[8月25日12:00.天候:晴 長野県北部山中]
昼食時、屋敷の西側1階の大食堂に集まるイリーナ組。
といっても、屋敷中央のエントランスホールから扉1枚隔てただけであるが。
昼食にはパスタが出た。
稲生はミートソース。
大きなテーブルを挟んで、稲生の向かいにイリーナとマリアが座る。
上座、エントランス側とは反対側の短辺部分にイリーナは座らない。
この席はダンテ門流、総師範のダンテが座る席と位置付けている為だ。
それではペーペーの稲生は1番エントランス側に座らされるのかというと、そうでもない。
いや、もちろんここで食事会が行われ、イリーナと同期のグランドマスターやハイマスターなどの高位の魔道師達が集まってくれば、インターン(見習)の稲生はそこへ追いやられることになるだろう。
それほどまでに、魔法使いの世界も上下関係は厳しいのである。
だがその中において、1番それが緩いとされるイリーナ組においては、少なくともそういった高位の者達が他にいなければ、上座に近い所に稲生が座るのを許されていた。
もっとも、イリーナ組は弟子が2人しかいない零細組だ。
数十人もの弟子を抱える大所帯のアナスタシア組とは違う。
稲生だけ1人ポツンとさせることは、却って先輩や師匠に気を使わせるだけと考えられているということだ。
因みにダンテ門流において、男女比は1対9ないしは2対8とされるが(LGBTの比率はどうかって?んなもん知るかい!)、その殆どがアナスタシア組に所属しているとされる。
稲生は本当に希少価値の高い男性魔道師なのである。
その他の男性魔道師は弟子を取れる権限を持ちつつ、弟子は取っていない者がイギリスに在住していることが多いという。
イリーナ:「んー!このナポリタン美味しい!」
稲生:「それ、実は日本が発祥なんですよ」
イリーナ:「知ってるわ。日本人のアイディアは最高ね」
稲生:「それで先生、レポートの方は如何ですか?」
イリーナ:「バッチリ!ダンテ先生も驚いてたわよ。まさか、魔法をパケットやWi-Fiに例えるなんて、とても斬新だって」
稲生:「ありがとうございます」
稲生は自分のスマホを取り出した。
稲生:「ぶっちゃけ、水晶球の検索機能とこれがよく似ているなぁと思いまして……。そこで、ふと気がついたんですよ」
イリーナ:「なるほど。『ハリーポッターは一体、何ギガの魔力を備えているのだろうか?』というくだりはアタシも紅茶吹いたわ」
稲生:「ハリーポッターが悪魔と契約して、無限の魔力を手に入れる描写が無いんですよ」
イリーナ:「まあ、書けるわけないわね。世界中のキリスト教徒を敵に回すことになるわ」
ハリーポッターシリーズを読んでいるダンテ一門の魔道師達。
イリーナ:「ハリーポッター達やキキのパケット使用派と違って、アタシ達はWi-Fi契約派ってか」
稲生:「悪魔と契約して魔力を供給してもらい、それをもって魔法を使う所がそれとよく似ていると思いまして」
パケットは消費しないものの、確かに契約自体は必要なものだし(ドコモWi-Fiを使いたければドコモと契約しなければならないのと同じ)、接続する為にはその為の操作(魔法においては『パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ』という呪文を唱える)をしなければならない所が似ているという。
尚、未だ悪魔と契約していない稲生であっても、弱い魔法は使えるようになっているが、これは自らの魔力を消費するものである。
レヴィアタン:「聞いた?アタシ達、Wi-Fiのルーター扱いだよ?」
ベルフェゴール:「コミケ会場でも背中に大きなルーターを背負って会場内を練り歩く者達がいるが、ああいった感じか」
食堂内の隅で、魔道師達の会話を立ち聞きする悪魔達。
稲生:「時代が時代なら、このスマホは魔法具ですよ」
イリーナ:「ホントにねぇ……」
稲生:「魔界にタブレット持って行ったら、サーシャに魔法具扱いされましたからね」
サーシャとは稲生が魔界で知り合った女戦士のことである。
ビキニアーマーがよく似合っていたのだが、知り合った時点で既に彼女は結婚済みで、今は子持ちであるという。
多摩準急先生のネタでは、稲生の筆おろしをした者ということになっている。
確かにマリアやイリーナと合流する前まで、2人で何日も魔界内を旅していたが、当の作者本人はそこまで考えていなかった。
イリーナ:「マリアの補習も終わったことだし、9月まで夏休み入っていいよ」
稲生:「1週間だけですか……。あ、いや。作者は現在、最長3日間までしか連休取れないらしいですけど……」
雲羽:「とんだブラック現場に送られたもんだぜ、畜生!」
多摩:「カットカット!カントクの声が音声に入ってる!」
AD:「いえ、実際に入ったのは名誉監督の声です」
多摩:「なに!?」
[同日15:00.天候:晴 長野県白馬村 JR白馬駅]
白馬駅前に1台の車が停車する。
よくタクシーに使われるセダンタイプの車種であるが、タクシーの装備は外観上確認できない。
しかし運転手付きであり、そこのリアシートから降りて来たのは稲生だった。
稲生:「今から電車のキップ、取れるかなぁ……?」
稲生は駅構内に入った。
そして、みどりの窓口に向かった。
因みに、みどりの窓口のネーミングは、『緑色のキップを出す窓口だから』だそうである。
今は水色だが、確かに昔は緑色(黄緑に近い)だった。
[同日同時刻 天候:晴 マリアの屋敷]
マリア:「師匠、勇太のレポート、あれで本当に合格なんですか?」
イリーナ:「もちろんよ。どうして?」
マリア:「いや、魔力をパケットやWi-Fiに例えたところで、何がどうなるってわけでもないと思うんですけど」
イリーナ:「そんなことは分かってるわよ」
マリア:「では、何故?」
イリーナ:「勇太君に出した課題の趣旨は、それではないからよ」
マリア:「は?」
イリーナ:「勇太君には、この歪んだ門内の男女比率について正しく知ってもらう為の課題でもあったのよ」
マリア:「それとパケットとWi-Fiと、どう繋がるんですか?」
イリーナ:「1番高得点だったのが、ここよ」
イリーナが指さした所。
それは、魔女の魔力が男性よりも不安定な理由を書いたものだった。
『魔女が魔力を失う時とは、生理が来た時である。キキの魔力が落ちたのも、その直前に体調不良(生理)になっている描写があり、大いに関係がある。にも関わらず、ダンテ門内の魔女達の魔力が落ちないのは、偏に悪魔から安定的に魔力の供給を受けているからであろう』
マリア:「こ、これが高得点の部分ですか?」
イリーナ:「そうよ。よく研究したじゃない」
マリア:「もう1度言いますが、だから何なんですか?」
イリーナ:「分からないのなら、もう1度補習を受けてもらうわよ?」
マリア:「そんな殺生な!」
昼食時、屋敷の西側1階の大食堂に集まるイリーナ組。
といっても、屋敷中央のエントランスホールから扉1枚隔てただけであるが。
昼食にはパスタが出た。
稲生はミートソース。
大きなテーブルを挟んで、稲生の向かいにイリーナとマリアが座る。
上座、エントランス側とは反対側の短辺部分にイリーナは座らない。
この席はダンテ門流、総師範のダンテが座る席と位置付けている為だ。
それではペーペーの稲生は1番エントランス側に座らされるのかというと、そうでもない。
いや、もちろんここで食事会が行われ、イリーナと同期のグランドマスターやハイマスターなどの高位の魔道師達が集まってくれば、インターン(見習)の稲生はそこへ追いやられることになるだろう。
それほどまでに、魔法使いの世界も上下関係は厳しいのである。
だがその中において、1番それが緩いとされるイリーナ組においては、少なくともそういった高位の者達が他にいなければ、上座に近い所に稲生が座るのを許されていた。
もっとも、イリーナ組は弟子が2人しかいない零細組だ。
数十人もの弟子を抱える大所帯のアナスタシア組とは違う。
稲生だけ1人ポツンとさせることは、却って先輩や師匠に気を使わせるだけと考えられているということだ。
因みにダンテ門流において、男女比は1対9ないしは2対8とされるが(LGBTの比率はどうかって?んなもん知るかい!)、その殆どがアナスタシア組に所属しているとされる。
稲生は本当に希少価値の高い男性魔道師なのである。
その他の男性魔道師は弟子を取れる権限を持ちつつ、弟子は取っていない者がイギリスに在住していることが多いという。
イリーナ:「んー!このナポリタン美味しい!」
稲生:「それ、実は日本が発祥なんですよ」
イリーナ:「知ってるわ。日本人のアイディアは最高ね」
稲生:「それで先生、レポートの方は如何ですか?」
イリーナ:「バッチリ!ダンテ先生も驚いてたわよ。まさか、魔法をパケットやWi-Fiに例えるなんて、とても斬新だって」
稲生:「ありがとうございます」
稲生は自分のスマホを取り出した。
稲生:「ぶっちゃけ、水晶球の検索機能とこれがよく似ているなぁと思いまして……。そこで、ふと気がついたんですよ」
イリーナ:「なるほど。『ハリーポッターは一体、何ギガの魔力を備えているのだろうか?』というくだりはアタシも紅茶吹いたわ」
稲生:「ハリーポッターが悪魔と契約して、無限の魔力を手に入れる描写が無いんですよ」
イリーナ:「まあ、書けるわけないわね。世界中のキリスト教徒を敵に回すことになるわ」
ハリーポッターシリーズを読んでいるダンテ一門の魔道師達。
イリーナ:「ハリーポッター達やキキのパケット使用派と違って、アタシ達はWi-Fi契約派ってか」
稲生:「悪魔と契約して魔力を供給してもらい、それをもって魔法を使う所がそれとよく似ていると思いまして」
パケットは消費しないものの、確かに契約自体は必要なものだし(ドコモWi-Fiを使いたければドコモと契約しなければならないのと同じ)、接続する為にはその為の操作(魔法においては『パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ』という呪文を唱える)をしなければならない所が似ているという。
尚、未だ悪魔と契約していない稲生であっても、弱い魔法は使えるようになっているが、これは自らの魔力を消費するものである。
レヴィアタン:「聞いた?アタシ達、Wi-Fiのルーター扱いだよ?」
ベルフェゴール:「コミケ会場でも背中に大きなルーターを背負って会場内を練り歩く者達がいるが、ああいった感じか」
食堂内の隅で、魔道師達の会話を立ち聞きする悪魔達。
稲生:「時代が時代なら、このスマホは魔法具ですよ」
イリーナ:「ホントにねぇ……」
稲生:「魔界にタブレット持って行ったら、サーシャに魔法具扱いされましたからね」
サーシャとは稲生が魔界で知り合った女戦士のことである。
ビキニアーマーがよく似合っていたのだが、知り合った時点で既に彼女は結婚済みで、今は子持ちであるという。
確かにマリアやイリーナと合流する前まで、2人で何日も魔界内を旅していたが、当の作者本人はそこまで考えていなかった。
イリーナ:「マリアの補習も終わったことだし、9月まで夏休み入っていいよ」
稲生:「1週間だけですか……。あ、いや。作者は現在、最長3日間までしか連休取れないらしいですけど……」
雲羽:「とんだブラック現場に送られたもんだぜ、畜生!」
多摩:「カットカット!カントクの声が音声に入ってる!」
AD:「いえ、実際に入ったのは名誉監督の声です」
多摩:「なに!?」
[同日15:00.天候:晴 長野県白馬村 JR白馬駅]
白馬駅前に1台の車が停車する。
よくタクシーに使われるセダンタイプの車種であるが、タクシーの装備は外観上確認できない。
しかし運転手付きであり、そこのリアシートから降りて来たのは稲生だった。
稲生:「今から電車のキップ、取れるかなぁ……?」
稲生は駅構内に入った。
そして、みどりの窓口に向かった。
因みに、みどりの窓口のネーミングは、『緑色のキップを出す窓口だから』だそうである。
今は水色だが、確かに昔は緑色(黄緑に近い)だった。
[同日同時刻 天候:晴 マリアの屋敷]
マリア:「師匠、勇太のレポート、あれで本当に合格なんですか?」
イリーナ:「もちろんよ。どうして?」
マリア:「いや、魔力をパケットやWi-Fiに例えたところで、何がどうなるってわけでもないと思うんですけど」
イリーナ:「そんなことは分かってるわよ」
マリア:「では、何故?」
イリーナ:「勇太君に出した課題の趣旨は、それではないからよ」
マリア:「は?」
イリーナ:「勇太君には、この歪んだ門内の男女比率について正しく知ってもらう為の課題でもあったのよ」
マリア:「それとパケットとWi-Fiと、どう繋がるんですか?」
イリーナ:「1番高得点だったのが、ここよ」
イリーナが指さした所。
それは、魔女の魔力が男性よりも不安定な理由を書いたものだった。
『魔女が魔力を失う時とは、生理が来た時である。キキの魔力が落ちたのも、その直前に体調不良(生理)になっている描写があり、大いに関係がある。にも関わらず、ダンテ門内の魔女達の魔力が落ちないのは、偏に悪魔から安定的に魔力の供給を受けているからであろう』
マリア:「こ、これが高得点の部分ですか?」
イリーナ:「そうよ。よく研究したじゃない」
マリア:「もう1度言いますが、だから何なんですか?」
イリーナ:「分からないのなら、もう1度補習を受けてもらうわよ?」
マリア:「そんな殺生な!」