたいです」
リサ:「妹と?友達とじゃなくて?」
凛:「はい」
リサ:「まあ、愛原先生に言っとく」
凛:「よろしくお願いします」
リサ:「それじゃ、また」
リサは電話を切った。
電話している間、絵恋からLINEがいくつも来ていた。
リサ:「やれやれ、忙しいな。えーと……」
まさか修了式にも出られなくなったとかいう話かと思ったが、一応それは出られるらしい。
リサ:「それは良かった……」
因みに卒業式と違い、修了式には保護者は出ない。
[3月18日07:00.天候:晴 愛原のマンション→都営地下鉄菊川駅]
リサ:「今日、久しぶりにサイトーと学校に行く」
愛原:「そうか。それは良かったな」
今のところニュースでは、ロシアのウクライナ侵攻とか、3月16日の地震のことについてがメインである。
斉藤秀樹は重傷で、他の乗客達と共にウラジオストク市内の病院に搬送されて治療中であり、今のところ新たな動きが無いせいか、あまりニュースに取り上げられなくなった。
しかし、臨時の株主総会では懲戒解任の決議が出されたという。
元々が今年度末を以って大日本製薬の代表取締役社長を引責辞任し、来年度から関連子会社の社長に就任するはずだった。
しかし、そこでも就任を拒否する決議が出されたという。
あの悪名高きアンブレラと手を組んでいたことがバレたのでは、当たり前だった。
愛原:「斉藤社長からもらった旅行券は押収されて使えなくなったけど、善場主任が代わりに別の券をくれるってさ。2泊3日が1泊2日になっちゃたけど、我慢してな?」
リサ:「いい。元々は斉藤社長からの依頼で、サイトーと旅行に行くだけの仕事だったから。わたしは先生と一緒に行ければ、それでいいと思ってる」
愛原:「……そうか」
朝食を食べ終わった後で、リサは学校へ行く準備をした。
今日で1年生最後の日であり、授業は無いのだから、鞄も軽いはずだ。
リサ:「それじゃ、行ってきます」
愛原:「ああ、行ってらっしゃい」
リサが玄関を出ると、斉藤絵恋が待っていた。
絵恋:「おはよう。一緒に行こう」
リサ:「ああ。おはよう」
2人で一緒にエレベーターに乗る。
リサ:「家ではどうだった?」
絵恋:「うん……まあ、色々と大変だったわ」
リサ:「マスコミがインターホン押してたね」
絵恋:「まあね」
不祥事を起こした経営者が行方をくらませたりすると、マスコミが実際に家まで行き、インターホンを押す。
そして、『中からの応答はありません』とかやるヤツだ。
リサ:「春休みの旅行、愛原先生が連れてってくれるってよ。それまでは関東の近場だったけど、今度は関東から出るって。でも、1泊2日だけど……」
絵恋:「熱海1泊2日でしょ?聞いてるわよ」
リサ:「どうやって行くかは、先生次第」
絵恋:「東海道本線の各駅停車で、ゆっくり行く旅かもね」
リサ:「なるほど」