報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“魔女エレーナの日常” 「鈴木のプレゼント」

2018-08-22 19:38:32 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月15日15:00.天候:晴 東京都江東区森下 都道50号線(新大橋通り)上]

 エレーナは裏の仕事、魔女の宅急便の仕事から戻ってくる所だった。

 エレーナ:「やっべ!時間おしちゃったわ!早く戻らないと!」

 ホウキに跨り、ワンスターホテルへと向かう。
 と、その時、鈴木が都道の歩道上を歩いているのが見えた。

 エレーナ:「げ!まだ懲りないのか?……あれ?」

 しかし鈴木はワンスターホテルへ向かう路地には入らず、そのまま都道を東の方に歩く。
 どうやら、地下鉄の駅に向かうようだ。

 エレーナ:「どこかへ行くのかな?」
 クロ:「気になるニャ?」
 エレーナ:「ばっ……!気になっていないし!」

 ホウキの先端に乗っている使い魔の黒猫、クロにニヤけた顔で聞かれる。

 エレーナ:「さっ、早いとこ戻ってホテルの仕事だよ!」

 エレーナはホテルの屋上に降り立つと、いそいそとホテルの中に入って行った。

[同日15:08.天候:晴 都営地下鉄森下駅 大江戸線ホーム]

 地下のホームで電車を待つ鈴木。
 その手にはスマホが握られている。
 どこかに電話しているようだ。

 鈴木:「……ええ。そういうわけなんですよ。何とかお時間取って頂けませんかね?……いやいや、お忙しいのは分かりますよ、別の意味で。もちろん、タダでお願いしようとは思っておりません。あなたの好きな物を進呈します。それで如何でしょうか?……ああ、やっぱり。大丈夫ですよ。想定内です。必ず御用意しましょう。……ええ、では今からそちらに向かいますので、何卒よろしく。では」

 鈴木は電話を切った。

〔まもなく3番線に、両国、春日経由、都庁前行き電車が到着します。ドアから離れてお待ちください〕

 鈴木:「計画通り」

 鈴木はニヤッと笑った。

〔森下、森下。都営新宿線は、お乗り換えです〕

 そして電車に乗り込み、空いているマゼンタ色の座席に腰掛ける。
 短い発車メロディが鳴って、ホームドアと電車のドアが閉まる。
 電車が走り出し、暗いコンクリートのトンネルの中に入り込む。

〔次は両国(江戸東京博物館前)、両国(江戸東京博物館前)。JR線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Ryogoku(Edo-Tokyo Hakubutukan-mae).Please change here for the JR line.〕

 鈴木:(この計画が上手く行けば、エレーナの心は俺の物だ)

 反対側の窓ガラスに、鈴木の不気味な笑顔がうっすらと映っていた。
 尚、これと時を同じくして、エレーナの背筋に寒気が走ったかどうかは【お察しください】。

[同日21:00.天候:晴 東京都板橋区常盤台 冨士大石寺顕正会 東京会館]

 横田:「横田です。先般の女子部班長会における大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
 鈴木:「このスケベ野郎!……まあいい。今回、会ってもらったのは他でもない。大事な話があるんだ」
 横田:「ついに決心されましたか。大聖人様は、いつでも正義に目覚めた者を放置プレイは致しません。キミも一刻も早く戦列復帰を」
 鈴木:「それは法華講員になった俺に言うセリフじゃねーだろ。そうじゃなくて、信仰以外のことで話があるんだ」
 横田:「そうですか」

 横田、キラーンと眼鏡を光らせる。

 横田:「ここでは目撃者も発生してしまいます。ちょっと場所を変えましょう」
 鈴木:「おう、そうだな」

 鈴木達はときわ台駅前からタクシーに乗った。

 鈴木:「成増駅まで行ってください」
 運転手:「成増駅ですね。ありがとうございます」

 タクシーが走り出す。

 横田:「どうして成増駅なのでせう?私の家はそっちではありませんよ?」
 鈴木:「誰がオマエんちに行くと言った?成増ならまだ板橋区内だからオマエの家からもそんなに離れてないし、俺もそこから光が丘行きのバスに乗れば大江戸線に乗れるから帰りやすいだけの話だ」
 横田:「なるほど。そうでしたか。いや、しかし私がよく今は東京会館を拠点としていることが分かりましたね?」
 鈴木:「法華講ナメんな。こっちにはオマエのストーカー術の更に上を行くストーカー野郎共がゴロゴロしてるぜ」
 横田:「? 私のストーカー術をお求めなんですよね?」
 鈴木:「そうだ」
 横田:「それなら、その人達に頼めば良いのでは?」
 鈴木:「バーカ。こんなこと、他の真面目な信徒さん達に頼めるか。アンタにしか頼めないことなんだ」
 横田:「……となりますと、依頼料についてはあまりお安くはできなくなりますが……」
 鈴木:「分かってる。さっきも電話で言ったろ?そこはアンタの言い値でいいって」
 横田:「かしこまりました。そういうことでしたら、お話を伺いましょう」
 鈴木:「まあ、待て。まずは成増に着いてからだ」

[同日22:00.天候:晴 東京都板橋区成増 成増駅南口モスバーガー]

 成増駅南口にあるモスバーガーは、第1号店とのことである。
 そこで鈴木と横田の密談が始まった。

 横田:「なるほど……。お話はよく分かりました。確かに、私ならではのお仕事ですね」
 鈴木:「だろ?だろ?報酬は払うから、何とか頼むよ」
 横田:「お引き受けしましょう。しかし、これだけ専門性の高い仕事ということは、あまりお安くできませんね」
 鈴木:「分かってる。で、何が欲しい?」

 横田、キラーンと眼鏡を光らせる。

 横田:「【とあるAKB48メンバーの】生ブラショーツ1セットで如何でしょう?」
 鈴木:「来ると思ったぜ。心配するな。親の財力を駆使して、必ず手に入れてやるぜ」
 横田:「そうと決まれば、私めにお任せください」
 鈴木:「で、俺としてはどうすればいいと思う?」
 横田:「やはり、アレをプレゼントするのがよろしいかと」
 鈴木:「アレか。やはり、ファッションもので行けってか?」
 横田:「はい。魔界にも魔女さんは多く存在しますが、どうしてもモノトーンの服を制服のように着用していますので、せめて【ホワホワ】くらいは派手に行きたいと考えているようです」
 鈴木:「さすがは横田理事だな」
 横田:「私の分析に間違いはございません。聞けばエレーナさんも、白と黒のモノトーンの服を常に着用しておられる様子。ダンテ門流においては、派手な服を着用できない何かがあるのでしょう」
 鈴木:「それで、アレか」
 横田:「さようでございます」
 鈴木:「となるとサイズが分からんし、俺もぶっちゃけ童貞だから、そういうのが分からない」
 横田:「分かっております。その辺につきましても、私めにお任せください。クフフフフフ……」
 鈴木:「よし、頼んだぞ」
 横田:「その代わり、約束のものは……」
 鈴木:「ああ。必ず用意しといてやる」

 2人のヒラ法華講員と、名ばかり幹部の顕正会員との密会は深夜まで続いたという。
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“大魔道師の弟子” 「夏休みナシの魔道師達」

2018-08-22 10:16:32 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月12日13:00.天候:晴 長野県北部山中 マリアの屋敷]

 稲生:「ごちそうさまでした」

 稲生は昼食を終えた。
 すぐにマリアのメイド人形が片付けを始める。
 しかし、屋敷の大食堂に他の魔道師の姿は無い。
 広い食堂に稲生1人だけだ。

 稲生:「マリアさんの様子はどうだろう?」

 稲生は席を立って、マリアの部屋に行ってみようかと思った。
 だがその時、稲生のスマホが着信音を鳴らす。

 稲生:「何だ?誰だ?」

 画面を見ると、鈴木からの着信。

 稲生:「はい、もしもし?」
 鈴木:「やあ、稲生先輩。どうもです」
 稲生:「鈴木君か。コミケどうだった?」
 鈴木:「おかげさまで完売です」
 稲生:「それは良かったね。悪かったね。手伝えなくて」
 鈴木:「先輩、何があったんです?」
 稲生:「こっちにも学生みたいな定期考査的なものがあって、それを攻略できなかったんだよ。エレーナとかはパスできたみたいだけどね」
 鈴木:「赤点取っちゃったんですか?」
 稲生:「いや、僕は黒点だったんだけどねぇ……」

 稲生はスマホを片手に、西側の2階を見上げた。
 大食堂自体が西側にあるのだが(エントランスホールが中央)、そこにはマリアの部屋がある。

 稲生:「それより何の用?」
 鈴木:「ああ、先輩。ちょっと相談が……」

 鈴木は昨夜の経緯を話した。

 稲生:「えっ、エレーナに払う報酬を踏み倒しちゃったの?!」
 鈴木:「いや、忘れてたんですよ!特盛達は先払いだったし、打ち上げで盛り上がったこともあって……」
 稲生:「よく悪夢の警告だけで済ませてくれたねぇ。魔女達を見ていると、如何に女の世界が怖いものかを思い知らされるよ」
 鈴木:「と、言いますと?」
 稲生:「まだエレーナが僕達と敵対していた頃は、そりゃもう大変で……って、それは話が長くなるからまた今度ね」
 鈴木:「それで、エレーナにお詫びのプレゼントをしたいと思ってるんです。彼女の後輩は、俺が近づくだけでも噛み付いて来る有り様なので……」
 稲生:「リリアンヌは……まあ、そうだね。過去に色々あったんだ。察してくれよ」
 鈴木:「エレーナには何がいいでしょうか?」
 稲生:「エレーナはお金が大好きだから、報酬に少し現金を上乗せしてあげればいいんじゃない?延滞金的な意味合いで」
 鈴木:「それだと味気ないですよ。もっとこう……無いですかね?」
 稲生:「うーん……。実は魔道師は、そんなに物欲は無いんだよなぁ……。エレーナみたいな金銭欲の強いのはいるけど」
 鈴木:「先輩、マリアさんはどうですか?」
 稲生:「マリアさん?」
 鈴木:「『マリアさんだったら、こうしてあげると喜ぶ』とか無いですか?」
 稲生:「マリアさんはこうして屋敷に閉じこもって魔法の研究とかするのが日課になっちゃってるから、たまに外に連れ出してあげると喜んでくれたりもするけど……」
 鈴木:「それだ!」
 稲生:「あ、でもエレーナの場合はホウキに乗って、リアル魔女の宅急便とかやってるから、それは通じないと思うな」
 鈴木:「マジっすか……」
 稲生:「……あ、こういうのはどうだろう?」
 鈴木:「えっ?」
 稲生:「魔女もやっぱり女性だから、スイーツとか好きだったりするよ。あと、意外とファッションとかにこだわりがあったりする」
 鈴木:「な、なるほど!それだ!確かにエレーナ、結構食欲はあるなぁ!先輩、ありがとうございます!それでやってみます!」
 稲生:「ああ、頑張って。……うん、それじゃ」

 稲生は電話を切った。

 稲生:「鈴木君……きっとエレーナが嫌がってイオナズンしてきても、笑いながら追いかけるタイプだろうなぁ……」

 つまり、ポジティブなストーカーといったところか。

 稲生:「……と、それどころじゃない。ちょっと様子を見に……」

 稲生が席を立ってマリアの部屋に行こうとした時だった。

 ミカエラ:「…………」

 人間形態をしたミク人形に後ろから肩を叩かれた。

 稲生:「ミカエラ?どうしたの?」

 ミカエラはスッとマリア宛ての郵便物の束を差し出した。

 稲生:「ああ、なるほど。ついでにこれを持って行けってことか。分かったよ」

 稲生は郵便物の束を手にすると、それでマリアの部屋に向かった。
 稲生などは普通に進めるマリアの屋敷。
 しかし、これが侵入者など招かざる客にとっては、茨の道が待っていることとなる。
 デストラップが何ヶ所かあり、しかもそのうち1ヶ所は即死トラップだったりする。
 稲生などの関係者には作動しないそのトラップを通り抜けると、マリアの部屋に辿り着く。

 稲生:「マリアさん?」

 稲生はマリアの部屋のドアをノックした。
 しばらくして、やっとドアが開く。

 マリア:「なに……?」

 眠い目を擦りながら、マリアが顔を出した。
 ノースリーブのワンピース型の寝巻を着ている。

 稲生:「これ……マリアさん宛ての郵便です」
 マリア:「ああ……ありがとう」
 稲生:「すいません、仮眠中に……。そんなに大変な追試……いや、補習でしたか?」
 マリア:「どっちもハズレ……いや、当たりか?まあ、とにかく……徹夜だったよ……。何とか終わった……」
 稲生:「そ、そうですか。お疲れさまです。あの、今朝も昼も食事をしていないだろうと思って、少し心配になったんです」
 マリア:「そうか……。もうそんな時間か……」
 稲生:「夕食はどうしますか?」
 マリア:「うん……。夕食の時間には下りて行く」
 稲生:「分かりました。すいません、仮眠の最中に起こしちゃって……」
 マリア:「いや……。修行サボった私が悪い……。それじゃ……」

 マリアは再び部屋の奥に引っ込んでしまった。

 稲生:「大丈夫かな……」

 稲生は心配になりつつも、自分の部屋がある屋敷東側に向かった。
 もちろん途中で会った人間形態のハク人形こと、クラリスに今夜の夕食はマリアの分も用意するように伝えておくのは忘れていない。
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