報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「イベントの前哨戦」

2017-06-04 20:03:05 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月2日16:00.天候:晴 北海道札幌市豊平区 札幌ドーム]

 ドームでは翌日より行われる『北海道ボーカロイドフェスティバル』の準備が行われる。
 因みに実は、このイベントは敷島エージェンシーだけのイベントではない。
 他の事務所に所属するボーカロイドも、全員参加のビッグイベントなのであった。

 A事務所関係者:「敷島エージェンシーさん、電車で来たんですか!?東京から!?」
 敷島:「はっはっは〜!8時間近く掛かりました」
 B事務所関係者:「アホやんか、アンタら。電源切って梱包しよったらええやんか」
 敷島:「それはうちの事務所の方針ではありませんので」

 B事務所は完全にボーカロイドをモノ扱いしているらしく、本当に棺サイズのダンボールに梱包してトラックで『搬入』していた。
 彼らに言わせれば、たかがロボットに旅客列車運賃(しかもグリーン料金込み)を出して、しかもシティホテルに泊まらせるという感覚がおかしいとのこと。

 B事務所関係者:「レンタル倉庫借りよったらええやん。数千円で済むで」
 敷島:「ですから、それはうちの事務所の方針ではありませんし、それにセキュリティが……」
 B事務所関係者:「今時、セキュリティの入っとらんレンタル倉庫があるかいな。ウチが借りた所は、ちゃんと防犯カメラが仕掛けられとるし、無理やりこじ開けたらすぐにセンサーが作動して、警備会社に通報されるシステムや。それで十分やん」
 敷島:「ま、うちにはうちのやり方がありますから」
 C事務所関係者:「それは分かりますけどね、いくら料金を負担しているからといって、人間様と同じ列車・ホテルなのはどうかと思いますが……」
 敷島:「ちゃんと運賃・料金は払っていますよ。それの何が問題ですか?」
 C事務所関係者:「どうして彼らが飛行機の客席に乗れないのかを考えたことが無いようですね。何も金属探知機に引っ掛かるからだけではないんですよ。だったら、鉄道で移動すれば良いというのは安易な考えですよ」
 B事務所関係者:「そや!さすがCさんや!だいたい、こんなけったいなイベント企画するのもどうかしとると思いますで?」
 敷島:「だったら何で来たんですか!」
 C事務所関係者:「そうですよ、Bさん。今のはさすがに言い過ぎですよ?嫌なら帰ればいいじゃないですか」
 B事務所関係者:「いや、何も『嫌や』言うてまへんねん。ほな、こっちも準備せなあきまへんで」
 敷島:「くそ!」
 C事務所関係者:「まあ、敷島エージェンシーさんの方針も分からなくはないです。ただ、あなたは研究職に近いお仕事をなさっていたから違う視点をお持ちなんでしょうけど、我々としては、やっぱりボーカロイドを人間扱いすることに凄い違和感があるんですよ」
 敷島:「彼女達の持つ『感情』を蔑ろにするつもりですか?」
 C事務所関係者:「Bさんの所はそれも辞さない営業方針のようですが、私達はもう少し融和的な態度で接してあげたいとは思います。ただ、ボーカロイド専門事務所の敷島さんと違って、うちは人間のアイドルも多く抱えているんでね。人間様を差し置いて、ボーカロイドがその上に立つことには抵抗があるのですよ」
 敷島:「とにかく、うちはうちはなので」

 敷島はプイッと行ってしまった。

 初音ミク:「たかお社長、何かあったんですか?」
 敷島:「あ、いや、別に。今回のイベントは、色んな事務所と共同で行われる。いわゆる、『ボーカロイド版アイドルJAM』のようなものだ。色々あるんだよ、色々とね」

 マイクテスなどの音響調整が行われるなどは、人間のアイドルライブと変わらない。

 井辺:「B企画さん、グッズを大量に搬入するつもりですよ」
 平賀:「チケットもそうですけど、グッズも売れれば事務所の売り上げになりますからね。……うん、未夢。特に、異常は無い」
 未夢:「ありがとうございます」
 平賀:「Lily、次はお前だ」
 Lily:「私ですか?」
 平賀:「右腕のシャフトに少し歪みがある。直しておこう」
 Lily:「自己診断では、特に異常が出るほどではありませんが……」
 平賀:「ビッグライブだぞ?万全な調子で出たいだろう?」
 Lily:「……出たいです」
 平賀:「よし!」

 そんな様子を見ていた他の事務所のボーカロイド達は、羨望の眼差しを向けていた。
 そして誰ともなく、こんなことを言った。
「いいなぁ……大事にしてもらえて」
 と。

 敷島:「ボーカロイド達の活躍を見ていれば、彼女達が人間のアイドルと遜色の無い歌い手であることが分かります」

 今回のイベントに参加するいくつかの他事務所の中で、初参加の事務所があった。
 札幌ドームでは初めてなのは敷島エージェンシーも同じなのだが、そういうことではなく、ボーカロイドのライブイベント自体が初めてだという事務所があった。
 規模は敷島エージェンシーくらいのもので、しかもそこと違って、大手の後押しも無いような事務所だった。
 横浜に事務所を構える『相模芸能』という。
 そこの田中社長は、敷島に色々教わっているようだった。

 田中:「それは私も同意見です。一体、私の所のボーカロイドがどれだけの実力を出せるのか見たくて、参加させて頂いたんです。どういう所が魅力ですか?」
 敷島:「色々あります。人間のアイドルと同じく、どの機種も個性的です。それを如何に引き出せるかが、私達の腕の見せ所であるという所は人間のアイドルと変わらないです」
 田中:「確かに。うちにも、見た目がかわいいだけで、どこをどう引き出せばいいのか分からないコがオーディションに来ることがあります」
 敷島:「ボーカロイドはそういう心配が無いことと、やはりロイドですからね、見た目の劣化が無いということも大きな魅力です。これはまあ、身も蓋も無い話ですけど」
 田中:「いや、しかし正直な話でしょうね。他には?」
 敷島:「そして何よりも……」

 そこへB事務所関係者……というか、オーナーの怒声が聞こえてきた。
 どうやら、マズい電話が掛かってきたようである。

 Bオーナー:「何やて!?キーボー(B事務所所属の人間のタレント?)がヤクで捕まった!?あのドアホ!これやから、使えんヤツは早よ切れっちゅうとるんや!!」

 敷島は苦笑いした。

 敷島:「ボーカロイドには、ああいうスキャンダルの心配が無いことです」(`・ω・´)
 田中:「それな!」

 以上、ビッグイベントの準備が着々と進んでいる札幌ドームからお送りしましたw
コメント (7)
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