[8月1日21:00.天候:晴 東京都江東区菊川 高野のワンルームマンション→愛原の事務所]
(この話は三人称です)
リサのささやかな歓迎会を兼ねた夕食会が終わり、一旦は解散した愛原達。
しかしリサを事務所に泊まらせる前、高野は自宅の風呂だけは貸してあげた。
人間を改造したBOWとはいえ、そこは元人間。
ちゃんと普通の食事もすれば、入浴もする。
リサ:「お風呂……出たよ」
高野:「そう。さっぱりした?」
リサ:「うん……」
愛原の前では明るく振る舞うリサも、高野の前では緊張しているのか、物静かな感じとなっている。
高野:「それじゃ、事務所に行きましょうか。先生が毛布とか用意してくれただろうからね」
リサ:「うん……」
高野とリサはマンションを出た。
出ると東京のクソ暑い熱風が2人を襲う。
高野:「今夜も熱帯夜か……。せっかくお風呂で汗を流しても、またかいちゃうね」
リサ:「ううん。平気」
高野:「そう」
事務所は新大橋通り沿いにあるが、高野のマンションは三ツ目通り沿いにある。
どちらも大通りなので、夜になっても車の通りは多い。
だからけして寂しい所ではないのだが、そこから一歩住宅街に入ると、そこはもう閑静なものである。
都営地下鉄菊川駅の出入口の前を通り、新大橋通りに出る。
リサ:「ここは危ないよ」
リサが地下鉄の出入口を指さして言った。
高野:「何が?」
リサ:「もしウィルスが蔓延しても、ここには逃げない方がいいよ」
高野:「バイオハザードね。アメリカのラクーンシティやトールオークスシティは、地下鉄の中もゾンビだらけだったらしいね」
BOW本人がそう言うと、余計に納得するのである。
BOWの中にはウィルスを拡散させ、パンデミックを引き起こすタイプも存在する。
リサがそれに分類されるのかは不明だ。
ただ、こうして世に放っているところを見ると、リサはそのタイプではないとは思う。
駅前のコンビニに立ち寄る。
店員:「いらっしゃいませー」
高野:「ふぅーっ、涼しい。何か飲み物買ってあげるね」
リサ:「ありがとう」
高野:「着替えとかは持ってるのよね?」
リサ:「うん、一応……」
因みに今リサが着ている服は、どこかの中学校の制服のようなデザインだ。
愛原や高橋の話によると、暴走して本当のクリーチャーに変化したリサの仲間も同じものを着ていたということから、研究施設が与えた制服なのだろう。
形状はセーラー服に似ているが、スカーフではなく、リボンになっているところが現代的か。
高野:「喉が乾いたらこれ飲んでね。給湯室に水道もあるけど、こっちの方が冷えてるし」
リサ:「うん、ありがとう」
高野は2リットル入りの麦茶とスナック菓子を購入した。
高野:「夜食もサービスしとくわ」
リサ:「ポテチ、久しぶりに食べる」
高野:「そう。良かったね」
再び熱気が蔓延している屋外へ出た。
そして、ようやく事務所に到着する。
高野:「ここが応接室ね」
高野が応接室の入口を開けると、既に愛原がカウチソファをベッド形状にした後だった。
座面を畳むと一人掛け用のソファに、引き出すとベッドになるタイプである。
高野:「シーツとか、どこから持って来たのかしら?まあいいわ。取りあえず今夜は、ここに寝てちょうだい」
リサ:「うん……」
クッションが枕代わりである。
高野:「なるべくちゃんとした所に、早く寝泊まりできるようにしてあげるからね」
リサ:「うん……」
高野:「それじゃ、明日の朝はなるべく早く来るから。ここでいいコにしてるのよ?」
リサ:「うん……」
高野:「それじゃ、また明日ね。おやすみ」
リサ:「おやすみなさい……」
[8月2日03:00.天候:雷雨 愛原学探偵事務所]
ゲリラ豪雨が吹き荒れる城東地区。
ブラインド越しに、時折雷光が差し込んでくる。
リサ:「パパ……ママ……。グスン……グスン……」
リサは頭から毛布を被り、寂寥感に苛まされていた。
と、その時だった。
事務所の入口から、何か物音がした。
リサ:「……!?」
一体、何が起きたのだろう?
泥棒A:「ちょうど天気も頃合いだ。こんなゲリラ豪雨の時に、外歩いてるヤツなんていねーしな」
泥棒B:「そうそう。それに、ここ最近この事務所は羽振りがいいって噂だ。きっと金庫の中は、金が沢山入ってるはずだぞ」
泥棒A:「さっさと頂いてズラかろう」
泥棒達は事務所の鍵をキーピックで開けようとしている。
そして、ついに鍵が開けられた。
泥棒A:「おっ、よし」
泥棒B:「ここはセコムとかは入ってねーんだったよな?」
泥棒A:「そんなステッカー、どこにも貼ってねーよォ。さっさと入ろうぜ」
事務所内に忍び込む事務所荒らし2人。
懐中電灯片手に、金庫を探す。
泥棒A:「おっ、ここは……応接室か。金庫なんてありゃしね……ん?」
泥棒B:「おい、何やってんだ。応接室なんかに金庫なんて無ェに決まってんだろ。事務室とかを探せ」
泥棒A:「誰かここで寝泊まりしてんのか?」
泥棒B:「あぁ?」
泥棒達はカウチソファと毛布を懐中電灯で照らした。
泥棒A:「……おい、誰かいるんじゃねーのか、ここ?」
泥棒B:「気配なんてしなかったぜ?それより早く事務室に行こうぜ」
ここでおとしく退散しておけば良かったものを……。
泥棒達は事務室の方に行ってしまった。
泥棒A:「あったぜ!金庫だ!」
泥棒B:「よっし!あとはこいつの中身を頂くだけだ。手伝ってくれ」
泥棒達は金庫に駆け寄った。
と、そこへ近くで落雷が発生したのか、事務所内に雷光が差し込んで来た。
泥棒A:「!?」
泥棒B:「おい、何やってんだ?早く手を貸せ……」
またもや事務所内に雷光が差し込む。
その時、泥棒Bもようやく気づいた。
事務所にゆっくりと入って来るリサの姿を……。
泥棒A:「な、何だこのガキ!?」
泥棒B:「見られちゃしょうがねぇ!おい、このガキ殺(ばら)すぞ!」
リサ:「侵入者……!コロス……!!」
リサの目が赤色にボウッと光り、口元には鋭い牙が生える。
そして、ミシミシと体の形状が変わって行き……。
ぎゃああああああああああああああああっ!!!
事務所内に、泥棒達の断末魔とも取れる叫び声が響き渡ったのだった。
(この話は三人称です)
リサのささやかな歓迎会を兼ねた夕食会が終わり、一旦は解散した愛原達。
しかしリサを事務所に泊まらせる前、高野は自宅の風呂だけは貸してあげた。
人間を改造したBOWとはいえ、そこは元人間。
ちゃんと普通の食事もすれば、入浴もする。
リサ:「お風呂……出たよ」
高野:「そう。さっぱりした?」
リサ:「うん……」
愛原の前では明るく振る舞うリサも、高野の前では緊張しているのか、物静かな感じとなっている。
高野:「それじゃ、事務所に行きましょうか。先生が毛布とか用意してくれただろうからね」
リサ:「うん……」
高野とリサはマンションを出た。
出ると東京のクソ暑い熱風が2人を襲う。
高野:「今夜も熱帯夜か……。せっかくお風呂で汗を流しても、またかいちゃうね」
リサ:「ううん。平気」
高野:「そう」
事務所は新大橋通り沿いにあるが、高野のマンションは三ツ目通り沿いにある。
どちらも大通りなので、夜になっても車の通りは多い。
だからけして寂しい所ではないのだが、そこから一歩住宅街に入ると、そこはもう閑静なものである。
都営地下鉄菊川駅の出入口の前を通り、新大橋通りに出る。
リサ:「ここは危ないよ」
リサが地下鉄の出入口を指さして言った。
高野:「何が?」
リサ:「もしウィルスが蔓延しても、ここには逃げない方がいいよ」
高野:「バイオハザードね。アメリカのラクーンシティやトールオークスシティは、地下鉄の中もゾンビだらけだったらしいね」
BOW本人がそう言うと、余計に納得するのである。
BOWの中にはウィルスを拡散させ、パンデミックを引き起こすタイプも存在する。
リサがそれに分類されるのかは不明だ。
ただ、こうして世に放っているところを見ると、リサはそのタイプではないとは思う。
駅前のコンビニに立ち寄る。
店員:「いらっしゃいませー」
高野:「ふぅーっ、涼しい。何か飲み物買ってあげるね」
リサ:「ありがとう」
高野:「着替えとかは持ってるのよね?」
リサ:「うん、一応……」
因みに今リサが着ている服は、どこかの中学校の制服のようなデザインだ。
愛原や高橋の話によると、暴走して本当のクリーチャーに変化したリサの仲間も同じものを着ていたということから、研究施設が与えた制服なのだろう。
形状はセーラー服に似ているが、スカーフではなく、リボンになっているところが現代的か。
高野:「喉が乾いたらこれ飲んでね。給湯室に水道もあるけど、こっちの方が冷えてるし」
リサ:「うん、ありがとう」
高野は2リットル入りの麦茶とスナック菓子を購入した。
高野:「夜食もサービスしとくわ」
リサ:「ポテチ、久しぶりに食べる」
高野:「そう。良かったね」
再び熱気が蔓延している屋外へ出た。
そして、ようやく事務所に到着する。
高野:「ここが応接室ね」
高野が応接室の入口を開けると、既に愛原がカウチソファをベッド形状にした後だった。
座面を畳むと一人掛け用のソファに、引き出すとベッドになるタイプである。
高野:「シーツとか、どこから持って来たのかしら?まあいいわ。取りあえず今夜は、ここに寝てちょうだい」
リサ:「うん……」
クッションが枕代わりである。
高野:「なるべくちゃんとした所に、早く寝泊まりできるようにしてあげるからね」
リサ:「うん……」
高野:「それじゃ、明日の朝はなるべく早く来るから。ここでいいコにしてるのよ?」
リサ:「うん……」
高野:「それじゃ、また明日ね。おやすみ」
リサ:「おやすみなさい……」
[8月2日03:00.天候:雷雨 愛原学探偵事務所]
ゲリラ豪雨が吹き荒れる城東地区。
ブラインド越しに、時折雷光が差し込んでくる。
リサ:「パパ……ママ……。グスン……グスン……」
リサは頭から毛布を被り、寂寥感に苛まされていた。
と、その時だった。
事務所の入口から、何か物音がした。
リサ:「……!?」
一体、何が起きたのだろう?
泥棒A:「ちょうど天気も頃合いだ。こんなゲリラ豪雨の時に、外歩いてるヤツなんていねーしな」
泥棒B:「そうそう。それに、ここ最近この事務所は羽振りがいいって噂だ。きっと金庫の中は、金が沢山入ってるはずだぞ」
泥棒A:「さっさと頂いてズラかろう」
泥棒達は事務所の鍵をキーピックで開けようとしている。
そして、ついに鍵が開けられた。
泥棒A:「おっ、よし」
泥棒B:「ここはセコムとかは入ってねーんだったよな?」
泥棒A:「そんなステッカー、どこにも貼ってねーよォ。さっさと入ろうぜ」
事務所内に忍び込む事務所荒らし2人。
懐中電灯片手に、金庫を探す。
泥棒A:「おっ、ここは……応接室か。金庫なんてありゃしね……ん?」
泥棒B:「おい、何やってんだ。応接室なんかに金庫なんて無ェに決まってんだろ。事務室とかを探せ」
泥棒A:「誰かここで寝泊まりしてんのか?」
泥棒B:「あぁ?」
泥棒達はカウチソファと毛布を懐中電灯で照らした。
泥棒A:「……おい、誰かいるんじゃねーのか、ここ?」
泥棒B:「気配なんてしなかったぜ?それより早く事務室に行こうぜ」
ここでおとしく退散しておけば良かったものを……。
泥棒達は事務室の方に行ってしまった。
泥棒A:「あったぜ!金庫だ!」
泥棒B:「よっし!あとはこいつの中身を頂くだけだ。手伝ってくれ」
泥棒達は金庫に駆け寄った。
と、そこへ近くで落雷が発生したのか、事務所内に雷光が差し込んで来た。
泥棒A:「!?」
泥棒B:「おい、何やってんだ?早く手を貸せ……」
またもや事務所内に雷光が差し込む。
その時、泥棒Bもようやく気づいた。
事務所にゆっくりと入って来るリサの姿を……。
泥棒A:「な、何だこのガキ!?」
泥棒B:「見られちゃしょうがねぇ!おい、このガキ殺(ばら)すぞ!」
リサ:「侵入者……!コロス……!!」
リサの目が赤色にボウッと光り、口元には鋭い牙が生える。
そして、ミシミシと体の形状が変わって行き……。
ぎゃああああああああああああああああっ!!!
事務所内に、泥棒達の断末魔とも取れる叫び声が響き渡ったのだった。