報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「北海道決戦その後」

2017-06-26 19:19:27 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月6日22:00.天候:曇 北海道オホーツク総合振興局東部 廃洋館跡]

 ズ……ズズ……と何かが這い寄って来る音がする。

 アリス:「誰!?」

 まさかまだ生き残っているテロロボット?
 井辺からの報告で、ボーカロイド達が緊急停止を勧告する歌を発信したことで、殆ど全てのバージョン4.0達が稼働を停止したり、戦意を喪失したりしたと聞くが……。
 端末を見ると、『解析中』になっていた。
 それが一瞬だけでも、『Emily』と表示されたのを見てアリスはホッとした。

 アリス:「エミリー?エミリーなの?」
 エミリー:「アリス……博士……」

 エミリーは酷く損傷していた。
 辛うじて両手はあったものの、両足はどちらも折れて配線が剥き出しになっており、赤黒いオイルが流れ出している。
 左目も無くなっており、そこから配線がショートして火花が飛び散っていた。

 アリス:「ちょっと、エミリー!大丈夫なの!?」
 エミリー:「報告……します。これが……マルチタイプ……試作機……です。頭部のみ……確保……です。頭部から下は……爆発に……巻き込まれて……」
 アリス:「分かったわ。頭部が無事なら、メモリーを解析できる。……タカオは?」
 エミリー:「申し訳……ありません……。社長は……」

 エミリーは敷島とは離れ離れになってしまって、安否は不明と報告したかったのだが、ついにエミリーも『多大な損傷による安全装置』が働いてしまった。
 それで、緊急にシャットダウンしてしまったのである。

 アリス:「タカオ……」

[5月7日05:23.天候:晴 同場所地下]

 敷島:「う……」

 敷島が目を覚ました時、そこは真っ暗な闇の中だった。

 焦げ臭さが鼻を突き、おまけに油の臭いもする。

 敷島:(最後に爆音みたいな音が聞こえたが、一体何があったってんだ……?)

 体を動かそうとしたが、激痛が走って動かせない。
 どうやら、あっちこっち体を痛めたらしい。

 敷島:(死は免れたみたいだが……これじゃ、死んでるのと変わらんな……。いや、まさかここが死の世界とかってんじゃないだろうな?)

 敷島は何とか声を上げる。

 敷島:「……おい、誰か……?いないのか……?」

 左手は全く動かなかったが、右手は何とか動かすことができた。
 そして、何か金属のようなものに触れた。

 ???:「再起動シマス……」
 敷島:「あ?」

 何かロボットのような声がした。
 どうも、バージョン4.0のような声に似ているが……。

 ???:「ゴ命令ヲ、オ申シ付ケクダサイ」
 敷島:「ああ、そうかい。じゃ、外に向かって助けを呼んでくれ。多分これ……生き埋めになってるってオチだろ?もしお前が俺の為に動いてくれるってんなら……外に向かって助けを呼んでくれ」
 ???:「カシコマリマシタ」

[同日5月7日06:30.天候:晴 同場所・廃洋館跡]

 NHKリポーター:「はい、こちら現場です。今、私は大爆発を起こした別荘の跡地に来ています。今も尚、焦げ臭い臭いが立ち込めており、今も行方不明者の捜索が行われています。行方不明となっているのは、埼玉県さいたま市大宮区の敷島孝夫さんで……」

 現場にシンディが投入された。
 シンディは神妙な顔で言った。

 シンディ:「社長のデータは全て把握しています。私のスキャナーで、必ずや発見してみせましょう」
 アリス:「お願いよ……」
 シンディ:「はい。お任せください。私の存在価値を見出してくれた御方を、このまま行方不明にするわけには参りません」

 シンディは焼け落ちた廃洋館の跡地に入り込んだ。

 シンディ:「バージョン共の残骸ばかりが転がっています」

 アリスはシンディの目(カメラ)から送られてくるシンディ視点の画像を端末を通して見ている。

 アリス:「気をつけて。もしかしたら、まだ不発弾が残ってるかもしれない」

 エミリーの情報で、この大爆発の原因は不発弾が何発も爆発したからだというのが判明した。
 尚、持ち込んだのはKR団で、アジトの証拠隠滅の為に仕掛けていたということである(って、ショッカーかよ!)。
 DSSアメリカの日本派遣隊は見事に偽情報に踊らされて平賀を捕らえてしまうという失態をしでかしていたが(更には銃火器の不正持ち込み、不正使用も日本の警察にバレた。はい、タイーホ)、大爆発の原因と不発弾の件については彼らが突き止めていたという功績はあった。
 KR団の残党であった元幹部がアメリカに国外逃亡し、アメリカに再び新KR団を作ろうと画策していたということである。
 で、逮捕して取り調べした結果がこの事件であった。

 シンディ:「了解です」

 と、そこへ1台の車がやってきた。
 鳥柴を含むDCJ関係者である。

 アリス:「鳥柴主任!平賀教授に付いていなくていいの?」
 鳥柴:「はい。平賀教授にあってはケガが軽微なので、今日中に退院できるとのことです。で、奥様の平賀奈津子様がお迎えに来られるそうですので」
 アリス:「なるほど。変な誤解されたくないもんね」
 鳥柴:「ええ。警察には平賀教授とDSSアメリカは関係無いことも証言しておきましたので」
 アリス:「アメリカでの活躍は分かったけど、日本に来ることは余計だったわね」
 鳥柴:「逮捕した元KR団幹部の証言をそのまま鵜呑みにしたところは失敗でしたね。あくまでもシークレットサービスなんですから、その先は警察に任せればいいんです」

 もっとも、アメリカでは民間の警備会社であっても、銃火器の装備はできるし、警察のような捜査権を持つこともできるという。
 だが、捜査能力は公的機関としての警察に比べれば弱かったようだ。

 鳥柴:「敷島社長は?」
 アリス:「今、シンディに捜させてるわ。マルチタイプの能力を、ここは信じるしかない」
 鳥柴:「そうですね。エミリーは現在、DCJ札幌支社の工場に保管しています」
 アリス:「東京に移送するの?」
 鳥柴:「いえ、あくまでもエミリーは平賀教授がオーナーですので、東北工科大学に移送して、そこで修理を行うとのことです」
 アリス:「なるほど」

 ボーカロイドが損傷した場合、商業的価値の観点からDCJが率先して修理をするが、マルチタイプの場合は学術的価値の観点から、工業系の研究機関が修理を行う。

 シンディ:(あそこの一角……バージョン4.0がやたら固まってるみたいだけど……。まあ、いいか。あとは……)

 シンディは次の場所へ行くべく、足を進めた。
 が……。

 シンディ:「!?」

 ある反応が彼女のセンサーに掛かった。
 それは……。

 ①敷島孝夫
 ➁初音ミク
 ③バージョン4.0-1333機
 ④KR団員
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“Gynoid Multitype Sisters” 「北海道決戦終了」

2017-06-26 12:30:04 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月6日21:00.天候:曇 北海道札幌市&オホーツク総合振興局東部]

 NHKキャスター:「……何度もお伝えしておりますように、今日午後6時頃、北海道札幌市内において、特殊作業用ロボットのほぼ全てが暴走するという事件がありました。現在はほぼ鎮静化しているということですが、鎮静化と同時に北海道オホーツク総合振興局東部付近において、原因不明の大爆発が起きたという事件が発生しており、地元当局では……」

 NHKリポーターA:「はい、こちら札幌市の繁華街ススキノ付近です!ご覧頂けますでしょうか?道路上に散乱する部品、これは爆発した暴走ロボットの残骸です。現場付近は今も尚、立ち入りが禁止されており、被害については……」

 NHKリポーターB:「はい、えー、こちらが謎の大爆発をしたとされる現場付近です。こちらにはかつて広大な森林が広がっていたのですが、最近では別荘地として開発され、大きな洋館が建っていた場所です。しかしご覧のように、今は木々は爆風によって凪ぎ払われたり、或いは今も炎上している状態です。森林の中央部に建っていたとされる別荘の様子はここからでは確認することはできませんが、恐らく状況的にはかなり絶望的なものであると思われます。以上、現場から中継でお伝えしました」

 DSSパイロット:「鳥柴主任!これ以上は近づけません!森林火災が酷くて……!」

 ヘリコプターでKR団のアジトがあった洋館へ接近したDCJのメンバー達。
 DSSとはデイライト・セキュリティ・サービスの略で、デイライト・コーポレーショングループ直営の警備会社のことである。
 本場アメリカでは単なる警備業務だけではなく、シークレットサービスや警察のスワット隊のような仕事も行っている。
 日本では国内の警備業法に基づいて、本当に単なる警備業務しかやっていない……のは表向きで、こうやってDCJ所有のヘリの操縦まで行っている。
 因みに研究所や工場内のセキュリティロボットの操作、監視もDSSで行っている。

 アリス:「何とかタカオ達を助け出すのよ!」
 鳥柴:「ですがアリスさん!こっちまで危険な状態なんです!ここはせめて火災が鎮火してからでも遅くは無いと思います!」
 アリス:「Shit!まさかこんなことになるなんて……!」

 札幌市内ではどうかというと……。

 井辺:「本当に助かりました。ご協力ありがとうございます」

 井辺は地元のケーブルテレビ局の担当者に礼を言った。
 井辺と初音ミク以外のボーカロイド達は、ケーブルテレビ局にいた。
 ボーカロイドが送る歌に電気信号を込め、これで暴走中のバージョン4.0を一気に全機止めるという作戦の為だ。
 キー局などからは断られたが、たまたま巡音ルカの歌を放送していたケーブルテレビ局が番組を中断してでもその話に乗ってくれたのだった。
 もっとも、外は番組を中断しなければならないほどの状態ではあったのだが。

 担当者:「いや、まさか、本当に効果があるなんてねぇ!」

 ここのケーブルテレビ局はインターネット接続事業もやっていて、ボーカロイドの歌をケーブルテレビだけでなく、インターネットでも配信したのだが、それが更なる効果を生んだらしい。
 東京決戦の時はラジオ局に支援を依頼して、ラジオの電波に乗せて発信したのだが、今回はケーブルテレビとインターネット配信である。
 ネット接続も行っているバージョン・シリーズのこと、それに乗って流れて来たボーカロイドの『緊急停止依頼』はよく効いたものと思われる。

 担当者:「是非是非、この事を当社のCMに使わせてください!」
 井辺:「ええ、どうぞ。ご自由にお使いください。協力して頂いた御礼です」

 バージョン・シリーズの信用は著しく下がったが、ボーカロイドの方は著しく上昇したと言えるか。

 で、その頃、シンディは……。

 シンディ:「オラッ!さっさとトラックに乗り込め!モタモタすんな!」

 アリスに緊急に造ってもらった電気鞭を振るいながら、生き残ったバージョン4.0軍団を警察のトラックに乗せていた。
 ボーカロイド達からの電気信号を受け、更には最上位機種のシンディを目の前にして、既に攻撃力を失った武装ロボットはすごすごと従わざるを得なかった。

 シンディ:「これで全部でございます」
 警察官A:「よーし、出発!」
 警察官B:「あんたも来てくれ。また暴れ出されたら困る」
 シンディ:「分かりました」

 シンディもトラックの荷台に乗り込んだ。
 シンディに破壊されたり、自爆した個体の残骸がまだ残っている中、警察のトラックが出発した。

[同日同時刻 天候:曇 北海道オホーツク総合振興局東部 廃洋館]

 エミリー:「こ……壊れて……たまるか……!」

 エミリーは土の中から這い出た。
 左手には頭部だけとなったマザーの生首を手にしている。
 大事な証拠品だ。
 バージョン1000に乗ったマザーとその取り巻きたるバージョン4.0と戦っている間、壁を破壊したら、その中からゴロゴロと何かが飛び出て来た。
 それが不発弾だったことは、爆発してから気づいた。
 銃弾には強いマルチタイプだが、爆弾ともなるとなかなかそう簡単には……。
 特に今回の不発弾は、1発や2発だけではなかったようだ。
 バージョン1000や周辺の4.0はその爆発で破壊され、必然的にそこに乗っていたマザーも大ダメージを受けることになった。

 エミリー:「この事を……伝えないと……!」

 エミリーは這いずって、とにかく人の気配のする方に向かって行った。

 NHKリポーター:「速報です!現場から数名が救助されたもようです!1人は東北工科大学教授の平賀太一さんと思われます!」

 平賀はDSSアメリカの隊員達によって外に連れ出されていた為、大きなケガはせずに済んだようだ。
 だが、不発弾の爆発による爆風で乗せられていたトラックが横転した為、そのケガだった。
 で、本来ならここから平賀を連れ出すはずの隊員達だったが、警察により、銃火器の不正持ち込み、使用がバレてしまった。

 アリス:「ガンサバイバーごっこはアメリカでやれ!このクソ野郎ども!!」
 DSSアメリカ:「くそ……!お前達の為にやってたんだぞ……!」
 アリス:「大きなお世話だ、この野郎!」

 警察官同伴で病院に連行されるDSSアメリカ隊員達に怒鳴りつけるアリス。

 鳥柴:「平賀教授!大丈夫ですか!?」
 平賀:「あてててて……。エラい目に遭った……。自分以外に、敷島さんは?」
 鳥柴:「あいにくまだ発見されてません」
 平賀:「参ったな……」
 鳥柴:「アリスさん、取りあえず私は平賀教授に付き添います」
 アリス:「了解。私も早くダンナを見つけて合流するわ」

 アリスはそう言ったが、さすがに現場の状況を見て泣き出したくなった。

 アリス:「『不死身の敷島』の底力見せなさいよ……」

 その時、アリスの手持ちの端末に何か反応があった。

 アリス:「これは……!?」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする