報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「女性服泥棒」

2020-05-19 20:05:59 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月6日20:30.天候:晴 アルカディアシティ6番街カブキンシタウン 三星亭(Three Stars Inn)]

 宿屋で住み込みの仕事をしながら修行をしている見習い魔道士のジーナ。
 彼女が泣きながらに言うには、宿屋で窃盗事件が発生したという。
 それも、取られたのは金目のものではなく、洗濯場で干してあった女性の下着だけなく、女性の身に着けているもの全て。
 男性の物は一切手を付けられていなかったという。

 ラジオリポーター:「はい。現場となった三星亭から中継でお送りします。我々はたまたまカブキンシタウンの実情を取材に来ていたところ、事件に遭遇したことで、現場からの中継を行っているという次第です。えー、先ほど6番街の歓楽街カブキンシタウンにあります宿屋、三星亭で大規模な窃盗事件が発生しました。それも被害は現金や貴重品ではなく、宿屋がサービスで行っている宿泊客の洗濯物、それも女性の服や下着全てが持ち去られていたというのです。……すいません、ラジオ・アルカディアの者ですが、宿泊者の方ですか?」
 女性宿泊客:「はい」
 ラジオリポーター:「洗濯に出していたお召し物が全て盗まれたということですが、今のお気持ちは如何でしょうか?」
 女性宿泊客:「お気に入りの服だったのに、返してーってカンジ」
 ラジオリポーター:「現在、魔王軍6番街警備隊を始め、自警団による捜査が行われています。リスナーの皆様、どうか怪しい人物を見かけましたら、お近くの自警団員もしくは警備兵に通報をお願い致します。以上、現場から中継でお送りしました」

 アルカディア王国にはまだテレビ放送網が無い。
 辛うじてラジオ放送局があるだけである。
 文明的には昭和初期の頃なのだろう。

 稲生:「本当に大騒ぎになってる」
 イリーナ:「全く。バカラ勝負、いい所だったのに……」
 マリア:「それどころじゃないでしょう!」

 稲生達も宿屋に戻って来た。

 ジーナ:「女将さん、イリーナ様方をお連れしました」
 女将:「これはこれはイリーナ様、この度は真に申し訳ありません」
 イリーナ:「しょうがないですわ。私の場合は下着だけで、そろそろ古くなっていた頃ですから」
 マリア:「だから!私が1番ダメージ大きいんですって!」
 イリーナ:「そうだったわね」

 マリアの場合、なんちゃって制服一式である。
 ブレザーにブラウス、プリーツスカート、下着類……。

 イリーナ:「ヘタしたら私の着てる服より、このコの服の方が高いと思うので……」

 その代わり、魔法石を指輪やブレスレッドなどに加工している為、イリーナは服より装飾品がバカ高い。
 他にも他門の魔道士が宿泊していたということだが、不思議と往々にして高価な魔法石には一切手を付けられていなかったという。
 旅の剣士も宿泊していて、著名な鍛冶師が作った高価な剣を部屋に置いていたということだが、それもやはり手を付けられていなかったとのこと。

 女将:「はい。そりゃもう弁償の方は……」
 イリーナ:「その前に現場を見せてもらえないかしら?もしかしたら、何か分かるかもしれない」
 女将:「は、はい。是非、お願いしますわ」

 稲生達は洗濯場へ向かった。

 マリア:「下着だけなら横田理事が怪しいんだけど、服一式だからなぁ……」
 イリーナ:「マリアの服は魔界では珍しいし、売れば高くなるだろうから、それで盗まれたってことも考えられるけど……」
 稲生:「でも、もっと価値のある魔法石とかは手つかずなんですよね?」
 イリーナ:「それが不思議よね」

 洗濯場は地下にあった。

 ジーナ:「この宿屋ではボコというフレイム鳥を飼っているんです。ボコは『乾いた息』を吐くのが得意なので、それで洗濯物を乾かしてもらってたんです」
 稲生:「フレイム鳥?」
 イリーナ:「魔界にいる火を吐く鳥のことよ。野鳥としてのそれは往々にして鳥モンスターとしてエンカウントするんだけど、雛から育てたものはいい家畜になるのよ」

 カラスも雛から育てれば番犬ならぬ、番鳥である。
 カラスも縄張り意識の強い鳥のため。

 ジーナ:「今日もボコにお願いしていたんです。そしたら、地下からボコの叫び声が聞こえて、行ってみたら鍵が壊されていたんです。で、ボコもお客様の服も無くなってて……」
 女戦士:「ちっ、やっぱり私の服も無くなってる」

 いつの間にか後ろからついてきた宿泊客の女戦士が言った。
 今は鎧など身に着けておらず、シュミーズを着ているだけである。

 イリーナ:「しょうがない。ちょっと占ってみましょう」

 イリーナはローブの中から水晶玉を取り出した。

 イリーナ:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ」

 水晶玉が光り、この洗濯場の光景が映し出された。
 まるでこの洗濯場内に防犯カメラが設置されていて、そこからの映像のような感じだ。

 ジーナ:「あっ、ボコ!ボコはちゃんと仕事してるわ!」
 稲生:(赤チョコボみたい……。ていうか、ボコって名前は……【お察しください】)

 と、そこへ……。

 マリア:「誰か入って来た!」

 場内の通気ダクトや下水道のマンホール、そして入口から堂々と鍵を壊して3人の男が押し入った。
 上半身裸だったり、タンクトップ1枚だったりとラフな格好だが、顔は覆面をしているので分からなかった。

 女戦士:「こいつら盗賊団か何かか?」

 そして盗賊団と思しき3人の男達は抵抗するボコを気絶させると、下水道に連れ込み、他のメンバーは女性の服や下着を物色すると、通気ダクトから逃げていった。
 その直後、騒ぎを聞きつけたジーナが飛び込んで来て動画は終わった。

 稲生:「盗賊団なら尚更お金とか狙うだろうに、何で!?」
 女戦士:「とにかく下水道とそっちの通気ダクトだな。下水道はともかく、そっちの通気ダクトは外に繋がってるのか?」
 ジーナ:「あ、はい」
 女戦士:「ちょっと待ってろ。鎧と剣を持ってくる。魔法使いさん達も協力してくれ」

 イリーナほどの背丈のある女戦士。
 しかし体つきはイリーナよりも筋肉質である。

 マリア:「あの戦士、追う気満々ですよ?」
 イリーナ:「よし。じゃあ、臨時クエストと行きますか。このクリア条件は盗賊団を捕まえて、ボコちゃんと服を取り返すこと」
 稲生:「今の戦士さんと共闘するのはいいんですね?」
 イリーナ:「いいわよ。むしろ盗賊団が相手なら、戦士さんがいた方がいいわね」
 稲生:「それにしても、何だってフレイム鳥とやらと女性の服だけ盗んで行ったんだ?」
 マリア:「捕まえて尋問するしかないな。それに関しても、あの戦士に協力してもらおう」
 イリーナ:「その盗賊団、首と胴体が繋がってるといいわねぇ……」
 稲生:(怖っ!)

 とにかく、稲生達は臨時クエストを急きょ行うこととなった。
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“大魔道師の弟子” 「カジノの由来はイタリア語」

2020-05-19 16:05:26 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月6日20:00.天候:晴 アルカディアシティ6番街カブキンシタウン カジノ“歌舞錦糸”]

 逗留先の宿屋で休憩し、夕食を食べた後、イリーナ組は夜の街に繰り出した。
 行った先は街中にあるカジノ。

 ディーラー:「このゲームに勝ったのはァ~、ミズ・イリーナぁーっ!」
 イリーナ:「ハラショー!」\(^o^)/
 稲生:「先生、大勝ちですよ」
 マリア:「そりゃ魔道士がブラックジャックやっちゃダメだろう……。ポーカーも、ルーレットもだ」
 稲生:「それじゃ魔道士全般、カジノに出入りできませんよ?」

 その為、このカジノでは大勝した者はディーラーに多額のチップをキックバックすることが求められる。

 稲生:「昔、某カジノで僕達、カジノで大勝しちゃいましたけどね」
 マリア:「どこかの豪華客船のカジノだったっけ?あれはいいんだよ」
 稲生:「冥鉄汽船の豪華客船だったような……」
 マリア:「それより、あっちに行ってダーツやろ、ダーツ!」
 稲生:「あ、ああ……」

 もちろんカジノ内で魔法を使い、不正に勝つことは違法である。

 ディーラー:「勝負師のミズ・イリーナには、バカラ賭博への参加券が進呈されます。バカラをプレイしますか?」

 バカラ賭博はカジノの中でも1番高額な掛け金が飛び交うこともあり、大抵はVIPルームで行われる。

 イリーナ:「そうねぇ。ちょっとだけ参加してみようかしら」

 イリーナは細くしていた目を少しだけ開けて緑色の瞳をキラリと光らせると、口角を上げて答えた。

 稲生:「ん?先生が移動されるよ?」
 マリア:「まだ帰る時間じゃないから、大丈夫だろう」
 稲生:「どこへ行くんだろう?」
 マリア:「あれだけ大勝したから、VIPルームにでも誘われたんじゃない?それより勇太、ちゃんと狙ってよ」
 稲生:「はいはい」

 1時間後、この魔道士達に災厄が降り掛かることになろうとは……。

[同日20:00.カジノ“歌舞錦糸”]

 ダーツで汗を流し、ピンボールとスロットで集中力を使った稲生達。
 ドリンクコーナーのカウンターで休憩する。

 バーテンダー:「いらっしゃいませ。何に致しましょう?」
 稲生:「カシスオレンジください」
 マリア:「私はグレイハウンド」
 稲生:「グレイハウンド?アメリカの長距離バス会社の?」
 マリア:「違う。犬の種類」
 バーテンダー:「かしこまりました」
 マリア:「元々はソルティ・ドッグという名のカクテルなんだけど、グラスの縁に塩を付けないのを『グレイハウンド』って言うの」
 稲生:「へえ……」
 マリア:「でもカクテルの中には塩味が効いてるからね」
 稲生:「塩分を取るの?」
 マリア:「集中すると変な汗かくから。帰ったら、またシャワー浴びよう」
 稲生:「なるほど。隣にいた戦士っぽい人、完全に獲物を狙う目だったねぇ……。いや、スロットと言えば『目押し』なんだけど……」
 マリア:「競馬場に行く藤谷ハンチョーと変わらないよ」
 稲生:「ははは……」

 そんなことを話していると、頼んでいたカクテルが出来上がる。

 バーテンダー:「お待たせ致しました。こちら、グレイハウンドでございます。こちら、カシスオレンジでございます」
 稲生:「どうもー」

 稲生は自分のグラスを取った。

 稲生:「人間界に帰る頃には、コロナが収束して高速バスが運転再開になってるといいなぁ……」
 マリア:「私達だけならいいけど、師匠と一緒だと難しいよ」

 やはり公共バスは中・下層の者が乗る物ということなのか、仮にもグランドマスターの称号を得ているVIPをそんなものに乗せることへの批判があった。
 世界に誇る新幹線のグリーン車なら、むしろ当然という扱いなのだが……。

 稲生:「これ飲んだら、次は何する?もう一度スロットやる?それともダーツ?」
 マリア:「ダンスショーを観るのもいいかもね」

 マリア、けして酒は弱くない。
 しかし何故か日本酒や焼酎など、日本の酒が絡むと途端に悪酔いするのである。
 その為、基本的に日本の酒は使わないカクテルは安全圏と言えた。

 バーテンダー:「ダンスショーは21時から中央ステージで行われます。今回はグーラ達による濃艶なものが披露されます」
 マリア:「それ観た途端、アウトじゃないか?」

 グーラとはアラブ圏が出自の人食い鬼のことである。
 こちらも日本の鬼と同様、男女別に分かれており、グーラは女の人食い鬼である。
 男はグールといい、日本ではこちらの名称が浸透している。
 その為、女であってもグールと呼ばれることがある。
 グールはアラビアンナイトでも登場し、現実世界ではこれが初見の人も多い。
 女の鬼は世界共通で美しい容姿をしていることが多く、魅了された人間の男を食い殺すとされているが、この魔界ではどうなのだろうか。

 稲生:「ちょっと観てみたい気もする……」
 マリア:「勇太!」
 稲生:「じょ、冗談です」

 稲生は残りのカシスオレンジをクイッと飲み干した。

〔♪♪♪♪~。「本日もカジノ“歌舞錦糸”へ御来場頂き、真にありがとうございます。お客様の御呼び出しを申し上げます。人間界・日本国よりお越しの稲生勇太様、マリアンナ・スカーレット様、イリーナ・ブリジッド様、大変恐れ入りますが、エントランスロビーまでお越しください。三星亭のジーナ・フローレンス様がお待ちです」〕

 稲生:「あれ?僕達だ」
 マリア:「ジーナが呼んでるって?」
 稲生:「まだ帰る時間じゃないよね?」
 マリア:「何かあったのか?」

 マリアも残りのカクテルを飲み干した。

 マリア:「ごちそうさま!料金は帰りに払うから」
 バーテンダー:「かしこまりました。ありがとうございます」
 稲生:「一体、何だろう?」

 ホールからロビーへ行き来する二重のドアを抜ける。
 そこはまるでホテルのロビーのような空間が広がっていたが、場所が場所だけに、それよりは賑やかだった。

 マリア:「ジーナ!」

 するとそこには今にも泣き出しそうな顔をしたジーナがいた。

 稲生:「一体、どうしたの!?」
 ジーナ:「ごめんなさぁい……。大変なことが起きたんですぅ……!」

 一体、何があった?

 1:宿屋で火災発生!
 2:宿屋で窃盗事件発生!
 3:宿屋で立てこもり事件発生!
 4:宿屋でテロ事件発生!
 5:宿屋で殺人事件発生!
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