報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“魔女エレーナの日常” 「月島での打ち上げ」

2018-08-19 19:29:18 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月11日 天候:晴 東京都中央区月島 某もんじゃ焼き店]

 特盛:「うーん!ビールともんじゃが止まらなーい!」
 エリ:「今食ってんの、お好み焼きだよな?」

 コミケの打ち上げで盛り上がっている鈴木達。

 鈴木:「それにしても、エリちゃんもよく食べるようになったなぁ。実は特盛の子供でも中にいるんじゃねーの?」

 鈴木はビールジョッキ片手に、エリちゃんのお腹を指さした。

 エリ:「さあ、どうだかねぇ……」
 鈴木:「お、その反応、もうしかして?」
 エリ:「いやいや。種馬がこんなんじゃねぇ……」
 特盛:「エリちゃぁん、ヒドぉーい!」
 エリ:「種馬は種馬らしく、ヒヒーンと鳴いてみろ、オラ!」
 特盛:「ひひーん!」
 鈴木:「本当にやるな、特盛!……てかお前ら、そろそろ帰んねぇとヤバいんじゃね?」
 エリ:「マジでそんな時間?」
 鈴木:「お前ら今、埼玉暮らしだろ?」
 エリ:「それもそうか」
 特盛:「だーいじょーぶだよぉ〜、エリちゃ〜ん!もっと飲みた〜い!エリちゃんの膝の上で」
 エリ:「アホか!すいませーん、お会計!支払いはこの人持ちで」
 鈴木:「ういっス」

 鈴木、財布の中からクレカを取り出す。
 実家がセレブらしく、アメリカンエクスプレスを取り出すが、一般用のグリーンカードである。
 エレーナの師匠ポーリンを始めとするグランドマスターが持っているようなプラチナカードではない。
 もっとも、アメリカンエクスプレスの中では最低クラスのグリーンカードでさえ、他のクレカと比べれば、そのレベルはゴールドカード並みであるという。

 特盛:「鈴木ぃ〜、ゴチになりまーす!」
 エリ:「ゴチっス!」
 エレーナ:「ご、ゴチ?……御馳走様」
 鈴木:「いいよいいよ。これも報酬の1つだ」

 鈴木がレジに行って会計をする。
 その間、座敷から靴を履く他の3人。

 特盛:「エリちゃ〜ん、靴履かせて〜?」
 エリ:「アホか!自分で履け!」

 エレーナが新婚夫婦のやり取りをクスッと笑いながら、自分はもちろん自分で自分の靴を履いた。

 エリ:「エレーナさん、スカート気をつけて。今の足の開き方で見えちゃったよ?」
 エレーナ:「ああ、でも、中にスパッツはいてるんで」
 エリ:「そういう問題じゃないの。それでもガン見してくるゲス野郎はいるからね?」
 鈴木:「……!!」(←首をほぼ360度近く回転させてエレーナのスカートの中を見ようとする)
 エレーナ:「おい、コラ!」

 人間技とは思えない鈴木の動作に、エレーナはさすがに突っ込んだ。

 特盛:「さすがは鈴木。見たい時には人外化する特殊能力が止まらなぁーい!」
 エリ:「んなワケねーだろ!」
 鈴木:「首が痛ェ……」
 エリ:「ほら!……鈴木もいくら見たいからって、首痛めるほど捻らない!」
 鈴木:「さ、サーセン……」

 こうして鈴木の会計も終わり、4人は店の外に出た。

 鈴木:「こんな時間になってもまだ暑いな」
 エリ:「ほんと。いつになったら涼しくなるのかね」
 特盛:「あ、汗が止まらなぁーい……」
 エリ:「オマエは冬でも汗が止まんねーだろ」
 鈴木:「それより、早いとこ駅へ向かおう。エレーナ、大丈夫か?」
 エレーナ:「ああ。さすがにタダ酒ってことで、少し飲み過ぎたかも……」
 エリ:「ちょっと、大丈夫なの?」
 エレーナ:「ええ、大丈夫ですよ」

 4人は月島駅に向かって歩いた。

[同日20:45.天候:晴 地下鉄月島駅]

 鈴木:「20時50分発、小手指行き。これでブクロ乗り換えか?」
 エリ:「そうね。そういうことになるわ。……こいつが途中で酔い潰れなければね!」
 特盛:「ヒック!……吐き気が止まらなーい……!ヒック!」
 鈴木:「おい、ホント大丈夫か?いい加減にしないと、エリに愛想尽かされるぜ?」
 特盛:「だ、大丈夫で……」
 エリ:「ま、いざとなったら担いで帰るから」
 鈴木:「ああ。気をつけてな。じゃ、今日はありがとう」
 エリ:「こちらこそ、御馳走様ね。それじゃ」

 特盛とエリちゃんは有楽町線の改札口を入って行った。

 鈴木:「それじゃ、俺達は都営大江戸線だな」
 エレーナ:「ああ」

 2人は都営大江戸線の改札口を入った。

 鈴木:「こっちも50分発だ。特盛達と同時出発だな」
 エレーナ:「ああ。……ック!」
 鈴木:「エレーナ、本当に大丈夫か?」
 エレーナ:「あの女の人……」
 鈴木:「エリがどうした?」
 エレーナ:「この中で1番飲める人だな。あれだけ飲んで、全然平気だ」
 鈴木:「エリは昔、キャバ嬢だったからな。そのせいもあるんだろう」

 そしてホームへと降りて行く。

〔まもなく1番ホームに、両国、春日経由、都庁前行き電車が到着します。……〕

 鈴木:「特盛達と違って、俺達はほんの数駅だ。これだから都内暮らしはやめられないんだよな」
 エレーナ:「まあ、確かに近くて便利だけどねぇ……」

 最新型の電車が入線してくる。

〔月島、月島。東京メトロ有楽町線は、お乗り換えです。1番線は両国、春日経由、都庁前行きです〕

 ホームドアが開いて、それから電車のドアが開く。
 休日の夜の電車ということもあってか、車内は空いていた。
 マゼンタ色の座席に腰掛ける。
 クッションは少し硬めである。
 もっとも、外国の地下鉄ではプラスチックや金属が剥き出しのベンチシートも珍しくないから、クッションがあるだけマシなのかもしれない。
 短い発車メロディが流れて、開くのとは逆の順番でホームドアと電車のドアが閉まった。
 駆け込み乗車も無かったのか、すぐに電車が走り出す。

〔次は門前仲町、門前仲町。東京メトロ東西線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Monzen-nakacho.Please change here for the Tozai line.〕

 鈴木:「エレーナは明日、仕事?」
 エレーナ:「夜勤が入ってる」
 鈴木:「ホテル業務は大変だなー」
 エレーナ:「これも修行の一環だからねぇ……」

 エレーナはそう言って大きな欠伸をした。

 鈴木:「修行。パン屋に住み込むか、ホテルに住み込むかの違いだけで、“魔女の宅急便”みたいだな」
 エレーナ:「ま、私が入門したのも13歳くらいだったかな……」
 鈴木:「その時の話聞かせて!」
 エレーナ:「そんな無闇にベラベラ喋るものじゃないよ。特に魔女の入門秘話なんて、とてもとても……」
 鈴木:「それでも聞きたい!」
 エレーナ:「私ともう少し仲良くなれたら、話してあげないこともないよ?」

 エレーナはニヤッと笑った。
 それの意味するところは……。
コメント
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