報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「イベント当日、開始前」

2017-06-09 23:39:39 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月3日07:00.天候:晴 北海道札幌市中央区 京王プラザホテル札幌]

 シンディ:「社長、朝ですよ。起きてください」

 起床時間になったら、しっかりマルチタイプが起こしてくれる。

 敷島:「うう……ん……。あと、5分……」
 シンディ:「七海は稼働テストの際、平賀博士にお醤油を飲ませるというサービスをしていたそうです」

 シンディはバッと醤油の入っている小分けパックを取り出した。

 シンディ:「ならば私は、お醤油目薬サービスをば……!」

 シンディ、敷島の右目をこじ開ける。

 敷島:「わーっ!バカ!やめろ!」

 シンディのサディスティックな顔とギラリと光る目に、敷島はびっくりして飛び起きた。

 敷島:「俺を失明させる気か!?」
 シンディ:「もう、大げさですよ。安心してください。減塩醤油ですよ」
 敷島:「何だ、それなら左目も頼む……って、コラ!」

 朝からノリノリの敷島。

 敷島:「七海と似たようなことしやがって!」
 シンディ:「あの後、しばらくはメイドロイドの間で、『御主人様をお醤油で起こそうプログラム』が流行ったそうですね」
 敷島:「おかげでメイドロイドの売れ行きが落ちたんだぞ。今はようやくまた伸びたけど」
 シンディ:「それより早く、朝の身支度の方を。その後は、レストランで朝食です」
 敷島:「おっ、そうか」

 敷島はシンディからタオルなどを受け取ると、バスルームに入った。
 その間、シンディは敷島が起きたベッドを直す。

 シンディ:「ふふふふ……」

 その間、シンディはまたサディスティックな笑みを浮かべた。
 かつて前期型として稼働していた頃、ウィリアム・フォレスト博士(通称、ドクター・ウィリー)を追っていたFBIのエージェントを捕まえたことがある。
 捜査情報を吐かす為、シンディはそのエージェントを拷問に掛けた。
 その1つが、硫酸目薬。
 名前の通り、情報を吐かないと硫酸入りの目薬で目を潰すというものである。
 エージェントは結局吐かなかったので、両目を潰した上、七海の『お醤油プログラム』のことは知っていたので、硫酸を飲ませるという行為にも及んだ。
 結局、そのエージェントは死亡したので、その惨殺死体を地元の警察当局に送りつけてやった。

 シンディ:(誰も考え付かないだろうな。あんな……クソみたいな殺人兵器だった私が、こうして今は……おとなしく秘書兼メイド……たまにセクサロイドもやってるなんて……)

[同日07:30.天候:晴 同ホテル22F「個室和食みやま」]

 敷島:「昨夜は大変、ご迷惑をお掛けしました」
 平賀:「自分達、大変酩酊してまして、ついつい話に夢中になってしまって……」
 井辺:「止めるべき自分が真っ先に酔い潰れてしまい、役立たずで申し訳ありませんでした」

 敷島達は昨夜、酔っぱらってバカ騒ぎした和食レストランに陳謝しに行った。
 別にバカ騒ぎしただけで、暴れたわけではない。

 敷島:「朝食セット、3つください」

 お詫びなのか、ここで朝食を取る敷島達だった。

 平賀:「敷島さん、ここで飲酒はもうダメですよ」
 敷島:「先生こそ」
 井辺:「私も特に注意します」
 敷島:「井辺君は真っ先に酔い潰れただけで、特に大声を出したわけでもないから、1番大丈夫なんじゃない?」
 井辺:「いえ。同室させて頂いたのですから、やはり少しは責任を感じます」
 平賀:「敷島さん、責任感のある人を部下にしましたね」
 敷島:「ええ。さすがは、総合プロデューサーだ」
 井辺:「いえ、私はただ……」
 萌:「井辺さんと相思相愛のボクのおかげですかねー!」

 萌、井辺のスーツのポケットの中から現れる。

 敷島:「うわっ、いつの間に!?」
 萌:「それは言えない妖精の秘密!」
 井辺:「ていうか、何ですか?『相思相愛』って?あなたが私をとても気に入っていることは知っていますが、私は別に……」
 萌:「『とても大好き』なんですね!えへへ……照れちゃいます(〃´∪`〃)ゞ」
 井辺:「あの……」
 敷島:「メイド!つまみ出せ!」
 シンディ:「承知!」

 シンディは萌の襟首を掴むと、店の外に連れ出した。

 萌:「あ〜れ〜!」
 シンディ:「ファンシーロイドが生々しいことすんなっ!」
 エミリー:「瓶の中に入ってもらうぞ」
 萌:「ひいっ!それだけはーっ!」

 敷島:「『妖精を 運ぶ俺とお前と 大五郎』……なんちゃってw」
 平賀:「ウマい!」

 この2人、まだ酔っぱらっているのだろうか?

 井辺:「なるほど。考えましたね。ただ、妖精が入るにはまだ口が小さいような気がします。私がもっと適当な入れ物を探しておきますよ」
 敷島:「さすがは井辺君、話が早いな」
 平賀:「大五郎か。ここ最近、飲んでないなぁ……」
 敷島:「札幌に来たんだから、サッポロビールなのは鉄板だとして、もっと他に名酒を飲んでみたいですね」
 平賀:「もし無事に帰ることができたら、帰りに探しましょう」

[同日09:00.天候:晴 京王プラザホテル札幌1F→札幌ドーム]

 ホテルのエントランスに行くと、タクシー会社からチャーターしたジャンボタクシーが2台待っていた。

 運転手:「おはようございます。敷島エージェンシー様ですね?お待ちしておりました」
 井辺:「はい。よろしくお願いします。それでは皆さん、乗ってください」
 鏡音リン:「よろしくお願いしまーっす!」

 ハイエースの方に売れっ子ボカロ達と敷島、平賀、エミリーが乗る。
 アルファードの方にMEGAbyte、井辺、シンディが乗った。
 どちらも、スライドドアから後ろはスモークが張られていて外から中が見えないようになっていた。
 マルチタイプが分乗したのは、護衛の為。
 実際、どちらも助手席に乗っている。
 だからなのか、ドームの関係者出入口で入り待ちをしていたファン達からは、マルチタイプにも手を振る者がいた。
 『美人過ぎる秘書』として、マルチタイプ姉妹もネットなどでは話題になっている。
 当のマルチタイプ達は『用途外』ということで、テレビ出演などのメディア露出は基本全て断っているし、今回のように入り待ちのファン達から手を振られても、ほとんど無反応であった。
 あくまで現在の立場は、シンディは秘書代行兼護衛、エミリーは秘書兼護衛なのである。

 敷島:「リハーサルがあるから、それに出てもらう。お前達はもうプログラムはされているけど、それを支える人間のスタッフの皆さんもリハーサルをしないと行けないからな」
 初音ミク:「わっかりましたー!」
 鏡音リン:「リンにお任せ!」
 鏡音レン:「頑張ります」
 MEIKO:「毎度のことだしね」
 巡音ルカ:「プログラムに従って動くまでです」
 KAITO:「ロボットじゃないんだから、少しはボク達でアレンジしていいんだよ」

 KAITOはルカの肩に手を置いたが、すぐに軽く振り払われた。
 毎度のことである。
コメント
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