報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「カブキンシタウンへ帰還」

2020-05-17 19:37:20 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月6日12:30.天候:晴 アルカディアシティ6番街 地下鉄工事現場→6番街駅]

 ついにボス戦に勝利した稲生達。

 親蜘蛛A:「グエッ……!」
 親蜘蛛B:「ゴポッ……!」
 稲生:「?」

 親蜘蛛が口から何かを吐き出した。
 糸ではない。
 それは緑色で野球ボールくらいの大きさだった。

 マリア:「魔法石?」

 魔法石のようなものを吐き出した親蜘蛛2匹は、たちまちに普通の蜘蛛の大きさになってしまい、消えた。

 稲生:「まさか、この蜘蛛達はこの魔法石を飲み込んだせいでこうなったのでは?」
 マリア:「そんな魔法石、聞いたことがない」

 マリアが魔法石を拾おうとしたが、ボロッと形が崩れ、見る見るうちに砂状になってしまった。

 マリア:「とにかく、師匠に報告しよう」
 ノラン:「もしも今のが本当に魔法石だとしたら、魔道士さん達を連れて来て正解だったというわけですね」
 稲生:「まあ、確かに……」

 ノランの言っていることは半分外れている。
 魔法石は何も魔法使いだけの専売特許ではなく、実は戦士にも使える。
 例えばノランの大剣にもデザイン上の都合なのか分からないが、刃の下の方に丸い穴が空いている。
 ここに魔法石をはめ込むことによって、その魔法石の力を使うことができるのである。
 ダンテ一門の中にも、魔法石を開発・研究する組が存在する。
 イリーナを通して、その組に問い合わせれば分かるだろう。

 6番街駅に戻る間も親蜘蛛の死を知らない子グモや、ゴキブリやネズミの化け物と交戦したが、稲生達の敵ではなかった。
 子グモとはいえ、子熊並みに大きい個体を一匹倒した時、試しに体を真っ二つに裂いてみたが、子グモから魔法石が現れることはなかった。

 エリック:「よお、ご苦労さん」
 ノラン:「あら、会長?どうかなさったんですの?」
 エリック:「心配になって見に来たんだよ。大蜘蛛のいる場所の近くで、落盤事故があったって言うんでねぇ。巻き込まれていやしねーかと思って、来てみたわけよ」
 ノラン:「あれは親蜘蛛が暴れたせいですよ。もちろん、きっちり退治しておきましたからね」
 稲生:「僕は楽して殺虫剤で殺しただけです。本当に活躍したのは、ノランさんとマリアさんですよ」
 エリック:「いや、化け物蜘蛛を殺虫剤で倒した稲生さんも相当なものですよ」
 マリア:「早いとこ師匠と合流したい」
 稲生:「色々と報告することがあるんですよ」
 エリック:「了解です。早いとこ戻りましょう。大蜘蛛を退治したことは、俺が自警団に報告しておきますから」
 稲生:「ありがとう」

[同日13:00.天候:晴 6番街カブキンシタウン 三星亭(Three Stars Inn)]

 ジーナ:「あ、お帰りなさい」
 稲生:「ただいま。イリーナ先生はいるかな?」
 ジーナ:「お店からは出ていませんよ」
 マリア:「部屋にいるのか」
 稲生:「先に昼食を食べてからにしませんか?」
 マリア:「そうだな。だけど、先にシャワー浴びてからにしたい。汗臭いし、黴臭いし……」
 ジーナ:「聞きましたよ!地下鉄の大クモを退治したんですって!?やっぱり戦士だけじゃダメだったんですねぇ」
 マリア:「ジーナ。シャワーを浴びたらランチにしたいんだけど、できる?」
 ジーナ:「大丈夫ですよ。何にしましょう?」
 稲生:「おすすめは?」
 ジーナ:「『チョコボ白ローラム鳥のパエリア』です」
 稲生:「いや、だからチョコボ食べちゃダメだってw」

 マリアが部屋に戻ると、イリーナは……。

 イリーナ:「 さすがにそれは食べれないよ……

 ベッドに横になって惰眠の限りを貪っていた。
 これで本当に先ほどのクエストを採点してくれていたのか、不安になってしまう。
 マリアは一糸纏わぬ姿になると、シャワールームに入った。
 こんな時、シャワー付きの部屋を選択してくれたイリーナには感謝する。
 もっとも、普通の宿屋ではバスタブまでは無いことが殆どだ。
 安宿でもバスタブくらい付いている日本の宿は、本当に恵まれているのだとマリアは固定式のシャワーヘッドを見上げながらそう思った。

 ジーナ:「お待たせしました。『白ローラム鳥のパエリア』です!」
 マリア:「Thanks.戦いの後はお腹が空くからね。早速食べよう」
 稲生:「はい。あの、白ローラム鳥って何ですか?」
 マリア:「そうだなぁ……。鳩と鶏を足して2で割った、魔界ならではの鳥かな。アホウドリみたいに、人間が近づいても逃げないんだって」
 ジーナ:「魔界特有の鳥にしては、全く害の無いものとして有名なんですよ。大抵の魔界の鳥はモンスターでなくても、なかなか凶暴な種類が多いんですけどね」

 黒ローラム鳥というのもいるが、これはどう見てもカラスのことである。
 但し、カラスが猛禽類に進化したものといった感じにしか稲生は見えない。
 だからたまにモンスター代わりとして、街中でエンカウントすることもあるという。

 稲生:「そういうことなら、安心して食べれるかな。いただきまーす」
 マリア:「おっ、さすが美味しい」
 ジーナ:「あの、先輩方。本日も宿泊されるんですよね?」
 マリア:「そのつもりだけど?」
 ジーナ:「先輩、服を着替えたみたいですね。宜しかったら、明日までに洗濯しておきましょうか?」
 マリア:「えっ、いいの?」
 ジーナ:「はい。私も先輩のその服、興味がありますので」
 稲生:「人間界で売ってるよ。ベイカー組のルーシーも、マリアさんと一緒に買ったんだ。ね?」
 マリア:「まあね」

 因みに一緒にいたエレーナは興味が無かったらしく、原宿では服よりもクレープに執心していた。

 ジーナ:「いいですねぇ。でも、私は人間界に行けないんです。向こうでは死んだことになってますから……」
 稲生:「そうなのか。それは残念だな……」

 人間界では幽霊扱いされるジーナだが、ここでは実体を持つ。

 マリア:「もし気に入ったんなら、ちょっと着てみるか?替えの服、持って来てるし」
 ジーナ:「えっ、いいんですか?」
 マリア:「洗濯してくれるんだから、その御礼としてね。ジーナ、私と体型似てるから着れると思う」
 ジーナ:「わあ!ありがとうございますぅ!」
 稲生:(どうやらジーナ、ルーシーに次いでマリアの友達になれそうだな)

 稲生はうんうんと頷きながらパエリアを口に運んだ。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「地下の住人」

2020-05-17 15:49:35 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月6日11:30.天候:晴 アルカディアシティ6番街 地下鉄トンネル内→新支線工事現場]

 アルカディアメトロの地下鉄トンネル内にはモンスターが潜んでいることがある。
 その為、そこを走る電車は警笛を何度も鳴らしながらモンスターを退かして運転するわけだ。
 中には待避が間に合わず、電車に轢かれる個体もいるらしいが、電車にとっては動物を轢いた程度のレベルである。
 例の大蜘蛛の巣は工事現場にあるらしいが、既に本線近くにまで侵出しているようだった。

 稲生:「うわっ、蜘蛛の化け物!?」
 ノラン:「まだ大した糸を吐いてこないわ。きっとこれは子供ね」
 稲生:「この大きさで!?」

 子グモの大きさは子供のイノシシや子熊くらい。
 ということは、親蜘蛛は親イノシシや親熊くらいということか。

 マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!Fi la!」

 マリア、魔法の杖から火球を放つ。
 子グモはそれに焼き払われた。

 稲生:「迂回路が遠過ぎる!」
 ノラン:「ちょっとこれは不親切ねぇ……」

 すぐ近くの本線では何事も無いように電車が走行している。

 稲生:「このままだと、いずれ事故が起こるよ!」
 ノラン:「事故が起きれば、軍隊も駆除に乗り出すわよ」
 マリア:「それ、順番が逆じゃない?」

 とはいうものの……。

 重火兵:「さっさと終わらせて帰ろう」
 警備兵:「んだんだ」

 軍隊も一応は駆除活動はしていたらしい。
 銃火兵が火炎放射器で子グモやその巣を焼き払っている。

 マリア:「やる気は虫以下だな」
 警備兵:「何だ、お前達は?」
 重火兵:「どこから入った?」
 稲生:「僕達、蜘蛛のモンスターを退治しに来たんです」
 警備兵:「何だって?」
 重火兵:「また命知らずが来たか」
 警備兵:「親玉なら向こうの区画だ。だが、もう既に何度も返り討ちに遭って、奴らの餌になってるぞ。それでもいいなら、止めはしないけどな」
 ノラン:「大丈夫。こっちには腕利きの魔道士さん達がいるからね。あとは私達に任せてくださいな」

 稲生達は親蜘蛛の巣がある区画へ、ようやくたどり着いた。
 工事が中断されているということもあってか、あちこちに資材が放置されている。
 進む度に蜘蛛の網が無造作に張られていた。

 マリア:「これ……食べられた人達か?」

 所々に人骨が散らばっている。

 ノラン:「そうみたいね」

 中には網に絡め取られたままの人骨なんかもあった。

 稲生:「! これは……」
 ノラン:「自作の火炎放射器みたいね。多分、相手が虫だと思って、焼き払おうと思って持ち込んだのでしょう。だけど、それは叶わなかったみたいね」
 稲生:「ふーん……」

 稲生は試しにトリガーを引いてみた。
 すると、まだ使えるらしく、先端から火が噴き出した。
 構造としては携帯コンロのガスボンベを差して、それを燃料とするものらしい。
 このガスボンベを別のボンベに換えれば……。

 ノラン:「持って行くの、それ?」
 稲生:「アイテム屋で買った殺虫剤が役に立つかもしれない」

 基本的に殺虫剤はハエやゴキブリを退治するには効果的だが、蜘蛛を倒すには……。

 マリア:「蜘蛛が出た!」
 ノラン:「でも、まだ子グモよ!」

 ノランが両手持ちの大剣バスターソードで子グモを斬り倒して行く。

 稲生:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!メラ!」

 まだ見習いの稲生は、初歩的な魔法しか使えない。

 マリア:「Fi la!」

 それよりは強い火炎魔法が使えるマリア。
 そして、ついに……。

 親蜘蛛A:「フシューッ!」
 親蜘蛛B:「フシューッ!」
 稲生:「ファッ!?」
 マリア:「え、なに?2匹いるの!?」
 ノラン:「雌蜘蛛は交尾の後、雄蜘蛛を食べてしまうはずなんだけど……」

 親蜘蛛A、口からペッと糸を吐いた。

 ノラン:「絡め取られるから気をつけて!」
 稲生:「マジか!」
 マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。Fi ga!……避けるな!」
 ノラン:「本当にすばしっこいわね!」

 ノランのように両手持ちの大剣を使う戦士は、動きが大仰になることが多く、すばしっこい敵には空振りになることが多々ある。

 マリア:「しょうがない!凍らすぞ!パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!Blizzara!」

 魔法の杖から、今度は猛吹雪が親蜘蛛達を襲う。
 だが!

 マリア:「だから避けるなっての!」
 稲生:「うそ!?ブリザラもダメ!?」

 だが、直接ダメというわけでもないらしい。
 それは床を凍らせた。
 稲生に突進攻撃をしようとしてきた親蜘蛛Bが凍った床に足を滑らせ、壁に激突した。

 作業員A:「何だ、今の衝撃は!?」
 作業員B:「落盤だ!」
 作業員C:「おおーい、大丈夫か!?今の落盤で2人、下敷きになったぞーっ!」

 壁の向こう側から何か人の声が聞こえた。
 どうやら、向こう側が工事現場になっているらしい。

 ノラン:「きゃーっ!今の聞いた!?落盤で2人死亡ですってよ!?捕まえて最大10日間の勾留ってだけじゃ世間が許さないわーっ!」
 稲生:「いや、それ日本の勾留手続き……」
 マリア:「しかも死んだって言ってないし……」
 稲生:「と、とにかく今がチャンス!」

 稲生は火炎放射器を転用した殺虫剤放射器を壁に激突してノビた親蜘蛛Bに吹きかけた。

 親蜘蛛B:「グオオオオオッ!」

 親蜘蛛B、足をバタつかせて苦しがる。
 どうやら効いているようだ。

 マリア:「Blizzara!」

 親蜘蛛Aに対して吹雪魔法を放つが、やはり避けられる。
 だがマリアの魔法は、ついにこの区画の壁と床を氷漬けにしてしまった。
 親蜘蛛、糸を吐くものの、床がツルツルで歩けず、壁もツルツルで登れない。
 ほぼ動きを封じられた親蜘蛛Aは……。

 マリア:「Fi ga!」

 こちらはマリアの火炎魔法で焼き殺された。

 稲生:「ちょうど一缶使い切った所で死んだよ」
 マリア:「一応、そっちも焼き払っておく」

 マリアはエーテルを飲んでMPを回復させた後、改めて親蜘蛛Bも焼却した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする