報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「歌舞伎町+錦糸町=株禁止?」

2020-05-08 19:42:47 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月5日16:30.天候:晴 アルカディアシティ6番街 カブキンシタウン]

 運転士:「ご乗車ありがとうございましたー。カブキンシタウンです」

 路面電車が終点の電停に到着する。
 ここでは電停に面した全部のドアが開くので、乗客達は近くのドアから一斉に降り出した。

 稲生:「一際明るい町ですねぇ……」
 イリーナ:「そりゃ王都随一の歓楽街だもの」
 稲生:「どういう経緯でできた街なんでしょう?」
 イリーナ:「バァルの爺さんが、当時は奴隷身分である人間達が暴動を起こさないよう、ガス抜きの為に、廃墟だった6番街に歓楽街を造らせたって聞いたけどね」
 マリア:「人間なんか虫けらか人食いモンスターの食糧としか見ていなかった、あのバァル大帝がですか?」
 イリーナ:「少しは恐れてたみたいね。まさか、うちの先生に裏を掻かれるとは思ってもみなかったでしょうけど」

 町の中に入ると、早速客引きに声を掛けられる。

 客引きA:「おっ!お客さん達、もしかしてカブキンシは初めて?ここはね、皆で遊んで良し、1人で遊んで良し、恋人同士で遊んでも良し、働いても良しのオールマイティタウンだ!というわけで、まずはうちの店で一杯ってやっていかない?今なら1時間300ゴッズで飲み放題だよ?」

 ゴッズとは魔界の通貨。
 帝政時代から変わらない。
 本当は立憲君主制になってから変えようという声があったのだが、円にするのかドルにするのか、はたまた新しい通貨を導入するのか決まらず、結局そのままの通貨を使うことにした。
 大魔王が統治していた頃からの通貨の割に、ゴッズを英語にするとGodsとなる。
 つまり、神々だ。
 1ゴッズは10円くらいのレートである為、300ゴッズは3000円ということになる。
 因みに消費税は無い。

 イリーナ:「来たばっかりだから、少し町を回らせてもらうわ」

 イリーナは客引きの呼び込みを華麗に交わした。

 稲生:「何か、色んな国の繁華街が混じってるって感じですね」
 イリーナ:「そうでしょ?」
 稲生:「何これ?鳥貴族アルカディアシティ6番街店?」
 イリーナ:「いや、多分看板だけパクリの別の店ね」
 マリア:「勇太、あの屋台は何売ってるの?」
 稲生:「あれはおでんですね……って、おでんの屋台……」
 イリーナ:「ヒダカヤラーメンもあるわよ」
 稲生:「字が違います!『目高屋』になってる!……何か、看板がインチキなだけで、日本のどこかの町の繁華街みたい……」
 イリーナ:「神隠しに遭った日本人が迷い込んで来たのが魔界だからね」
 稲生:(何気に北朝鮮に拉致されたと思われる人達の一部もここにいたりして……)
 マリア:「かと思うと、あそこにカジノがある」
 稲生:「パチンコ屋じゃないですよね?」

 多摩準急:「こら、クモハ!撮影中だぞ!パチンコは後にしろ!」
 雲羽百三:「コロナのせいで自粛を強いられてるもんでぇ……」

 マリア:「何か、あそこでカントク達がモメてるから、カジノじゃないのかな?」
 イリーナ:「よく見ると、『Japanese Casino(Pachinko&Slot)』って書いてあるわね」
 稲生:「ますます日本っぽい」
 マリア:「師匠、それよりホテルを取りましょうよ」
 イリーナ:「そうだったわね」
 稲生:「人間界のビジネスホテルみたいなホテルが普通にありそうですね」
 イリーナ:「多分探せば、そういうホテルもあるかもね。でも、今更そういうホテルに泊まりたいと思う?せっかく『剣と魔法のファンタジー』の世界に来たというのに」
 マリア:「魔道士が『ファンタジー』とか言っちゃいけないと思いますけど……」
 稲生:「まあ、そこは先生の仰る通りだと思います。せっかくですから、『剣と魔法のファンタジー』を地で行くRPGに出てくるような宿屋に泊まってみたいですね。1階が酒場で2階が宿屋的な」
 イリーナ:「あー、それはいいわね」
 マリア:「つまり、勇太はHotelではなく、Innに泊まりたいわけか」
 稲生:「そういうことです。……って何か今、東横インみたい看板が見えましたよ!?」
 イリーナ:「気のせいよ、気のせい」

 Innというのは欧米で『食事が提供される宿屋』のことを指すわけだが、東横インは……確かにどんなプランで宿泊しても、必ず朝食無料で付いてくるからInnで良いことになる。

 マリア:「でも、そう簡単に勇太の希望通りの宿が見つかりますかね?」
 イリーナ:「大丈夫よ。そろそろ来る頃だから」
 マリア:「Huh?」
 客引きB:「こんばんは。今夜のお泊りはお決まりですかー?」

 今度は若い女性だった。
 だが、魔法の臭いがした。
 魔法の臭いってどんな臭いかと言われると、言葉では表しにくい。
 いや、本当に嗅覚を刺激する臭いではないのだ。
 ただ、第六感が働くという意味の臭いだ。

 稲生:「エレーナ!?」

 町全体はネオンや照明で明るいのだが、それは店の明かりであって、街灯は結構少ない。
 だから店から離れると、結構薄暗い。
 そういう所で客引きと会ったのだが、服装や見た目がエレーナに似ていた。

 客引きB:「! エレーナを知ってるの!?」
 マリア:「知ってるも何も、同門で、ただの腐れ縁だよ。あなたは確かにエレーナに似てるけど、エレーナじゃないね。勇太、あなたの人違いよ」
 稲生:「す、すいません。人違いでした」
 イリーナ:「でも、エレーナの知り合いであることは間違いないようね」
 客引きB:「あ、はい。エレーナと同郷で、今はアナスタシア組魔界班に所属していますジーナと申します。階級は……まだインターン(見習い)です」
 稲生:「エレーナと同郷なのに、組は違うんだ」

 エレーナの出身地はウクライナである。
 ということは、このジーナもウクライナ人ということになるのか。

 ジーナ:「あ、はい。私は後から入門したもので。エレーナが誘ってくれたんですけど、私は既に『死んで』いたので、魔界も拠点にしていたアナスタシア組に所属することになったんです」

 魔界はあの世の一部ともされている(仏界なのか天界なのか不明。少なくとも今現在は地獄界ではない)。
 とにかく、不思議な世界なのだ。

 ジーナ:「で、エレーナと同郷ということで、私もこちらで働きながら修行することになりまして……」
 イリーナ:「宿屋なのは偶然なのかい?」
 ジーナ:「偶然だと……思います」
 イリーナ:「そう。私達、1階が酒場で2階が客室的な宿屋を探してるんだけど、あなたの所がそうかしら?」
 ジーナ:「正しくその通りです」
 イリーナ:「部屋2つ、空いてるかしら?」
 ジーナ:「はいっ!ご案内致します!どうぞ、こちらへ!」

 ジーナ、喜び勇んでイリーナ組を先導した。

 マリア:「エレーナと見た目は似ているのに、本人よりは素直そうなコだな」
 稲生:「本人の前では内緒にしてあげなよ?またケンカになるから」
 マリア:「分かってるって」

 2人は内緒話をした。
 イリーナや他の知り合いがいる前では後輩として敬語になる稲生だが、2人っきりの時や内緒話をする時はタメ口になる。

 ジーナ:「あっ、因みに……因みにですよ?部屋割りはどうします?うち、ツインの部屋しか無いんですけど、2つにします?それとも1つの部屋で、エキストラベッドを出して3人部屋にすることもできますよ?少し狭くなりますけど……」
 イリーナ:「いえ、お金はあるから2部屋使わせてちょうだい」
 ジーナ:「わっかりましたーっ!」
 マリア:「ノリいいな」
 稲生:「そこは本人と同じだね」
 マリア:「あいつならそこで絶対、料金の話してくる。そういう守銭奴っぽさが無いのがいいと思う」
 稲生:「商売人だからしょうがない面はあるけど、好感度的にはこっちの方がいいかな」
 マリア:「そういうこと」
コメント
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