報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「BOWとコミックマーケット」 2

2018-08-12 20:19:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月10日16:00.天候:晴 東京都江東区有明 東京ビッグサイト]

〔「……これにてコミックマーケット94、1日目を終了致します。皆さん、お疲れ様でした。また冬に、お会いしましょう」〕

 終了放送と共に、会場内に響き渡る拍手と歓声。

 愛原:「やれやれ……やっと終わったな」

 私の名前は愛原学。
 都内で探偵事務所を経営している。
 今日は助手の高橋君の知り合いが同人サークルを運営し、コミックマーケット参加の抽選に当たったというので手伝いを頼まれた。
 何でも売り子役が2人、熱中症で倒れたのと、何をやらかしたのか、警察に補導された為に参加できなかったらしい。
 いくら暴走族をモチーフにした作品とはいえ、リアルでそういうことがあるのは如何なものか。
 ま、何はともあれ、無事に終了した。

 愛原:「リサ、大丈夫か?」
 リサ:「ふにゃあ……」

 リサは机の上に突っ伏していた。
 尚、BOWと遭遇した後、仮面を着けていたのだが、そしたら今度は“学校であった怖い話”の『トイレの花子さん』扱いされ、カメラ小僧達に囲まれるという事態に遭遇した。
 それならオリジナルのリサ・トレヴァーのコスプレでもしたらと提案したが、高橋からはコスプレは事前登録制だと言われ、豪快に断念した。

 愛原:「開催時間はたったの6時間だけなのに、凄いエネルギーを使うよなぁ……」
 高橋:「愛原先生!リサ・トレヴァー!大変助かりました!大感謝であります!」

 高橋が私にすり寄って来る。

 愛原:「あ、ああ。キミには日頃世話になってるからな、こんなんで良ければ……」
 高橋:「マジですか!?ありがたいお言葉です!でしたらお言葉に甘えて、是非次の冬コミも助力のほどよろしくお願い致します!」
 愛原:「え……」
 リサ:「はい!?」

 しまった!大手サークルほど抽選に通りやすい法則がコミケにはあるんだったーっ!

 高橋:「それでサーセン、本当は先生と一緒に帰りたいところなんですけど、この後、片付けがありますので、俺は後から帰ります」
 愛原:「片付けは手伝わなくていいの?」
 高橋:「とんでもない!列整理と売り子手伝ってくれただけでも厚かましいのに、片付けまで手伝わせたら俺、破門されます!」
 愛原:「いや、そのつもりは無いんだが……。ま、いいや。却って気を使わせちゃうってんなら、帰らせてもらうよ。リサ、行こう」
 サークルメンバーA:「高橋さん、この後、打ち上げは……」
 高橋:「バカッ!シッ!黙ってろ!先生がお帰りになるまで!」

 ははっ(笑)、なるほど。
 高橋君達はこれから打ち上げがあるのか。
 いや、まあ、それもそうか。
 何しろ、完売御礼だ。
 周りを見渡すと、在庫出してしまったサークルとかも散見されるので、そこはさすが大人気サークルといったところか。
 いくら臨時召集令状受け取ったからとはいえ、私とリサは部外者。
 ここはさっさと退散させて頂くとしよう。

 愛原:「じゃあリサ、少し休憩してから帰ろうか」
 リサ:「うん」

 私達は取りあえず、会場の外に出ることにした。

[同日17:11.天候:晴 東京ビッグサイトバス停]

 コミックマーケット開催中は臨時バスが出ていたが、終了後はそれも終了するらしい。
 私とリサは定期便に乗り込んだ。

〔「17時11分発、都橋周りの東京駅八重洲口行き、まもなく発車致します」〕

 私とリサは1番後ろの席に座っていた。
 発車の時間になると、エンジンが掛かる。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスはグライドスライドドアの前扉を閉めて発車した。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスは有明一丁目、豊洲駅前経由、東京駅八重洲口行きでございます。次は国際展示場正門駅前、国際展示場正門駅前でございます〕

 私達を乗せたバスはバスターミナルを出ると、広い通りに出た。
 まだまだコミケの帰宅ラッシュが続くビッグサイト周辺。
 その中に、夏場だというのにロングコートに帽子にサングラスを掛けた怪しい3人連れがいた。
 彼らは歩道を歩いているが、私達のバスはその横の車道を通り過ぎて行く。

 ジュアヴォ:「今のバス、あのコが乗っていましたね」
 アフリクデッド:「そうか。それで次の薄い本、何にする?」
 ジュアヴォ:「あのコをモチーフにした、『Little Miss』ってのはどうだろう?」
 レイチェルウーズ:「いいねー!」

 ゲームや映画の中では殺戮しか頭に無いBOWも、極一部の中には制御できている者がいたとしたら……。

 リサ:「先生、どこまで行くの?」
 愛原:「そうだな……。東京駅まで乗って行くと時間が掛かるからなぁ……」
 リサ:「別にいい」
 愛原:「ん?」
 リサ:「先生と一緒なら、いつまでもいい」
 愛原:「おいおい……。いや、しかし、悪かったな。まさか、こんなに疲れるイベントだったとは……」
 リサ:「いい。研究所にいたままだったら、絶対に体験できないことだったから。先生、ありがとう」
 愛原:「どういたしまして。……って、これは誘ってくれた高橋君にお礼を言った方がいいんじゃないかな」

 子供には見せられないものが沢山あることは知っているので、それであえてリサを呼んだのは……。

[同日17:48.天候:晴 JR東京駅八重洲南口]

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂きまして、ありがとうございました。次は終点、東京駅八重洲口。終点、東京駅八重洲口でございます。……〕

 バスはゆっくりと都心に向かった。
 途中で客の入れ替わりがあったりしたが、今はだいぶ混雑して立ち客が目立っている。
 リサは疲れたのか、途中で寝てしまった。
 私に寄り掛かっている。
 随分と懐かれてしまったが、懐かれるようなことしたかなぁ……?

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、東京駅八重洲口です。お忘れ物の無いよう、ご注意願います」〕

 愛原:「リサ、降りるよ」
 リサ:「んん……」

 こういう眠い目を擦るしぐさとか、とてもBOWには見えないんだけどな。
 他の乗客達が中扉からぞろぞろ降りて行く。
 私とリサが最後の乗客だった。

 愛原:「どうせ高橋君達、朝までコースだろう。どこかで、晩御飯でも食べてから帰ろうか」
 リサ:「うん、お腹空いた」

 リサが口を開けると、牙が覗いた。
 普段は普通の歯なのだが、腹が減ると牙が生える?

 愛原:「そうか。じゃあ、地下街にでも行ってみるか」

 私は八重洲地下街や東京駅一番街へ向かう通路へと歩いた。
 リサが後ろをついてくる。
 まるで、プレイヤーキャラに対してサブキャラだな。
コメント
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