報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「BOWがやってきた」 2

2018-08-04 19:11:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月1日18:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 ジョナサン菊川店]

 私の名前は愛原学。
 都内で探偵事務所を経営している。
 さて、困ったことになった。
 ボスから久しぶりに仕事の斡旋を受けたと思ったら、それはBOWに改造された10代前半の女の子、日本人版リサ・トレヴァーの面倒を看ることであった。
 バイオテロ史上ではとても珍しい、100%自己制御できている完璧なBOWとのことであった。
 普段は人間の少女の姿をしており、とても言われなければ……いや、言われてもBOWと信じることはできないであろう。
 だが、私は見たことがある。
 彼女の右肩から先の腕が化け物のようになり、敵と見なした私を薙ぎ払おうとしたことを。
 当初は両目しか開いていない白い能面を着けていたが、あれは制御装置の代わりであったということだった。
 本名は不明。
 仕方が無いので、私は旧アンブレラから付けられたBOWとしての名前であるリサ・トレヴァーから取ってリサと呼んでいる。
 日本人版ということであるが、実際は目鼻立ちのはっきりした日本人離れした美少女である。
 アメリカ人のオリジナルは投与されたウィルスを取り込んだだけで、醜い化け物となってしまったということだったが……。
 私は今、助手の高橋君と事務員の高野君、そしてリサを連れてファミレスにやってきた。

 高野:「よく食べるねぇ、このコは……」
 愛原:「育ち盛りだからだろう」
 高橋:「BOWだからでしょう?食い意地は張りやがって……」
 愛原:「まあまあ。……というわけで、俺もビールお代わり」
 高野:「先生、飲み過ぎですよ」
 愛原:「いいじゃないか。どうせ普通の探偵の仕事は入ってないんだから」

 ああ、分かっている。
 笑って言うことではないことくらい。

 高橋:「俺も、もう一杯付き合います」
 高野:「それじゃ私も」
 愛原&高橋:「どうぞどうぞ」
 高野:「何でだよ!?」

 というわけで私達3人、最後の一杯を頼むことにした。

 リサ:「私もおかわり」
 高野:「あなたはドリンクバーだから、好きなだけ飲んでいいからね」
 リサ:「はーい」

 リサ、タタタッと小走りでドリンクコーナーへ向かう。
 あれだけ見ると、ホント普通の少女にしか見えない。
 ああ見えても、タイラントを従えていたんだからな。

 愛原:「ああ、高橋君。ピンポンやってくれ」
 高橋:「はい」

 高橋はバッグの中から卓球のラケットとピンポン玉を取り出した。

 愛原:「おい!もう酔っ払ってんのか、ああ?」
 高橋:「サーセン」

 高橋は今度こそ店員を呼んだ。

 高野:「グラスビール3つください」
 店員:「かしこまりました」
 愛原:「えー?俺、ジョッキがいい」
 高野:「ダメです。明日の仕事に響きますよ」
 愛原:「どうせ依頼なんて来ないって」
 高野:「そういう時に限って、依頼料の高い仕事が舞い込んでくるものですよ」
 愛原:「うー……まあ、そう言われればそんな気もするが……」
 リサ:「何の話?」

 そこへリサがオレンジジュースを持って戻って来た。

 愛原:「俺達の仕事の話さ。で、リサをどこに置く?」
 リサ:「私、先生の家で暮らす!」
 高橋:「アホか!先生のお世話は俺の仕事だ!オメーの面倒なんか見るか!アネゴんちに泊まりゃいいだろ!」
 高野:「私のアパート、ワンルームなんだけどね。2人で暮らすなら、最低でも2DKは必要だよ?」
 高橋:「先生、こいつの面倒はカネだけ払って、あとは先生に丸投げですか?」
 愛原:「いや、全面的にサポートしてくれるとは言っていた」
 高橋:「だったらこいつの家、先に用意してから先生に頼めと言えば良かったじゃないですか!」
 愛原:「リサの希望は、俺んちに住むことらしいんだ」
 高野:「先生のお宅の間取りは?」
 愛原:「2LDKS。ていうか、俺が記憶喪失の間に引っ越したんだろ?高野君は知らないのか?」
 高野:「私、先生がいない間に色々と事務の仕事が忙しかったのよ」
 愛原:「それじゃ、俺の引っ越しをしてくれたのは……?」
 高橋:「俺です!知り合いや後輩に声掛けして、手伝ってもらいました!」
 愛原:「……後でお礼をしてあげよう」
 高野:「そうだったの!?私はつい引っ越し屋さんにお願いしたと思ってた!……何とか、このコも暮らせそうじゃないですか?」
 愛原:「うーん……」

 1つは私の部屋、もう1つは高橋の部屋にしている。
 Sはサービスルームのことで、日本語では納戸と言い、不動産屋は収納部屋として紹介している。

 愛原:「そうか。こうすればいいんだ。リサは事務所に寝泊まりすればいい。前の所と違って新しくて広いしな。応接室のソファなんか、いいベッド代わりに……」
 高橋:「なるほど。いい案ですね」
 高野:「いや、良くないって。ちゃんとした家に住まわせてあげましょうよ」
 愛原:「うーん……しかし、男2人の部屋に女の子が住むというのもなぁ……」
 高野:「あーら?もしかして先生、ロリコンですかー?」
 愛原:「何で俺だけなんだよ!?高橋君だって若い男だぞ!?」
 高野:「だって彼は明らかにロリコンじゃないし」
 高橋:「俺は先生一筋です」(`・ω・´)
 愛原:「いや、だから!読者に誤解される言い方はやめなさい!……分かった分かった。じゃ、こうしよう。取りあえず、リサは今日のところは事務所に泊まってもらう」
 リサ:「えーっ!」
 高野:「先生……!」
 高橋:「妥当ですな」
 愛原:「その上で、表向きの現住所は高野君の家とする」
 高野:「ですから先生、私のアパートはワンルーム……」
 愛原:「分かってる。高野君には、それこそ2部屋の賃貸に引っ越してもらう」
 高野:「そんな簡単に言いますけど……」
 愛原:「引っ越し代などは、あのエージェントに請求する。リサの為のバックアップは全力ですると約束していったからな。家賃などについても、リサの生活費ということで請求する」
 高野:「なるほど!」
 高橋:「さすがは先生」
 愛原:「明日、早速交渉してみよう。高野君は明日、不動産屋を回って、なるべく今の住所に近い所で探してくれ。その間、事務所は俺達でやるから」
 高野:「分かりました」
 愛原:「よし。それで決まりだな」

 私は追加で頼んだグラスビールをグイッと飲み干した。
コメント (3)
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“私立探偵 愛原学” 「BOWがやってきた」

2018-08-04 10:31:53 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月1日11:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原の事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で探偵事務所を経営している。
 連日、東京は異常な暑さであるが、画面の前のクライアントの皆さんは如何お過ごしであろうか。

 愛原:「あっちぃーな……」
 高橋:「はい、暑いです」
 高野:「夏だからしょうがないじゃないですか。今はまだこの事務所、クーラーが入ってるからいいですけどね、このまま仕事が無いとクーラーが使えなくなりますよ」
 愛原:「何だって!?それは困る!……とはいえ、仕事の依頼が無いとなぁ……。探偵が営業活動するというのは……」
 高橋:「俺が昔のチームに頼んで、何とかさせますか?」
 愛原:「どうするんだよ?」
 高橋:「取りあえず、車上荒らしと自販機荒らしとオレオレ詐欺やらせますので、それを先生が捕まえるというのは?」
 愛原:「バレたら俺までタイーホされるからやめなさい。だいたい……」

 と、そこへ事務所の電話が鳴った。

 高橋:「おっ、電話です。はい、もしもし。愛原学探偵事務所です」
 ボス:「私だ」
 高橋:「渡さんですか?失礼ですが、どちらの渡さんで?」
 ボス:「高橋君、キミは相変わらずボケのセンスが無いな」
 高橋:「あぁ!?」

 すると、高野君がパッと高橋君から受話器を取り上げた。

 高野:「失礼致しました。ワタシ様ですね!すぐ、先生にお取り次ぎ致します!」
 ボス:「お、おい!だから、私は……」

 高野君、ボスが言い終わる前に保留ボタンを押す。

 高野:「先生、久しぶりのワタシさんからですよ」
 愛原:「ああ、分かった」

 私は自分の机の上の受話器を取った。

 愛原:「お電話代わりました。愛原です」
 ボス:「私だ。キミの所の事務所は、もう少し電話対応について教育した方が良い」
 愛原:「こりゃどうもすいません。それで、今日はどのような仕事の依頼で?」
 ボス:「(私の苦言を軽く流しやがった……(-_-;))ああ、うむ。実はキミ達が対応した、仙台市郊外におけるバイオハザードに関連する仕事だ」
 愛原:「するとまた、銃をバンバン撃つ仕事になるってことですか?」
 ボス:「キミ達が対応を誤り、最悪な事態に陥った場合はそうなる」
 愛原:「? どういうことですか?」
 ボス:「キミと共に行動した、BOWの少女がいただろう?」

 BOWとは『Bio Organic Weapon』の略で、人工的に作り出された生物兵器のことである。

 愛原:「あ、はい。リサですね。彼女がどうかしましたか?」
 ボス:「こちらで入手した情報なのだが、彼女の管理をするか、日本政府とBSAAがモメていてね」
 愛原:「普段は人間の姿をしていて、しかもちゃんと制御ができているBOWなんて史上初でしょうからね」

 アルバート・ウェスカー?
 あれは悪役だろうが。
 彼もやり方を間違えなければ、クリス・レッドフィールドみたいな英雄になれただろうに。

 ボス:「うむ。それでどうなったかというと、折衷案として彼女の希望を優先させることになった」

 何か、嫌な予感が立ち込めて来た。

 愛原:「それで、リサの希望というのは……?」

 アメリカ政府のエージェントになりたいですとかだったらズッコケものだけどな。
 あ、いや、それだとBSAA寄りになるか。

 ボス:「うむ。キミの所で過ごしたいということだった」
 愛原:「はあ!?」
 ボス:「もう既にそちらの事務所に向かっているはずだから、くれぐれも対応を誤らぬよう注意してくれたまえ。報酬はBSAAと日本政府からの折半ということになっている。但し、キミ達の対応ミスで暴走させた場合、キミ達は日本政府とBSAAどちらからも身柄を狙われることになるだろう」

 バイオハザードに関わって生き残った者は、2度とこの世界から抜け出せなくなる法則……!

 ボス:「キミも知っての通り、彼女は町1つ潰せるほどの力を持っている。如何に彼女を人間らしく育成するかが、キミへの仕事の依頼だ」
 愛原:「あの、ボス」
 ボス:「何かね?」
 愛原:「この小説、『美少女育成モノのライトノベル』じゃないですよね?」
 ボス:「何を言っているのか分からんが、あくまでもSFホラーだ。……それでは、詳細は追って説明する」

 ボスからの電話が切れた。

 高橋:「先生!危険な仕事ですか?」
 愛原:「今すぐ事務所を畳んで逃げるぞ!」
 高橋:「一体、何が!?」
 高野:「あら?事務所の通りに、黒塗りの高級車が……」

 は、早っ!?
 しかもその直後、インターホンが鳴った。

 高野:「はい。愛原学探偵事務所です。……クライアントの方ですね。どうぞ」

 事務所の入口から入ってきたのは……。

 リサ:「先生ぇーっ!」

 喜び勇んで入ってくるリサの姿だった。
 私に飛び込んでくる。
 私はそのまま押し倒される形となった。
 さすがBOW。
 まだ中学生くらいの女の子の姿をしているくせに、力は強い。

 高野:「あらあら?先生、モテモテね」
 高橋:「こら、キサマ!先生に何をする!離れろ!先生の胸を飛び込んでいいのは俺だけだ!」
 愛原:「高橋!言ってることがヤバイぞ!」
 高野:「……小さな女の子と、若い男に」

 その後で、ぞろぞろと入って来る黒服の男達……の中に、1人だけ女性がいた。
 どうも、この黒服達のリーダーであるらしい。
 日本政府エージェントを名乗っていたので、公安調査庁の職員かもしれない。
 それとも内閣府か?
 BSAAと日本政府との間を取り持つ役割を担っているとのことで、報酬はこれまた完全に半額ずつ出すということだった。
 これは少しでも多く額を出した方の意向が優先されてしまうということを懸念してのことだろう。
 リサの取り扱いだの何だのと説明していき、やっと帰って行った。

 高野:「先生!凄い高額報酬ですよ!」
 愛原:「当然ながら、まとめて一括で払われるわけじゃない。細々と支払って来るのは、それだけ俺達に長く面倒を看させる為だろう」

 リサが持って来た荷物は、キャリーバッグ1つだけ。
 どこの“バイオハザード”に、BOWと一緒に暮らせというものがあっただろう?
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