報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「え?FFⅦの六番街にも歓楽街があるって?気のせいだよ」

2020-05-07 19:47:10 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月5日16:00.天候:晴 アルカディアシティ6番街 カブキンシタウン]

〔まもなく6番街、6番街です。お出口は、左側です。軌道線カブキンシタウン方面、6系統はお乗り換えです〕

 1番街からアルカディアメトロの地下鉄に乗って、6番街へ向かったイリーナ組。
 因みに昼食後は魔王城内で過ごした。
 許可された者だけが入れる大図書館があって、そこで蔵書を閲覧した。
 あくまでカブキンシタウンに向かうまでの間の時間潰しであったが、イリーナとしては、ただ単に遊びに来たのではないというアピールをしたかったのだろう。
 1番街駅から乗り込んだ地下鉄は3号線、やってきた電車は開業当時の東京メトロ銀座線の車両だった。
 旧・東京地下鉄道の方の黄色い電車である。
 最初に乗った開業当時の丸ノ内線と比べて、更にもっと古い電車の為か、車内は薄暗かった。
 それもそのはず。
 前者は蛍光灯なのに対し、後者は電球だからである。

 イリーナ:「6番街に到着ぅ!」
 マリア:「はしゃがないでください。それに、カブキンシタウンは乗り換えでしょ?」
 稲生:「繁華街なんですよね?そんな所でクエストを?」
 イリーナ:「ふっふーん♪色々あるのよねー」
 稲生:「コロナウィルスの自粛要請も、魔界じゃ無縁か……」

 先頭車より先にある階段に向かう。
 ふと稲生が運転室を見ると、そこにいたのは少年のような運転士であった。
 若かりし頃のキムタクみたいな髪形に、制帽を浅く被っている。
 耳が尖って小さな角も一本生えていることから、小鬼の一種かもしれない。
 マニュアル通り、発車ブザーが鳴り終わると、客用ドアを閉め、乗務員室ドアを閉めて発車させていった。

 マリア:「おっと!」

 出て行く電車と、入って来た対向電車が持って来た強風にマリアはスカートの裾を押さえる。

 稲生:「気をつけなよ」
 マリア:「きゃっ」

 稲生はマリアのスカートの裾を引っ張った。
 マリアはびっくりした様子だったが、別に嫌な顔をするわけでもない。
 もう、今はそういう関係になれたのだ。

 イリーナ:「あー、コホン。キミ達、イチャつくなら、宿に着いてからね」
 稲生:「あっ、すいません!」
 イリーナ:「マリアもミドルマスターになったら、いい加減、schoolgirlのコスプレは卒業しないとね」
 稲生:「僕のせいですね」
 マリア:「別にいいじゃないですか。勇太が喜んでくれるんですから」
 稲生:「というか、マリアさんも階級上がれるんですか?」
 イリーナ:「課題(クエスト)の達成率が高ければね」

 地上に出て駅の外に出ると、すぐ目の前のロータリーに1台の路面電車が停車していた。
 その電車は満席状態で発車していった。

 稲生:「タッチの差で……。案内してる割には接続悪いな」
 マリア:「でも、もう次の電車来たよ」
 稲生:「あっ、本当ですね」

 稲生達を見切り発車していったのはヨーロッパのどこかで運行されていたと思われる車両だったが、今度やってきたのは日本のどこかで運行されていたものと思われる電車だ。
 クリーム色に青いラインが入っていることから、横浜市の市電だった車両なのだろうか。
 軌間の違いについては、【お察しください】。
 尚、この色については市営バスに継承されている。
 因みに留置線には東京都電の旧型車両もいるが、横浜市のそれと軌間は合っている(1372mm)。
 更にこれは、京王線と都営地下鉄新宿線も同じである。
 軌道線の場合、2両以上で運転される場合はツーマン、1両単行の場合はワンマンであることが多い。
 この電車も1両であったから、ワンマン運転であった。
 ワンマンの時は前乗りで、先に運転士に運賃を払う。

 稲生:「大人3枚、乗り継ぎで」
 運転士:「はい、ありがとうございます」

 鉄道会社が同じなので、路面電車の運転士も地下鉄の運転士と同じ制服を着ている。
 路面電車の場合は人間の運転士か魔族の運転士かは半々であるそうだが、どうやらこの電車は人間であるようだ。
 駅で購入した乗り継ぎ乗車券を運賃箱に中に入れる。
 これは既に乗り継ぎ先の路面電車の運賃も含まれた乗車券で、多少の割引率がある。
 乗り込んでから、黄緑に近い色をしたロングシートに腰かけた。

 運転士:「この電車はカブキンシタウン直通、シャトル便です」

 次々と乗り込んで来る乗客達にそう案内する運転士。
 客層は人間もいれば、魔族も多い。
 特に、互いに干渉することもない。
 本当に人魔一体の王国なのだ。
 その為に憲法や法律が厳しく運用されている。
 どんな為人(ひととなり)であろうと法律さえ守っていれば良く、違反すれば即犯罪者として捕縛される。
 なので王国憲法も日本国憲法が参考にされつつも、よくよく条文を見ると、日本国憲法にも明記されている『公共の福祉による制限』がもっと詳しく書かれている。
 とはいえ、基本的に日本の法律が守れて、且つ司法官憲の警告に素直に従っていれば捕縛されることはない。

 運転士:「お待たせ致しました。まもなく発車致します」

 どうやらシャトル便には明確な時刻表があるわけではなく、だいたい座席が埋まったら発車するシステムのようである。
 さっきの電車も満席になったから発車したのだろう。
 ドアが閉まって発車した。
 釣り掛け駆動のモーター音が車内に響く。
 地下鉄と比べてフワフワとした揺れが特徴的である。
 アルカディア王国には自動車が無く、道路交通は専ら馬や馬車である。
 SFとファンタジーを足して2で割った文明だというのが分かる。

 マリア:「着いたら、どうするんですか?」
 イリーナ:「まずは宿を取りましょう。大丈夫。ああいう所には、泊まる所なんて一杯あるから」
 稲生:「でしょうね」

 繁華街には往々にしてホテルが林立しているものだ。
 もちろんラブホも多々あるだろうが、ちゃんとビジホも存在しているので心配無い。

 稲生:「一体、先生は歓楽街でどんなクエストをさせる気でしょうかね?」
 マリア:「色々と想像は付くけど、こればっかりはねぇ……」

 電車は石畳の道路の中央に敷かれた軌道の上を走行して行く。
コメント (16)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「魔王城で昼食」

2020-05-07 11:46:16 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月5日12:30.天候:晴 アルカディアシティ魔王城新館2Fレストラン]

 イリーナ:「姉さんったら、ほんと恥ずかしがり屋さん。付き人を寄越してくるだけなんて……」
 マリア:「いや、そういうことじゃないと思いますが……」

 魔王城にて宮廷魔導師ポーリンに面会を求めたイリーナ。
 しかし最初は多忙を理由に断られた。
 そこで、ポーリンの直弟子エレーナから報告書を預かっているという話をすると、今度は同じ理由で付き人を寄越して来ただけだった。
 宮廷魔導師の付き人というくらいだから、それも魔道士であろう。
 しかし、ポーリンの直弟子というわけではないようだ。
 どういう人選なのかは分からないが、政治的な意図があるとすれば、それに携わっていない稲生達はスルーするのが無難であろう。
 で、3人は手持無沙汰といった感じで城内のレストランで食事をしている。
 このレストランは、言わば高級ホテルのそれのような位置づけである為(人間界で高級ホテルに泊まるようなVIPは、基本的に魔王城に泊まる。大なり小なり、魔王城関係者を訪ねて来る者が多い為)、金のある者であれば誰でも利用することができる。
 帝政時代の魔王城では考えられないことだ。

 稲生:「取りあえず今日はどうします?サブクエスト、やりますか?」
 イリーナ:「主人公が自らサブクエストとか言っちゃダメよ」
 稲生:「す、すいません」
 イリーナ:「その時点でメインストーリーになっちゃうじゃない」
 稲生:「はあ……」

 と、その時だった。

 ウェイター:「失礼致します。イリーナ様方に面会希望の方がいらっしゃいます。今、よろしいでしょうか?」
 イリーナ:「え?ああ、いいわよ。ちょうど食べ終わったところだから」
 ウェイター:「かしこまりました。それでは空いているお皿、お下げ致します。食後のデザートとお飲み物、すぐにお持ち致します」
 イリーナ:「分かったわ」
 稲生:「それで、先生に面会希望の人とはどこに?」

 3人は丸テーブルを三角に囲んでいる。
 稲生とマリアの間の所から、ある人物が現れた。
 それは先ほど、エレーナの報告書を渡したポーリンの付き人だった。
 金髪をストレートに腰まで伸ばし、背丈は稲生より高くイリーナよりは低い。
 要はベイカー組のルーシーは黒髪ロングだが、それを金髪にしたような感じに稲生は思えた。
 で、ルーシーはクールだが、こちらは……クールには振る舞っているが、恐らくは本来テンションの高い性格ではないかというイメージを稲生は持った。

 付き人:「お食事中、失礼致します」
 イリーナ:「ちょうど食べ終わった所だからいいわよ。なに?姉さんの気が変わって、直接会ってくれるって?」
 付き人:「申し訳ありません。さすがにそこまでは……」
 イリーナ:「あら、そう。それは残念」
 付き人:「ポーリン師より伝言を預かって参りましたのでお伝えします」
 イリーナ:「いいよ」
 付き人:「『エレーナの報告書、しかと受け取った。御苦労。この後、魔界で何の用があるかは知らぬが、早々に人間界に戻れ。まもなくこの国は、戦乱に巻き込まれるだろう』とのことです」
 稲生:「ミッドガード帝国に攻め込まれるというのは本当なんですか?」
 付き人:「ミッドガードは帝国ではなく、大統領制を採用した共和国です。このアルカディア王国との政争に敗れた魔界民主党の亡命先として知られています」
 稲生:「魔界民主党って、どこに行ったんだろうと思ってたら……」
 イリーナ:「別に、死刑になるわけじゃないのにね」
 マリア:「しかし、2度と浮かばれないのは事実だと思います」
 稲生:「つまり、ミッドガード共和国がアルカディア王国に侵攻する理由は……政争に敗れた復讐?」
 付き人:「そういう見方もありますが、まだ正式な宣戦布告が来ていないので不明です」
 マリア:「宣戦布告なんて、そんなもの来なくたって奇襲攻撃をしてくるかもしれないのに」
 イリーナ:「ま、とにかくありがとう。姉さんの忠告、ありがたく受け取るわ。そう伝えてちょうだい」
 付き人:「かしこまりした」
 イリーナ:「あなた、所属と名前は?」
 付き人:「ダンテ一門で、マルファ先生に師事しています。名前はレクシー・バルバトス・ライトです。因みに階級は……ミドルマスターです」
 イリーナ:「おお~、なかなかいい人材入れたじゃないの。さすがは姉さん」
 マリア:「マルファ先生って、あの自由人の?」
 イリーナ:「この業界、基本的に皆自由人よ」
 マリア:「師匠が言うと、そんな気がします……」
 イリーナ:「ポーリン姉さんの付き人になったのも、マルファの意向かしら?」
 付き人改めレクシー:「はい。マルファ先生からポーリン先生が付き人を募集していて、もう既に応募したから行ってくれと……」
 マリア:「選択肢ナシかよ……凄い先生だな……」
 イリーナ:「う、うんうん。まあ、どういう状況でそうなったのか、だいたい想像付くわ。言わない方がいいわね」
 レクシー:「そうして頂けると助かります。では、確かにお伝えしましたので。他にポーリン師にお伝えすることはありますか?」
 イリーナ:「特に無いわ。せっかく来たんだから、6番街のカブキンシタウンで遊んで行こうか?」
 マリア:「師匠、それどころじゃ……」
 稲生:「株禁止?何ですか、それ?」
 マリア:「この町の6番街にある、大きな繁華街。名前は日本の『歌舞伎町』と『錦糸町』から取ったらしい」
 稲生:「いや、さすがにちょっとそれは……」
 マリア:「ねえ?」
 レクシー:「分かりました。それでは、『イリーナ先生はカブキンシタウンで遊んでから帰る』と、ポーリン先生にお伝えしておきますw」
 イリーナ:「あっ、ちょっと!それだけは内緒にしてーっ!」
 稲生&マリア:「もう遅いですよ」

 既にレクシーはテレポーテーションで姿を消していた。

 イリーナ:「後でまた怒られるーっ!」
 マリア:「師匠が悪いんじゃないですか」
 稲生:「それにしても今の人、ミドルマスターですか。呪文の詠唱をしなくても、ルゥ・ラが使えるんですね」
 イリーナ:「あれはどちらかというと、エスパーだね」
 稲生:「エスパー?超能力者?」
 イリーナ:「そう。ルゥ・ラは基本的に長距離移動に使うもの。しかし、テレポーテーションは短距離移動に使う。そしてそれなら、熟練さえしていれば呪文の詠唱をする必要は無い」
 稲生:「なるほど。ということは、テレキネシスや念写なんかも使えるんですかね?」
 イリーナ:「今度会った時、頼んでみれば?私が見る限り、結構ノリは良さそうなコだから、頼み方を間違えなければノリノリで披露してくれると思うよ。でも、あんまり興味を持ち過ぎると、今度はこのコが怒るからね?」
 マリア:「…………」(←ジト目で稲生を見つめる)
 稲生:「き、気をつけまーす……」(;^_^A
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする