報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「敷島調査団」 2

2017-06-21 19:32:10 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月6日14:00.天候:雨 北海道オホーツク総合振興局東部 古民家(洋館)]

 食堂から再びエントランスホールへ戻って来た敷島達。
 ここで何か大きな仕掛けが作動したと思われる為、それを探ることにした。

 敷島:「2階からだと、他の部屋に行くドアに鍵が掛かってるな。2階からは、現時点でどこへも行けないようだ」

 敷島は階段を下りて、途中の踊り場に足をつけた。

 敷島:「ん?」

 その時、ふと思った。
 この1階と2階の間の踊り場、壁だと思っていたのはドアだった。
 ドアノブに手を掛けて回すと、ドアが開いた。

 敷島:「うん。ここからどこか他の場所へ行けそうだ。平賀先生、何か見つけましたか!?」

 敷島が踊り場から顔を覗かせた。
 しかし、エントランス前にエミリーとミクがいる以外、平賀の姿は見えなかった。

 敷島:「平賀先生!」
 エミリー:「……!?」

 エミリーも首を傾げて、階段の裏手に回った。

 エミリー:「平賀博士、どうしましたか?」

 階段の後ろにあるドアを開けると、そこは物置になっていた。
 だが、そこに入ったはずの平賀の姿が無かった。

 エミリー:「平賀博士?」
 敷島:「どうした、エミリー?平賀先生はどうした?」
 エミリー:「この中に入ったんです。ですが……いません」
 敷島:「どういうことだ!?」

 物置の中は暗かった。
 すぐにエミリーが片目に内蔵されているサーチライトを点灯した。

 敷島:「平賀先生!何かありましたか!?」

 だが、平賀の姿は無い。

 敷島:「一体、どういうことだ!?本当に平賀先生はこの中に入ったのか?」
 エミリー:「はい、間違いありません」
 ミク:「わたしも見ました」
 敷島:「モノが邪魔だ。取りあえず、邪魔なヤツを外に出そう」

 元から古い屋敷な上に、あまり手入れもされていなかったのだろう。
 埃被った掃除用具などが出て来た。

 エミリー:「敷島さん、これ……」

 その中からハンドガンが出て来た。

 敷島:「KR団の置き土産か?使えそうか?」
 エミリー:「特に損傷は見当たりません」
 敷島:「そうか。これは俺が持っておこう。もっと強力な武器が見つかったら、それはお前が持て」
 エミリー:「分かりました」
 敷島:「何しろこっちには、ロボットデコイやリモコン爆弾まであるからなぁ……」

 エミリーのスカートを捲り上げると、実は爆弾が仕掛けられているという。
 具体的には足に括り付けている。

 敷島:「この部屋に、平賀博士を連れ去る仕掛けが施されていたんだろう。くそっ、油断した!」
 エミリー:「どうしますか?」
 敷島:「どうもこうもない。取りあえず、一旦ここを離れよう。シンディにもう一回連絡してみてくれ」
 エミリー:「かしこまりました」

 敷島達はエントランスのドアを開けようとした。
 だが……。

 敷島:「うおっ!?」

 外から別のバージョン4.0が1機、入って来た。

 4.0C:「平賀博士ハ預カッタ。無事ニ返シテ欲シクバ、コノママ奥ニ進メトノコトダ」
 敷島:「何っ!?」
 エミリー:「平賀博士拉致を命じたのは誰だ?」

 エミリーが両手に拳を作って4.0を睨みつけると、4.0は少しおとなしくなった。

 4.0C:「誰モ命ジラレテハイマセン」
 敷島:「ウソつけ!」
 エミリー:「正直に言わないと壊す」
 4.0C:「平賀博士ハ勝手ニコノ屋敷ノトラップニ引ッ掛カッタノデス。ソレヲ……預カッタノデス」
 敷島:「『とのこと』と言ったな。お前は誰に平賀博士が捕らえられたと聞いたんだ?」
 4.0C:「下等デ愚カナ人間ニ答エラレルモノナド無イ」
 敷島:「下等で愚かだってさ。どう思う?エミリー?」

 ピシィッ!(エミリーが電気鞭で4.0Cを引っ叩いた)

 4.0C:「ヒィッ!?ソ、ソレハ!?」
 エミリー:「シンディから借りた電気鞭だ。人間に答えられないというなら、私には答えられるな?」

 シンディが電気鞭を持つようになったのは後期型になってから。
 前期型では大型ナイフを指揮棒代わりに使っていたが、現在はアリスに作ってもらった電気鞭を使っている。

 4.0C:「ソレハ……」
 エミリー:「平賀博士が拉致されたと誰に聞いた?そして平賀博士は今、どこにいる?答えろ」
 4.0C:「オ、オ助ケーッ!」

 ドタドタドタとずんぐりむっくりの体を揺らして、慌てて逃げ出す4.0。

 敷島:「あっ、待てっ!」

 敷島が追い掛けようとすると、突然天井からビームライフルが発射され、それが4.0に直撃した。
 4.0はいとも容易く破壊された。

 敷島:「あっ、くそっ!口封じされた!」

 エミリーは天井の照明器具に化けていたビームライフル発射装置を破壊した。

 エミリー:「少なくとも、どこかで私達を監視している者がいるようです」
 敷島:「そうだな。癪だが人質を取られた以上、あいつの言う通り、奥に進むしか無い」
 エミリー:「はい」

 エミリーは白手袋を着けていたのだが、それから黒い革手袋に交換した。
 シンディと同様、元々は革手袋を装着していたのだが、威圧感がある為にメイド業務も行うようになってからは、白いナイロン製の手袋に替えていた。
 さすがに今回は違うので。
 シンディの場合は秘書として敷島エージェンシーにいる時のみ、手袋を外しているに留まっている。

 敷島:「あのドアが開いた。あそこから行こう」
 エミリー:「分かりました」

 吹き抜け階段の踊り場のドアを開けると、そこから外に出られた。
 但し、完全に敷地の外というわけではなく、裏庭のようだった。

 敷島:「こ、これは……!?」

 その裏庭、夜に来たら物凄くホラーな展開になっていたのだろう。
 昼間でさえ薄気味の悪い屋敷ではあるが、裏庭はもっと凄いことになっていた。
 何故なら、あちこちに白骨死体が転がっていたからである。

 エミリー:「大丈夫ですか、敷島さん?」
 敷島:「ああ。却って、白骨化してくれていて助かった。まだ原型のある死体の方が、チビっていたかもしれん」

 そのうちの一体を調べてみると、着ていた服にIDカードが付いていた。
 だいぶかすれて読みにくくなっていたが、英語で『ケイン・ローズウェル財団』の文字が読み取れた。

 敷島:「KR団の構成員か。ここで何かあったのか、それともどこかで殺された死体を誰かがここに捨てて行ったのか……」
 ミク:「たかおさん、これ見てください!」

 ミクが裏庭の奥に何かを見つけた。
 それは地下室に通じる階段。
 その手前は鉄柵で仕切られていたが、その手前に1人の死体がうつ伏せで倒れていた。
 もちろん、これも白骨死体だ。
 だがこの死体、右手に何かを持っていた。
 それは鍵。
 鉄柵も錆びていたが、元々この柵は南京錠で施錠されていたようで、この死体はそれを開けようとしていたのだろうか。

 敷島:「この下に何かあるみたいだな。エミリー、出番だぞ」
 エミリー:「はい!」

 錆びてボロボロになった鉄柵。
 エミリーは簡単にそれを外した。

 敷島:「行ってみよう。もしかしたら、この下にマルチタイプ試作機が保管されていたりしてな」
 エミリー:「それを見つけたとしても、平賀博士を無事に見つけないといけませんよ」
 敷島:「ああ、分かってる。平賀博士を罠に掛けて拉致ったのは、一体誰なんだろうなぁ……?KR団の人間……じゃないよなぁ……?」

 階段を下りた先には重厚な鉄扉があった。
 だがこのドアも、どういうわけだかエミリーがドアノブに触っただけで、いとも簡単に解錠されたのである。
コメント (9)
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“Gynoid Multitype Sisters” 「敷島調査団」

2017-06-21 12:35:38 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月6日13:00.天候:曇 北海道オホーツク総合振興局東部 廃屋]

 エミリーが触ったら、何故か鍵が開いた洋館のドア。
 しかし、敷島達は気づいていない。
 それにしても、ビームは撃って来なかったが、作動する気はあった仕掛けといい、このドアといい、廃屋同然の状態ではあっても、システムは生きているらしい。

 敷島:「こりゃまたベタな法則ですな」

 エントランスホールの中は2階吹き抜けの構造になっており、中央にはT字型の階段があった。

 平賀:「外観に反して、中は広そうですね。さて、どこから探したものか……」

 するとエミリーが右手をレーザーガンに変形させて、左側のドアに向けた。

 敷島:「何だ?」

 そのドアを開けて、エントランスから出てくる者達がいた。
 バージョン4.0が2機である。

 エミリー:「止まれ!」
 4.0A:「オ待チクダサイ。私達ハ敵デハアリマセン」
 4.0B:「皆様ノゴ案内ヲサセテ頂キニ参リマシタ」
 敷島:「何だって?」
 平賀:「そうか、分かった。なら聞こう。ここは何だ?」
 4.0A:「ケイン・ローズウェル財団北海道支部デス」
 平賀:「やはりそうか。ということは、ここに人間の構成員がいる。……いや、いたという過去形の方がいいのか?……それとも、本当に今、ここには自分と敷島さん以外の人間がいるのか?」
 4.0B:「イマセン」

 4.0達が語った、ここが放棄された時期はKR団崩壊1ヶ月前だった。
 恐らく、組織の崩壊を見越したここの関係者が施設を放棄して逃亡したのだろう。
 1ヶ月前なら、まだ国外逃亡はできたかもしれない。
 警察がどれだけ構成員を把握していたかにもよるが。

 4.0A:「コチラヘドウゾ」

 この2体のロボットが出て来た部屋へと通される。

 敷島:「ここは……!?」

 これまた2階吹き抜けの食堂があった。
 大きなテーブルには、2人分の豪華な料理が並んでいた。

 4.0A:「オ客様方、昼食ガマダデショウ?御用意サセテ頂キマシタノデ、ドウゾゴユックリオ召シ上ガリクダサイ」
 敷島:「随分と用意がいいな?この前の北海道戦では、変な料理を提供されたものだが……」

 食用油の代わりに機械油で揚げられたフライ、恐らくはオニオンスープのつもりだったのだろうが、タマネギではなく、ネジが入っていたもの……。
 パンの形をした発砲スチロール、酒はエンジンオイル。
 まるで、ロボットが人間の食事をしようとするとああなるみたいな感じだった。

 敷島:「ここではどうなのかな?エミリー、スキャンしろ。もし毒成分だの、食用が明らかに不適なものが検出されたら……分かってるんだろうな?」

 エミリーは皿に盛り付けられた料理をスキャンした。

 エミリー:「……毒物や金属、その他危険と思われる成分は検出されませんでした」
 敷島:「そうなのか?」

 敷島は試しにコーンスープを口にした。

 敷島:「……美味い!これはイケる!」
 平賀:「食べ過ぎたら、豚になる成分が入ってたりして」
 敷島:「ブッ!どこのジブリアニメですか!」
 4.0A:「初音ミクサン、是非私ノボディニサインヲ!」
 4.0B:「私ニモ!」
 初音ミク:「はあ……」

 ミクがペンでサインをした。
 ボーカロイドは人間のみならず、ロボット達にも大人気なのである。
 その時、エミリーが大食堂の片隅に置かれているピアノを見つけた。

 エミリー:「あのピアノ、弾いてもいいか?」
 4.0A:「ア、ハイ!」
 4.0B:「ドウゾドウゾ!」

 エミリーはピアノの鍵盤の蓋を開けた。

 エミリー:「初音ミク。『オホーツク旅情歌』を歌え」
 ミク:「あ、はい」

 エミリーがピアノの伴奏を弾く。
 それに合わせて、ミクが歌を歌った。

 敷島:「ん?」

 ミクが歌い終わると、何か物音がした。
 具体的には何か重い物を引きずる音。

 平賀:「ダンジョンで、どこかの扉が開く音に聞こえましたね」
 敷島:「なるほど。どこかの仕掛けが開いたということか。でかした!」
 エミリー:「どこの仕掛けが作動した?」
 4.0A:「ワーイ!ワーイ!サインモロター!」
 4.0B:「安心シテ死ンデイイデスヨー」

 Bが敷島達に右手を変形させたマシンガンを向ける。

 エミリー:「やはりか!」

 エミリーが左手から有線ロケットパンチを繰り出すのと、バージョン4.0Bが敷島達にマシンガンを放つのは同時だった。

 敷島:「平賀先生!」
 平賀:「わっ!」

 敷島はすぐに平賀と共に、テーブルの下に伏せた。
 テーブルやその上の料理がメチャメチャになる。

 エミリー:「キサマら!」

 Aも感応したのか、右手をマグナムに変形させたが、エミリーはそれを使われる前にAとBを秒殺した。

 敷島:「あー、びっくりした……」
 平賀:「くそっ、油断した。やっぱり、所詮はテロロボットだったか……」
 敷島:「先生、お怪我は?」
 平賀:「いや、大丈夫です」
 敷島:「ここで『初音ミクの消失』とか歌ったら、もっと凄いことになったりして」
 ミク:「歌いますか?」
 敷島:「そうだな……」

 敷島はピアノを見たが、見るも無残に壊れていた。

 エミリー:「申し訳ありません。戦いの最中に……」
 敷島:「まあ、しょうがない。取りあえず、どこかの仕掛けを作動させることができたんだからな。そこへ行ってみよう」
 平賀:「向こうから音がしましたね」
 敷島:「行ってみましょう」

 それは先ほどのエントランスホール。
 途中で銃器が手に入るかどうかは不明だが、エミリーは一応、破壊した4.0達からマシンガンの弾とマグナムの弾を持って行った。

 敷島:「んん?」

 エントランスホールに戻ったが、特に何かが変わった様子は無い。

 敷島:「確か、ここから聞こえて来た気がしましたが……?」
 平賀:「変わった様子と言えば、照明が点灯しましたね」
 敷島:「あっ、そうか!」

 吹き抜け天井から吊るされたシャンデリアは、ローソク型の電球が灯り、その他にも壁の灯具などが点灯していた。
 しかし、通電しただけであんな重厚な音がしたとは思えない。

 平賀:「このホール内限定で、手分けして探してみましょうか。幸い、このホール内には敵の気配はしませんし」
 敷島:「そうですね。ヤバそうな仕掛けがあったら、触らず、近寄らず、そこはエミリーに調べてもらいましょう。私は2階を探して来ます」
 平賀:「じゃあ、自分は階段の後ろを探して来ます。エミリーはここに控えて、ミクの護衛だ」
 エミリー:「分かりました」

 敷島は赤絨毯の引かれた階段を駆け登った。

 敷島:「ドリフのコントみたいに、これが滑り台みたいになったら面白いんだけどな」

 もちろんそんなこと、あるわけが無かった。
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