報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「サーシャとエリック」

2020-05-10 20:52:02 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月5日18:00.天候:晴 アルカディアシティ6番街カブキンシタウン 宿屋三星亭(Three Stars Inn)]

 1階の食堂兼酒場に集まったイリーナ組。
 そこで夕食を注文する。

 イリーナ:「今日は長旅で疲れたからね。今日の所はゆっくり休んで、クエストは明日からにするよ」
 マリア:「了解です。(師匠が飲みたいだけだろうな、きっと)」
 稲生:「はい。(マリア、心の中でツッコミを入れてるな……)」

 そこへ宿屋に住み込みで働いている魔道士見習いのジーナが料理を運んで来た。

 ジーナ:「お待たせしました。ビール中生1つと赤ワインのボトルが1つです」
 イリーナ:「おー、来た来た。はいはい、マリア。飲んで飲んでー」
 マリア:「頂きます」

 素直にイリーナからボトルを受け取るマリア。

 ジーナ:「テンダーロインステーキ300gのお客様?」
 稲生:「はーい」
 ジーナ:「鉄板お熱いのでお気をつけください」

 人間界のファミレスでも鉄板のセリフを言われる。

 稲生:「良かった。日本のステーキみたいになってる」

 魔王城のレストランは、どうもアメリカ人のルーシーに合わせているらしく、赤身の多いものが使われているようだ。
 他の客が注文していたステーキを見ると、どうも硬そうだったので、そこでステーキを頼むのはやめた。
 対してこっちは日本人が経営していることもあってか、ステーキ肉もサシの入っているものが使われている。

 ジーナ:「ソールズベリーステーキ250gのお客様?」
 マリア:「ああ、私だ」

 ハンバーグステーキの正式名称は、ソールズベリーステーキもしくはハンバーガーステーキという。

 ジーナ:「チョコボチキンフィレステーキ2枚です」
 イリーナ:「Спасибо.ここに置いてくれる?」
 ジーナ:「はい」
 稲生:(『ありがとう』と先生は言ったのか)

 ロシア語は未だに分からない稲生だが、さすがにこれだけ一緒にいると、何となく頭には残る。

 イリーナ:「じゃあ、食べましょう」
 稲生:「いただきまーす」

 稲生はステーキ肉を頬張った。

 稲生:「ん!確かに美味い。しかもちゃんとレアで焼けている」
 マリア:「ソールズベリーもちゃんと中まで火が通っていて、肉汁も適度に残っているね」
 イリーナ:「これならワインが進みそうねぇ」
 マリア:「師匠、飲み過ぎて明日、採点ができないなんて困りますよ」
 イリーナ:「分かってるわよ」
 稲生:「でも、先生。1つ教えてもらえませんか?」
 イリーナ:「なぁに?」
 稲生:「この町をクエストの場所に選んだのは、どういった理由ですか?」
 イリーナ:「周りの席を見て御覧なさい。この町にも冒険者達の姿を多く見かけるでしょう?」
 マリア:「大抵どの酒場にもいますよ」

 中にはビキニアーマーの女戦士もいた。
 仲間達と豪快に酒を酌み交わしている。
 どうやら傭兵か何かで、一仕事終えて報酬が入ったのだろう。
 ああいうのを見ると、稲生は一時共に旅をした女戦士サーシャのことを思い出すのだ。

 イリーナ:「この町にはジムがあってね。そのオーナーが、エリックっていう重戦士だった男なのよ」
 稲生:「エリックですか!エリックはサーシャの旦那さんですよ?ということは、サーシャもそこに?」
 イリーナ:「ジムの会員達も冒険者が多いだろうから、そこで適当な仕事の依頼があるかもねって話よ」
 稲生:「じゃあ、食べ終わったら訪ねてみましょう」
 イリーナ:「明日にして、今日は夜の町を楽しんでみたら?」
 稲生:「でも……」
 マリア:「酒が入っちゃったし、夜遅くまでジムが開いてるとは思えないから、そこは師匠の言う通りかもしれない」
 稲生:「なるほど……」

 因みにここでは、JKの姿をしているマリアも怪しまれずに酒を飲める。
 一体、王国の法律では何歳から酒が飲めるのか未だに分からない。

[同日19:00.天候:晴 三星亭→ジム“エリックス”]

 夕食を食べ終えた稲生とマリアは、夜の町を歩いてみることにした。
 尚、イリーナは先に部屋に引き上げている。
 明日に行こうとは思ったが、場所だけでも確認しようと、ジムへ行ってみることにした。
 場所はジーナが知っているので、彼女に場所を教わって、それから向かった。

 稲生:「本当に賑やかな街だね」
 マリア:「とても、隣国が攻めてくるかもしれないって感じには見えないな」

 それでも時折、警備兵の姿を見ると、一応は警戒しているのだということは分かる。
 魔王軍の一部であろうが、入隊資格は人魔不問である。
 しかし、今すれ違った警備兵2人は銃を持っていたが、どちらも人間のようだった。
 剣と魔法のファンタジーなのだが、スチームパンクの世界を越えて、既に現代に近づきつつある。
 銃は1人はショットガン、もう1人はマシンガンを持っていた。
 一方でビキニアーマーの女傭兵もいたりするのだから、無節操な世界だ。
 もっとも、凶悪なモンスターも未だに存在しているというこの町。
 それに対抗するには、銃くらい必要なのだろう。
 そもそも、日本だって銃そのものは戦国時代から存在していたわけだし(火縄銃)。

 稲生:「あった。ここだ」
 マリア:「あれ?まだ営業してる?」

 ジムの入口のドアは開けられ、看板や中は明かりが灯っていた。
 何より、会員達が汗を流している様子が見て取れる。

 稲生:「こんばんはー」
 トレーナー:「いらっしゃい。入会ですか?」
 稲生:「いえ。こちらのオーナーさんに会いたくて伺ったんですけど……」
 トレーナー:「会長に?どんな用件ですか?」
 稲生:「ここの会長さん、エリックって名前でしょう?僕、知り合いなんです。特に、エリックの奥さんのサーシャには」
 トレーナー:「奥さんとも。お名前は?」
 稲生:「魔道士の稲生勇太って言います。こっちはマリアンナ・スカーレット」
 トレーナー:「ちょっと待っててくださいね。今呼んで来ますから」
 稲生:「すいません」

 トレーナーが奥へ行く。

 マリア:「屈強な男に交じって、女もいる」

 どちらかというと、女性会員の方は剣の素振りをしていた。
 恐らく、こちらはサーシャに教わっているのではないだろうか。
 サーシャは剣の腕前が凄いので。
 それに対し、エリックは重戦士なので、剣よりもゴツいバトルアックスとかを持っていた。

 稲生:「まさかここでジムをやっているとはな」
 マリア:「でも、クエストの場所にはならなさそうだね」

 少しして、トレーナーが戻って来た。

 トレーナー:「お待たせしました。会長と奥様がお会いされるそうなので、どうぞ奥の部屋へ」
 稲生:「ありがとうございます」
 会員:「会長達、魔法使いさんと知り合いなんですかい?」

 トレーナーもそうだが、プロレスラーみたいな体躯の会員が話し掛けて来た。

 トレーナー:「お2人とも、昔は冒険者だったからね。そりゃ、魔法使いさんと知り合いにもなるさ。あんたはあと10セットね」
 会員:「へいへい」

 稲生達はトレーナーの案内でジムの奥へ向かった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする