[5月5日16:45.天候:晴 アルカディアシティ6番街カブキンシタウン 三星亭(Three Stars Inn)]
アルカディアシティ随一の歓楽街へやってきたイリーナ組。
そこで3人は客引き嬢のジーナに誘われ、町内にある宿屋へと向かった。
ジーナ:「その服、素敵ですね。どこかの学校に通ってらっしゃるんですか?」
マリア:「い、いや。これはその……半分私の趣味で、もう半分は後輩の趣味」
ジーナがマリアのschoolgirlの服をマジマジと見てくる。
魔道士らしく、上にローブは羽織っているが、それだけなので服装は簡単に見える。
ジーナ:「! そういうことでしたか。さすがマリアンナ先輩ですね」
マリア:「ここでも噂になっているのか……」
ジーナ:「そりゃもう!エレーナ先輩から、お噂はかねがね……」
マリア:「後でエレーナが私のこと、何て言ってたか詳しく聞かせてもらおう!」
稲生:「やっぱりエレーナの知り合いだなぁ……。因みにその姿はエレーナの影響?」
マリア:「はい。この世界、先生や先輩から『見て学べ』ということが多いじゃないですかぁ?私はエレーナ先輩の紹介で入門したので、まずはエレーナ先輩の真似からしようと思ったんですぅ」
マリア:「あー、それは止めた方がいい。ロクな魔道士にならない」
エレーナ:「いや、魔道士としてはそんなにヘボってわけじゃないよ、あのコは。ただ、お金にうるさいだけで」
ジーナ:「はい。おかげさまで、お金の計算が上手くなりました~」
稲生:「実用的な意味で、ならいいんだけどね」
そんなことを話しているうちに、宿屋に到着する。
ジーナ:「はいっ、到着しました~!日本語で『三星亭』、英語で『Three Stars Inn』です」
稲生:「スリースターズ?……まさか……」
ジーナ:「女将さん!お客様ご案内でーす!」
女将:「いらっしゃいませ~。3名様ですね?どうぞ、こちらへ」
日本人と思われる女将がにこやかな顔で接客してくる。
しかも女将の呼称に相応しく、魔界にしても珍しい着物姿である。
いや、これが日本人街の南端村であれば、珍しくも何とも無いのだが。
ジーナ:「2部屋ご希望です!」
女将:「ジーナ、ご苦労様。ちょっとここで待っててね」
ジーナ:「はーい」
女将:「2部屋ご希望ですね。本日は、どういったタイプのお部屋に致しましょう?」
マリア:「部屋のタイプ?ツインの部屋しか無いって聞いたけど……?」
女将:「あら~、御新規さんでしたか。これは失礼致しました。確かにうちはツインの部屋しか無いんですけれども、部屋の設備によって料金プランが違いますのよ。こちらに部屋タイプ別の料金表がございますので、どうぞこちらを御参考になさってください」
イリーナ:「なるほど。お部屋にトイレがあるか否か、シャワーがあるか否か、全く無いかで料金が違うのね」
稲生:「昔の田舎の旅館みたいですね」
イリーナ:「それはもちろん、シャワー付き、トイレ付きの方がいいわよ。ねぇ?」
マリア:「師匠がよろしければ、それで」
稲生:「僕も先生の意向に従います。でも、一番高いですよ?」
イリーナ:「大丈夫よ。じゃあ、このタイプの部屋2つで」
女将:「まあまあ、ありがとうございます。リッチなお客様には、最高のおもてなしを。ジーナ、あなたがこのお客様方のお世話係をしなさい」
ジーナ:「はーい!」
女将:「それでは、こちらの宿帳に御記入を。恐れ入りますが、料金は前金となっておりますので、よろしくどうぞ」
イリーナ:「常識ね」
イリーナが羽ペンを取って、スラスラと英文を書き込む。
アルカディア王国の第1公用語は日本語、第2公用語は英語である。
これは王国の君主であるルーシー・ブラッドプール女王がアメリカ出身である為と、首相の安倍春明が日本人だからである。
英語が第1公用語とならなかったのは、『勇者』であった安倍が、『魔王』であるルーシーを一度は討伐したからだとされている(実際は複雑な事情があり、それを説明するだけで何話も掛かってしまうので、『政治的な理由による』ということにさせて頂く)。
稲生:「あのー、女将さん」
女将:「何でしょうか?」
稲生:「失礼ですが、人間界のワンスターホテルは御存知ですか?」
女将:「知ってますとも。兄が経営しているホテルですね」
稲生:「ここで繋がった!」
マリア:「Oh!通りで、どこか似ていると思った」
女将:「うちは3人兄弟でしてね。兄が2人いますのよ」
稲生:「もう1人いるんですか!?」
女将:「ええ。ワンスターホテルのオーナーは長兄、次兄はまた別の場所で宿泊業をやっております」
マリア:「名前はきっと、Two Starsとかでしょうね」
女将:「まさしくその通りです」
この兄弟の名前は知らないが、きっと星に関するものなのだろうと稲生は思った。
もしかしたら、星という名字なのかもしれない。
イリーナ:「御主人はいらっしゃいます?」
女将:「主人は厨房にいます。この宿屋兼食堂のコックです」
稲生:「なるほど」
女将:「主人の料理も、このお店の人気の1つなんですよ~。是非お楽しみください」
イリーナ:「そうさせてもらいます」
女将:「ジーナ、お部屋へ案内して差し上げて」
ジーナ:「はーい。さすが魔道士の先輩方ですね。荷物が少ない」
イリーナ:「魔法で持ち運びできるからね」
ジーナ:「じゃ、こちらでーす」
酒場も兼ねた食堂なだけに、1階は賑やかなものであった。
しかし2階への階段を上がり、宿屋へのドアを開けると静かになった。
廊下の両脇には部屋が並ぶ。
ジーナ:「お部屋は203号室と205号室です」
マリア:「204が無いぞ?」
稲生:「ああ、マリアさん。それは日本のホテルや旅館には、よくある欠番です」
マリア:「Huh?」
稲生:「日本人にとって4と9は忌み番なので、欠番にすることが多いんです」
マリア:「4と9を足すと13だからか?」
西洋では13が忌み番である。
ジーナ:「4は『死』、9は『苦』だからですよ」
マリア:「変なの」
稲生:(クリスチャンでもない人間が、どうして13が忌み番なのか理解できないのと同じですよー)
と、稲生は先輩魔道士に言いたくなったが、それは黙っておいた。
皆様もとっくにお気づきだと思うが、マリアもなかなかどうして沸点の低い魔女なので。
ジーナ:「それではイリーナ先生とマリアンナ先輩は、205号室へ。ユウタ・イノー先輩は203号室へどうぞ」
イリーナ:「ありがとう」
マリア:「やっとゆっくりできる……」
稲生:「じゃあ、また後で」
稲生だけ2人部屋を1人で使えるという功徳に預かれた。
アルカディアシティ随一の歓楽街へやってきたイリーナ組。
そこで3人は客引き嬢のジーナに誘われ、町内にある宿屋へと向かった。
ジーナ:「その服、素敵ですね。どこかの学校に通ってらっしゃるんですか?」
マリア:「い、いや。これはその……半分私の趣味で、もう半分は後輩の趣味」
ジーナがマリアのschoolgirlの服をマジマジと見てくる。
魔道士らしく、上にローブは羽織っているが、それだけなので服装は簡単に見える。
ジーナ:「! そういうことでしたか。さすがマリアンナ先輩ですね」
マリア:「ここでも噂になっているのか……」
ジーナ:「そりゃもう!エレーナ先輩から、お噂はかねがね……」
マリア:「後でエレーナが私のこと、何て言ってたか詳しく聞かせてもらおう!」
稲生:「やっぱりエレーナの知り合いだなぁ……。因みにその姿はエレーナの影響?」
マリア:「はい。この世界、先生や先輩から『見て学べ』ということが多いじゃないですかぁ?私はエレーナ先輩の紹介で入門したので、まずはエレーナ先輩の真似からしようと思ったんですぅ」
マリア:「あー、それは止めた方がいい。ロクな魔道士にならない」
エレーナ:「いや、魔道士としてはそんなにヘボってわけじゃないよ、あのコは。ただ、お金にうるさいだけで」
ジーナ:「はい。おかげさまで、お金の計算が上手くなりました~」
稲生:「実用的な意味で、ならいいんだけどね」
そんなことを話しているうちに、宿屋に到着する。
ジーナ:「はいっ、到着しました~!日本語で『三星亭』、英語で『Three Stars Inn』です」
稲生:「スリースターズ?……まさか……」
ジーナ:「女将さん!お客様ご案内でーす!」
女将:「いらっしゃいませ~。3名様ですね?どうぞ、こちらへ」
日本人と思われる女将がにこやかな顔で接客してくる。
しかも女将の呼称に相応しく、魔界にしても珍しい着物姿である。
いや、これが日本人街の南端村であれば、珍しくも何とも無いのだが。
ジーナ:「2部屋ご希望です!」
女将:「ジーナ、ご苦労様。ちょっとここで待っててね」
ジーナ:「はーい」
女将:「2部屋ご希望ですね。本日は、どういったタイプのお部屋に致しましょう?」
マリア:「部屋のタイプ?ツインの部屋しか無いって聞いたけど……?」
女将:「あら~、御新規さんでしたか。これは失礼致しました。確かにうちはツインの部屋しか無いんですけれども、部屋の設備によって料金プランが違いますのよ。こちらに部屋タイプ別の料金表がございますので、どうぞこちらを御参考になさってください」
イリーナ:「なるほど。お部屋にトイレがあるか否か、シャワーがあるか否か、全く無いかで料金が違うのね」
稲生:「昔の田舎の旅館みたいですね」
イリーナ:「それはもちろん、シャワー付き、トイレ付きの方がいいわよ。ねぇ?」
マリア:「師匠がよろしければ、それで」
稲生:「僕も先生の意向に従います。でも、一番高いですよ?」
イリーナ:「大丈夫よ。じゃあ、このタイプの部屋2つで」
女将:「まあまあ、ありがとうございます。リッチなお客様には、最高のおもてなしを。ジーナ、あなたがこのお客様方のお世話係をしなさい」
ジーナ:「はーい!」
女将:「それでは、こちらの宿帳に御記入を。恐れ入りますが、料金は前金となっておりますので、よろしくどうぞ」
イリーナ:「常識ね」
イリーナが羽ペンを取って、スラスラと英文を書き込む。
アルカディア王国の第1公用語は日本語、第2公用語は英語である。
これは王国の君主であるルーシー・ブラッドプール女王がアメリカ出身である為と、首相の安倍春明が日本人だからである。
英語が第1公用語とならなかったのは、『勇者』であった安倍が、『魔王』であるルーシーを一度は討伐したからだとされている(実際は複雑な事情があり、それを説明するだけで何話も掛かってしまうので、『政治的な理由による』ということにさせて頂く)。
稲生:「あのー、女将さん」
女将:「何でしょうか?」
稲生:「失礼ですが、人間界のワンスターホテルは御存知ですか?」
女将:「知ってますとも。兄が経営しているホテルですね」
稲生:「ここで繋がった!」
マリア:「Oh!通りで、どこか似ていると思った」
女将:「うちは3人兄弟でしてね。兄が2人いますのよ」
稲生:「もう1人いるんですか!?」
女将:「ええ。ワンスターホテルのオーナーは長兄、次兄はまた別の場所で宿泊業をやっております」
マリア:「名前はきっと、Two Starsとかでしょうね」
女将:「まさしくその通りです」
この兄弟の名前は知らないが、きっと星に関するものなのだろうと稲生は思った。
もしかしたら、星という名字なのかもしれない。
イリーナ:「御主人はいらっしゃいます?」
女将:「主人は厨房にいます。この宿屋兼食堂のコックです」
稲生:「なるほど」
女将:「主人の料理も、このお店の人気の1つなんですよ~。是非お楽しみください」
イリーナ:「そうさせてもらいます」
女将:「ジーナ、お部屋へ案内して差し上げて」
ジーナ:「はーい。さすが魔道士の先輩方ですね。荷物が少ない」
イリーナ:「魔法で持ち運びできるからね」
ジーナ:「じゃ、こちらでーす」
酒場も兼ねた食堂なだけに、1階は賑やかなものであった。
しかし2階への階段を上がり、宿屋へのドアを開けると静かになった。
廊下の両脇には部屋が並ぶ。
ジーナ:「お部屋は203号室と205号室です」
マリア:「204が無いぞ?」
稲生:「ああ、マリアさん。それは日本のホテルや旅館には、よくある欠番です」
マリア:「Huh?」
稲生:「日本人にとって4と9は忌み番なので、欠番にすることが多いんです」
マリア:「4と9を足すと13だからか?」
西洋では13が忌み番である。
ジーナ:「4は『死』、9は『苦』だからですよ」
マリア:「変なの」
稲生:(クリスチャンでもない人間が、どうして13が忌み番なのか理解できないのと同じですよー)
と、稲生は先輩魔道士に言いたくなったが、それは黙っておいた。
皆様もとっくにお気づきだと思うが、マリアもなかなかどうして沸点の低い魔女なので。
ジーナ:「それではイリーナ先生とマリアンナ先輩は、205号室へ。ユウタ・イノー先輩は203号室へどうぞ」
イリーナ:「ありがとう」
マリア:「やっとゆっくりできる……」
稲生:「じゃあ、また後で」
稲生だけ2人部屋を1人で使えるという功徳に預かれた。