報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「ボスからの電話」

2018-08-13 19:23:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月10日21:23.天候:晴 東京都墨田区菊川]

〔ピンポーン♪ 次は菊川駅前、菊川駅前。都営地下鉄新宿線をご利用のお客様は、お乗り換えでございます〕

 私とリサを乗せた都営バスの最終便は、下車停留所に接近した。
 窓側に座っているリサに降車ボタンを押してもらう。

〔次、止まります。……〕

 バスは三ツ目通りの上に設置されたバス停に停車した。
 降りるとムワッとした湿気が私達を包み込んだ。
 いかに車内が冷房のよく効いた状態であったか、分かるというもの。
 バス停からマンションまでは徒歩数分である。

 愛原:「あ、そうだ。高橋君、朝帰りだって言ってたな。てことは、明日の朝食は自分達で用意しなきゃいけないってことだ」
 リサ:「食べに行くの?」
 愛原:「それでもいいんだが、高橋君の分も用意してあげよう。私も若い頃はよくやっていたんだが、次の日休みの朝帰りは、昼まで寝てることが多いからな」
 リサ:「それで、どうするの?」
 愛原:「コンビニに寄って行って、見繕ってくるさ」

 私は駅前のコンビニに立ち寄った。
 ここは単身世帯のマンションも多いせいか、商品もそれに見合ったものが多い。
 私は食パンやマーガリンなどを購入した。
 オーブントースターくらい、家にあるからな。
 朝は軽めにパンと……あと、サラダでいいか。
 同じくレンジでチンすれば、それなりに温かく食べられるお惣菜なんかも売っているから……。
 うん、こんなものでいいだろう。
 私達は明日の朝食を購入して、それからやっと帰宅した。

[8月11日07:30.天候:曇 同区内 愛原のマンション]

〔「……はい、こちら東京ビッグサイト前です。御覧ください。ここには既に数万人規模のオタクの皆さんで一杯であります!」〕

 私はいつもの時間に起きた。
 やはり高橋君は寝ているらしい。
 玄関を見ると、ちゃんと靴があったので、一応帰ってきたことは分かる。
 テレビを点けて、早速オーブントースターでパンを焼いた。

 リサ:「先生、おはよう……」
 愛原:「おう、おはよう」

 リサの髪は普段、ロングのストレートなのだが、寝ぐせはヒドくなりやすいらしい。

 愛原:「今、朝飯用意してるから。ちょっと待っててくれ」
 リサ:「うん。顔洗って来る……」

 リサはそう言って、洗面所に行った。

 高橋:「せ、先生……」
 愛原:「うわっ、びっくりした!」

 そこへ高橋がゾンビのようにやってくる。
 思わず、手を腰にやってしまった。
 いやいや、銃なんて持ってないって!

 高橋:「サーセン……。ちょっと昨日、思いの外盛り上がってしまって……お食事を用意できなくて……」
 愛原:「いや、いいんだよ。キミも若いんだから、朝帰りしたくなることもあるだろう。今日は休んでていいから、ゆっくり寝てて」
 高橋:「サーセン……」
 愛原:「ああ、後でちょっと事務所に行ってくるから、留守番しててくれ。といっても、ほとんど居留守になるだろうがな」
 高橋:「了解です……」

 高橋は頭を抱えて自分の部屋に戻って行った。
 酒の飲み過ぎなのは分かるが、私が心配なのは、ナンパしてカラオケボックスに連れ込んだJK2人をちゃんと無事に帰したのかどうかにある。
 ま、この時点で警察が来ないところを見ると、恐らく大丈夫なんだろうとは思う。

[同日09:00.天候:晴 愛原学探偵事務所]

 朝食を終えて一息吐いた後、私は事務所に向かった。
 リサもついてきた。
 ま、高橋君的には静かな所で寝ている方がいいか。

 高野:「おはようございます。先生も御出勤ですか?」

 エレベーターを降りて事務所に入ると、既に高野君がいた。

 愛原:「おはよう。まあ、ちょっとね。高野君は?」
 高野:「私は昨日、やり残した事務作業があったんです。ま、午前中には終わりますけど」
 愛原:「そうか」
 高野:「珍しいですね。今日は高橋君がいないなんて」
 愛原:「昨日のコミケで大成功したもんだから、その打ち上げで盛り上がって、朝帰りしたんだよ」
 高野:「どんだけ顔広いんですか、あのコは……。暴走族からオタクまで……」
 愛原:「まあな。だけど、サークルのメンバーを見る限り、オタクってわけでもないみたいだぞ」
 高野:「そうなんですか」
 愛原:「ま、たまたま絵とか音楽とか、そういう才能を持ち合わせた高橋の知り合いが趣味でやっているって感じだったな」
 高野:「ふーん……。でもやっぱり顔は広いですね」
 愛原:「ま、どうあがいてもそれは事実か」
 高野:「そうですね」

 私と高野君がそんな話をしていると、リサが高野君に話し掛けた。

 リサ:「お姉ちゃん」
 高野:「なぁに?」
 リサ:「あのね……」

 リサはボソボソと高野君に何か耳打ちした。

 高野:「それホント!?」
 リサ:「うん」
 高野:「あー……分かったわ。それじゃ、ちょっと一緒に来て」
 リサ:「うん」
 愛原:「何だ?何かあったのか?」
 高野:「いえ、ちょっとトイレに行くだけです」
 愛原:「女子トイレに何かあるのか?」
 高野:「違いますよ。この歳の女の子によくあることです」
 愛原:「それって……」
 高野:「じゃ、ちょっと行ってきます」
 愛原:「あ、ああ」

 な、何だって?
 リサはBOWだから、そんなの関係無いと思っていたのだが……。
 と、そこへ電話が掛かって来た。

 愛原:「おはようございます。愛原学探偵事務所です」
 ボス:「私だ」
 愛原:「あ、ボス。おはようございます」
 ボス:「おはよう。うむ。キミが直接取ってくれると、変なこと言われずに済む」
 愛原:「す、すいません。それで、何の御用でしょうか?」
 ボス:「リサ・トレヴァーのことなんだが、今のところは暴走せずに済んでいるようだね」
 愛原:「おかげさまで」
 ボス:「いやいや、さすがは愛原君だ。これがもし他の人間だったら、最悪既に暴走させていただろう」
 愛原:「そうなんですか?彼女は素直でいいコですよ?」
 ボス:「それに付け込む悪い大人もいるということさ。それよりキミ、昨年、リサ・トレヴァーについて正体を突き止めたそうだね」
 愛原:「は?」
 ボス:「その時の書類は保管済みであるという。その書類を確認したいのだが……」
 愛原:「え?え?え?何のことです?」
 ボス:「キミぃ!リサ・トレヴァーの人間だった頃の経歴を突き止めたと言っていたではないか!彼女の人間だった頃の名前とか……」
 愛原:「ええーっ!?覚えてませんよ!?」
 ボス:「くそっ!……そういう所も記憶喪失の範囲だったのか?」
 愛原:「す、すいません。何しろ、昨年末からの記憶が……」
 ボス:「霧生市のバイオハザードから生還後、キミはリサ・トレヴァーについて調査していたじゃないか。そしてその結果を報告書にまとめて、保管してあると私に報告していたぞ?」
 愛原:「えー……」
 ボス:「探してくれ。まだどこにも渡していないのなら、キミの事務所に保管されているはずだ」
 愛原:「わ、分かりました!大至急探します!」

 私は電話を切った。
 探すにしても、どこを探したら良いのか分からない。
 高野君が戻って来たら聞いてみることにしよう。
コメント (2)
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“私立探偵 愛原学” 「都営バス東20系統最終便」

2018-08-13 10:24:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月10日20:50.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅丸の内北口バス停]

 私の名前は愛原学。
 都内で探偵事務所を経営している。
 今日は助手の高橋君に頼まれて、コミックマーケットの手伝いをしに行っていた。
 それも終わり、私はリサを連れて夕食がてら東京駅に来ていた。
 地下街に行けば何かしら食べる所もあるだろうと思っていて、実際その通り、私達は洋食に舌鼓を打ったわけだが、問題はその後。
 いや、その前から発生していたか。
 私達が行った場所は八重洲地下街ではなく、東京駅一番街の方。
 JR東日本系列である鉄道会館の八重洲地下街ではなく、JR東海系列である東京ステーション開発がやっている東京駅一番街の方だ。
 そこにはキャラクターストリートという区画がある。
 もう、お分かりだろう。
 それまで無機質な研究所に押し込められていた10代前半の少女がそういった所に行った場合、どういう反応をするのか。

 愛原:「あ、バス来た」

 私はその時の回想をしながらバス待ちの列に並んでいた。
 最終バスが発車する5分前にバスがやってきた。
 だいたい、都営バスの始発停留所入線時間は5分前と決まっているような気がしてならない。
 ま、そうとも限らないのだが、あくまでも目安として決められているのかも。
 最終バスらしく、行き先表示は赤い枠で囲まれている。
 側面の表示機も、『最終バス』と書かれていた。
 昔、まだバスの行き先表示が幕式だった頃は、赤いランプをボウッと光らせて最終バスであることをアピールしていたのだが、今ではLED表示になってしまった。
 あのボウッとした光り方が見方によっては不気味に見えるので、それで色々と最終電車や最終バスには色々な伝説が発生したのではないだろうか。

 愛原:「大人2人で」
 運転手:「はい。どうぞ」

 それにしても、最近の支払いは楽になったものだ。
 Suicaでピッとやればそれで良い。

 愛原:「よし、ここにしよう」

 私達は2人席に座った。
 因みにリサは、大きなクマのぬいぐるみを抱えている。
 うむ。まあ、その……何だ。
 しっかり、おねだりされたと言われればそれまでだが……。
 これはエージェントさんに請求しても、恐らく支給されないだろうなぁ……。

 リサ:「大人なの、私?」
 愛原:「運賃計算上は」

 リサの見た目からして中学1年生ってところか?
 だったら、大人運賃になってしまうな。
 最終便にしては随分早い時間であると思われるが、そもそもそんなに混まない路線なのだろう。
 先ほど乗って来たビッグサイト方面への路線と比べれば。
 休日ということもあってか、確かにそんなに乗って来ていない。
 先ほど買わされたクマのぬいぐるみを愛でるリサを見ながら、発車の時間が迫って来た。

〔「20時55分発、門前仲町、木場駅前、菊川駅前経由、錦糸町駅前行き最終、まもなく発車致します」〕

 バスのエンジンが掛かると一瞬、車内が薄暗くなる。
 が、また元の明るさに戻る。
 もっとも、電車内と比べればやっぱり薄暗い。
 これでも、昔のバスよりは明るくなったと思うがな。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは前扉を閉めて、すぐに発車した。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。この都営バスは東京都現代美術館前、菊川駅前経由、錦糸町駅前行きでございます。次は呉服橋、呉服橋。……〕

 バスが永代通りへ出る交差点の赤信号で止まった時、高橋君がLINEを送ってきた。
 彼、何気にSNSを網羅してるんだよなぁ。
 さすがに霧生市の時はそれどころではなかったみたいだけど。

 高橋:『今日は皆で「朝までコース」です』

 どうやら私の予想通り、高橋君は朝帰りのようだな。
 ま、どうせお盆休みだからいいか。
 どうせ事務所に行ったって、ボスからの電話なんて無いだろうし。
 それでも一応、明日行ってはみるけど。
 写真を見ると、どうやらどこかのカラオケに入っているようだ。
 他のメンバーと共に盛り上がって……。

 愛原:「!?」

 1枚目の写真は普通に皆でカラオケで盛り上がっているようなものなのだが、2枚目の写真を見た時に私の顔が驚愕した。

 リサ:「? どーしたの、先生?」
 愛原:「あ、いや、何でもない。何でもないんだ」

 私は慌ててスマホの画面を消した。
 何だろう。
 同じカラオケボックスの中だと思うのだが、明らかにサークルメンバーではないと思われるJK2人が連れ込まれてて、下着姿になっているような写真があったのだが。
 高橋君はあくまで自撮りに夢中で、殆ど関知していないといった感じだったが。

 愛原:「!!!」

 いや、違った。
 3枚目の写真は明らかにJKのスカートの中の写真。
 それのコメントに、『先生、今日はありがとうございました。お疲れの先生に癒しの1枚です』と書かれていたのだ。
 LINEの内容そのもの、そしてコメント自体は普通のはずなのに、写真だけが犯罪臭パねぇ!
 高橋君も酔っ払うと、タカが外れることがある。
 ましてやコミケが成功したので、尚更ハイテンションになっているのだろう。 
 そして高橋君は、芸能界でも通用しそうなイケメン。
 それでJK2人を引っ掛けて、連れ込んだりしたのだろう。
 で、あとは【お察しください】。

 リサ:「先生?」
 愛原:「あ、いや、ハハハ……。高橋君、楽しんでるみたいだよ」
 リサ:「そーなの」

 リサには見せられねぇ……。
 ん?また、LINEが来た。

 高橋:『すいません、先生。さっきの写真……』

 おっ、やっとヤバいことをしていたことに気づいたか。

 高橋:『……このクソ女、見せパンはいてやがりましたので、すぐに脱がさせました。本物の写真をどうぞお納めください』

 おい、もうやめろ!
 少なくとも、私はちゃんと注意しておいた。
 これで何かあっても知らないよ。
 私は、ちゃんと注意したからね、うん。
 私の不安を乗せて、最終バスは東へと走る。
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