報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“魔女エレーナの日常” 「魔道師とコミケ」 3

2018-08-18 21:19:02 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月11日16:00.天候:晴 東京都江東区有明 東京ビッグサイト]

〔「……只今を持ちまして、コミックマーケット94、2日目を終了致します。皆さん、今日も1日お疲れ様でした。また、冬にお会いましょう」〕

 終了放送が流れ、参加者達から拍手が沸き起こる。

 特盛:「ヒーハー!」
 エリ:「意味不明の叫び声上げんな!」

 そこへ疲弊した様子のエレーナが戻ってきた。

 エレーナ:「た、ただいまぁ……」
 エリ:「お帰り、エレーナさん。後半は列整理無くても大丈夫だったよ」
 エレーナ:「すいません。ちょっとトラブルがあって……」
 エリ:「いいよいいよ」
 特盛:「その魔女コスで、カメコ達に囲まれたんだって?凄いねぇ!スカート短いけど大丈夫だった?」
 エリ:「オメ、変態なことサラッと言ってんじゃねーよ!」
 エレーナ:「大丈夫です。下はスパッツはいてるんで」
 特盛:「何だぁ……」
 エリ:「なにガッカリしてんだ、コラ!」
 特盛:「いででででで!」

 エリちゃん、旦那たる特盛くんの頬っぺたをつねった。

 鈴木:「いやー、みんな!大変助かったでヤンス!大感謝でヤンス!是非ともまた次の冬コミも手伝いを……」
 エレーナ:「いや、もう勘弁だよ!」
 特盛:「ボク達も御山に行かないとダメだしなぁ……」
 エリ:「そうだよ。鈴木こそ何言ってんの。年末は末寺で身の供養(大掃除)でしょ?」
 鈴木:「えー?」
 エリ:「えーじゃない!」
 鈴木:「でもォ……」
 エリ:「でもじゃない!」
 鈴木:「だってぇ……」
 エリ:「だってじゃない!」
 エレーナ:「なるほど。鈴木にはそういう対応でいいのか」
 エリ:「そうだよ。男の扱いなんて、こんなもんでいいの」
 特盛:「エリちゃん、ヒドーイ!」

 新婚夫婦のイチャつきを見ながら、エレーナは溜め息をついた。

 エレーナ:「それで鈴木、売り上げのほどは如何に?」
 鈴木:「おかげさまで完売でヤンス!」

 鈴木は『完売御礼』の札を両手に掲げながら答えた。

 エレーナ:「おお〜!」
 特盛:「よっし!これで帰りの荷物は軽くていいね!」
 鈴木:「片付けの手伝いも、是非よろしくオナシャス!」
 エリ:「しょうがないね」

[同日17:11.天候:晴 東京ビッグサイトバス停→都営バス東16系統車内]

 鈴木:「3日目だと撤収作業とかあるんだが、2日目まではまだ無いからな」
 エレーナ:「撤収作業?」
 特盛:「あれでしょ?机とか椅子とかを片付けるヤツでしょ?」
 鈴木:「そう。あれはまた明日も使うからな、俺達は椅子を机の上に上げるだけでいい。……はずだ」
 エリちゃん:「……はずだってw」

 4人はやってきた都営バスに乗り込んだ。

 鈴木:「大人4人お願いします」
 運転手:「大人4名ですね」
 特盛:「さすが鈴木、太っ腹〜」
 エレーナ:「交通費は支給だからね」
 鈴木:「そうそう」

 キャリーバッグを持った鈴木は、折り畳み式の1人席に座った。
 エレーナはその後ろに座る。
 特盛くんとエリちゃんは後ろの2人席に座った。

 特盛:「エリちゃんと密着できて、功徳が止まらなぁーい!」
 エリ:「特盛、もう少し痩せろ!」
 特盛:「えー?」
 エリ:「えーじゃない!」
 特盛:「でもォ……」
 エリ:「でもじゃない!」
 特盛:「だってぇ……」
 エリ:「だってじゃない!」
 エレーナ:「鈴木と同じこと言ってら」
 鈴木:「あいつとは顕正会からの長い付き合いだったからな」

 発車の時間になり、バスにエンジンが掛かる。
 まだ終了後の余波が残っており、バスは立ち客を何人も乗せて発車した。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは二次元から三次元の世界へと戻り行く。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスは有明一丁目、豊洲駅前、月島駅前経由、東京駅八重洲口行きでございます。次は国際展示場正門駅前、国際展示場正門駅前でございます〕

 エレーナ:「このまま真っ直ぐ帰るのか?」
 鈴木:「いや。途中で降りて、皆に夕飯を奢るよ」
 エレーナ:「おお〜!さすがは鈴木!」
 鈴木:「今日は手伝ってくれた御礼だからな。エレーナにジャパニーズ・フードをご馳走するよ」
 エレーナ:「そいつは楽しみだな」

 バスが大通りを疾走する頃、歩道上を歩く人外3人組がいた。

 ゴブリン:「次の薄い本、何にする?」
 ミイラ男:「“魔女の華麗なる日常”でどうだろう?」
 サキュバス:「いいね〜!」

 どうやらエレーナ、薄い本にされそうな予感が……。

[同日17:36.天候:晴 東京都中央区月島]

〔ピンポーン♪ 次は月島駅前、月島駅前でございます。都営地下鉄大江戸線、東京メトロ有楽町線をご利用のお客様は、お乗り換えでございます。次は、月島駅前でございます〕

 鈴木:「今日は東京スカイツリーがよく見えるな」

 鈴木は後ろを振り向いて言った。

 エレーナ:「……あっ、なに!?」

 エレーナはうとうとしていたが、鈴木の話し掛けにハッと意識を戻した。

 鈴木:「あ、ゴメン。次で降りようと思って……」
 エレーナ:「ああ、そう」

 新月島公園バス停付近からは、バスの中からも東京スカイツリーが見える。

 鈴木:「スカイツリーが見えたんだけどな……」
 エレーナ:「ああ、そう。地上から見るスカイツリーもいいかもね
 鈴木:「ん?」

 鈴木は首を傾げたが、エレーナは既にホウキで上空からスカイツリーに接近したことがあるらしい。

〔「ご乗車ありがとうございました。月島駅前です」〕

 バスが駅前の交差点を右折すると、その先にあるバス停に停車した。

 鈴木:「ほい、降りるぞ」

 鈴木は特盛達を促した。

 エリ:「ああ、やっぱここで降りるんだ」
 鈴木:「もち」

 ここで降りる乗客は多い。
 その代わり、乗って来る乗客も多いのだが。
 その為か、ここで余裕時分が取られていることもある。

 特盛:「ふわああ……!ちょっと寝落ちしちゃったよォ……!」
 鈴木:「大丈夫だった、エリちゃん?特盛に寄り掛かられたら潰れるんじゃないか?」
 エリ:「なーに。こっちはもう慣れっこだから」
 エレーナ:「で、なに奢ってくれるんだ?」
 鈴木:「そりゃあ、月島で降りたからには、アレしかないだろう?」
 エリ:「アレしかないか」

 エリちゃんは大きく頷く。

 特盛:「あれぇ?俺達が有楽町線に乗り換える為に降りたんじゃないの?」
 鈴木:「だったら“ゆりかもめ”で豊洲まで行けばいいだろ。そうじゃないんだな。ま、とにかく俺に任せろ」

 鈴木は歩き始めた。
 その後ろをついて歩く3人。
コメント (2)
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