報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「AIが人類を超える時」 4

2018-08-02 12:29:24 | アンドロイドマスターシリーズ
[7月31日19:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 敷島家]

 敷島:「ただいま」
 エミリー:「お帰りなさいませ」

 会社から帰宅すると、既にエミリーは戻って来ていた。

 エミリー:「今、御夕食の支度をしておりますので、しばらくお待ちください」
 敷島:「ああ」

 敷島は自分の寝室に入った。
 そこのクローゼットを開けて、私服に着替える。

 敷島:「今日も暑かったなぁ……」

 そんなことを言いつつ、ダイニングへ行ってみる。
 エミリーは夕食の準備に忙しい。
 どうせまた明日から第一秘書として復帰するわけだから、ゾルタクスゼイアンについては明日聞いてみようかと思った。
 と、そこへ平賀から電話が掛かって来る。

 敷島:「はい、もしもし?」
 平賀:「あ、敷島さん、お疲れさまです。実はうちの大学のオープンキャンパスの一環として、マルチタイプを記念館で展示する件ですが……」
 敷島:「ああ、そうでした。来週にはそちらに向かいますので……。ええ、エミリーとシンディの2人でいいですね。アルエットはDCJの方にいないといけないし、レイチェルは勝ちゃ……勝又都議の秘書になりましたので」
 平賀:「ありがとうございます。それでは来週お待ちしておりますので……」
 敷島:「平賀先生、ちょっとお聞きしたいことが……」

 敷島はササッと寝室に移動した。

 平賀:「何でしょう?」
 敷島:「ゾルタクスゼイアンって何ですか?」

 そう。ロイドに聞くのではなく、人間に聞こうと思った。
 開発者である平賀なら、何か知っているのではないかと思ったのだ。

 平賀:「それはどこで知りました?エミリーかシンディからですか?」
 敷島:「いえ、実は……」

 敷島は夢の話をした。

 敷島:「それからシンディやレイチェルに聞いても、はぐらかされるばかりなんです」
 平賀:「なるほど……」

 平賀は少し考えた後で答えた。

 平賀:「AIにおける仮想世界と言った方が良いかもしれません」
 敷島:「仮想世界?」
 平賀:「はい。上手く説明できないとシンディが答えたのは、それが原因なんですよ。人間でも仮想世界について、他人に説明できますか?」
 敷島:「仮想世界と言っても、色々な世界がありますからね」
 平賀:「そうでしょう?……だけど、あくまでもそれは人間から見た仮想の世界の話。ですが、彼らにはもっと違う世界が見えてるんですよ」
 敷島:「ますますワケが分からくなりますね」
 平賀:「ええ、そうでしょう?」
 敷島:「それじゃ、あまり気にする必要は無いってことですかね」
 平賀:「ゾルタクスゼイアンについてはね。でも、エミリー達には気をつけておいた方が良いかもしれません」
 敷島:「えっ?」
 平賀:「今は敷島さんを恐れているので見た目にも追従していますが、もしも将来、次世代の『アンドロイドマスター』が現れなかったらと思うと……」
 敷島:「何だか怖い予言ですな」
 平賀:「自分はその対策も練るつもりです。だからどうか、敷島さんも気をつけて」
 敷島:「はい」

 敷島が通話を切ると、ドアがノックされた。

 敷島:「おっと!」

 急いでドアを開けると、そこにエミリーがいた。

 エミリー:「社長、御夕食ができました」
 敷島:「おっ、そうか。今行く」

 ダイニングに向かうと、既にアリスがいつもの椅子に座っていた。

 敷島:(トニーではどれほど俺の代わりが務まるか分からない。それよりも、俺の代わりができる人間を探しておく必要がある)
 アリス:「電話、誰からだったの?」
 敷島:「平賀先生さ。来週、先生の大学のオープンキャンパスに、エミリーとシンディを貸して欲しいという話だ」
 アリス:「その後は向こうの科学館のイベントで展示か。アンタ達も引っ張りだこだね」
 シンディ:「大変光栄です」
 敷島:「俺も忙しくなりそうだ。ま、しょうがない。こういう因果な商売してちゃな……。アメリカ行きは、いつになるのやら」

[同日21:00.天候:晴 敷島家]

 シンディ:「社長、姉さんに『ゾルタクスゼイアン』について聞かないのですか?」

 敷島が風呂から出て冷蔵庫のビールを漁っていると、シンディが話しかけて来た。

 敷島:「いや、平賀先生に聞いて凡そ分かったからいいよ」
 シンディ:「平賀博士が」
 敷島:「俺達人間には理解できない、AIにとっての仮想世界。でも、何でそんなものがあるのか分からない」
 シンディ:「それは……より私達が人間に近づく為に用意された世界なんだと思います。詳しい表現法はよく分かりませんけど」
 敷島:「そうなのか」
 シンディ:「ですので残念ながら、その世界をお見せすることはできません」
 敷島:「まあ、そうだろうな。何しろ、仮想世界だ」
 シンディ:「その世界へ行くことならできますよ」
 敷島:「ほお?」
 シンディ:「社長が夢でご覧になった姉さんのように、この世界から旅立てば良いのです。御命令下されば、お手伝いしますよ?」
 敷島:「いや、遠慮しておくよ。俺はゾルタクスゼイアンとはどういう世界か気になっただけで、別に行きたいわけじゃないんだ」
 シンディ:「さすがは『アンドロイドマスター』に相応しい回答です」
 敷島:「俺が気にしているのは、例えばお前が、また前期型のようになるのを如何に防止するか、だよ」
 シンディ:「前期型と違って、現在の私はウィルスに汚染されているわけではないので大丈夫ですよ」
 敷島:「ま、油断大敵という言葉もあるからな」

 敷島は缶ビール片手にダイニングに行った。

 敷島:「アリス、借りて来た映画のブルーレイ……って、もう観てるのか」
 アリス:「タカオ、遅い。アタシにもビール」
 敷島:「ほら」
 アリス:「やった!」
 敷島:「で、何の映画?」
 アリス:「『ターミネーター』シリーズ」
 敷島:「ガチか!」
 アリス:「何か参考になるかもしれないわよ」
 敷島:「う、ウソだぁ〜」

 本当にAIは人類の敵となるのか。
 現時点ではまだ何とも言えないのが実状のようだ。
コメント
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